ソードアートオンライン 白い流星   作:八葉と黒神の剣聖

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妖精の世界

 SAO事件から早くも一年経った。

 俺は変わらず親父や姉貴の仕事を手伝いながら、忙しい高校生活を送っている。

 

 この一年は色々と忙しかった。

 年明けて落ち着いたかと思いきや、木綿季の病気が予想より早く治り、姉貴と倉橋先生は大忙し。

 その薬を作った機械の需要が高まり、各地から生産依頼が来て親父の会社は大忙し。(その上改良までしていたから尚大忙し)

 

 と、かなり大変だった。

 だけど、色んな方面が助けてくれた事もあったので、無事姉貴は三途の川を渡らずに済んでいた。

 

 俺も菊岡というSAOの対策チームに所属している男に目をつけられて大変だったが、上手いこと線引きしながら対応している。

 

 

 そんなある日の放課後。

 教室で香蓮を待ちながら、クラスメイトである篠原美優とあるゲームについて話をしていた。

 

 

「で。いつになったらALOにダイブするんだ?」

「あんま乗り気じゃない。あんなことあったのに」

「それは分かるけど、アミュスフィアは安全だぜ。ALOだってSAOと似たようなものだし」

「それは知ってるけど……」

 

 

 ALOとアミュスフィア。

 今から一か月前にレクト社から発売されたVRMMORPG。

 簡単に言うと、剣と魔法と妖精の世界で、SAOと違い空が飛べてレベル制を廃止。

 熟練度などを上げるにはプレイヤーを倒してあげていくPVP制。

 あと北欧神話がもとになっているんだったかな。

 

 で、美優はその世界でシルフを選択して遊んでいるらしく、たびたび誘ってくる。 

 姉貴もやっているとかで、先日カセットとアミュスフィアを送ってきた。

 

 

「それに、アカウント作って置いたら姉さんと連絡とりやすいだろ。わざわざ向こう行かなくても」

「…それはいいね。盲点だった」

 

 

 確かに美優の言う通りだろう。

 事ある度に飛行機乗って行くぐらいならALOでやり取りした方が早いか。

 それに気になることもあるし、美優の誘いに乗るか。

 

 

「分かった。今日暇だしやってみるよ」

「そう来なくっちゃな。妖精はどれにする?」

「猫妖精…ケットシーだな。SAOもAGIメインだったし」

「いいね。ちょうど知り合いもいるし、初期エリアまで迎えに行ってやるよ」

「助かる。ログインする時に連絡頂戴」

「おぅ。んじゃ帰るわ」

 

 

 駆け足で帰る美優。

 それと入れ違いで香蓮が来たので一緒に帰る。

 その途中で、美優がご機嫌な理由を聞かれたので答えると、香蓮は少し嫌な顔を浮かべた。

 

 

「ねぇ…アミュスフィアが安全なのは分かるけど、本当に大丈夫?」

「大丈夫だと思う。気になることはあるけど」

「気になる事?」

「そ。分かったら姉貴と話はするから心配しないで」

 

 

 香蓮の頭を撫でると、彼女は嬉しそうに肩に乗せて甘えてくる。

 最近は接する機会が減ってきた影響か、香蓮が甘えてくる頻度が増えてきた気がする。

 デートも全然してないし、休みに入ったら旅行でも行くか。

 

 

「そういえば…お父さんが今度一緒にご飯食べに行こうって。色々とお話をしたいとか」

「い、色々……」

 

 

 やな予感するなぁ…もしかして俺の進路とか気にしているのか?

 SAOに両親が囚われてから何かと心配して声をかけてくる。

 昔から超仲いいし、俺は構わないが、やっぱり会うのは緊張する。

 

 

「日にち決まったら教えてよ。姉貴に伝えておく」

「お願いね。それと、今日泊りに行っていい?お祖母ちゃんに料理を教わりに行きたくて」

「もしかして木綿季に言われた?」

「うん。外出れるようになったら教えてほしいって」

「そっか。けど外出れるのはもう少し先かな」

 

 

 無菌室の中でリハビリ中の木綿季。

 昔のように動けるようになるまではまだ時間がかかりそうだ。

 少しずつ慣れていかないといけないし、そこは姉貴に任せるしかないな。

 

 

「っと。着いたよナオ」

「おぅ。行くか」

 

 

 バス停に到着し、足早にバスを降りる。

 手を繋いで雑談しながら家へと帰り、庭で素振りしているじっちゃんに声をかけてから中に入り、台所で仕込みをしているばっちゃんに声をかける。

 それから荷物を自室に置き、箱の中に入っているアミュスフィアを取り出す。

 

 

「さて…久しぶりにやりますか。っと連絡しないと」

 

 

 美優にメールを送ってからコードを刺して装着し、椅子に座ってから軽く息を吐き、電源を付けてALOにダイブする。

 SAOと同じく最初はアバター生成で、初めに種族を選ぶ。

 ここはケットシーを選び、次に名前を設定。

 名前はSAOのβテストと同じ名前でユキトとした。

 その次に容姿を決めると思っていたのだが、どうやらALOは自動生成らしい。

 

 

(やな予感するなぁ……)

 

 

 何やら嫌な予感がしつつもアバター生成が終わり、俺はケットシー領へと転移される。

 飛ばされたのはやや大きい建物で、周りに猫耳と尻尾を付けたプレイヤーが何人か居た。

 まさしく猫妖精そのものだ

 

 

「感覚はSAOと同じか。ちゃんと耳と尻尾の感覚もあるし」

 

 

 違和感も特にないし、感覚もきちんとある。

 尻尾も動かせるところを見ると、かなり凝っているな。

 開発者に猫好きでもいるのだろうか?

 

 

「まて…となると尻尾は……」

 

 

 弱点……なわけないか。

 触られたら過剰に反応するとかないよな。

 あったら何かと困るぞ。

 興味本位で触ってきたりとかするやつ出てきそうだし。

 

 

「そうならないように強くなればいいだけ。ひとまずアバター確認しとくか。鏡は……あった」

 

 

 近くの鏡の前に移動。

 どんなアバターか楽しみにしていると、鏡に映った自分の姿を見て固まった。

 何故なら鏡には、小柄な美少年が映っていたから。

 

 

「……え?んんっ?えぇっ?」

 

 

 直ぐに我に返って見直すが、やはり小柄で美少年なアバターだ。

 身長は150センチほどで、髪と尻尾と耳は白銀色。

 見方によれば女の子と見間違えられてもおかしくないほどのかわいい姿だ。

 

 

「マジかよ…さすがにリアルと違い過ぎないか?」

 

 

 リアルでの身長は185センチで仮想世界では150センチ…いくら何でも差がありすぎるだろう。

 あ、でもAGIメインだからチビの方が有利になるのか。

 そう考えると、これはこれでいいのか。

 

 

「よし。そうなれば前向きに考えよう。んで美優…じゃなくてフカ次郎は……」

 

 

 回りを見渡して目当ての人物を探していると、大剣担いだ一人のエルフとケットシーが目に入る。

 確かフカ次郎の得物は大剣だったか。

 となると…ふむ、声をかけるか。

 

 

「おい美優。ここだ」

「お?この声は………え?」

 

 

 声に気付きこちらを向くフカ次郎だが、俺の姿を見て石のように固まる。

 隣のケットシーは珍しそうな顔をしていた。

 

 

「お、おい。もしかしてのもしかしてか?」 

「その通りだよフカ次郎。この世界ではユキトだな」

「……まじかぁ。えぇ……そんなアバターあるのかよ……」

 

 

 彼女も予想外だったようで驚きを隠せていない。

 その気持ちは痛いほど分かるが、出来る限り早めに慣れて欲しいところだ。

 

 

「えっとフカちゃん。この人が例の人?」

「そうだよアリシャさん。お陰で合流できた。ありがとう」

「いえいえ。これぐらい容易い物だヨ。何か困ったらまた言ってね」

 

 

 手を振りながら去っていくアリシャというプレイヤー。

 フカ次郎に聞くと、彼女がケットシーの知り合いとかで、共通の知り合いかシルフにいるから、ケットシー領に来るときは頼っているらしい。

 

 

「んじゃ中立地帯に行くか。そこで色々教えてやるよ」

「その前に防具とか揃えないと」

「それなら心配要らない。これやるよ」

 

 

 メニューを開いたフカ次郎は、防具と武器を一通り送ってくる。

 お礼を言ってから俺もメニューを開いて装備する。

 白いコートに片刃の両手剣。

 武器に関しては初期の熟練度でも扱えるものなので助かった。

 

 

「助かるよフカ次郎。それじゃあ行こうか」

「私に付いてきな」

 

 

 フカ次郎の後を付いていき、向かったのはケットシー領から近い中立地帯。

 一面緑の草原でいい風が吹いている。

 周りにモンスターやプレイヤーもいないので、伸び伸びと出来そうだ。

 

 

「とりあえず分からんのは空の飛びかたぐらいか」

「そうだな。魔法は使わんしそれぐらいだろ」

「オッケー。空の飛びかたはな……」

 

 

 フカ次郎は俺の背中…肩甲骨の間辺りに手を置き、ここから翼が生えているイメージだと言ってくる。

 なので言った通りにイメージすると、背中に翼が現れた。

 なかなかリアルで実際に生えている様な感覚がある。

 となると、生えた翼を鳥のように羽ばたかせたらいいのか。

 

 

「んで、そのままバサッ!っと飛んでみな」

「バサッ!っとか。オッケー」

 

 

 

 彼女の言った通りにバサッ!と羽を震わすと、勢いよく上空に飛び上がる。

 成る程…これは中々難しいな。

 もう少しイメージの仕方を変えたようが良さそうだ。

 

 

「いいねユッキー。そのままぐるぐる回ってみろよ」

「あぁ」

 

 

 周辺を適当にぐるぐる飛んでいると、少しづつだか安定してきたので速度を上げる。

 これなら思ったよりも早く慣れそうだな。

 感覚も掴んできたし、数こなせば無意識で飛べそうだ。

 

 

「やるねぇユッキー。そろそろ降りてこいよ。制限時間あるし」

「それを先に言ってくれ」

 

 

 

 うーん、空飛ぶのに制限時間があるのか。

 確か高さも上限があるんだっけ?

 どれぐらいまで行けるのか後で調べておこうか。

 

 

「よっと…空飛ぶのはもう少し練習か。後は戦闘面の確認しないと」

「それなら私が相手……は無理だな。絶対に勝てないし」

「やってみないと分からないが……ん?誰か来てる?」

「え?マジ!?」

 

 

 誰かが近づいてくる気配を感じたので周りを見渡すと、3人のサラマンダーがこちらに近づいてきているのが視界に映る。

 俺達は身構えていると、3人のサラマンダーは俺達の上空で止まり、それぞれ得物に手を置いた。

 

 

「ちょっと待て。まさか!」

「どうやらそのまさかみたいだな」

 

 

 俺とフカ次郎は獲物を握ると、先頭にいたサラマンダーは、槍を構えて俺に向けてくる。

 他の2人も獲物を抜いて俺の方を向いた。

 どうやら狙いは俺の様だ。

 

 

「悪いなニュービー。俺たちの熟練度のためにやられてくれ」

「クク…そういうことだ」

「何。すぐに終わらせるさ」

「……(どうしたものか)」

 

 

 質の悪いニュービー狩りか。

 こういったゲームには絶対にいるが、こうも露骨に俺を狙ってくるのを見ると、絶対に勝てるって思っているんだろうな。

 まぁチビだし、弱そうだし。 

 でも…見た目で判断するのは良くないと思う。

 仕方ないか、少しお灸を据えるとしよう。

 

 

「フカ次郎。ちょっと下がっててくれ。一人でやる」

「程々にな」

「分かってる」

 

 

 フカ次郎の一歩前に出て剣を構える。

 さて…3人同時に来るか、あるいは1人ずつか。

 まぁどちらでもやることは変わらない。

 せいぜい戦い方が変わるぐらいだ。

 

 

「さて。どこからでもどうぞ」

「はっ。ニュービーが調子に乗るなよ!」

 

 

 先頭のサラマンダーがかなりのスピードで接近してくる。

 あいつの狙いは首か。 

 となると、右斜めにしゃがんで袈裟斬りだ。

 

 

「死ね!」

「……!」

 

 

 槍が首に当たる瞬間に右斜めにしゃがみつつ、奴の進行方向に両手剣を置き、当たった瞬間に袈裟斬りで一撃で仕留める。

 

 

「なっ!一撃ーーーがはっ!」

「隙あり」

 

 

 一撃で倒されたことに驚いているお仲間の1人に剣を投げて2人目を仕留める。

 

 

「仲間がやられたからって油断したら駄目じゃないか。そうだろ?」

 

 

 剣を回収して残った1人に聞くと、彼は全力疾走で逃げて行った。

 なんとも早い逃げ足だと思っていると、さっきの2人を倒した報酬が表示され、そこそこのお金と経験値が手に入る。

 懐かしい表示画面と思いつつ経験値を割り振る。

 両手剣の熟練度を上げてからステータス。

 とりあえず目指している形に振るわけよう。

 

 

「っとこんな感じか。倒した連中はどうするフカ次郎?」

「ほっとけあんな連中。というか私が上げた剣を投げるな」

「ごめん。射程内だったからつい」

「ついってな…まぁいい。ケットシ領に戻るぞ。そろそろサクヤと合流しないといけない」

「分かった。んじゃ帰るか」

 

 

 剣を背中に担ぎ、ケットシー領へと戻るのであった。

 

 

 

 

 

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