Side ラダビノット
最前線のインドから、最前線の日本帝国へ移動。同じ状況であるのに不安が残るのは、やはり私には荷が重すぎるからか。
最前線の先頭を走り回る方が性に合っていたが、歳に負けてしまった。後方での事務仕事についてはや10年。机上で軍を動かすことは至難の技だった。
当たり前のように死んでいく兵士たち。名も顔も知らぬそんな兵士に、死んでこいと命令を下す。指示を下した翌日には数百人が死んだ報告よりも、作戦の成否が先に上がってくる。
もちろん、成功することの方が。いや、そもそもBETA大戦における成功など数える程度。
だからこそこの異動は左遷か、それとも栄転か。分からない。
唯一の安心材料は、前線で一緒に這いずり回って生き延びた、このマドゥルが付いてくることくらいだろうか。
私が大隊を率いたときに、大隊付き小隊を率いていた。私が最も便りにする男だ。
「後方の冷飯はうまいか?」
「前線の冷飯の方が俺にはお似合いだよ」
「お前もしぶといやつだよな」
「しぶといどころか。基地司令だ」
「偉くなっちまったもんだな」
「お前はまだ前線にでしゃばってるらしいな」
「前線の冷飯が似合ってるらしくてな。上も下も手離してくれねえんだよ」
「今回はいいのか?」
「昇進祝いだとよ」
「ついに、中佐だもんな」
「俺じゃねえよ、お前だよ。准将に付いていってあげてくださいだとよ。上司思いのいい奴らだぜ」
「本音は」
「知らねえお国に行ってまで書類仕事なんかやってらんねえぞ、俺は!」
「まだまだ元気みたいで助かる。またしばらく、世話になるぞ」
「しばらくだー? できればさっさとインドに戻ってきたいけど。ま、それよりもお前が先に死んじまうにかけるね」
「何をかけるつもりだ」
「俺の命だな」
「ううむ、かけが成立してるのか、それは?」
「いいじゃねえか。それよりも最後のインドだ。遊んでくぜ」
「まだ最後とは決まってないだろ。それに遊ぶったって」
「前線に決まってんじゃねえか。お前が知らねえ間に、若い女がどんどん入ってきてやがるぜ」
「ホントに元気があり余ったジジイだよ、お前は」
「……。あのな。戦えないやつは、後方にいた方がいいんだよ。足手まといは単純に迷惑だ」
「おい、それ以上は」
「だから、孕ませてやってんのよ。子供を身籠った女が前線に居られねえだろ。しかも、将来の兵士も増える」
「お前」
「それが、好きでもねえジジイの子供なのは可愛そうだがな。しかもシングルマザー一直線だ。でも、その方が良いんだよ。その方が良い世の中なんて狂ってるけどな」
「お前も、大変だったな」
「おかけで、前線で俺を知らねえ奴は居ねえよ。
「とんだ傑作だな。それなら、ヒーローはヒーローらしく暴れていくか」
「そういうこった」