基地司令は憂鬱   作:矢矧草子

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1999年 某日 インド

Side ラダビノット

 

 

 最前線のインドから、最前線の日本帝国へ移動。同じ状況であるのに不安が残るのは、やはり私には荷が重すぎるからか。

 最前線の先頭を走り回る方が性に合っていたが、歳に負けてしまった。後方での事務仕事についてはや10年。机上で軍を動かすことは至難の技だった。

 当たり前のように死んでいく兵士たち。名も顔も知らぬそんな兵士に、死んでこいと命令を下す。指示を下した翌日には数百人が死んだ報告よりも、作戦の成否が先に上がってくる。

 もちろん、成功することの方が。いや、そもそもBETA大戦における成功など数える程度。

 だからこそこの異動は左遷か、それとも栄転か。分からない。

 唯一の安心材料は、前線で一緒に這いずり回って生き延びた、このマドゥルが付いてくることくらいだろうか。

私が大隊を率いたときに、大隊付き小隊を率いていた。私が最も便りにする男だ。

 

「後方の冷飯はうまいか?」

「前線の冷飯の方が俺にはお似合いだよ」

「お前もしぶといやつだよな」

「しぶといどころか。基地司令だ」

「偉くなっちまったもんだな」

「お前はまだ前線にでしゃばってるらしいな」

「前線の冷飯が似合ってるらしくてな。上も下も手離してくれねえんだよ」

「今回はいいのか?」

「昇進祝いだとよ」

「ついに、中佐だもんな」

「俺じゃねえよ、お前だよ。准将に付いていってあげてくださいだとよ。上司思いのいい奴らだぜ」

「本音は」

「知らねえお国に行ってまで書類仕事なんかやってらんねえぞ、俺は!」

「まだまだ元気みたいで助かる。またしばらく、世話になるぞ」

「しばらくだー? できればさっさとインドに戻ってきたいけど。ま、それよりもお前が先に死んじまうにかけるね」

「何をかけるつもりだ」

「俺の命だな」

「ううむ、かけが成立してるのか、それは?」

「いいじゃねえか。それよりも最後のインドだ。遊んでくぜ」

「まだ最後とは決まってないだろ。それに遊ぶったって」

「前線に決まってんじゃねえか。お前が知らねえ間に、若い女がどんどん入ってきてやがるぜ」

「ホントに元気があり余ったジジイだよ、お前は」

「……。あのな。戦えないやつは、後方にいた方がいいんだよ。足手まといは単純に迷惑だ」

「おい、それ以上は」

「だから、孕ませてやってんのよ。子供を身籠った女が前線に居られねえだろ。しかも、将来の兵士も増える」

「お前」

「それが、好きでもねえジジイの子供なのは可愛そうだがな。しかもシングルマザー一直線だ。でも、その方が良いんだよ。その方が良い世の中なんて狂ってるけどな」

「お前も、大変だったな」

「おかけで、前線で俺を知らねえ奴は居ねえよ。return ejaculation(帰郷射精)だとよ」

「とんだ傑作だな。それなら、ヒーローはヒーローらしく暴れていくか」

「そういうこった」

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