基地司令は憂鬱   作:矢矧草子

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2000年 1月 仙台第二帝都

side ラダビノット

 

 港に着いたときには既に迎えらしき人間が待っていた。あれが噂の斯衛という奴か。立ち姿ですら凛々しさを覚える。歴戦の猛者と言って相違あるまい。

 

「ラダビノット准将とお見受け致します」

「そちらは」

「帝国斯衛軍第十六大隊所属、月詠真耶中尉であります」

「出迎え感謝する。こちらは」

「マドゥル・ディングラ中佐だ」

「は。では、こちらに。殿下がお待ちです」

 

 

 

「殿下の御前になります。決して粗相の無いよう」

「かしこまりまった」

「では、お目見えになります。頭を下げてお待ちください。……。殿下、ご入室あそばされます」

「……。(おもて)をあげてください、准将」

「は。パウル・ラダビノット准将であります。殿下におかれましては、先の帝都における防衛戦のご活躍を拝聴致しまして……」

「准将。……殿下はご出陣されておらん」

「よいのです、真耶。(わたくし)の不徳の致すところです。それよりも」

「は。准将、此度な経緯について詳細をご報告お願い致します」

「は。この度、旧横浜バイブ跡における国連軍基地建設を御裁可頂き、ありがとうございます。今回の基地は、極東方面における絶対防衛という立場はもちろんのこと、AL4計画の中枢としての機能を有します。そのような大義ある基地の司令官を拝命致しましたので、そのご報告に参上(つか)まつった次第でございます」

「人類のため、尽力よろしくお願いしますね」

「は」

「ところで准将は、インド亜大陸で激戦を潜り抜けたと聞き及んでいますが」

「は。もう10年以上も前の昔話になります。恐縮ですが、私には戦場で戦う術しか知りませんので」

「とすると、准将。一つ不思議に思う点があります。ご質問させていただいてよろしいですか?」

「どうぞ」

「なぜ、戦うことしかできぬ、国際政治も分からぬ老いぼれを、あろうことか帝国外から司令官を入れなければ」

「真耶、お止めなさい。准将、この者の非礼をどうぞお許しください」

「殿下! 頭をおあげください。殿下に謝っていただくことでは」

「この者としても、国のことを思ってなのです。悪気はないのです。しかし、私から再び問わせていただいてもよろしいでしょうか」

「なんなりと」

「私は怒りと言うよりも、心配なのです。慣れぬ国でいきなり基地司令。秘書など帝国に明るい者を何人か付けた方がよろしいのではないでしょうか」

「それは」

「真耶」

「は。准将。殿下の御高配、受けとるがよい」

「これは」

「もし准将に準備がなかった際にと、使える駒をリストアップしてあります。ご確認ください」

「ええと」

「足りぬか?」

「いえ、滅相もありません。しかし」

「准将、もしや疑っておるのか?」

「そんな」

「殿下! だから私は反対申し上げたのです! このような殿下の御高配も理解できぬ者に手心を加えるなど!」

「お止めなさい、真耶。それ以上はなりません」

「は」

「ご安心ください、准将。この煌武院悠陽の名において、真にこの星を守るに足る信用のおける者を推薦しております。ぜひ彼らをご指導ください」

「は、ははー!」

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