Side 美果
遅めの昼休憩。まだ食堂ができてないらしくて、秘書官室で食べてる。クリスタさんが手際が良くて、あっという間に簡易的な食事が出来上がってた。「常在戦場よ。手軽で栄養価が高くて腹持ちが良くて温かいものよ。私スペシャル」らしいけど。普通に私が作るごはんより立派ですごい。
食事を準備してもらってる間に席割を決めた。4つのデスクが集まった島が2つ。部屋から入って、向かって右側の奥側。入口から一番遠くて後ろの書棚に近いデスクを陣取った。
クリスタさんと、橘高中尉は、デスクワークがないからって場所は特にいらないって。一応あったほうがって言ったら、クリスタさんは私のデスクの端っこを。橘高中尉は出入り口に一番近い席を。
クリスタさんなら、話しやすいしいっか。
あとは、稲庭大尉が私と同じ島で、向かい合い。藤守大尉が橘高中尉と席を分けてて、島津大尉と同じ島。
自分のデスク。寂しすぎるからちょっと飾りでもしてみようかな。お花くらい置いときたいよね。ん-。クリスタさんに育ててもらお。
ご飯はみんな自分の席で食べるから、すごく静かだし、一緒に食べてる感じがないし。でもこの静けさはそれだけじゃないのかもしれない。
さっきのラダビノット指令の話。AL計画。あんな話があったなんて。もう第4段階なの? で、私たちは成功するの? なんか不安。
でも一番の不安材料は。この私の前に鎮座してる書類の束。さっき入ったばっかりなのに、後ろの書棚も半分くらいぱんぱんになっちゃった。AL4計画の研究データ。私知らなかったんだけど、香月博士って、飛び級で帝国大学入ってるんだってね。化け物じゃん。私あんなに勉強してきたのに理解できないんだけど。
困っちゃったなー。
食事が終わったら部屋割りを決めたわけなんだけど。こういうのって、どこがいいとかワーキャーやるもんじゃないの? すごく事務的に部屋の場所が決まったんだけど。
秘書室の奥に用意された個人用スペース。私の部屋は向かって右側の島の一番奥。隣は島津大尉。向かいは橘高中尉。その隣に藤守少佐。安心感がすごいけど、少佐はあんまりここにいないんだよね。
稲庭大尉とクリスタ大尉は、反対サイド。クリスタ大尉の部屋は医務室も兼ねるから出入りしやすい、奥側。
そろそろ参ってきちゃいそう。持ち込み可能なものはごく限られてたから、部屋をキレイにしようと思っても限界が。ツライ。もう、カウンセリングをお願いしたい。
そう思ってたら早速大尉から呼び出し。なんだけど。女性陣が全員集められてる。心が休まる暇がない。
「えっと、藤守少佐は」
「彼は呼ばないわよ。とにかく今は女だけで話がしたくてね」
「え、それって。早速?」
「そうよ。察しがよくて助かるわ」
よかったー。こんなメンバーでもやっぱあるんだ。女の子だもんね。恋バナの一つくらい。
「みんなはちゃんと生理来てる?」
「はあ!?」
「私は後方なので。あと、ハニートラップとかも何度かやってたので、まあ当然」
「私もアメリカだったから、ボーイフレンドに困ることはなかったわ」
「最前線の軍人にそれは無理ですよ、大尉」
「美果? あなたはどうなの?」
「え、だって。そんな話。みんな言いすぎなんですよ!」
「あのね、これは凄く分かりやすい健康管理なのよ。お願いだから教えて頂戴。これが私の仕事なのよ」
「あう。あの。まあ、普通に」
「周期的に来てるのね? 次はいつ頃?」
「来週には」
「そう、よかったわ。さて、まずは中尉以外の3人だけど。咲彩は、こっちでボーイフレンドを見つけなきゃね」
「そうねー。こっちというか、アメリカで見つけたほうがいいわね。ただ、スパイとかに引っかかると面倒だし。どうしようかしらねー」
「とりあえず男作っちゃえばいいんじゃないかしら。そのあと身辺調査するから。合格なら引き続き付き合ってもらっていいんじゃないかしら」
「じゃあ、それで」
「島津大尉は、ハニートラップ? およそ政治家の秘書の仕事じゃないと思うんだけど」
「あまり触れないでください」
「そう、分かったわ。それで、特定の相手はいるのかしら?」
「今はいないですね。そのうち、本家のお爺様が相手を連れてきてくれるかもしれないけど」
「それまではってことね」
「そうですね。分家の生まれで、女なので家を継ぐことはないですが、島津家の教えは受け継いでいきたいので子供は欲しいですしね。それなりの血筋の人にってことになると思いますので」
「じゃ、男遊びぐらいね。抵抗ある?」
「本当は抵抗したほうがいいと思うんですが、正直あまりないですね」
「そう、よかったわ。精神と肉体のためですもの。頑張って遊んじゃいましょ」
「美果は? 男は?」
「居たことありません。青春を勉学にささげてきたので」
「あら。じゃあ処女なの?」
「ちょっ!」
「そう、困ったわねー。どうしようかしら。これはこれでむつかしい問題ね。初めての夜はどんな風がいいとかあるの?」
「いやー、別にないんですが。こう、さすがにこの時代にこの年齢で処女なのは気が引けるってだけで。それが年を経るごとに取り返しがつきにくくなっていっちゃっただけで……」
「そう。なら、拘りはないのね」
「ま、まあ。引かれなければ」
「男娼の処へ行きましょうか」
「だんしょう?」
「慰安所よ。今じゃ女性の軍人も多いから、そういうところもあるのよ。国連基地ならそのうちできると思うわ。その時まで辛抱しててね」
「へ?」
「で、橘高中尉ね。前線にいたことは知ってるけど、でもよ」
「医者はそんなこと言いやがりますけどね、実際に前線に出てる人間からしたら困るんですよ。生理が来ててもBETAは来るんですよ。気分が悪い、体が痛え。そんな時に戦えますか? 私は嫌ですよ」
「でもねえ。じゃあ相手がいたことも?」
「相手は。その。許嫁が」
「許嫁!?」
「声がでけえよ」
「どこの人? っていうか結婚はしないの?」
「斯衛18大隊だよ。前までいた大隊の大尉。結婚は、まだしねえよ」
「いつするの! 戦場に立ってればいずれ死ぬのよ!?」
「だから、安心して死ねねえように先送りしてるんじゃねえか」
「そんな」
「私はそれで満足なんだよ。私の仕事は陛下と殿下と閣下のためにあったんだ。それを邪魔するようなものは要らねえ」
「あ、そう。ちなみにお名前はなんていうの?」
「は? そんなの聞いてどうすんだよ」
「藤守少佐に言っておかなくちゃね。斯衛に行ったら、よろしく伝えてもらわなきゃって」
「おい、こら! てめえ何考えてやがる!」
「中尉? 階級を無視して暴言を吐くとは、斯衛の恥ではなくて?」
「くっ」
「というわけで、今日は解散。今後は定期的に体調管理のためにカウンセリングしていくからね。よろしくー」