かな建クエストっ!   作:たかしクランベリー   

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11話・スロ又、ギャンブラーの流儀

 

 

 

「だからぁ〜、あるじゃん。

AT、ART、CT、ST機とかさぁー。

そういうの。

一台くらいは置いてるよね。」

 

「えーと、何の話ですか。

スロットは『ジャグラー』しか

存在しないと

オーナーは仰ってましたよ。」

 

「――え?」

 

え、ちょ……マジ。

聞いてないんすけど。

 

ジャグラー程度の勝ちじゃ、

そんなにうめうめ出来ないじゃんか。

 

ボーナスタイム終盤からの

AT or CZ抽選で

大当たりラッシュ決めるのが

最高に楽しいのに……。

 

※AT……アシストタイムの略称。

※CZ……チャンスゾーンの略称。

 

『あらあら大変ですね。

では、私から一言。

――じゃあな海洋生物最強。

BIGボーナスの連続抽選を

狙えない時代に転生(う)まれた

哀れな下魚よ。』

 

「あっそ! 

沙花叉がジャグラーでも

充分闘えるってトコ見せてやんよ!

あと魚じゃねぇわ!」

 

『あらあら。

私に媚び諂わなくて良いんですか。

当たりの台を特定するのなんて、

私の〝能力〟を活用すれば

ちょちょいのちょいですよ。』

 

あー……そういや移動中に

『吉』や『凶』の場所をアナウンス

出来るとか言ってたなぁ。

 

喧嘩腰にお喋りするインテリアの

印象が強くて忘れてたや。 

 

頼ったら頼ったで

恩着せがましい態度取ってきそうだし、

意地でも頼りたくない。

 

なんならこれ以上調子乗らんよう、

ちと、お灸を据えてやりますかね。

 

「ジオちゃんアンタさぁ……

沙花叉を甘く見てない?」

『??』

 

ジオちゃんが斜めに傾いた。

この様子から察するに、

沙花叉の予感通りだ。

どうやら、心を観測するのは

得意じゃないらしい。

 

しかし、ギャンブラーの

〝熱〟を知って欲しい。

その熱を冷ます行為が……

どれほど下世話な事なのか。

 

『誰かの敷いたレールの先にある

宝を拾ったらこれっぽっちも

面白くないし、

皆が〝それ〟を求めて

此処に来てると思ってんの?」

 

『――ッ!?』

 

「――『ギャンブラー』なめんなよ。

沙花叉や彼らが望んでるのは、

用意された宝なんかじゃあない。

彼らが一度大勝ちしても

賭博を繰り返すのには、

それ相応の閾値があるからに

決まってるっしょ。」

 

『…………。』

 

「ピリつく駆け引きの果てに、

己の成した勝利の美酒を呑む。

そしてこの時に溢れ出す

達成感、幸福感、脳汁。

彼らを突き動かす原動力は……

論理や科学では語れない、

そういう本能なんすよ。」

 

『…………』

 

「それを真っ向から否定して

嘲笑う無知の方が、

――最っ高にダサくないっすか?」

 

『くっ……!

まさかこの私が、アナタに

ギャンブラーとしての矜持を説かれ、

言い負かされるとは……

良いでしょう。アナタの

好きなように賭けてみて下さい。』

 

ようやく分かってくれたか。

やっぱ言ってみるモンだなぁ。

 

日々こんこよとレスバしてた 

経験がこうも活きるなんて、

予想外だった。

 

んじゃ、そろそろ空気を変えて。

仕切り直しも兼ねた

お遊びをやっちゃいますか。

 

「またまた悪いけどバニーちゃん、

この1.8万G分の専用チップを

ジャグラーメダルに換えてっちょ。」

「はい。かしこまりました。」

 

専用チップをジャグラーメダルに換え、

スロットコーナーへ移動する。

 

(……ジャグラーは3台か。)

 

パチンコが数十台あったのに対し、

この差は何処か不自然に感じる。

作り込みや仕組みの都合上、

明らかにジャグラーの方が

コスパがいい筈だ。

 

不人気だから台数を削ったのか。

 

はたまた、仕入れたばかりの

遊技機だから

様子見といった感じなのか。

 

どちらにせよ。廻せば分かる。

 

念には念をだ。

試すのは3台全て……

6000G分に分割して打とう。

 

右手前の台から、

左に乗り換える感じで行こう。

 

「沙花叉クロヱ、行っきまーす!!」

 

ギュルルルルッ……!

タッ、タッ……タッ。

 

 

 

 

――『リール制御』

 

スロットのリールの回転は、

プログラミングによって

個々に設定されたモノであり。

 

成立役(フラグ)に応じて

その動きも変わる。

 

何回転と廻し、ひとたび

台の抽選仕様を知ってしまえば……

これらリールの動き等を利用し、

顧客はゲーム消化と並行して

意図的な制御(役作り)が

〝可能〟である。

 

スロットのリールは

最速約0.75秒で一巡し、

プレイヤーが停止ボタンを押してから

約0.19秒以内に静止する。

 

この0.19秒以内のズレによって生じる

静止判定……4コマ以下の『滑り』も

見切り、プレイヤーは台を制す。

 

順押し、ハサミ打ち。

目押しやビタ押しといった

ハードルは要求されるものの、

会得してしまえば無問題(モーマンタイ)。

 

それは、沙花叉クロヱも例外ではない。

 

彼女の身体は特殊な構造をしており、

常人ではあり得ない視力を有している。

視認し知覚できる

秒間フレーム数は――〝54〟。

 

そんな彼女からすれば、

たった10ゲームの消化だけで

リール制御を成す事が可能である。

 

 

 

時が経つこと、数十分後。

 

ボフッ。

 

「ふぅっ、いっちょ上がりぃ♪」

 

沙花叉クロヱは

賭博の元手金を大きく膨らませ、

休憩用ベンチに腰を掛けた。

 

『――信じられません。 

まさかアナタが、

全ての台でジャックポットを

キメてしまうなんて。』

 

「どうよ!

これが沙花叉の腕前よっ!

……って、

自賛したいのも山々なんだけどさ。

今回のはちょっと違うかなぁ。」

 

『違う……と言いますと?』

 

そう。今回のはどれも違った。

滑りも、ウェイトも。

 

本来スロットは義務的な都合上、

4.1秒のウェイトが

設けられてるのに対し、

明らかに体感0.7秒くらい

ウェイトの有効時間が速かった。

 

そして何より……

滑りが『5』を当たり前のように

越しているリールが、

全台に見受けられた。

 

元々そういう仕様で、

この世界のデフォルトだろうとも

考察したが、どうにも違う。

 

右、中央、左。設置数は計3台。

その中でも右、中央の台は

右端のリールだけが『6』を滑った。

 

左の台は、左端のリールだけが

『5』を滑った。

 

要するに、今までの推測を覆す

最悪の結果を――当店は背負っていた。

確かに辻褄は合うが……

あまりにも酷過ぎる。

 

「まぁ。端的に言うと、

当店は〝何処か〟から『不良品』の

ジャグラーを3台買わされたんす。」

 

こんなゲーム性の破綻した台に

ギャンブラーが食いつくわけがない。

 

パチンコ台の客足が

賑わってるのにも関わらず、

ジャグラー周辺が閑散としてるのも

当然っちゃ当然の話だ。

 

『そんなの、

あまりにも酷過ぎます……。』

「だったら、ギャフンと言わせる

他ないっしょ。

これを買わした輩にさ。」

 

『どうやって……』

 

パカラッ……パカラッパカラッ。

 

「「「ぉぉおおお!!」」」

 

「ん?」

『どうしたんですか沙花叉さん。

って待ってください!

このフロアで走るのは危険です!』

 

――タッ。

 

地を蹴る蹄の音、野次馬の歓声。

まさかと思い駆け寄ってみれば……

 

「やっぱりやってる……『競馬』だ。」

 

「おーおー、ビデオ越しだけど

ネーチャンもチップ賭けんのかい?

だったら、オジサンがお勧めの騎手を

紹介してやろっか?」

「んや、別にいーっす。」

 

(おっと。

これは思いがけない収穫だなぁ。)

 

時代背景的に、

ビデオ機能が普及してないと

考えてたが……ただの勘違いだった。

 

いや、嬉しい誤算と言うべきか。

 

そうだ。そもそも転生者は

ウチらかな建だけじゃなかった。

他の転生者の誰かしらが、

現代のテクノロジーを普及させた

可能性だって大いにある。

 

もしもの話。

そのきっかけとなった現代人と

手を組めれば、

この世界に〝アレ〟を

持ち込む事だって夢物語じゃない。

 

「ねぇジオちゃん。

ウチらがどうやって

ギャフンと言わせるか気になる?

これさぁ……実は沙花叉も、

今さっき閃いたんだよねー。」

『この数秒で?』

 

「うん。それはぁ――」

 

一通り、ジオちゃんに説明した。

 

『成る程……

馬鹿げた話ではありますが。

充分実現可能な計画だと、

私も思います。』

 

「そんじゃ、全員集めて来てっちょ。」

『了解です。』

 

なんか急に従順になった

ジオちゃんが、

素直に全員を招集してくれた。

 

手元にチップが数枚しか

残ってないかなた先輩。

 

チップでパツパツになった

巾着袋2つを

両手持ちするAZKi先輩。

 

総合すればプラス寄りの収支なので、

かなた先輩の

やらかしには目を瞑ろう。

 

「おうおう沙花叉。

調査は済んだみたいだな。

で、一体どう攻めるつもりだ。」

 

ナチュラルにAZKi先輩の

巾着袋を一つ強奪し、

ヤベェ天使が問いかけてきた。

 

「スタッフルームに凸って、

経営陣の偉い人に話を持ちかけるっす。

勿論、話の切り口となるネタは

こっちで用意しといたんで

先輩方のフォローは要りません。」

 

「ふーん。やるじゃん沙花叉。」

「分かったわ……!」

 

 

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