有言実行。
早速スタッフルームに凸る為、
1番近くに居た
バニーちゃんに声を掛けてみた。
「ねぇそこのバニーちゃん。
ここの経営者と世間話したいからさ、
スタッフルームの場所とか
教えてくんない?」
「そんなストレートに
訊いていいのか……」
かなた先輩が心配そうに呟くが、
案外すんなりと事は進んだ。
「かしこまりした。
スタッフルームは当ロビーの
お手洗い付近にあります。
天井の案内に従えば
迷わず辿り着くので、
是非ご活用くださいませ。」
「おけおけー。
あんがとねバニーちゃん。」
「はい。また何か御用が
御座いましたら、
各所に設置されたベルで
お呼びください。」
やべ。
初見すぎて直呼びする飲食店の
ノリで呼んじゃってた。
笑顔で立ち去ってたけど、
内心使えよって思ってんだろうなぁ。
「おし。さっさと行くぞ沙花叉。」
「だね。」
にしても凄いな。
シャンデリアばっか目立ってたけど、
よくよく天井を見りゃ
デパートみたく丁寧に案内板が
備え付けられてるじゃんか……。
それなりに広い施設だし、
こういうちょっとした便利な気遣いが
行き届いてるのは正直ありがたい。
だからといって。
ここの太客になるつもりは
一切ないけどね。
(えーと。スタッフルームの扉は
案内板通りだと……此処かな。)
コンコンっ。
「おー、今出る今出る。
ちょっと待っとけよバイト共ー。」
扉越しに、
気怠げそうな男性の声が返ってきた。
そして。
ガサゴソといった周辺整理の音が
落ち着いた辺りで、ようやく
ターゲットがこちらに顔を出した。
がちゃり……。
「ん? お前ら誰だ。
新人のバニー応募か?
おいおい、募集はギルドを通せと
聞いてないのか。
にしても……うーん。
ガキンチョ小僧1人除けば、
中々上玉だなぁ。」
「おい。誰がガキンチョ小僧だ。
どこをどう見ても
美少女エンジェルだろうが。」
かなた先輩の言葉をスルーしながら、
ウチらを査定するように
マジマジと観察し……
彼は1人頷いた。
「っぱお前ら。バニー適正高いな。
しょうがねぇ……
俺が直面接してやっからついてこい。」
「あのー、僕は……」
「天使のガキンチョも来い。
保護者のネーチャン達が
居ないと泣き喚きそうだしな。
もし面接通ったら、お前を
アイロン係のバイトとして
採用してやってもいい。」
「僕一応
彼女たちの社長なんですけどぉ!?」
「あー。そういうガキ男子特有の
イタイ妄想は別に要らんから、
はよ来い。」
「ぐぬぬぬ……! 何故だぁ!
僕は沙花叉よりも
身長1㎝高いのにッ!」
「落ち着いてかなた社長。
これも必要な事だから。」
怒りの沸点に達しそうな
かなた先輩を小声で
AZKi先輩が宥め、ウチらは
スタッフルームへと連れられた。
カジノハウスらしい豪華な応接間。
水晶造りの角テーブルに、
レザー製のブラックソファー。
謎の緊張感が漂いながらも。
上座側に彼が座り、
下座側にウチらが着席した。
緊迫とした空気の中ではあるが、
それでも、持ち掛ける話を
変えるつもりはない。
「――さて、単に採用言うても。
ウチんトコは、見た目だけで選ぶ
そこらのカジノとは一味も二味も
違うから、勘違いはすんなよ。」
その前置き重要だろうけど、
こちらとしては要らんのよなぁ。
ホント……勘違いさせてごめん。
「で、君らの志望動機は?
そこの黒コート着たネーチャンから
答えて貰おうか。」
「あ、そういうつもりで
ウチら来た訳じゃなっす。」
「………つまり、同業者の
回し者っつー事か。」
急に彼の声音が、重く鋭いモノになった。
「え?」
「訊いてんだよッ!
即答できねーっつ事はよォッ!
回し者って自分から言ってる
ようなモンだぜ……!!
俺ぁ何度も始末して来たんだ!
そーゆー輩はよォ……!!」
バッ!
素早く立ち上がり、
彼は拳銃を構え出す。
何が何だか分からず、言葉に詰まる。
「ま、待つっすよ!
ウチらは全然怪しい者じゃなくて……」
「そっ、そうだよ!
落ち着いて話そうよ!
僕らは君に敵意を持ってない……」
「あぁそうかよッ!
じゃあ一片死んでから話してみろ!」
バァンっ!
引かれるトリガー。刹那響く銃声。
その銃口は、かなた先輩を捉えていた。
「「――かなた先輩っ!!」」
シュゥゥゥウッ……。
「………………。」
「はっ……ははっ!
ざまぁねぇなぁ!
コレが見せしめってヤツだ!
命が惜しかったら、さっさと
尻尾巻いて逃げやがれってんだ……!」
(嘘だ……あのかなた先輩が。)
「ねぇ嘘だよね!?
起きてよかなた先輩……!」
「あぁ、起きてるぞ。」
あれ……?
「しぶてぇ小僧だなッ!
褒美だ! 鉛玉もっとぶち込んでやる!
味わえ味わ――ッ!?」
意気揚々としてた男は、
突如身に起きた異変に
気がつき絶句した。
そして、怒りと驚愕を露わにする。
「ドコだッ! 小僧テメェっ、
ドコに俺の銃を隠したっ!?」
「ねぇねぇ、お兄さんが
探してるモノってコレであってる?」
余裕綽々といった感じで、
かなた先輩はニンマリしながら
盗み取った拳銃を
右手でクルクル回していた。
「……ッ!?」
「大丈夫だよ。心配しなくても、
僕は借りたモノは返す。
――優しい天使だからさ。」
ぎゅっ★
グシャァという音を立てて、
拳銃が原型を留めない鉄塊と化した。
そのままニコニコとし、
彼女は握り潰した拳銃を
テーブルに差し出した。
「はいこれ。
お兄さんの拳銃と、不発した鉛玉一個。
あと他に忘れ物……あったりする?」
「うわぁぁああああっ!!」
いや分かる。
こんなイカれたパワー見せられたら
そりゃ逃げたくなるよね。
モロ全力疾走じゃん。
頑張って逃げろー。
ま、沙花叉も逃げ切れた
経験一度もないけどね。
――ゴツんっ!!
(あ、なんかゴツくて
ヤバそうな人とぶつかって
尻餅ついてる……。)
「何事だ。ケビン。
まさかだとは思うが、
ガキ1人と小娘2人に尻尾を巻いた
訳じゃなかろうな。」
この圧とオーラ……只者じゃない。
あのスーツの男は一体……?
「ち、違うんです!
あのガキンチョにゃあ
拳銃が全く通用しないんです!
それどころか、オーナーでも
手に負えるかどうか……」
「この私が、あんな
もやし小僧に敗北すると?」
「…………。」
――ドゴォぉオオオン!
たどたどしく震える
ケビン(?)に、
オーナーの鉄拳が炸裂した。
床に頭が埋まってるので、
相当なパワーだと思われる。
(って、冷静に分析してる
場合じゃないでしょうが!!)
偶然オーナーを釣れたのはいいが、
完全に敵意MAX。
これ。
どー切り抜ければいいんだ?
っ!
いつの間にかなた先輩の前に!?
マズいマズい。これじゃ……
「ふんっ……!」
バシッ。
だよね。かなた先輩だし、
ムキムキパンチの1発や2発、
片手で簡単に受け止めれるよね。
「小僧、見かけによらず
力はあるようだな。」
「何度僕に訂正させたら
気が済むんだよおみゃーらは。
僕はどう見ても美少女エンジェル
そのものだろーが。」
「ふむ、そうか。
所で一つ訊くが……
身体の具合はどうだ?」
「ふっ、何を藪から棒に。
僕はこの通り――ッ!?」
かなた先輩が違和感に気が付き、
冷や汗を垂らした。
「青褪めたな。
恐ろしいだろ? これが、
私の魔力【フリーズ・パンチ】だ。」
「………!!」
「どうしたんすかかなた先輩!?
さっさとそんな奴ボコして
商談に持ち込みましょうよ!!」
「違うんだ沙花叉。
〝動かない〟んだよ。
僕の首から下が……全く。」
「そんな……!」
「食らったが最後、
貴様は3分間身動きの取れない
お喋りサンドバッグになるのだ。」
「逃げろ沙花叉、あずちゃん!
この男はヤバいっ……!」
「――さらばだ天使の小娘。
精々、バニーの似合う女に
なってから出直せ。」
どぉぉおオン!
彼の蹴りを脇っ腹に受け、
壁を貫いて吹っ飛ぶかなた先輩。
もはやその姿も見えなくなり、
不安だけが頭に広がっていく。
「「かなた先輩っ!!」」
「おっと、
人の心配をしてる場合じゃないぞ。
私はな、邪魔者は女子供だろうと
容赦しない主義なんだ。
さて、次は誰が仕掛ける?」
首をゴキゴキしながら
歩み寄るオーナー。
(はぁ……なんでこう、
この世界の住民は悉く
戦闘民族メンタルなんだよ。)
仕方ないか。
武力行使は極力避けたかったけど、
なっちまったらやるしかない。
「ここは沙花叉が相手するから、
AZKi先輩は
かなた先輩を診てあげて!」
「で、でもクロヱちゃんが……」
「気にしないで!
沙花叉は絶対勝つから!!」
「分かったわ。
絶対無事に帰ってきてよ!
――ジオちゃん、
かなたちゃんをGUESSしてっ!」
『了解です。マスター。』
ダダダダッ……。
AZKi先輩が走り去って、
かなた先輩の追跡に動いた。
一対一で向き合うは、
沙花叉とオーナーのみ。
「ほう。その勇気だけは称賛しよう。
で、この私をどう倒すつもりだ。」
「倒す倒さないとか、
そうゆう物騒な話やめないっすか?
そもそもウチら、ステゴロしに
来た訳じゃないんすよ。」
「何を考えてるかはしらんが、
下らん会話で私の貴重な
仕事時間を割かないでくれ。
言いたい事があるなら拳で語れ。
そして、捩じ伏せてみろ。
口で話を交わすのはその後だ。」
やっぱ戦うのかぁ……。
まぁ、言質は取れたし良しとしますか。
「その言葉、嘘偽りないっすか?」
「ああ。男に二言はない。」
「良かった。これで思う存分、
沙花叉の『魔力』を振るえる。」
「魔力だと……?」
「うん。そうだよ。
アンタがOKって言ったんだから、
使っても怒んないでよ。
これ使うと大抵の人はキレるし、
あんま使わないように
してたんすよねぇ。」
「どんな手を使っても、
私は一向に構わん。
見せてみろ。貴様の魔力とやらを。」
*
時は遡り。
沙花叉クロヱがholoXに
入社してから数ヶ月の月日が経った……
ある日。
――holoXアジト。
バンっ!
勢いよく開けられたドアから
詰め寄って来たのは、
白衣を着た獣人の女性であった。
「ちょっとラプちゃん!
コレはどういう事なの!?」
激昂しテーブルを叩く
彼女……博衣こよりに対し
平静を崩さず、『総帥』は
缶コーラを一飲みした。
「〝コレ〟とは何だ?
吾輩が、何か不始末を起こした。
とでも云うつもりか。」
「なんかデジャヴ感じる
やり取りだけどもういいわ!
単刀直入に訊くよっ!」
「……?」
「以前さぁ、言ってたよね。
クロたんの『魔力』が面白いって。」
「ああ、そうだな。
実際体験してみてどうだった?」
「――最っ悪だよ!
何あの悪趣味な『魔力』。
あんな能力をクロたんに与えた
神様ぶん殴って
やりたいんだけどぉ!!」
「吾輩からしたら、
博士の魔力【ラボ・プール】も大概だぞ。
あれもなんでもありじゃないか。」
「それはそれ、これはこれだよ!
ぺこら先輩とか
らでんちゃんが大絶賛するから
どんなモンかと思いきや……
クロたんが一方的に
気持ちよくなるだけじゃんアレ!」
「当たれば
気持ちよくなるのは当然だろ。
54万賭けた馬券が当たったら、
博士も嬉しいだろ?」
「ナチュラルにこよの
トラウマ掘り返さないで!」
総帥がクススと笑い、
コーラを再び一飲みした。
「すまんすまん。悪意はない。
だが一つ言えんのは……
ノッてる時の沙花叉は、
幹部より強いぞ。」
「え? あんなふざけた能力が!?」
「ああ。一癖も二癖もあるが、
吾輩が見てきた能力でも
トップクラスに強い能力だ。
――まぁでも実際。
やたら眩しい上にうるさいし、
積極的に使って欲しくはないな。」
「それはこよも同意だわ。」