かな建クエストっ!   作:たかしクランベリー   

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19話・やってくれ。必要だろ。

 

かな建一行が電気屋マルコに

足を踏みれたと同時刻。

 

一方で、holoX面々に属す……

ある〝1人〟も

何らかの動きを見せていた――。

 

彼女は事前に

長期休暇の申し出を

holoXアジトのポストへ投函。

 

そののち、とある花園へと赴き。

視界に広がる百花繚乱、

花びら揺れる穏やかな風景の中……

 

空を仰ぎ、幼き日々の情景を――

朧気ながら羽搏く花弁に重ねて観ていた。

 

瞳を閉じると、

自身と彼が関わった過去が

花の香りを通じて鮮明に蘇った。

 

 

〜SIDE『博衣こより』〜

 

パンっ。

 

グローブが、野球ボールを捉えた。

 

「いいねいいね。

ナイスピッチングだよこよりちゃん。」

 

(あ、またキャッチされちゃった。

こよ……けっこう力こめたのに。)

 

でもほめられたの。嬉しい。

 

「ど、どうかなぁ!

これでこよ、強いやきゅー選手に

なれるかなぁ……!!

ねぇ? 

マルコお兄さんはどう思う?」

 

マルコお兄さんは、

いつものやさしい笑顔で

しっかり答えてくれた。

 

「なれるさ!

このままどんどん練習すれば、

グングン強くなって、いつか凄い

チームにスカウトされるかもね。」

 

「やったぁ♪ こよ! 

キャッチボール

いっぱい頑張るね……!」

 

………………。

 

……。

 

――そうだ。

 

僕はあの日のように

大きな夢を語って、

がむしゃらに追いかけて。

ひたすら目指して……。

 

そうやって他愛のない会話を

しながら、キャッチボールを

彼とするだけで充分幸せだった。

 

(彼とやった最後のキャッチボール、

あと3投くらいは続けたかったなぁ。)

 

「そんな事思っても、

今やこのボールを受け取ってくれる

あの人は……居ない。」

 

懐から出した野球ボールを見つめ、

呟きながら黄昏る。

 

マルコ・セグウェイ。

 

彼は、研究以外の娯楽を

知らなかった頃の

小さな僕に〝野球〟を教えてくれた

大事な人であり、

holoXの元先輩博士。

 

その存在は、彼自身の意向と

ラプちゃんの意思が合致し。

今やholoX内では

存在そのものが隠蔽されている。

 

それでも僕は、

彼の残した痕跡に

目を逸らすつもりはない。

 

天国に居るマルコ兄さんに、

いつか自分の打った

ホームランを見せつける為にも。

 

「しんみりしたかと思いきや、

良い目で前を見据えるじゃねェか。

……こより。」

 

「時を消し飛ばしてまで

ストーキングするなんて、

ラプちゃんも随分悪い子になったね。

まさかだけど、ギャラリーまで

総動員してないよね?」

 

背後に感じる気配に、嫌味を返す。

 

「案ずるな。吾輩だけだ。

ルイやいろはは連れて来てない。」

 

「じゃあ、また僕にタイマン説教でも

かましに来たの?」

 

「そう邪険になるな。

ここで口喧嘩なんかしたら、

『マルコ博士』が悲しむぞ。

彼奴の命日に水を刺すほど……

吾輩も愚かではない。」

 

「……そう。」

 

涼しげな風が吹き、花々が揺れた。

 

「――『ウォレスの花園』。

いつ見ても綺麗だよな。こより。」

「何なのさ、急に。」

 

「毎年目ェ瞑ってやってんだ。

今年くらい、ここで一緒に

供養してもいいだろ。」

 

「最初からそう言ってよ。

変にカッコつけて滑んないと

気が済まないのラプちゃんは?」

「違ェわ。無性に

総帥っぽいムーブしたかっただけ

だっつーの。」

 

やっぱ締まらないなぁ、この総帥。

 

コトンっ。

 

そんな失礼な事を考えてる間に、

こよより前に移動したラプちゃんは

袖から遺影を出し……

見やすい場所に置いた。

 

「毎年そっけないクセに、

ちゃんと持ってんだ。そーゆーの。」

「大事な仲間なんだ。

普段はみんなの見てないトコで

線香炊いてやってんだよ。」

 

変な所拘り持ってんなぁ、ラプちゃん。

うん……

らしいっちゃらしいんだけど。

 

「ありがとね。ラプちゃん。」

「れっ、礼を言われる筋合いはねェよ。

仲間として当たり前の

行為だろうが……!」

 

「そっか。それもそうだよね。」

 

「……こより、もし我々holoXが

世界征服を成した暁には――

お前の球団作りに

手を貸してやらん事も無い。

Adventや一条コーポレーションとの

繋がりを活かせば、

そう難しくはない筈だ。」

 

「……え?」

「ゲームクリアには

ご褒美が付きものだろ。

何か不満でもあるのか?」

 

「あ、ごめん。ちょっと急過ぎて

理解が追いつかなくて……。」

 

「ま、相当先の話だ。

ゆっくり考えてくれて構わん。

只の科学者として人生を終えるのは

つまらんだろうしな……

どうだ? 心の荷が

ちと軽くなったろ?」

 

いつも適当に遊んでると

思ってたけど、ラプちゃんも

ラプちゃんなりに

色々考えててくれたんだ。

 

過去の幸せな時間に

引き摺られてる僕と違って、

ちゃんとみんなの分まで前を見てる。

 

どこかいい加減な部分が目立つけれど、

こよを含め、

holoXに勤めるの誰しもが総帥として

信頼を置いてるのは……

 

その眩しい背中に

惹かれてるからなのかもしれない。

 

「ちょっと心が軽くなったよ。

よーし、明日からもこよ……

研究頑張るぞぉー! わおーん!」

 

自分の中に立ち込める暗雲を

吹き払うように

思いっきり叫び喝を入れる。

 

毎週火曜金曜の朝に

必ずやるノルマでもあるから、

手慣れたものだ。

 

「そりゃあ良かった。

調子も戻って来たようで何よりだ。

朝こよ一喝を生聴き出来た事だし、

――んじゃ、

そろそろ始めるとするか。」

 

「だね。」

 

チリチリチリ……

 

香烟が花吹雪に運ばれて快晴に溶ける。

 

役割を成した灰が時を刻む事に崩れ落ち、

囁く風音と黙祷だけが

その場に数分続いた。

 

 

時は戻り、現在。

 

沙花叉クロヱは電気屋マルコにて、

holoXバレするという

謎の危機に瀕していた――。

 

「こんな偶然は初めてだ。

もしや君……

〝holoX〟の社員なのかい?」

 

「―――ッ!!?」

 

(やばいやばいやばいヤバいって!?

めちょヤバじゃん!!)

 

粘着質な飼育員なら兎も角。

 

そんな雰囲気も一切無さそうな

転生者に何で沙花叉が

身バレしかけてんの!?

 

もう不慮の事故ってレベルじゃないよ!

 

「あっ……えーっと、

あてぃしはそのうっ、

怪しい者とかじゃなくて……

そ、そそ。コレは借物なんでぇ。

す↑い↓ちゃんがぁ、なんかぁ、

アレでぇっ……スゥーッ。」

 

「沙花叉おめぇもう

あくあ先輩とすいせい先輩に

謝って来いよッ!!

むしろやってくれ! 必要だろ!」

 

バッ!

 

「???」

 

絶賛錯乱中の沙花叉の両手を

突如握り、彼は笑顔になった。

 

ここに来て、更に意味不明度が増した。

 

「確信したよ。

やっぱり君はholoX社員なんだね!

あ、そうだ!

総帥とルイちゃんは元気かい?

面識があったら教えて欲しいんだが――」

 

「…………。」

 

ん?

この反応って、

もしかしなくても……味方か。

 

というか。

幹部職のルイ姉を

そういう風に呼ぶって事は、

少なくとも下っ端社員ではなさそう。

 

いやいや。

だとしても何か変だ。

 

これ程優れた技術者でありながら、

どうしてトップ層としての職位を

holoXに与えられていないんだ。

 

holoX開発部関連は

全てこんこよが管轄下に

置いてると言ってたし、

裏の開発グループがないと明言してた。

 

そのような嘘をインターンの沙花叉に

態々言う必要性だってないから、

間違いなく『真実』の筈。

 

(って、どうこう考えたって

進まんでしょ。)

 

この疑問を解く方法は、単純明快で一直線。

ズバり正面突破。

 

今目の前に居る生き証人に、

訊くほかあるまい。

 

となると、沙花叉自身が

holoXの社員として

話を進める方が良さそうだ。

 

「……その通りっす。

勿論、ラプラスとルイ姉は

元気やってますよ。」

 

「ははっ、そうかそうかぁ!

君が言うんなら間違いないね。」

 

「で、アンタは一体holoXの

何なんすか? 沙花叉、

アンタの事全く知らないっすよ。」

 

生まれつき他者の顔を

覚えるのは苦手だけれど、

一度聞いた名前や役職に関しては

物覚えがいいと自負している。

 

彼のような敏腕社員であれば、

社内で多少名前や優れた功績が

広がっていても可笑しくはない。

 

ルイ姉の雑務を手伝いながら

各holoX部署の名簿確認を

何度もした記憶だってある。

 

だが、該当する名前は無かった。

 

社員の〝殉職名簿リスト〟にも――。

 

「僕は『マルコ博士』。

元holoX開発部の最高責任者だ。

君が知らないのも無理はないよ。

亡くなる前に、holoXに勤めてた

痕跡を抹消するよう……

僕が総帥にお願いしたからね。」

 

――博士……お前なら分かるだろ?

マルコ博士の意思を

継いだお前なら……なぁ……?――

 

――ごめんねラプちゃん――

 

ふと思い出すのは、

ラプラスがこんこよにした

押し付けにも見えるやり取り。

 

あの時はラプラスの精神状態が

崩壊した故に言い出した

意味のない虚言だと割り切っていたが。

 

今になっては、

その意味が全く違ってくる。

 

沙花叉の推測が正しければ、

博士という役職そのもののバトンが

彼からこんこよに継がれた。

 

……いや、

そうじゃなきゃ彼の言動に

まるで説明がつかない。

 

だとしても。

ある一つの疑問が次に浮かんでしまう。

 

「どうして、自分の名前を

holoXから抹消したんすか?」

 

「深い理由はないさ。

紛いなりにもholoXは、

宇宙政府公認の反社会組織。

家庭を持ってる僕にとってそれは、

不都合の発生因子でもある。

――だから、妻や娘たちの将来を

狭めないよう父としてできる

最後の足掻きがコレって訳さ。」

 

「そんな事情が……」

 

パンっ!!

 

暗くなりそうな空気を断つように

手を叩き、マルコは立ち上がった。

 

「なぁーに揃いも揃って

辛気臭い顔してんのさ!

君たちは、明るいビジョンを

手にする為に此処に来たんだろう。

諸君がholoXの系譜だって言うのなら、

僕が協力の手を差し伸べない

理由もないよ。同じ仲間として、

是非手伝わせてくれ。」

 

う……ううん?

なんか分かんないけど

オッケーって事だよね。

 

「よくやったぞ沙花叉!

今日は30分だけパチンコ打っていいぞ!」

「やったねクロヱちゃん!」

 

『ただの豪運シャチで草』

 

「折角良い空気だったのに

コメ欄みたいなセリフ

言わないでくれるかなぁジオちゃん!」

 

「ははっ、ホント君らは愉快だね。

で、工数はどう組んでくつもりだい。

僕が主軸で開発コードを構築しても

いいけど……諸君がプログラミング作業に

加勢すれば、より早く試作機が

出来ると思うんだよね。」

 

「「「…………。」」」

 

超絶ヤバちゃんじゃん。

 

どないしよ。

そっち方面の事聞かれるなんて

予想だにしなかったんだけど。

 

「まさか君たち、

こんな話持ち込んで来てさ。

PC言語が出来ないなんて事……

ある筈がないよね。」

 

(すんません。勉強不足ですウチら。)

 

あ、かなた先輩が耳元に顔近付けて来た。

 

「おい沙花叉、表出ろ。」

「え、イキナリ何……

ってあだだだだだ!」

 

油断してた。

強いのは腕力だけじゃなかった。

 

例えるならそう――

今現在、足が万力に潰されてる気分だ。

 

「すみませんマルコさん!

僕、急に尿意が来ちゃって……!

少しだけ時間をくれませんか!」

 

「大丈夫なの、かなたん?」

「い、一応大丈夫。

あずちゃんはちょこっと

お留守番してくれればいいから。」

 

「え、何平然と沙花叉を

連れ添わせる気で居るんすか?

――ってあぎゃぁあああっ!」

 

「大丈夫クロヱちゃん!?」

 

さっきから人の足を

何だと思ってんだこの天使。

 

「気にしないであずちゃん。

僕が天使の魔法で沙花叉を治すし、

そのままお留守番してればいいよ♪」

 

そんな魔法、一度も聞いた覚えがないぞ。

 

「ほな行こか。沙花叉。」

「へーい。」

 

危うく骨折しかけた足を進め、

かなた先輩と人気のない場所へ移動した。

 

「……おい沙花叉。」

「何?」

「どぉーすんだよッこの状況ぉッ!

出来ないって

素直に言って頭下げるのかぁ!?」

 

あー。やっぱかなた先輩も

そこら辺危機感持ってたかー。

 

「ま、普通なら

そうするしかないけどさ。

ウチらには、秘密兵器があんじゃん?」

 

例の秘密兵器が仕舞われた

ポケットへ指を差した。

彼女も思い出したかのように

その端末を取り出し、凝視する。

 

「――『ホロメン呼び出しフォン』」

 

「正解っ♪」

 

「いやいや。Aちゃんやのどかちゃんは

ホロメン判定されるか微妙だし、

PC言語を網羅してそうな

ホロメンなんて早々居な――」

 

「本当にそうっすかね?

なんなら、ウチらかな建よりか……

かなた先輩の身近に

割と居たりすんじゃないの。」

 

「はっ、どーせ適当な事言って

なぁなぁにする気だな。

残念だが、僕はそんな幼稚な罠には

かからな……――ッ!!」

 

ワンテンポ遅れて気がついた

かなた先輩が、一筋の冷や汗を垂らした。

 

「ほーら、やっぱ心当たりあるじゃん。」

「沙花叉…… 一体どこまでが

おみゃーの〝想定内〟だ?」

 

「やだなぁ〜かなた先輩、

全部が全部じゃないっすよ。

所々綱渡りのアドリブで

粗だらけだったし……

活かせるモンは活かさなきゃ損っしょ。」

 

「よく言うよ。」

 

 

 

 

 

 

 





どうも、たかしクランベリーです。

ぺこら生誕祭2024、
さくらみこ生誕祭2024、
どちらも最高でした。

話は変わりますが、
こちホロ11話にて
名前だけ出たマルコ博士。
遂にその全貌を
明かせて自分はスッキリです。

こちホロで未回収&心残りだった
沙花叉の魔力と
マルコ博士関連は回収したので。
(沙花叉の魔力は本来、
暴走もなにゃんに使う予定だった。)

あとはかな建メンバーと
各ホロメンが紡ぐ
自由な物語に全力投球するのみです。

よろしくお願いします。
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