目が覚めたら、
ホントに異世界転生して
戦わなきゃいけなくなった。
カリオペ先輩の前でカッコつけてた
社長天使も今や、手のひらクルクルで
沙花叉たちに息を合わせてる。
「冗談はよしてくれ。
その異色の服装は
何処をどう見ても転生者だ。
さぁ、我が国のために戦ってくれ。」
いきなりこんな所に連れてこられて
戦ってくれって……
テンプレ通りなら、
数少ない何千ゴールドとかだけ
支給されて、旅路を
やりくりしなきゃいけない訳っしょ。
モノホンの勇者さん達って
よくそんな劣悪な環境で
世界救おうって思えんな。
マジで正気の沙汰じゃねェって。
こういう時は、適当に御託並べて
そそくさ逃げんのが正解ってモンよ。
「あ、あのー。」
「私には分かるぞ。
君が、転生者のリーダーだな。」
うわ、マジだりぃなこの王様。
どんだけ戦わせたいんだよ。
頼むから沙花叉に責任を
押し付けんといてくれ。
「え、何で沙花叉が
主人公みたいな扱いなの?
ダル……そこの社長にしてくんない?」
色々メンドー事押し付けられるのは
苦手なので、一先ず社長を
指差して注目させる。
掃除屋なんで、ヘイト管理は
そこそこ自信ある。
(さぁ……王よ。
我が社の逞しい社長を見よ……!)
「えっ、ボク!?」
「ダメだよ嬢ちゃん。
小柄な坊やに対して、
『勇者の格』は荷が重すぎる。
どうか、分かって頂けないだろうか。」
「「ブフォッ……!!」」
王様の唐突な言い草に、
思わず吹き出してしまった。
「ちょっと2人ともぉ!?
今吹き出したよねぇ!?」
「ご、ごめんって社長〜。
でっ、でもさ。
しょうがない事ってあるじゃん?」
チラッ……。
「ほら……ね?」
まぁ、髪型ショートヘアな上に
一人称ボクで。
顔立ちや声、体格も中性的だし、
初見だったらまず間違えるよね。
青くんほど
露骨なボーイッシュではないけど、
だからこそ〝どちらもあり得る〟
視点になっちまうんだよなぁ……。
「おい、今ボクの何処見て言ったァ!?
あとAZKiちゃんまで
吹いてたよねぇ!?」
「うっ、ごめんなさい……。」
「AZKiちゃんは許す。
沙花叉、お前は通さない。」
「なんでぇっ!?」
「……こほんっ!
諸君らよ、そういう諍いは
後にしてくれんか。」
あーあ。
王様にも呆れられちゃったよ。
てか、そんな大きく咳払いせんでも
分かりますって。
しゃあないか。
現状の雰囲気をグダグダ続けても
話が進まんし、
この場は沙花叉がリーダー(仮)として
うまーく収めていこう。
とりま、挙手しとくか。
「はい。王様の推察通り。
このあたし、『沙花叉クロヱ』が
3人組のリーダーっス。」
「ふぉっふぉっふぉっ!
だろうと思ったわい。
――『サカマタ・クロエ』、
実に異界人らしい名前だのう。
さぁ、勇者サカマタとその一行よ、
我が国……いや、人類の為に
その秘めた力を振るってくれ。」
《チャラララーン♪》
[勇者パーティ『かな建』は、
王様から30万Gをもらった!!]
おい、なんだこのレトロゲーム風な
SEと謎テロップは。
あ、消えた。
これは後で、カリオペ先輩から
色々と訊く必要がありそうだ。
しかし、〝30万G〟か……。
一人当たり10万。
ありがちなRPG勇者御一行よりか、
多少優遇された軍資金だなぁ。
と言っても。
人類救う大義名分を押し付けられる
補助金にしては、まだまだ安い方だ。
「ねぇねぇ王様?」
「何だ?」
「最高級の装備とかはくれないの?」
「すまんな諸君らよ。
此方もそのような軍事資金は
衛兵に回しているんだ。
どうか理解して欲しい。」
つまりあちら側としては、
この提供金が最大限の譲歩って訳か。
人類の安寧よりも自身の保身。
……ホントどこまでいっても
テンプレよな。こういう王様って。
魔王をいつまで経っても
倒せないのは、そういう『甘え』が
原因だって分かんないかなぁ。
まー、ウチらかな建的には
この世界の平和とか
別に最優先じゃないし、
そっちがその気なら……
ウチらだって
好き勝手やらせてもらう。
「あーはいはい了解っス。
アンタらの事情とかも
充分分かったんで、
城下街とか案内お願いしまーす。」
「本当にいいの、沙花叉?」
「気にすんなって社長。
やりようは幾らでもあっからさ。」
「……分かった。」
「ふぉっふぉっふぉっ!
話はついたようだな。
諸君らが話を
すんなり受け入れてくれのは
我々としても有難い限りだ。
『マルフォイ公爵』、
彼女らを街案内してやれ。」
「承知しました。」
王様に名指しされた男が、
ウチらの眼前に移動する。
これもまたよくいそうな、
金髪キザ風お兄さんだ。
「貴様らが、今期の〝転生者〟か。
首が飛びたくなければ、
くれぐれも祖国を
裏切る真似はするなよ。
……ついてこい。」
今期の転生者……?
まるで今迄も同じパターンが
あったかのような言い回し……。
いや、周期的に来てるのは確実か?
ゆーてそんなんは、
後から訊きゃいいか。
「おい勇者ァア!
ボケっとすんなッ!
公爵の後に続けェェェッ!!」
沙花叉らを取り囲んだ衛兵の
ベテランっぽい人が偉そうに怒鳴る。
最初の穏便な対応は
何処行ったのやら。
此方も今敵対する理由は無いし、
大人しく従う方が良さそうだ。
「ちーっす。」
「クロヱちゃん、肝座りすぎだよ……。」
「頼むから揉め事は
起こさないでくれよ、沙花叉……。」
(どんだけ信用されてないんだよ。
シャチだって傷つくときゃ
傷つくっての。)
適当に空返事を返し、
案内された馬車の
キャリッジに全員で乗り込む。
流石は王城製といった感じの造りで、
窮屈さや無駄が一切ない。
それでいて、気品を感じる。
……素人目にも分かる、
一級キャリッジだった。
そして。
沙花叉たちが並んで座った正面に
堂々と座したのは、
どこかイケすかない雰囲気を醸す
金髪お兄さんだ。
えーと。マルフォイ公爵だっけ?
変に刺激したら
チクチクねちっこい暴言連ねて
粘着してきそうだし、
会話運びは慎重にした方が良さそう……。
「貴様らも慣れない土地で
緊張してるだろうが、じきに慣れる。
私自身が言うのもなんだが……
綺麗で居心地の良い国だぞ。」
別に街PRなんか
求めとらんのよこっちは。
まー、彼なりの不器用な
気遣いだろうし。
悪い気はしないかな。
「私も、この国の建造物や
露店が気になるわ!」
「ねぇねぇアレある?
火を通した溶き卵でご飯包んで
トマトソースかけたやつ!
ボクあれ好物なんだ!」
あーダメだ。
かなた先輩もAZKi先輩も
完全に観光気分になってるよ。
これじゃ沙花叉だけが
ズレた子みたいじゃん。
「ああ。当国は観光地としても
それなりに評判が良い。
大船に乗った気で期待してくれ。
まぁ、此処は馬車だがな。
それとご飯を包んだ卵料理だったか?
『オムライス』ってのがあるが……」
「あんの!? うぉっしゃああっ!
たらふく食うぞぉ!!」
「うふふ、楽しみだわ。」
あれ……もしかしてこの兄さん。
実は良いやつか。
「そこの貴様も、何か質問があれば
気軽に尋ねてくれて構わないぞ。」
「あー、考えとくっス。」
「ふっ、貴様らのリーダーは
シャイな子だな。」
「でしょでしょー、
ボクんとこの沙花叉。
普段生意気なクセに……
こんな感じで稀に可愛い気があってさ。
そこも良いんだよねー。」
「でもこう見えて、
結構根は真面目な子よ。」
「……そうか。
フッ、良い仲間を持ったな。」
あ、前言撤回。
やっぱコイツうぜぇわ。
その分かった風な
ドヤ顔スマイルやめろ。
もうテンプレキザ男公爵だった方が
100倍マシだよ。
まじで何だよこのフランクお兄さん。
あと2人して
親御目線で沙花叉を語るな。
舐められたらどう責任取ってくれる。
『あのー公爵さーん、
いつ出発しますかー。』
「――おっと、馭者を待たせ過ぎたな。
貴様ら、準備はいいか。」
「ああ。ボクは構わない。
みんなは?」
このまま自分の弱みを
晒され続けるのは勘弁なので、
沙花叉もその場では仕方なく頷いた。
「なるほど……準備は万端か。
では、いざ進むとしよう。
馭者よ、出発してくれ!」
『承知しましたっ!』
ペシィンっ!
「「ヒヒィーンッ!!」」
そんなかんやで。
2頭の馬の嘶きを合図に、
ウチらかな建を乗せた
馬車は――進み始めたのであった。