かな建クエストっ!   作:たかしクランベリー   

20 / 21
20話・月の悲鳴が聞こえねぇか沙花叉さんよぉ!

 

PC言語、もといプログラミングの

壁にぶち当たったかな建一行。

 

本来であれば助力出来ることが

望ましいが……叶わないだろう。

見栄を張った足手纏いが

庇われる保証はない。

 

その先にあるのは〝絶望〟のみ――。

 

最も丸く収まるのは、

無力を告白し……

このまま研究者・マルコ1人に

基礎設計を押し付けるという

印象最悪の事態。

 

だが間一髪。

森・カリオペが気まぐれで手渡した

『ホロメン呼び出しフォン』が、

思わぬ救世主となった。

 

崖っぷちに追いやられた

2人の前に召喚されたのは、

お菓子の国を統べる国王の娘。

 

名は、『姫森・ルーナ』

 

月卿雲客、

オッドアイ煌めく伴奏の姫。

天使の誘いにて現れり―――。

 

 

 

ぽわわわぁ〜んっ!!

 

桃色の煙が

晴れると、ルーナ先輩が現れた。

 

「けほっ……けほっ。

何これぇ〜、煙いのらよぉ〜。」

 

「おはよ。ルーナ。」

 

「あ……あまねちゃ!

どこ行ってたのら!?

というか、ここはどこなのら!」

 

ケモナーエクスタシーを  

キメてた最中の

いろはちゃんは論外として。

 

……まぁ、いきなり

電気屋の片廊下に瞬間移動して、

消息不明のホロメン(同期)に

バッタリ会ったら

この反応も自然だよね。

 

「まぁまぁ、細かい話は後にして

僕の話を聞いてくれないか。」

「……分かった。」

 

うんうん。

あーだこーだ経緯を説明しても

余計な混乱を招くだけだし……

1時間という制約の中、

限られた時間の

大半をそれに割くのも勿体ない。

 

そこん所のディスアドは、

どうやら

かなた先輩も分かってるらしい。

 

「ルーナ、僕らは今。

君のプログラミング能力を

頼りに事業を進めていきたいんだ。

どうか、手を貸してくれ。」

 

「それは、『かな建』の為のらか?」

「その通りだよ。」

 

「そうやってルーナを利用して、

後でクロたんやアズたんと

一緒にわいわいパーティする

つもりなのら……。」

 

「な、なにを言ってんだよルーナ!

僕がそんな薄情に見えるか!?

僕ならいつも傍に居るじゃないか!」

 

マズイな……

非常に空気がマズくなってきた。

これでは協力どころじゃない。

 

ヒスらせるつもりは毛頭無かったが、

不慮の事故に遭ってしまっては

どうしようもない。

 

この状況下、

沙花叉が下手に首を突っ込んでは

火に油を注ぐようなもの。

 

ここは同期の絆と、

かなた先輩のスパダリパワーに

全BETする他ないだろう。

 

(頼んだぞ、かなた先輩……!)

 

「最近顔も見せないくせにッ!

しかも前々だって、

ルーナと顔合わせする度に

クロたんとアズたんの話を

嬉しそうにいっぱい話してた!

どうして!

どうしてルーナを置いて行くのら!」

 

悲鳴のように吐露した心の内。

菖蒲色と裏葉柳の双眸から

伝い流れる涙。

 

彼女の中で密かに拡大していった

不安や寂しさが爆発して、

酷く澱んだ軋轢を

生んでしまったのだろう。

 

もう……打つ手は…………。

 

――ぎゅっ。

 

「……!?」

 

怨嗟響めく月夜の姫に対し、

天使は優しく抱擁した。

その背中に溢れる慈愛はまさしく、

『天使』そのものだった。

 

パワーで何でも捩じ伏せる 

非情な怪力モンスターと

思ってたが……

意外な一面に、沙花叉の心も揺らいだ。

 

「悪かった。僕、勘違いしてたよ。

活動も長くて。色んなホロメンとも

仲良くなって……

もうそういう心配は必要ないって、

勝手に決めつけてた。」

 

「…………。」

 

「もちろん、僕にとってルーナは

大事な大事な友だちだよ。

出会った時からも、

そして――これからも。

僕だってルーナが居なきゃ、

今みたいに成長なんて

出来なかっただろうしさ。」

 

「本当……なのら?」

 

「あぁ、本当さ。

僕はルーナと過ごす時間も

とても楽しくて……大好きだ。

叶うなら、これからも2人で

色んな思い出を創っていきたい。」

 

「…………。」

 

「――約束するよ。

僕はルーナを

置いてけぼりになんて絶対にしない。

だから、一時でいい。

かな建に力を貸してくれ。」

 

「…………うん。」

「…………。」

 

「おい沙花叉、何ボケっとしてんだ?

一旦戻んぞ、マルコさんのトコに。」

 

「はぁっ!? 堕ちてねーし!!

勘違いすんなよ!!」

「なんの話だよ。ほら行くぞ。」

 

 

 

何とか2人の蟠りも解け。

緊急ゲストのルーナ先輩と

共に再び応接室へ入室。

 

先程より少し窮屈になった

ソファ席を前に、彼は一瞬動揺し

3呼吸くらいで平静を取り戻した。

 

「ははっ、面白いね。

お手洗いから一般人でも

誘ってきたのかい?」

 

「ルーナは一般人じゃないのら。」

 

心で通じあってるのか。

かなルーナの2人がアイコンタクトを

数秒交わしたのち、かたな先輩が

フォローのターンに回った。

 

「その通りです。

何を言おう彼女は……

僕たちかな建のSE部署のTOPです。」

 

「えっへん! そういうことのら!

姫森ルーナって言うのら!」

 

凄……明らかにアドリブな筈なのに、

ここまで自然にやってのけるとは。

同期の絆、恐るべし。

 

「随分と私服に寛容なんだね。

君たちの会社は。」

 

セーラー服コスした社長天使に、

怪しげな黒コート着てる自分。

旅人みたいな服着たAZKi先輩。

お姫様コスの新キャラ。

 

そりゃツッコミたくもなる。

どう見たってハロウィン帰りの

仮想集団にしか見えないもん。

 

「ふっ、言われてみればそうかもね。

じゃあ軽い紹介も済んだ事だし……

彼女に改めて本題を

振って貰っていいかな。」

 

ナイス軌道修正、かなた先輩。

 

「おっと僕とした事が……

すまない。脱線しちゃったね。

姫森さんには確率当選設定や

各フラグのプログラミング構築を

手伝って欲しいんだが、可能かい?」

 

「思ったより楽なお題のらね。

そんなのを組んで、

何を作る気なのら?」

 

「パチスロって言う機械だよ。

今本物をお出しする事は出来ないが、

僕も嗜む程度には触れている。

疑問点などがあれば、

もちろん必要に応じて多少の

説明やフォローも入れるつもりだ。

……どうだい?」

 

「それは心強いのらね。

よろしくのら♪」

「――あぁ、交渉成立だ。」

 

ルーナ先輩が快く手を差し出し、

彼も快諾の意を示して握手を交わした。

 

本当はこのシーンこそ社長である

かなた先輩がやるべきなのだろうが、

今更後手でやらせても

何か変わる訳ではないので

野暮な口出しはしないでおこう。

 

……といった感じで。

 

なんやかんやあって

その日の2連続商談は一先ず

幕を閉じた。

 

外へ出ると。

今日の就業という

プレッシャーから解き放たれ、

ぐっと疲れが遅れてやってくる。

 

(ようやくだ。

……ようやく思う存分ダラけれる。)

 

後は勇者荘に帰宅して、

AZKi先輩のご馳走食って

だらだら惰眠するだけだ。

 

「あ、沙花叉。おみゃーに

言い忘れてた事があったわ。」

 

おいおい。

この期に及んで残業の追加か?

冗談じゃないぞ。

 

「僕とルーナ、これから2人で

スイーツ巡りに行くからさ。

あずちゃんと晩飯の買い出し

行ってくんね?」

 

うん。ギリ許そう。

今日は沙花叉セレクトの

自由食材で夢のオールスター御膳を

夕食に並べられるとしたら、

全然悪くない。

 

栄養バランスが偏向しない限りは、

AZKi先輩ストッパーも

かからないだろう。

 

あと。報酬を先回しにする

かなた先輩の行動は

ケチのつけようがない最善手だし、

このまま各自

分担行動に移った方が良いのは明白。

 

(そんじゃ、流れに任せますかね。)

 

「オッケー、オッケー♪ 了解っす!」

「よーしっ、

AZKiも奮発しちゃおっかな!」

 

沙花叉の返事を聞くなり

早足でかなた先輩が歩み出し、

ルーナ先輩もそれに続いた。

 

人混みに紛れそうになると

すぐ振り返って、

一応といった感じで

解散の合図を告げてくれた。

 

「じゃーなーおみゃーら!」

「あまねちゃ……!

ルーナ、特段甘いやつがいいのら!」

「任せろって!」

 

2組に分かれて無事解散。

あの2人と同じ方向で進むのは

悪いだろうし、逆方向から進もう。

 

「そろそろウチらも行くっすか。

AZKi先輩。」

「そうね。クロヱちゃんは、

どっち側の八百屋さんに寄りたい?」

 

「んー、じゃ。あっちで。」

「オッケー♪」

 

魚屋や八百屋さんを探しに

歩き出してやや8分。

怪しい雰囲気を醸す

露店の占い屋に足を止められた。

 

「止まんなアンタ達ィ!!」

 

「「――!?」」

 

迫真の呼びかけに面食らい

声の主へ身体を向けると、

待ってましたと言わんばかりの

微笑を浮かべ……

古希の魔女が言葉を続けた。

 

「ふおっふぉっふぉっ、

アンタ達……いい目を持ってるねぇ。

このあたしゃの占いセンサーが

ビビッと奮い立ったさね!」

 

「で、態々

呼び止めて何のつもりっすか?

ウチら、暇人じゃないんすけど。」

 

「ちょっとクロヱちゃん……!」

 

「いいさねいいさね。

あたしゃ不器用な子の

相手は得意んじゃ。」

 

「…………。」

 

こういうキャッチを相手して

メリットが発生するなんてのは

ほぼほぼ無いし、

時間の損を被る定石パターン。

 

このまま無視して見なかった

事にしてもいいが、

AZKi先輩の精神衛生上

よろしくない選択肢になりそうだ。

 

(……なんてこった。)

 

AIにこの世の全てを

管理させたいくらい

非効率反対主義の自分でも、

身近な仲間の情には弱いらしい。

 

しゃーなし。

乗ってやりますかね。

 

「クロヱ……ちゃん?」

「――オモロそっすね。

その水晶でなんか占うんすか。

んじゃ、試しに仕事運でも

占ってくんない?」

 

「はっ、アンタみたいな生意気装った

ガキゃあ嫌いじゃないよ。

ほら、見てやっから

この紙に名を記しな。」

 

「という事で、

おなしゃすAZKi先輩。」

「自分で自分の名前書けないのか

アンタぁ!!」

 

「す、すいません。

この子、その……字が……。」

 

「そうかい、悪かったねぇ。

嬢ちゃんが代わりに

謝る必要はないさね。

ほいよ。スペシャル万年筆。」

 

どうしてだろう。

2人の優しさが逆に、鋭利な痛みとして

心にグサグサ刺さるぞ。

 

てか、スペシャル万年筆って何。

 

……あ、書き終わった。

 

「ほうほう〝沙花叉クロヱ〟いうんか。

こりゃ贅沢な名前を持ってるねぇ。

どれどれ……」

 

水晶に謎アクセを翳し、動かし。

独特な挙動で舞わせる事数分。

 

――結果が出たようだ。

占い師魔女は白紙に成果を綴った。

 

そもそも。

測量、風水に基づいた

吉凶観測機がナビる以上の

成果を出せるとは思ってないが……

さて、どうなる?

 

「アンタ、波瀾万丈だね。

ビジネスの荒波を見極め、

正しくサーフィン出来なきゃあ……

溺れて鮫の餌食さね。」

 

こちとら、鮫より

断然強いシャチなんですが。

海洋生態ヒエラルキーの頂点っすよ。

 

あーあ。こりゃ信用ならんね。

もう帰っていい?

 

普通にジオちゃんの観測の方が

優秀な気がするぞ。

 

「ほえー、そうなんすね。」

 

「アンタ……

『真月』の正体を知ってるかい?

真月は運を

左右させる〝血〟のようなモノじゃ。」

 

急に何言ってんだコイツ。

 

「そう。我々生物の身体を流れる

真っ赤な血と同じ……!

――て事は、あたしゃの

占いを信じ続けなければ

どうなるよッ!?」

 

知らん。

 

「えぇあぁっ、

月の悲鳴が聞こえねぇか

沙花叉さんよぉぉ……!!」

 

やっぱり、関わっちゃイケない

タイプのヤバい奴だった。

こういう輩には、

現実を見て貰うに限る。

 

「アンタには聞こえるんすか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。