かな建クエストっ!   作:たかしクランベリー   

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最終話・ぺこーら返済ありがとう

 

 

「えぇあぁっ、

月の悲鳴が聞こえねぇか

沙花叉さんよぉぉ……!!」

 

やっぱり、関わっちゃイケない

タイプのヤバい奴だった。

こういう輩には、

現実を見て貰うに限る。

 

「アンタには聞こえるんすか?」

「――当たり前さね!」

 

「へぇ〜そうなんだぁ〜。

じゃ、医者に行けば?」

 

「きぃぃいいいいいっ!!!」

 

「沙花叉の未来より、

6秒後の

自分の心配でもしたらどうっすか?

アンタの悲鳴なんて……ゾッとする。」

 

「…………。」

 

「「…………。」」

 

訪れる数秒の沈黙。

占い師は目元を片手で覆い震えると、

大笑いした。

 

「かーはっはっはあっ!!

〝合格〟だよアンタ達ィ!」

 

「……ご、合格?」

 

「そうさ。あたしゃねぇ……

すっとアンタ達が何を成し遂げるか

こっそり見守っていた。

何せ右も左も分からない未踏の地。

訳もわからず

路頭に迷う事だってあった筈じゃ。」

 

この唯ならぬオーラ……まさか。

 

「そんな中、沙花叉。

アンタはやるべき事を逸早く見据え

迷わず先輩2人を引っ張った。

浮かんだ作戦は、あまりにリスキーで

あったのにも関わらずだ。」

 

「――アンタは、一体……」

「……。」

 

占い師はニッと口角を右に上げると、

纏っていたクローブを薙ぎ飛ばした。

 

露わになるその正体。

スラリとした体躯と、桃色の髪に黒き王冠。

威厳ある佇まいの死神。

 

見紛う筈が無かった。

 

「カリオペ先輩が、どうしてここに。」

 

「決まってるでしょ。

私が会いに来て合格通知を

告げたって事は、そうゆう事よ。」

 

「いやいやいや、

まだ沙花叉は合格できるような

事全然……」

 

「AZKi先輩、貴女もいつまで

黙ってるつもり?」

「あ……あはは、ごめんね。

クロヱちゃん。」

 

AZKi先輩が、申し訳なさそうに

愛想笑いをして沙花叉に謝った。

おかげで、益々訳がわからなくなる。

 

「え、は……え?」

 

え、ちょっ、マジ。

何がどうなってんの。

 

「単刀直入に言うわ。

あなたの奮闘に感化された

者たちが、ダイヤを必死に掘りまくって

借金を完済したの。

だからあなた達かな建は、

1週間後私が元の世界に戻してあげる。」

 

いや。

嬉しいっちゃ嬉しいんだけども。

 

「奮闘……って、何の話っすか?」

 

「言ったでしょ。

ずっと見守ってたって。

でも見守ってたのは私だけじゃないわ。

holoXやかな建の連帯保証人である

兎田ぺこらも、観ていたの。」

 

「え、ちょっ。それって……」

 

「あの時の闘い。

身体の限界寸前までダメージを負った

あなたは、白旗を上げる選択肢も

取れたわよね。

けれど、ボロボロになりながらも

必死に未来へ齧り付いた。」

 

「…………。」

 

「自分の為じゃなく、誰かの為に

やれる限りを尽くす。

その姿勢……その勇姿に

彼女たちは動かされたのよ。」

 

あちゃー。

本当に見られてたみたいだ。

……しかも、

特に見られて欲しくない面子に。

 

「そっすか、なら

お言葉に甘えて貰いますよ。」 

「構わないわ。むしろ、

それくらい図々しい方が

あなたらしくて安心する。」

 

「沙花叉の事馬鹿にしてます?」

 

「いいえ。私なりのお褒めよ。

――もう話は充分そうね。

ではあと1週間、

あなた達のなすべき事を成しなさい。

あなた達の朗報、期待してるわ。」

 

ボウンッ!!

 

突然黒い煙幕が発生し、

霧が晴れると露店もカリオペ先輩の

姿も消えていた。

 

言うだけ言って、そそくさ撤退したか。

 

やはり、死神の名は伊達じゃない。

どこまでいっても掌で転がされるのが

生者の定めって訳ね。

 

さてと。

諸々の気になる事情を

かなた先輩やAZKi先輩から

直接訊いてみるのも

アリだが、今それを知るよりも

自ら積んだタスクの片付けが大事だ。

 

物理的な掃除は苦手でも、

そっち方面の掃除が上手けりゃ

充分掃除屋としての役割と使命を

果たせるだろう。

 

最も大事なのは、散りばめた

線路を組み立てて

クリアなレールを築く事。

荊のような改札口を抜けて、

終着駅への片道切符を掴み取る。

 

答え合わせなんてのは、

テストに正しく向き合った

学生のみが得られる

特権でありご褒美なんだ。

 

「あーあ。

俄然、やる気が出てきたっすね。

やれるだけやってみますか。

この1週間。」

 

「クロヱちゃん……

何も訊かなくていいの?」

 

「いいんすよ。そんなの。

知るのはいつでも出来る。

でも、今の仕事は今しかできない。

このタイミングでしか、

熱中できないから。」

 

「…………。」

 

「まぁ、滅多に

経験できない異世界トリップ?

思ったよか早く終わりそうで

正直沙花叉、寂しくもありますよ。」

「……うん。AZKiも同じ気持ちだよ。」

 

「でもね。半年後はきっと、

ああ良かったなって。

良い思い出だったなって。

軽く笑いながら、

みんなとわいわい話せる

一生の宝物になるんす。」

 

「そっか。クロヱちゃんは明るいね。

どっかの天使みたい。

羨ましいな……その明るさ。」

 

「なーに言ってるんすか。

AZKi先輩にはAZKi先輩の良さや

魅力があるし、絶対迷子にならない

その頭脳は、喉から手が出るほど

羨ましいモノっすよ。」

 

口に出さんけど。

ついでに言えば

ホロメン屈指の清楚属性とかも

めちょ欲しい。

 

「そ、そうかな?」

 

「そうそう。まぁー、

何が言いたいかって言うと。

全力で一生懸命に取り組む程、

思い出ってのは楽しくて

面白いモノになるって訳。

例えその結果がどうあってもね。」

 

勉強、スポーツ、歌、ゲームとか……

結果が出ればもっと嬉しいだろうけど、

満足できる何かを得られれば

それだけで充分幸せになれる。

 

みんなはそれを自己満足だの何だの

言うけど、それでいい。

それが達成感っていうものなんだ。

 

達成感を誰かと分かち合った時、

共有した時、

その幸せは横へ横へと広がって

明るい輪を形成する。

 

沙花叉が

その輪の礎になれるのなら、

とことんなってやるつもりだ。

 

「…………。」

 

「だからさ……

AZKi先輩も改めて、

全身全霊で沙花叉に

協力してくれると嬉しいな。」

 

小っ恥ずかしい気持ちを抑えながらも、

手を差し伸べた。

 

ぎゅっ。

 

握られた手は希望とやる気に

満ちていて、沙花叉も自然と

心の闘志が更に燃え上がった。

 

「うん! 一緒に頑張ろう!」

「おうよ!!」

 

 

 

 

――1週間後。

 

かな建一行は

合同プロジェクトを完遂した。

 

研究者マルコ、姫森ルーナ。

姫森ルーナの魔力によって生み出された

『ルーナイト』5体が

各タスクに等分割しプログラミングに着工。

 

映像アニメーションは

沙花叉クロヱの演出監修の下、

宝鐘マリンが担当。

効果音等は天音かなたが担当。

 

沙花叉クロヱとAZKiは

宣伝紙などの製作をし、

マルコが引き続き筐体を再設計。

 

紆余曲折はありつつも、

本気を出したかな建一行と

ホロメンの絆は凄まじく。

 

たった4日という時間で仕上がった

『パチスロ』はカジノハウスに並んだ。

 

事前に仕込んだ大宣伝は成功。

目新しさに惹きつけられた市民も数多く

そのギャンブルに触れた。

 

逸脱した完成度。

手に汗握る緊張感、

射幸性と共に煽られる駆け引きの愉悦。

 

絶賛の声は瞬く間に街中へ広がり、

ギャンブル界に吹いた

新しき風と変革は……

当国の重鎮の目にも留まった。

 

そして。

『継続転生者』として正式に

認められたかな建一行は現在――。

 

 

……………………。

 

 

………………。

 

……。

 

カツウウんっ!!

 

「「「「「かんぱぁぁあああいいっ!」」」」」

 

因縁を持つ、とある大所帯。

奏でられるは

勝利の美酒を揺らすグラスの反響。

 

彼女らは一条コーポレーションと

企業提携している

ビジネス宿泊ホテルを貸し切り、

最高峰のフルコースを満喫していた。

 

そんな贅沢な歓迎会に

招待されたのは、

holoXの重鎮5名。

天音かなた、AZKi。

かな建の連帯保証人、兎田ぺこら。

宝鐘マリン、姫森ルーナ、森・カリオペ。

……計ホロメン11名。

 

かな建一行が役割を果たし

現世へと帰還した

〝ご褒美〟として、

総帥、ラプラス・ダークネスが

一条莉ヶ華と話をつけていたのだ。

 

「ぷはぁ〜っ!

っぱ、リアルで呑む日本酒って

美味ちゃんじゃ〜ん♪

ねぇねぇ〜、

こんこよもそう思うっしょ〜?」

 

「ねぇクロたん!

こよの分も考えてくれるかなぁ!?」

 

「あはは〜めんごめんご〜♪

あとぺこーら先輩、

ダイヤ返済MVPあざまーーっす!!」

「ちょっ! うさ耳引っ張るなぺこーー!」

 

酔いが回りかけてる沙花叉の

視界の端で、

ラプラスは一条莉ヶ華に改めて

感謝を告げていた。

 

「莉ヶ華、吾輩の我儘に

付き合って貰ってすまないな。

改めて、感謝する。」

「いいっていいって!

holoXには何度も助けて貰ってるしさ……

これからも頼むよ!」

 

「……ああ。必要とあれば

〝黒い仕事〟を我々がいつも通り

請け負ってやるさ。

貴様らが今後、手を汚さんようにな。」

 

「おーいラプラスぅー!

莉ヶ華ちゃーん!!

そんな端で何ボソボソしてんのぉ〜?

早くこっちおいでよー!」

 

「ったく、インターンのクセに

相変わらず生意気だな。

……莉ヶ華、撮影役を頼めるか。」

「ふーん。なんだかんだいって

アンタもノリノリじゃん。」

 

「っせーよ! 集合写真に総帥が

居なきゃ締まらねーだろーが!」

 

「じゃ、莉ヶ華。そーゆー事にしとくね♪」

 

沙花叉クロヱを中心に、

左に天音かなた、姫森ルーナ、兎田ぺこら。

博衣こより、ラプラスダークネス。

 

右にAZKi、風真いろは、

鷹嶺ルイ、宝鐘マリン、森カリオペ。

……以上のゲスト全員が集合。

 

各々が画角に収まるよう、

賑やかに密着した。

 

「いいねいいねぇ♪

それじゃあっ、いっくよー!

3……2…………1……」

 

―――パシャッ!!

 

 

 

 





どうも、たかしクランベリーです。

改めて。お疲れ様でした。
これにて、『かな建クエスト』は
終了で御座います。

色々とありまして。
一旦本作は幕を閉じよう
という結論に至りました。

そして皆様、最後まで
当作品に付き合ってくださり
本当にありがとうございました。

おそらく次になにか書く時は、
とっても暇&
気分がめちゃくちゃ良い時です。
その時はまたよろしくお願いします。

お疲れ様でした。 
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