かな建クエストっ!   作:たかしクランベリー   

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4話・holoXフルフェイス-起動!

 

「ここが、今日から貴様らが

お世話になる――『勇者荘』だ。」

 

手続きが済んで早々

連れてかれたのは、

寂れた一軒家。

 

指を差して紹介する

マルフォイ公爵を前に、

ウチらは苦笑いを返す他なかった。

 

多少の贅沢を望むつもりは

ないが、いざ見せつけられた

オンボロ家屋には……

苦い気持ちを抱くしかない。

 

(え……マジ?

ウチらこんな貧相なトコに

一生住まないとダメなん?)

 

「……貴様らの言わんと

してる事は理解できる。

だが勘違いしないで頂きたい。

此処は飽く迄も

転生者に与えられた仮拠点だ。」

 

「そ、そうっスよね。

あー良かったぁ。」

 

「うむ。当国の生活に慣れるまでの

野営テントだと思って構わない。

潤沢に資金を蓄え、

他所で暮らす目処が立ったのなら……

いつ抜けたって良いんだ。」

 

「ちなみになんスけど、

ここの家賃とかはどーなんの?

電気ガスとか水道代とか……

諸々の諸費用はもしかして、

ウチらの自己負担?」

 

「おい沙花叉、

もっとマトモな訊き方があるだろ。」

 

こっちが率先して

話を展開してんのに、

何を偉ぶってんだこの天使は。

 

まーいいよ。

その分、後でこき使ってやるし。

 

「勿論無償だ。

転生者は国の未来を

よい方向へ変える〝可能性〟。

これは王朝側だけでなく

民の総意であり、

国税の福祉的支出。

貴様らは、その意思に

応えてくれればそれでいい。」

 

うわ。急に

プレッシャー畳み掛けて来たよ。

 

それにしても、

支出のハードルが

低すぎやしませんかね。

 

こんな扱いじゃ、

亡命祭り待った無し……って。

 

(――成る程ね。

〝見えて〟来たわ。

この国の現状……!!)

 

オモレぇじゃんか。

上手く行きゃあ、

ボロ儲け所の話じゃない。

 

そっちがその気なら……

こっちだって、

とことん利用してやんよ。

 

アンタらが胡座をかいてる

その座布団がひっくり返った時、

どんな泣きっ面を見せるか……

楽しみっスねぇ。

 

「流石っス

マルフォイ公爵ぅ!

ウチらかな建、

これから此処を足場として

キッチリ進歩して行きますよぉ!!」

 

「……うむ。

良い心がけだ。勇者サカマタ。

今後の活躍、期待してるぞ。」

 

やり尽くした顔で去っていく

彼を呼び止めた。

 

「あのー、帰る前で悪いんすけど。

手帳フレンドの登録して

いいっすか。」

「……いいぞ。困った事があったら

いつでも呼んでくれ。」

 

ギリギリのとこで

フレンド登録が間に合い。

彼は馬車を走らせ

持ち場へと返っていった。

 

寂しげな一軒家と、

ポツリと残されたかな建一同。

 

夕暮れの中、

乾いた風がウチらの髪を靡かせた。

 

「おい沙花叉ァア!!

コイツぁどういう事だぁ!

もっと他に

やり方無かったのかァア!」

 

「何々なにっ!?

急に八つ当たりして

どったのかなた先輩!?」

 

「どうもこうも無いだろぉ!?

かな建の『法人手続き』まで

急遽やらせた所為で

日も暮れてんじゃん!

オマケにこの家だよ!?」

 

「まー、いずれ必要な事だし。

会社の正式な設立は、

やれる時やっとくに

越した事ないじゃん。」

 

「だとしても、家の交渉とかは

もう少し何とかなっだろぉ!?」

 

「確かに、もうちっと

ガッツけば良くなる可能性も

あったかもしんないスね。

でもそれじゃあダメなんスよ。

AZKi先輩も分かるっしょ。」

 

沙花叉の発言一挙手一投足に

噛みついて来そうなので、

半ば強引に巻き込む。

 

こういう時こそ、

手を借りるのを惜しんではいけない。

物事を、円滑に進める為にも。

 

「えーと……相手方からの

印象が悪くなるって事かな?」

 

「正ッ解ッ! 

ベストアンサーっス!」

「……どういう事だよ。」

 

「この国をスタート地点にして

ウチらは事業を展開する。

社長なんだったら、

そこまでは分かるっスよね

かなた先輩。」

「ああ。」

 

(おし。何とか丸め込めたな。)

 

「そこで大事になるのが、

どんな僅かな事であれ

国に嫌悪感を抱かれない事。

当たり前の考えっスけど、

どうしても人っちゅうのは

無意識のうちに独り善がりな

選択をしちまいますからねぇ。」

 

「言われてみれば、

僕も落ち着きが足りなかったかも。

……ありがとう。」

 

「――って言うのは

沙花叉の建前ね。」

 

「建前かいっ!?

あー騙されたよ!

なんか物言いが

沙花叉っぽくなかったけどさ!」

 

「つーのも。この国、

引っかかる所が幾つかないっスか。」

「何を言ってるの、クロヱちゃん。」

 

「衛兵の態度が、

突然荒々しくなった事。

そして、ここ数年は

空き家だっただろう家屋。

転生者を歓迎してると言う割には、

あまりにも扱いが

可笑しくないっスか。」

 

「なんだ沙花叉……愚痴か?」

 

「違う違ーう。この2点の出来事で、

ある程度の推測が挙げられるんす。

その①、気に入らない転生者たちを

一方的に追放してる。

その②、転生者のスポーン頻度が疎ら。

ってな感じでね。」

 

「あー、確かに。」

「んで、その確証を得る為にも

そこの家を掃除がてら

漁る必要があるんスよ。

ウチらより前に来た誰かしらが、

思いがけない情報を残してたら……

それはかな建としての――

〝大儲け〟ってヤツじゃないっスか。」

 

「いいだろう。

その提案、乗った。

それじゃあ早速、3人で

最低限寝れるよう掃除だな。」

 

「あ、ちょっとタンマ。」

 

ガサゴソと懐を探り、

『ホロメン呼び出しフォン』を

取り出す。

 

「おい沙花叉ぁ!

ソレをいつ僕から盗んだ!?」

 

「ごめんごめーん。

沙花叉手癖悪くてさー。

何はともあれ、コレで4人力っす!」

 

「クロヱちゃん。一体それで、

誰を呼び出すつもりなの?」

 

「掃除の得意そうな

ホロメン呼ぶしかないっしょ。

幸い、適したホロメンに

何人か心当たりあるしね。」

 

ポチポチと例の端末を弄り、

呼び出し欄に目を通す。

 

(さぁて、誰にしよう。)

 

▶︎風真いろは

▶︎ときのそら

▶︎一伊那尓栖

 

そら先輩か、

一伊那尓栖の触手能力(手数)で

ババっと片付けるか。

 

んや。

 

やっぱ、フィジカルで

縦横無尽に清掃できそうな

いろはしか勝たんね。

 

シャトルランの実力も

ホロメンでピカイチだったし。

 

「いろはぁっ!

キミに決めたぁあっ……!!」

「ポ●モンみたいなノリで

ホロメンを呼び出すなよッ!」

 

ポチッ。ピカーン!

 

呼び出しフォンが眩い閃光を放つ。

演出なのかは分からないが、

白煙の中から……彼女は現れた。

 

瞼を閉じ、口では無く鼻で

周囲の空気を吸い上げ気を高めている。

 

その様子は見るからに、

お取り込み中だ。

 

「え、何あれ沙花叉。

極まった精神統一的なアレ……。」

 

「いやいや、そんな高尚な行い

じゃないっスよ。

いろはちゃんは定期的に、

自ら立ち上げた

『holoX獣人剣道場』なるモノで…………」

 

スゥーッ。

 

「感じる……感じるでござるよ。

濃厚なケモ耳成b

――ってあれぇっ!?

風真の可愛い門下生たちは何処へ!

カムバーック! ケモ耳パラダイス!」

 

「「………………。」」

 

目をキョロキョロするいろはと

先輩たちの目線が、不意に合った。

 

「……なんかごめんね。

いろはちゃん。

大丈夫、私、何も見てないよ。」

 

「AZKi先輩っ!

こ、これは違うんでござるよ!

大伍郎お爺ちゃんの

教えに則って、

風真は正しい剣技の指導を……

お願いだから引かないでぇ!!」

 

珍しくハイライトを失った目で

いろはを見るAZKi先輩。

 

続け様にかなた先輩が

近寄り、温かな眼差しで肩トンした。

 

トンっ。

 

「……かなた、先輩。」

 

「成る程ね。

瞑想中で無防備な

可愛い可愛いケモ耳門下生を、

思う存分堪能してたのか……。

大丈夫だよいろはちゃん。

僕らはそういうのを

非難したり言いふらしたりする

悪人じゃない。

けどさ、趣味は程々にね。」

 

「だから違うって!!」

 

「いろはちゃん……」

「なんでござるか、クロヱ殿。」

 

「靴下ちょうだい。」

「――お前だけ平常運転かよッ!!

そこはフォロー続ける

流れだったろ!?

風真の期待を返せよッ!」

 

「おい沙花叉、

茶番はもういいだろ。

いい加減説明に入ったらどうだ?」

 

「えー、オモロかったのにぃ。

ま、いいや。いろはちゃん。

ちょちょっと

掃除手伝ってくんね?」

 

「掃除? 今からどこを

掃除するんでござるか。」

「あそこ。」

 

百聞は一見にしかず。

ということで、指を差して

清掃対象を示した。

 

「え、アレを

今からやるんでござるか。

やったとしても、

日が暮れそうでござるよ。」

 

「――あっ!?」

 

日が暮れそうというワードで

何か思い出したのか。

AZKi先輩が声を上げた。

 

「どったのあずちゃん!」

 

「ここで寝泊まり……するんだよね。」

「そっすね。」

「晩ご飯や、日用品……

寝具はどうするの?」

 

「「――ぁぁあああっ!!」」

 

ワンテンポ遅れて、

そのヤバさに気がついた。

 

「今日のかな建、

騒がしいでござるな。」

 

「くっ、仕方ない。沙花叉ァア! 

僕と残って2人で掃除やんぞぉ!

あずちゃんといろはは

必要最低限の

品々を買い揃えてくれ!」

 

「はぁぁっ!? 

沙花叉もショッピング

同行したいんだけどぉ!」

「許さん!」

「ひでぇ!!」

 

ぎゅっ★

 

逃げようと身動きしたが、

時既に遅し。

片腕がかなた先輩に掴み握られ。

全身が金縛りのように

動けなくなっていた。

 

「さ、行こっか。

お宝探し&大掃除❤︎

沙花叉が望んだことだもんね。

僕、全力で協力するよ★」

 

「――いやぁぁあああっ!!」

 

断末魔を上げようとも、

救いは来ない。

 

悲痛の叫びに目を背け、

あずいろの2人は

ショッピングに歩み出す。

 

……がしかし。

この期に及んで沙花叉クロヱは、

楽に掃除を済ませることを

諦めてはいなかった。

 

電磁力を操る怪物……

『Scrap wing』との激闘を経て。

博衣こよりは、

新発明の〝着想〟を得ていた。

 

その新発明は、

holoX専用デバイスに

アップデートで加わった新機能。

であると同時に、当人曰くプレゼント。

 

通称[Device form −mode change−]

 

略称表記で表すならば、

 

――『D・F・M・C』

 

完成して間もない形態変化型の

最新特殊武装であるが、性能は絶大。

黒きヘルメットが頭部全体を覆い、

使用者の身体能力を

格段に向上させる――。

 

悪知恵を働かした

彼女がそれを私利私欲で使うのは、

時間の問題であった。

 

「急にニヤついてどうしたのさ

沙花叉。

まだ逃げられると思ってんのか?」

「いやいや、違うっスよ。

楽に掃除を済ます裏技が

あるんスよねぇ。」

 

「……裏技だと!?」

 

「まだ出来立てホヤホヤで

使い方もよく分からんけど、

役に立つのは確実なんで!」

 

「へー、見せてみなよ。

そのとっておきとやらを。」

 

「行きますよぉ!

――『D・F・M・C-《Full face》ッ!」

 

『モードチェンジシーケンス制御。

《Full face》起動――』

 

……ピピピピッ、シュゥウウッ。

 

「どうっスか。かなた先輩。」

 

「何だこれはッ……!!

holoXめ! イカしたテクノロジーを

独占しやがって!!」

 

 

 

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