かな建クエストっ!   作:たかしクランベリー   

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7話・幸せ❤︎塩シャチドリーム!

 

 

「さぁ、始めようか。

――『かな建緊急会議』を。」

 

仰々しくかなた先輩が告げたのは、

緊急会議の合図。

 

しかしその意図は、

沙花叉にも殆ど分からない。

 

(緊急と言う程……追い詰めらてるか?)

 

「……緊急?」

「会議?」

 

良かった。

AZKi先輩も

疑問符が浮かんでそうな

声音で便乗してるし、

よく分かってないご様子だ。

 

……ほんと、

沙花叉だけの小っ恥ずかしい

勘違いじゃなくて安心したわ。

 

「はーやれやれ

分かってないね2人とも。

まぁ? こうゆう時こそ

社長である僕の腕の見せ所って訳よ。」

 

「あ、図に乗るのは結構なんで

はよ言ってくんない。

それにさぁ、見せる胸ないじゃん。」

「胸の話してねーわ!!

韻踏んでる以外の共通点無いだろッ!」

 

「えーと、かなた社長?」

「……ごほんっ!」

 

わざとらしく咳払いし、

気を取り直したようだ。

 

「僕さ、明日から

どうこの世界と向き合うべきか

今の内にみんなで考えときたいんだよ。

今順序立ててロードマップ的なのを

念密に組んでおけば、スムーズに

魔王攻略が進むと思うんだ。」

 

AZki先輩が相槌を打った。

 

「確かにそうかも。

でも私、この世界の地理に関しては

まだ何もわからないし……

明日からは、そういった

情報収集に専念したいかな。

クロヱちゃんは、何か名案ある?」

 

うーむ。

素直な気持ちとしては

怠惰を1週間くらい貪りたいけど、

このブラック上司天使を前に

バカ正直な発言したら

どんな体罰を受けるか

分かったモンじゃない。

 

上手くかなた先輩を流しつつ、

丸く収める感じで

それっぽい提案を挙げてきたいな。

 

仕方ない。

やれるだけやってみっか。

 

「かなた先輩。

まずスケジューリング

どうのこうのよりさ、初歩的な方に

目を向けてみましょうよ。」

「……というと?」

 

「そっすねぇ。大きく言うなれば、

この世界での舵の切り方……

ウチらかな建の方針っす。

勇者パーティとしてコツコツと

ギルドの依頼を消化し、

その報酬で牛歩の如く立ち回るか。

かな建らしく、

企業的な展開をして

アメリカンドリームならぬ

異世界ドリームを果たすか。」

 

魅せて貰いますよ……

かなた先輩の意志。

ラプラスみたく、

杜撰な行き当たりばったりタイプか。

 

計画的に出来るタイプなのか。

 

「そりゃあ決まってるだろ沙花叉。

前者以外のやり方が考えられるか。」

 

(あちゃー。

ダメだったかぁ。)

 

ちと沙花叉自身、

かなた先輩を高く見積もり過ぎたな。

それとも、自分の才能を

過小評価してるのか……?

 

沙花叉的には、

このメンバーだったら

後者の方が遥かに

効率良い気がするんだよな。

 

「はえー、前者ですかぁ……

野性味溢れる見事な回答っすね。

バナナ印の座布団一枚あげよっか。」

「おいっ! バカにしてんのかァ!?

喧嘩なら受けてたつぞォ!」

 

立ちあがろうとする

かなた先輩の肩を掴んで、

AZKi先輩が宥めた。

 

「落ち着いて社長。

きっと、クロヱちゃんなりの

考え方があるんだよ。

反論するのは、

それを最後まで聞いてからにしよ?」

 

「……むむ。言われてみれば

あずちゃんの言う通りだな。

おい沙花叉、

おみゃーの意見を言ってみろ。」

 

「意見という意見でもないだけどさ、

沙花叉的には

どーも納得行かないんすよね。

要するに、毎日毎日勝敗の

分からない戦いに身を

投じるって訳っしょ。」

 

「うん。それは確かだね。

もしや沙花叉、戦うのが面倒だから

後者に回ろうとか言うつもりか。」

 

「違う違う。沙花叉は

そーゆう怠い怠くないの

ベクトルで話してる訳じゃない。

かなた先輩のフィジカルは

言わずもがなだし、

沙花叉自身もholoXの掃除屋として

現役で前線張ってるから、白兵戦で

基本的に遅れを取ることはない。

寧ろ、伸び代だってある。

問題は……」

 

ビキッ……ビキッビキッ。

 

卓上に天使の指がめり込み、

そこから亀裂が拡がる。

あと数gでも力加減が変われば、

机そのものが木っ端微塵に

弾け飛びそうだ。

 

「沙花叉、言葉を慎めよ。

言い方によっちゃあ……

僕も本気でキレざるを得ないよ。」

 

うわー。

いつにも増して殺意マシマシだなぁ。

 

っても、ここで引いちゃ

それでおしまいだし……

2人の為に、沙花叉も

引くわけにゃ行かネんですわ。

 

「……大丈夫、私もみんなと

一緒に戦うから。」

 

力んだ天使の手指から、力が抜ける。

 

「――あずちゃん。」

 

「その覚悟、痛い程分かるっす。

でもそれ以上に、沙花叉は

2人が傷つく姿を見たくない。

物理的にも……精神的にも。

だから手探りで、紛争の伴わない

やり方で歩んで行きたいんすよ。」

 

おそらくAZKi先輩なら、

ヒーラーとして一級の味方に

なるだろうとは思ってる。

 

その方面でのサポートであれば……

完成されたパーティらしく、

順風満帆に勇者一行ライフを

進められる。

 

しかしだ。

戦場はいつも

思い通りに進むモノじゃない。

 

不測の事態と常に隣り合わせ。

目紛しく刹那的に変わりゆく

戦況の中、たった2人で

AZKi先輩を護り切れる保証なんて

何処にもない。

 

それに、

前者のやり方は飽く迄も

勇者パーティの勝ち方であって。

 

『かな建』の〝勝ち方〟ではない。

 

そして何より……

 

「悪かったね沙花叉。

僕、てっきりいい加減な考えで

動いてると思ってたよ。

僕たちを想っての

意見だったんだね。」

 

「ちょっ、そんな急に

優しくしないでよ……

こそばゆいっての…………。」

 

「あらあら、やっぱり2人は

仲良しだねー。」

 

「「――違うしっ!!

……っ!?」」

 

「ほらね。」

「「…………。」」

 

図らずも息が合い、向き合う。

 

文句を言おうともしたが、

煽りの一つも浮かばず互いに沈黙。

そうして……何とも言えない

モヤモヤした雰囲気が漂った。

 

(くっ、こんなんで

取り乱してどうするよ沙花叉。

気持ちを整えろ。

まだ話は

片付いとらんでしょうが……!)

 

「AZki先輩。実はさっきの

意見と違う方面でも、

後者を望む理由があるんすよ。」

 

「……え?」

 

「あー大丈夫大丈夫。

そんな深い理由じゃないっす。

……ただ、王朝側のいいように

勇者するのが気に食わない。

この部分が、選択意思の半分を

占めてるって感じっすね。」

 

「うわ、急に沙花叉らしい

本音が出てきた。

そういや沙花叉って……

誰かの〝マリオネット〟に

なるような事、めっちゃ嫌そうだし。

腑に落ちるなぁ。」

 

「うん。私もクロヱちゃん

らしくていいと思う。」

 

「それじゃあ決定っすね。」

「「……決定?」」

 

(――そうだ。)

 

ラプラス・ダークネス。

世界征服がholoXの専売特許で

ない事……沙花叉が証明してやんよ。

 

闘わずとも、世界は変えられる。

 

いいや、変えるんだ。

魔王攻略の糸口は、

蹂躙と殺生だけが答えじゃない。

 

ウチらかな建のやり方で、成してみせる。

 

攻略も、返済の完遂も。

 

「決まってるっしょ!!

『かな建』を、この世界を牛耳る

一大企業にする……!」

 

「本気で言ってるのか。沙花叉。」

 

「本気も本気よぉ!

世界征服した暁には、

社長であるかなた先輩が

魔王にこう言ってやって下さい。」

「何だ?」

 

「――〝世界の半分をくれてやるから、

下らない争いは辞めて

新しい世界を共に生きましょう〟――。

ってね!!」

 

「こりゃまた大胆な夢を語るねぇ。

……だが、面白い。

その話、乗ったよ沙花叉。

やるからには、全力でやれよ。」

 

「え、程々じゃダメ?」

「ダメに決まってんだろッ!」

 

「ふふっ、楽しみね。」

「あずちゃん……。」

 

「さぁさぁ!

しみじみしてる場合じゃないっすよぉ!

ほら、沙花叉の手の甲に

みんなの手を重ねてっちょ……!」

 

2人の先輩が、

希望に満ちた表情で

沙花叉の手に各々の手を重ねてく。

 

(やっとだ。ここから始まるんだ。

ドン底から始まる、かな建再興。

――必ず成功させる……!)

 

「いきますよぉ〜。

えいっ、えいっ…………」

 

「「「――ぉぉおおおお!!」」」

 

 

 

 

覚悟を固め、かな建の面々は

就寝を迎える。

 

夢の世界では、

誰よりも平和かつ幸せな瞬間を

沙花叉クロヱは噛み締めていた。

 

――《SIDE『沙花叉クロヱ』》

 

存在しない珈琲喫茶『DEN・Relux』

 

アンティーク調に飾られた

落ち着いた雰囲気を醸す内装の店内。

 

子綺麗なテーブルに、

沙花叉クロヱと紫咲シオンは

2人きりで対面に座り。

 

クラシックな店内BGMを背景に、

午後のデザートタイムを満喫していた。

 

「ぷはぁっ! 

っぱここのオレンジジュースは

美味しいなぁ♪

ねぇねぇ、沙花叉は何飲むの?」

 

(うぉぉ! 

シオン先輩今日も可愛すぎぃ!

しかも2人きりでデート!?

もうコレが現実でよくね!?)

 

「うーん。今は考え中かな。」

 

「えー、折角なんだし沙花叉も

なんか飲みなよ。

ほら見て、この店本格派コーヒー

やってるらしいし!

試しに飲んでみてって!」

 

本当だ。

メニューにイチ押しコーヒーとか

大々的に記載されてる。

 

シオン先輩もこんだけ勧めてるし、

飲んでみるか。

カウンターで直注文しなきゃだけど、

美味いモノに手間は付き物だ。

……とりま、行ってこよ。

 

「うん。ひとまず頼んでみる。」

「分かった。

ちゃんと戻ってきてね沙花叉。」

「もぅ〜、沙花叉がシオン先輩を

置いて退店する訳ないって〜。

ホントすぐなんで! ね!」

 

「おう!」

 

シオン先輩も待ってる事だし、

ちゃっちゃっと注文して戻ろ。

さーてと。

 

「あのー、店員さん。

注文いいっすか?」

「はぁぁいっ! ご注文どうぞぉ!

――ってクロヱ先ぱぁいっ!?

こげんとこで何しとるばい!!」

 

(いやいや、疑問なのは

こっちも同じだっての。)

 

「え、らでんちゃんの方こそ……

なんでここでバイトしてんの。」

 

なんて事だ。

よりによって雰囲気台無しの

店員が現れたよ。

 

見るからに塩シャチの聖域を

破壊してきそうな子じゃん。

 

全部夢なのは分かりきってるけど、

振り返ったら

別の店員に代わってくんないかな。

 

「いやぁー、実は

わたくし儒烏風亭らでん。

昨日スロで6万ほどスっちまいまして。

ここのバイト代で

どーにかこーにか生活費を

賄わないといけないんで御座いますな。」

 

「ふーん。頑張ってね。」

「なぜに他人事ぉおっ!?

ノリ打ちの大勝ちで

らでんを救って下さいよぉ!」

 

「「…………。」」

 

「えーっと、注文入れていい?」

「はぁいっ! お伺いしまぁす!」

 

 

 

 

 

 

 

 

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