かな建クエストっ!   作:たかしクランベリー   

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9話・AZKiの魔力

 

 

朝食前。昨晩に続き

リビングにて

かな建朝ミーティングが火蓋を切った。

 

「――さて、決めようか。

今日具体的に、僕らが何をして

事業を進めていくか。」

 

「うーん。前回のMTGと

あまり意見が変わらないけど、

AZKiは街巡りとか

図書館で資料に目を通したり……

そういった情報収集を手始めに

行った方が良いかなって思ってる。」

 

※MTG-ミーティングの略称-

 

「……だそうだ。

沙花叉、おみゃーはなんかあるか。」

 

情報収集。

 

確かに、右も左も分からない

状態では……

最優先ですべき行動なのだろう。

 

しかしだ。

 

ここで真に注意すべきは

現在の所有残高。

 

勇者荘に眠る、

とても質屋にお出し出来ない

備品やインテリアを廃棄した一方。

 

その分の衣食住を補填する為、

AZKi先輩とかなた先輩が

自分の気絶中に買い足しを

してしまった。

 

おそらくは、それなりの

散財をしているに違いない。

 

HiGH&LOW

 

場合によっては、

情報収集を後回しに

しなくてはいけない。

 

(……訊きだして確認する他、

なさそうっすね。)

 

「意見より先、

個人的に確認したい事が

あるんだけど……いいっすか。」

「何だよ。」

 

「現状の所持金って

どうなってるっすか……。」

 

「あぁ……そう言う事。

ギルド手帳で確認できるように

しといたから、見てごらん。」

 

へー。

そんな便利機能もあったのか。

 

「――『heyケンティー』」

 

ピピピピ……

 

およそ手帳とは思えない

起動音を鳴らし、

ページが勝手に開いた。

 

『おはようございますマスター。

ケンティーに何か御用でしょうか。』

 

「法人・かな建の残高を

分かりやすく表示して。」

 

『了解しました。』

 

どういう仕組みかは謎であるが、

ページが一枚自動で進み

表示を見せてきた。

 

【法人・かな建-残高-】

 

▶︎天音かなた -[20,000G]-

▶︎AZKi -[35,000G]-

 

▶︎沙花叉クロヱ -[100,000G]-

 

バタンっ!!

 

勢いよくギルド手帳を閉じ、

両の手で額を覆う。

 

嫌な予感の的中。

ここまで来ると……呆れを

通り越して絶望だ。

 

(はー待て待て冗談じゃないぞ。

頼むよ先輩方……。)

 

同盟型の戦略ストラテジーゲーム

だったら、大戦犯クラスの

過ちだっての。

 

領地の自衛性を拡張するばかりに、

進軍する兵力に注ぐ

予算を削いでは本末転倒。

共に進軍を行う同盟プレイヤーの

勝機さえ大幅に減らす。

 

……概ね財政管理というのは、

ほんの一つの匙加減で

吉にも凶にも転ぶ。

 

故に。

自ら凶の石に爪先をぶつけ、

コケて這いつくばるような

醜い生活を歩む未来は避けたい。

 

今2人が始めようとしてるのは

財源の確保ではなく

領地の自衛性拡張に当たる。

 

(――ダメだ。)

 

今はそんなのに

スタートダッシュを割いて

運用予算のハードルやボーダーを

下げてる場合なんかじゃない。

 

早急に財源の確保へ動くべきだ。

 

(ストラテジーゲームで

沙花叉が何度も躓いた誤ちを、

ここで再び踏んでたまるか……!)

 

となると。一攫千金の

〝アレ〟に手を出すしかないか。

 

「おい、いつまで

頭抱えてるつもりだよ沙花叉。

沈黙って事は……無策。

あずちゃんの意見に

賛成って判断でいいか。」

 

「――行くか。」

 

「……行く?」

「何処へ?」

 

「決まってるっしょ。

行くんすよ。この国の『カジノ』に。」

 

「はっ! 

何を言い出すかと思いきや

朝っぱらからカジノ……?

おいおい、冗談だけは

風呂嫌いだけにしとけよ沙花叉。」

 

「――本気っすよ。」

「「!?」」

 

驚くのも無理はないか。

 

沙花叉は、勝算のない

博打に飛び込むギャンブラー。

飛んで火に入る夏の虫。

 

そう思われても仕方がない

言動を重ねてる自覚は充分にある。

 

ほら。想定通り早速

かなた先輩が訝しんだ顔つきで

こっちを見てるよ。

 

「本気だとして、

どうするつもりだよ。

僕は沙花叉やぺこら先輩のように

そういった博打に詳しくはない。

素人目で見ても、元手約15万Gで

得られる『勝ち』に絶対的保証は

ないんじゃないか。」

 

「そうだよクロヱちゃん。

わざわざスタートで

危ない綱渡りをする

必要なんか無いと思うよ。」

 

(うーん。違うんだよなぁ。)

 

「違う違ーう。沙花叉が

したいのは賭博じゃなくて……

カジノ経営陣と企業ロイヤリティの

提携を結ぶ事っす。」

 

「……正気か? その経営陣が

裏社会に密接に関わってる可能性

だって大いにあるんだぞ。

もしそれを引いた場合、僕らは

相当なリスクを孕むことになる。

それでもやろうって言うのか。」

 

確かにそういうのは

ど定番のお約束パターン。

 

だがそれも織り込み済みだ。

 

……いや。

先ずはそちら側の世界から

掌握しないと話にならない。

 

沙花叉は知っている。

 

白兵戦の実力だけじゃない。

holoXやAdventの

組織的な強さの半分は、

こういった〝繋がり〟によって

成立してるんだ。

 

「えぇ。それでもやんなきゃ

始まらないんすよ。

将来どの道、裏と関わる道は

避けて通れないっすから。」

 

「何の話だよ。」

「んや、

今分かんなくても別にいーっす。」

 

「具体的にどうするつもりなの

クロヱちゃん。」

 

棚から牡丹餅とはよく言ったモンだ。

 

マルフォイ公爵の気分次第では、

この作戦を現時点で組む事は

不可能だった。

 

「転生初日。当国の全体的な

街並みを、馬車で一望出来たのが

ウチらかな建にとって

アドバンテージになったんすよ。

当国は見ての通り、

現代との文明差異が

『利用可能』なレベルで開いている。

そしてその差異はおそらく……

『カジノ』も例外じゃない。」

 

「なるほどね。

沙花叉のやりたいこと、

何となく分かってきたよ。」

「本当に行くのかなた社長!?」

 

「あぁ、情報は

その都度蓄えていけばいい。

〝ジリ貧の消耗を続ける方が愚行〟

……そう言いたいんだろ? 

沙花叉。」

 

「あちゃー、変なトコ鋭いっすね

かなた先輩。途中まで

ちゃらんぽらんだったクセに。」

「一言余計だっての!!

おら行くぞぉ!!」

 

「朝食はどうするの

かなた社長!」

「――おっと、そうだった!

ごめんねあずちゃん。

僕アツくなり過ぎて忘れてた。」

 

そんなかんやで。

 

昨晩とはまた違った

朝の食卓を口にした。

 

えーっとなんだっけな。

エッグベネディクト……?

それと淹れたてのコーヒーか。

前回とは系統が真反対な気がするけど、

これもこれで悪くない。

 

きっとウチらの食事を

飽きさせない為の工夫なんだろう。

 

(……お。美味ちゃんじゃん。)

 

AZKi先輩の手料理、美味すぎる!

AZKi先輩の手料理、

なぜこんなにも美味いんだ!?

 

メシ! 最高に美味いぜ!

 

「「「――ご馳走様でした!」」」

 

一瞬自分のキャラが

崩壊するくらい

テンションがおかしくなったが、

これは早起きの弊害だろう。

 

なんとか気を取り直した

ウチらは、

スキンケアやデンタルケア

といった朝支度を済ませて

勇者荘から外へ出た。

 

うん。外へ出たのは良いんだ。

けどさ……

 

「なぁ沙花叉。

カジノカジノ言ってたけど、

肝心のソレは……

この国の何処にあるんだ?

僕やあずちゃんが

買い物行った時も、

それらしい施設は見当たらなかったぞ。」

 

しまった。

もっと街を観察しておくべきだった。

 

キャリッジから頭を出せない都合上、

細々とした施設を

観察出来なかったのは

仕方のない事だが……

路上観察に

注力した自分にも非はある。

 

「実は言い出しっぺの沙花叉も、

知らないんすよね……。」

 

「だと思ったよ。じゃあ、

あずちゃんに頼るしかないか。」

 

「いやいや、買い物に

お出かけしても

見つけられないような

場所にあるんすよね?

いくらGUESSの達人でも、

情報不足じゃ無理があるって……」

 

「あぁ。ここは日本でもなければ

僕らの知ってる現世でも無い。

未踏の地の特定施設を

見つけろだなんて、

一般人からしたら

無理難題な要望さ。

――だが、あずちゃんは違う。」

 

「……うっ。」

 

AZKi先輩が柄にもなく

苦い表情を浮かべた。

 

「ん、そういや沙花叉には

教えてなかったか。

あずちゃんの『魔力』。」

 

「えっ、何それ!?

めちょ気になる……!!」

 

「でっ、でもあれは

あまり使いたくないというか。」

「頼むよあずちゃん!

あの力が今どーしても必要なんだッ!」

 

「わ、分かったよかなたちゃん。

――『GE◉▶︎planet』。」

 

ヴゥン!

 

「――ッ!?」

 

謎の効果音と共に現れたのは、

白銀一色の〝天球儀〟。

 

目測での大きさは、

おおよそバレーボールサイズ。

質感はメタリック。

 

あまりにも奇妙な物体。

しかし、どこか清楚さを感じる。

 

『お呼びでしょうか、マスター。』

 

「喋ったぁぁっっ!?」

 

 

 

 

――AZKiの魔力【GE◉▶︎planet】。

(ジオ・プラネット/ジオP)

 

それは、式神を内包した特殊な魔力。 

(式神は自我を持つ。)

 

一定範囲を瞬時に観測し、

測量結果を術者に共有。

地形、風水、座標に基づいた

『吉』や『凶』を

ニーズに応じてアナウンスする。

 

この観測は、寸分違わず〝正確〟。

そしてその観測範囲は凡そ……

〝北海道の本土全域〟にまで及ぶ――。

 

しかし、AZKi本人は当魔力を

あまり使用する事はない。

 

GUESS愛好家である彼女にとって

魔力の使用は、

GUESSそのものの達成感を

大きく損なう……

『カンニング』だからだ。

 

 





どうも、たかしクランベリーです。
はい。魔力(固有異能力)設定は据え置きです。
よろしくお願いします。
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