「どうして?! 何でキースにもこれがあるの!?」
同じような文字が浮かび上がり、しかも数字まで。詩織は表示ウィンドウとキースの顔を交互に見ながら問いただす。
キースは袖を元に戻し、機械のスイッチを切った。そして、「もう少し声を落とせ」と詩織にゼスチャーをする。みると、二人の周りのテーブルの客たちが、再び詩織の声に驚いてこちらを見ていた。詩織は慌てて咳払いをして繕うと、少し声のトーンを落としてから、キースに再び問う。
「今の文字は一体なんなの? 私の時とは違ったみたいだけれど……」
「俺の文字は、AQUASTM。あんたのはFLAMELS。こっちの世界で言うところの、水と火って意味だ。FLAMELSだと、火よりも炎、って意味合いの方が強いかな」
「炎……」
「そ。まあ表示された言葉が違うのは、俺たちが『青の魔法使い』であるのと『赤の魔法使い』であるということの違いだな」
「それって、キースも魔法使いってこと? 泳げないのに? 田舎の村の狩人のくせに? ねえ、その赤とか青の魔法使いって結局なんなのよ」
「……あんた、さりげなく俺のこと馬鹿にしてないか?」
「そんなこと、今はどうでもいいじゃない。それよりも先に私の質問に答えて」
「そんなことってなんだよ」
そんな詩織に若干不満げのキースであったが、
「……俺も、『あの声』と、この機械を作ってくれたじいちゃんに簡単に聞いただけだから、全ての事情を把握しているわけじゃないんだ。でもとりあえず、俺が知っていることは全部話すよ。それに、今ので分かっただろう? やっぱりあんたは俺の仲間だ。俺たちは、出会うべくして出会った、ってことみたいだしな!」
キースはそう言って、嬉しそうに表情を緩める。
――運命の人とか好きな人に「二人は出会うべくして出会った!」「これは運命だ!」とか言われれば小躍りするほど嬉しいけれど、なんせ第一印象が変態青年。それが解消されても村人A、更に田舎者の狩人(泳げないのでカナヅチ)だと、言葉のありがたみが面白いぐらい「無い」。
でも、この話の続きは聞かないといけない。
「で? どういうことなの」
先ほど思ったことはそっと胸にしまいつつ、詩織はキースに続きを話すよう促す。
「さっき話した、俺が湖で溺れた時の事なんだけど」
「泳げないのに助かったってことね。それがどうしたの?」
「あれな……助かったからこうして話せるけど、本当はすげえ危険な状況だったんだよ」
キースは当時の事を思い出しているのか、ふっと遠い目をしていた。
――そう。彼は今でこそこうやって詩織に穏やかに話をしているわけだけれど、実はキース、この時かなり窮地に陥っていた。