素人童貞無職が転生したら   作:うがー

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1.三つ子の魂百まで

 前世で徳を積んだ記憶はなかったのだが、なぜか僕は輪廻転生をし、アニメの世界にいた。

 

 しかも、イケメンで能力もある素晴らしい体に生まれ変わることができた。

 

 ただ、馬鹿は死んでも治らないという言葉があるように、生まれ変わっても僕という人間は何も変わっていなかった。

 

 

1.

「あー、もうすぐ無印か」

 

 アースラの食堂で僕は呟いた。

 

 一緒に御飯を食べていたクロノとエイミイは手を止めてこちらを見てくる。

 

 クロノはまたこいつ変なことを言い出したといわんばかりに呆れた顔をしていた。

 

 エイミイはニコニコとこちらを見つめていた。肩口まで流れる髪の毛の先端は寝癖のように少し跳ねていて、それがまた彼女の無垢な明るさを表していた。つまりは、エイミイかわいいよエイミイということ。

 

「いや、月日が経つのは早いなあと思って」

 

 二人とも、ふうんと気の無い返事をして食事に戻った。

 

 今日の日替わりメニューは、ミッドチルダで定番の家庭料理である、鶏とじゃがいもにミートソースがかかったものだ。少しアレンジされており、ミートソースにスパイスが効いておいしい。

 

 アースラはリンディ艦長の尽力により、他の武装艦より衣食住のランクが非常に高い。

 

 さすがリンディ艦長である。僕は心の中でリンディ艦長に感謝して、リンディ艦長を今晩のおかずに使うことを決めた。未亡人の色気は年頃の男子には毒なのである。

 

 ちなみに僕のおかずは週7日のうち、リンディ艦長が5日、エイミイが2日である。たまに接する距離が近くなった時はエイミイの回数が増える。 

 

 ちょっとやらしい妄想をしてチンピクしそうになったので、先程考えていた内容に戻した。

 

 僕は武装隊なので、原作では無惨にプレシアとかゴーレムみたいなやつにやられる役割だ。

 適当に相手しつつクロノがプレシアまでいけるようにサポートしとけば何とかするでしょ(適当)

 

 基本的には転生してからは、流れ流されていつの間にかアースラに配属されてここまで来たので、原作がどうとかは特に思うことはない。

 下手なことをすると、奇跡の確率でうまくいっていた原作が崩壊して、鬱アニメになってしまうかもしれないので、無難に過ごすしかないと思っている。

 

 

2.

 半舷休息でエイミイと二人で話していると、そういう雰囲気になった。

 エイミイの友達に彼氏ができたという話をしていた流れからだった。

 

 エイミイが熱い目で僕を見ていた。

 

 告白を期待をしている。

 

「えっと」

 

 さっきまでは普通に話せていたのだけれど、僕は挙動不審になり、言葉が出なくなってしまった。バツが悪くなった僕はごまかすように話を逸らした。

 

「そ、そういえば、武装隊のカイルさんの家で子猫が生まれたらしいよ」

 

 どうでもいい話をしてしまった。

 

 エイミイは目に見えて落胆した。肩を落とし、普段は大きい鳶色の目を細め、ジトッとした視線をこちらに向けた。

 

「意気地なし……」

 

 エイミイが小さく呟いた。

 

 僕はエイミイの顔を見ようとしたけど、彼女はすぐに踵を返し、小走りで部屋から出ていったしまった。

 

 ……またやってしまった。 

 

 今まで何度かこういう場面があったのだけど、その都度お茶を濁してきた。

 

 僕には自信がなかった。

 

 前世では、恵まれない顔面と能力、それによって生まれた不遇や劣等感により培われた醜悪な内面も合わさり、誰にも愛されることはなかった。

 成人してからは、まともに職に就くこともできなかったせいで、家族からも疎まれていた。

 

 元素人童貞無職の僕は、転生して凄い力を持ち見た目はイケメンで、まるで陽キャのように振る舞っていたとしても、腐ったような本質は何も変わっていなかったのだ。

 

 人に向き合うことができず、誰かを愛する自信がなかったし、そんな自分が愛される自信がなかった。

 

 魔道士ランクはSなのに、僕の人間ランクはF欄のままだった。

 

 

3.

 クロノは少し申し訳なさそうに、でもしっかりと僕の目を見ながら口を開いた

 

「実はエイミイと、付き合うことになったんだ」

 

 僕はどんな顔をしていただろうか。なんとか平静を保てただろうと思う。

 声を絞り出してお祝いの声を言葉をかけることはできた。

 

「……それはおめでとう、かな。二人はお似合いだと思う」

 

 絞り出したその言葉は僕の本心ではあった。

 裏表のない明るい人気者のエイミイ、正義の味方になるという夢に向かって邁進するクロノ。誰がみてもお似合いだ。

 

 エイミイは間違いなく幸せになれるだろう。

 

 僕はクロノを弟のように思っている。そんな彼もエイミイのような素晴らしい女性と幸せになれるのだ。とても素晴らしいことだ。

 

 そう感じていたが、ひどく身体が重く感じた。

 その後は何を喋ったか覚えていないが、ひとつふたつ当たり障りのないことを話したと思う。

 

 クロノの視線を背中に感じながら、僕は用事ができた風を装ってその場を辞した。

 

 風俗やキャバクラ、ガールズバーでしか女性と関わったことがなかった僕は、女性について何もわかっていなかった。そのため、僕の中には、女性というものは一途に一人の男性を思い続ける、そのような幻想を作り上げていた。

 

 そして、僕の理想の女性ではありえないであろう、僕からクロノに乗り換えたエイミイのことが怖くなった。

 

 後から思うと、彼女の好意をいつまでもあるものと信じ、うじうじと長い間告白しなかった僕が完璧に悪かったのだ。

 男らしくなく性格の悪い、いつまでも煮えきらない僕みたいな人間よりも、近くにいるイケメンで性格も家柄もよく、僕が女性だったら抱いてほしいぐらい良い男のクロノの方を求めるのは、女性としては至極当然なのである。

 

 

 それから僕は、逃げるようにアースラから降りた。

 




素人童貞無職を否定する内容ではありません。
あくまで主人公の感想です。
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