1.
昨今ではインテリジェントデバイスが流行ってきてはいるが、僕に言わせれば、あれはよくない。
魔法を使い始めた子供に持たせるなら良いが、熟練した術者にとっては邪魔にしかならない。
魔法の発動を他人(しかも機械)に委ねるなんてゾッとする。
処理速度もストレージデバイスより劣っている。戦闘では0.1秒にも満たない、その一瞬が大事なのだ。
男は黙ってストレージデバイス。勿論アームドデバイスも可。
そんなこだわりの多い僕は、もちろんストレージデバイスを使用している。
二つ持っていて、一つ目は先日戦闘にも用いたストレージデバイス。見た目は管理局員が皆使っている杖型のデバイスだが、近接戦闘にも耐えられるように改造している。名前はまだない。というか、前世が日本人の僕からすると物に名前を付けるのが恥ずかしい。厨二病全開とかイキった名前をつけてしまうと、歳を取った時に頭を抱える羽目になるのだ。
二つ目はデバイスを調整するために使うものだ。こちらはデバイスマイスターとして仕事をするときに使うものだ。これも特に名前をつけてはない。工具箱の形で中には道具が入っており、調整から修理まで一台でこなす優れモノだ。
二台ともかなりカスタムしているので、見た目はともかく、中身は買った頃の面影はほとんどない。新しいパーツが出るとついつい買って交換したくなる。だってオタクなんだもん。
今は八神家が寝静まった丑三つ時。ヴォルケンズにバレないように隠密魔法をかけ、僕はデバイスを闇の書につなげていた。いつか青姦するために鍛えていたこの魔法が役に立った。芸は身を助くのだ。
……きこえますか……夜天の書よ……グラスです……今、あなたの心に直接 呼びかけています……。
…………うーん、返事がない。ただのデバイスのようだ。
最近は夜な夜な、闇の書もとい、夜天の書を何とか正常に戻そうと調べていたが、見れば見るほど大変な状態であることがわかった。古代ベルカ式、ミッド式、近代ベルカ式と闇鍋状態で改造されている。
ミッド式と近代ベルカ式に至ってはまだいいとしても、根幹部分に関わっている古代ベルカ式、こいつが一番質が悪い。
そもそも何が違うかというと、まずミッドチルダ式というものは、非常に術式が洗練されている。そのために現在の魔法界における主流となっている。無駄がなく明快で使いやすいのだ。
近代ベルカ式はミッドチルダ式によって古代ベルカ式をエミュレートしたものなので、厳密に言えばミッドチルダ式なのだ。近代ベルカ式はメジャーな古代ベルカの術式を使うことができる。
一方、古代ベルカ式は構成されている術式の細部を見ると、無駄が非常に多い。しかし、一見無意味と思われる部分が意味を成してきたり、摩訶不思議な効果を発揮したりと、ミッド式にはない特殊で複雑な効果を持つ術式が多い。
また、戦乱が多かったために術式を門外不出とした家がほとんどで、それにより失伝してしまった魔法も多数存在する。
僕が通っていた魔法学校のように、一部で研究は細々と続いているが、如何せん選択肢が無限にあるため、中々文献に載っている効果を持つ魔法を再現することが出来ていない。
近代ミッド式として再現することはできなくはないが、膨大な術式になるので、発動するための技量や魔力量が現実的ではなくなり、実用性がなくなってしまう。
「今日はこのくらいにしておいてやる……。首を洗って待っててやがれ」
夜天の書の中身をクチュクチュいじくり回していると、もう明け方になってしまった。
なんの成果も!! 得られませんでした!!
リインフォースという銀髪巨乳美人を失うことは人類の損失になるので、必ず助けないといけない。あなたと、合体したい……。
時間がきてしまったので戦略的撤退を決めて、朝食の準備にとりかかる僕なのであった。
2.
「兄ちゃーん、ヘルプやー!」
「ぐふっ」
朝食を片付けたあとに一眠りしていたところ、ベッドにはやてが飛び込んできた。
古い幼馴染系ヒロインみたいなことをしないで欲しい。あ、でも今は2005年だから旬かもなぁ。
「エアーマンが倒せへん!」
こりゃまた懐かしい。
興奮して身振り手振りで説明してくるはやてを落ち着かせて一緒にリビングへ向かうと、ヴィータがコントローラーを頭の上に掲げていた。それはいけない。
「このゲームぜってー壊れてる!」
「PS2のコントローラーは高いから、それはやめようよ」
コントローラー破壊というクソガキムーブをしようとしたヴィータを寸での所で止めることができた。
やっていたのはPS移植版のようだ。
レトロゲームあるあるだけど、シンプルながら難易度が高い。更にお助け機能なんて甘いものもなく、死んだらステージの最初からだ。何度も死ぬと『ティウンティウンティウン』という効果音に殺意を抱くようになる。
「エアーマンに行く前に、いかにHPを減らさないかがコツだね」
ステージが中々難しい。
「もしステージがうまくいかない場合は……」
チラシを持ってきて、裏にステージの初めの方の絵を簡単に書いてあげる。
「こんな風に絵を書いて一箇所ずつクリアして、タイムをかけるんだ」
昔は攻略本がなかったから、こうやって自分で絵をかいたもんじゃ(遠い目)
ダンジョン系はマッピングが楽しかったよね!
「エアーマンは小ジャンプをうまく利用して、隙を見て打てば簡単だよ」
リーフシールドなら4回で死ぬけどね。
「はぁ? そんなに偉そうに言うならやってみろよ!」
優しく説明してあげたつもりだけど、ティウンティウンティウンに脳みそをやられたヴィータが半ギレでコントローラーを押し付けてきた。
――数分後、画面上には爆発四散したエアーマンがいた。
「ノーダメかよ……」
「兄ちゃん凄いで!」
「まぁこんなものかな」
一秒を刻める僕からすると朝飯前だった。16フレームだから一秒を十六分割すればいいだけだよ(どや顔)
「こなくそっ!」
ヴィータは悔しいのか、ゲーム機の電源ボタンを押してリセットをかけた。
「こうなりゃ、やってやる……!!」
「わたしも手伝うで!」
素直に言われた通り、チラシを持ってきてマップの絵を描き始めた。その横顔は真剣そのものだ。
今日はちょっと子供っぽいヴィータだが、先日僕に助け舟を出してくれたように意外と思慮深い部分も持っている。たまに出てくる言葉にハッとさせられることも多い。子供と大人な部分が混ざりあう不思議な所がヴィータの魅力かもしれない。
ちなみに、永遠の合法ロリだが、僕は残念ながら子供には欲情しない。巨乳にあらずんば女にあらず(クソ野郎)
「掃除をはじめますので、片付けしてくださーい」
シャマルが掃除機を持ってきた。お昼からはやてと病院に行く予定なので、今の内に掃除を終わらせたいのだろう。僕もそろそろお昼ご飯の準備をしないといけない。
「はーい」「へーい」
二人とも返事だけはするが、全く片づける気配はない。子供あるある。
シャマルはその様子を見てため息をつくと、ゲームとは関係ない場所から掃除機をかけ始めた。
3.
今日ははやてが昼から出かけるので、臭いのしないものにしなければならない。少し悩んだ結果、サンドイッチに決めた。具材とパンをスライスするだけなので用意は楽で、ゲームをしているのをダラダラと眺めながら小一時間ほどで終わらせることができた。後は直前にパンをトーストするだけだ。
一応最悪の場合を考えて、ゲームをしながらでも食べられるものをチョイスした。気遣いのできる僕、かっこいい。
「よっしゃ、今度こそいける!」
悪戦苦闘して何度も、何度も、死んだヴィータであったが、ようやくほとんどHPを減らすことなくボス部屋までたどり着くことができた。
「もうここも掃除しちゃいますよー」
同時に、しびれを切らしたシャマルも、とうとうリビングを掃除しだした。ドジっ子なのに、うまい具合にゲームの邪魔にならないように避けて掃除している。奇跡だ。
「ここが正念場やで!」
エアーマンとの戦いが始まった。
「よっ、ほっ」
岩男は竜巻を巧みに避けていく。ヴィータの身体も上下に動くのが微笑ましい。
「やれっ! そこや!」
はやては興奮してパンチを繰り出している。
被弾はほとんどせず、順調に相手にバスターを当てていく。
「よしっ、よしっ!」
ヴィータは今度こそいけると確信したのだろう。岩男は淀みなく操作されていく。
竜巻ニモマケズ 風ニモマケズ
頑張れ岩男。ボンボンで連載されていた漫画は結構面白かったぞ。毎回ボロボロになっていたけど。
「「やったー!!」」
ヴィータとはやてが抱き合った。――とうとう、やったのだ。
終わってみれば、半分以上体力を残した状態で撃破することができていた。
「やったね、ヴィータ。はやても応援お疲れ様」
僕は二人をねぎらった。
岩男がポーズを決め、上空に舞い上がろうとしたその時――――画面が真っ暗になった。
「「あーーーーー!!!!」」
「あら?」
掃除中のシャマルがコンセントを引っ掛けていた。
「「シャマルぅ……」」
二人の恨めしい目が突き刺さる。
「ひうっ……、ご、ごめんなさい」
涙目になるシャマル。
いやいや、それは注意されてもゲームを続けている子供達が悪い(断言)心の中で呟くが声には出せない。
子供の頃、友達とミッキーのマジカルアドベンチャーで最終面に行ったとき、掃除中のおばあちゃんがコンセントを引っ掛けたのを思い出した。あのゲーム、セーブがないからマジで萎えたんだよなぁ。
結局その後、シャマルおばあちゃんは許され、五回にも及ぶ死闘の末にヴィータは再度エアーマンを倒すことができたのであった。
しかし予言しよう。エアーマンをようやく倒せた彼女たちだが、ウッドマンで更なる地獄を見ることになるだろう。