素人童貞無職が転生したら   作:うがー

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あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。


11.ちょっとした小話集1

1.しゃまるがんばる

 

1−1

 

 夕飯を皆で食べている時に、将来の夢の話になった。

 

「わたしはもう夢が叶ったから、今はちょお考え中やね」

 

 はやては家族を持つという夢が叶った。今は模索中だけど、優しい彼女は将来、人のために働くという夢を持つことになるのだろう。

 

「主はやての剣としていつまでもお側にいること、それが私の夢です」

 

 シグナムは彼女らしい夢を語った。

 

「あたしも、ずっとはやてと一緒に居られたらそれで十分だ」

 

 ヴィータも同様だ。

 

「……」

 

 ザフィーラも無言の肯定をする。男は背中で語る。

 

「僕は働かずに生きていくことかな」

 

「やっぱ最低だなお前」

 

 空気が読めない僕に、ヴィータから辛辣な言葉を浴びせられる。働いたら負けかなと思っている。僕の考え方は令和の考え方なのです。

 

 でも闇の書事件が終わったらまた働かないといけないので、考えるだけで辛い。

 

 残りはシャマルだけだ。皆の視線が集まる。

 

「わ、私も皆で一緒にいられたら、いいと、思ってます!」

 

 なぜかぼーっとしていたシャマルは、注目されて急いで答えた。

 

 何だか様子がおかしい。嘘はついていないけど、何か含むものがあるように見える。

 

「あやしーなー、シャマル何か隠してるやろ。ほれ、ほれ、ここに隠しとるんか!」

 

 エロオヤジみたいなことを言いながら、はやてがシャマルの乳を揉む。

 

「ひゃっ! はやてちゃん、ダメです!」

 

 胸が縦横無尽に変形していく。けしからん、非常にけしからん。はやてよ、替わってくれー。

 

 一通りシャマルを蹂躙して満足したはやてが再度問いかけた。

 

「で、シャマルの夢はなんなん?」

 

「……めさんです」

 

 もにょもにょと小さい声で顔を真っ赤にしながら答えたが、よく聞こえない。

 

「え?」

 

 僕が聞き返すと、シャマルは顔を真っ赤にして半ば叫ぶように答えた。

 

「お嫁さんです! うぅ〜」

 

 恥ずかしかったのか顔を両手で抑えてうつむいた。シャマルたんカワユス。

 

 シャマルの告白に誰一人笑うことなく、ほっこりした雰囲気になった食卓だった。

 

 

1−2

 

「お嫁さんになるなら、料理はできなアカン」

 

 はやての鶴の一声で急遽料理教室が開催されることになった。

 

 講師は、ヴォルケンリッター最強の料理人である僕と、女の子代表としてはやてだ。

 

「大和撫子の代表料理は肉じゃがかな。男は肉じゃがと白ご飯を食わしておけば大丈夫」

 

 一部の人達から怒られそうな僕の独断と偏見に満ちた意見により、練習する料理は肉じゃがとなった。

 

 肉じゃがは覚えておくと便利な料理だ。鶏肉を入れると鶏じゃがに、具材や調味料を変えるとシチューやカレーにも応用することができる。レパートリーが格段に増える。

 

「今回は味付け下手のシャマルのために秘策を用意しました」

 

 僕はキッチンスケールを取り出した。名付けて『料理は科学作戦』

 

 素人でよくやる失敗は、変にアレンジをしたり、経験がないのに目分量で料理をすることだ。

 

 今回はレシピを事細かに紙に書いてきた。調味料まで全てグラム単位で記載してある。

 

 グラムで管理することで味付けミスは起こらない。理科の実験のように手順書(レシピ)通りに作るだけでおいしいものができるのだ。

 

 

 

――ダイジェストでお送りします。

 

「じゃあ、まずは具材を切ろう」

 

「よいしょ」

 

 危なげなくこなすシャマル。

 

「前に手伝って貰っていただけあって、このあたりは大丈夫そうやね」

 

 

「油を熱して、お肉を炒めよう。」

 

「油はこのくらいかなー。あっ!」

 

 どばー。

 

「シャマル油入れすぎやー、それ揚げ焼きなるで」

 

 

「野菜を投下して炒め合わせて、砂糖とお水を入れてね」

 

「野菜を入れて……と、砂糖もグラム通りに」

 

「あれ? 何で塩がここにあるん?」

 

 

「後はしょうゆ、酒、みりん、だしを入れて、落し蓋をして煮込むだけだね」

 

「全部入れて……、よし、これで大丈夫よ!」

 

「????? ポン酢? きっと、しょうゆがゲシュタルト崩壊を起こしたんやね」

 

 

1−3

 

 というわけで完成しました。

 

 油を入れすぎたせいで少し肉と野菜がカリッとしてそうだけど、これは全然許容範囲だ。

 

 時折、はやての不穏な言葉が聞こえたような気がしたけど、気の所為だと思いたい(願望)

 

 見た目はいけそう……、見た目は。

 

「ちょっと私はお腹すいてないから、兄ちゃん食べてあげてなー」

 

「私もだ!」「あたしも!」

 

 昔のCMみたいに言うなよ。皆テレビの方に逃げてしまった。

 

「グラスくん、自信作よ!」

 

 えっへんと胸をはるシャマルは、期待のこもった目で見てくる。

 

「僕も男だ……」

 

 南無三!

 

 口に入れたと同時に強烈な塩気が襲ってくる。ポン酢のスーっとした香りにシャリシャリとした肉じゃがにあるまじき食感。

 

「これがベルカの味か……」

 

 戦場では塩は必須だと言う。日本には『敵に塩を送る』という諺まであるぐらいだ。古代ベルカの人々はこれを食べて戦を生き抜いていたのだろうか。

 

 頭が混乱してよくわからない事を考え出した僕に、シャマルは目を輝かせて感想を待っている。

 

「うーん、いいね。自分で食べてみようか」

 

 僕は笑顔で促した。

 

 シャマルはニコニコしながら、肉じゃが(ベルカ式)を口に入れると顔が固まり、そのままがっくりと肩を落とした。

 

 シャマルのうっかりがここまでだったとは……。僕は彼女を侮っていたようだ。

 

 機を見計らったかのように、裏切り者のはやてが横にきた。

 

「シャマルは料理のできる人と結婚するのがよさそうやねー」

 

「そんなぁ……」

 

 ぐにゃあという効果音が出てきそうな顔をして、シャマルはバブルスライムのように潰れた。

 

 ニヤニヤしながらはやては続ける。

 

「兄ちゃんとかええやん、料理上手やし」

 

 シャマルはこちらをチラリと伺い、唇を尖らせながら言葉をこぼした。

 

「私は誠実な人がいいんですー。嘘つきな人はちょっと……」

 

 おい、ガチで傷つくからやめろ。

 

「あー、兄ちゃん振られたー。どんまい」

 

 ケラケラと笑うはやて。

 

 子どもの無邪気な笑顔に、更に傷つく。

 

 今度は僕がどんよりしていると、シャマルが近づいてきて耳元でささやいた。

 

「いつものお返しよ」

 

 咄嗟に顔をあげると、シャマルは笑顔で僕にウインクしてみせた。

 

 キレイな金色の髪が、部屋の照明にキラキラと反射して輝いて見える。

 

 その姿に、うかつにも僕は見惚れてしまった。

 

 

 

2.死愚南無

 

2-1

 

 有無を言わさず連行された管理外世界、地平線の果てまで続く荒野で僕たちは向かい合っていた。気分はドラゴンボールだ。

 

「お前がどの程度できるか見ておきたい」

 

 どこかで聞いたセリフをシグナムが言い出した。

 

「我らが抜かれてしまったいざという時の場合、お前が主を守らねばならぬ。力が足りないようであれ「いや、この前したじゃん」

 

 デジャブりまくっていた僕は戸惑っていたが、すかさずツッコミを入れた。このSSってループものだったっけ?

 

 シグナムは眉間に皺を寄せ、不思議そうに首をかしげる。

 

「いや、模擬戦はこの間したよね?」

 

「?」

 

 記憶喪失になっていた。

 

「ほら、バインドの」

 

「……バインド? うっ……頭が……」

 

 頭を抑えながらよろめくシグナム。 クロノスペシャル(命名:僕)は、彼女にはあまりにも過酷だったか。

 

 辛いことは忘れるのが一番の薬ですね、わかります。でも、忘れててもたまに思い出して大声を上げてしまう、それが陰キャの僕です。

 

 可哀想になったので、話を合わせてあげることにした。

 

「そうだね、いざという時にはやてを守らないといけないから、僕の実力を証明しようか」

 

「そうか! よしやろうすぐやろう!」

 

 一転して元気になったシグナムと模擬戦をすることになった。

 

 そういうことになった。

 

 

2-2

 

「――フッ」

 

 呼気と共にレヴァンティンの刃が迫る。

 

 袈裟懸けに振り下ろされたそれを僕はデバイスで受け止めたが、思いの外力が強かったためそのまま腕が弾かれてしまう。

 

 咄嗟に体を半身に変え腕で円を描くようにして一周させ、逆袈裟に杖を切り上げた。弾かれた力をそのまま逃がしてシグナムへぶつけたのだ。

 

 しかし、相手もさるもの。正面から受け止め、杖を突き放したと同時に、そのまま凄まじい速度で上段から切り下ろしてきた。

 

 バックステップで避けると眼の前を風が流れていく。綺麗な軌跡を描いた剣は、ヒュッという鋭い音を奏でた。

 

 下げた足に力を溜め、突きを放つ。シグナムは首だけを傾け、髪の毛が数本散っていった。

 

 僕はすぐさま突きを止め、横薙ぎにデバイスを振ろうとしたその瞬間――下から嫌な圧力を感じ取った。

 

 直感に従いもう一度大きく後ろに下がると、先ほどいた顎の位置をレヴァンティンが通り過ぎていった。手首の返しだけで斬撃を切り返したのだ。このゴリラが……。

 

 凄まじい攻防が数秒に凝縮されていた。

 

 距離を少し開け、僕たちは向き合う。

 

「素直で、理に適った剣だ」  

 

「まるで僕みたいだね」

 

「たわけ」

 

 シグナムは笑った。純粋に楽しいのだろう。

 

 僕のベースは魔法学校で学んだ杖術や剣術と、士官学校で必須だった近接格闘術だ。基本に忠実で無駄のない動きをしているため、誰でも習熟しやすい。

 

 その反面、単純な動きになりやすく、シグナムほどの手練れには容易く動きを看破されてしまう。

 

 所々視線や細かい動きでフェイントを入れていたはずなのに、長年戦い続けている経験は伊達じゃないってことか。

 

 

2−3

 

 管理局の主な相手は次元犯罪者だが、意外と腕試しのために挑んでくる不届き者もいる。その中では、ベルカ古流の剣術や武術を名乗る者が特に多い。

  

 態々腕試しを行うほどの者のため中々の実力を持っているが、古流を名乗っているにも関わらず道場剣術のようなものがほとんどであった。しかし、下手に実力があるので現地の戦力では足りないことが多く、よくアースラも駆り出されたものだった。同じように武術や剣術で相手をしないと納得しないので、面倒だった記憶がある。

 

「秘剣……」

 

 それっぽく言ったけど、別に何でもないです。言ってみたかっただけ。

 

 僕は、右足を下げデバイスを体の後ろに隠すように構えた。杖先を膝の高さよりも下にした。いわゆる『脇構え』というものだ。剣道の試合では、まず使われない。

 

 古流と現代の剣術の違い、それは足元への意識だ。近代の――特に試合では、上半身への攻撃しか有効が取られないため、下半身への明確な攻撃方法、防御方法が確立されていない。

 

「シッ」

 

 鋭く息を吐き、そのままデバイスを横にスライドさせ、まるで野球の一塁手の様に手足を目一杯伸ばした。シグナムの脛を狙う。

 

 僕の身長が180㎝程度、手足が長いため2m以上あるので、完全に範囲外からの攻撃だ。

 

 大抵の奴は、地味で単純ながら有効なこの攻撃で地を這うことになる。我慢していても、音を上げるまで執拗に狙う。

 

 地面と平行に奔る一撃は届くかと思われたが、ごいん、と鈍い音がしてレヴァンテインに弾かれた。シグナムは下からしゃくるように切り上げていた。

 

 さすがだ。

 

 続けて胴へと薙ぎ払い、途中で軌道を変え足元を攻める。今度は振り下ろして弾かれた。明らかに先ほどより反応が速い。既にこの攻撃に適応している。

 

 速度やタイミングを変えて何度か打ち込むが、悉く防がれてしまった。やはり。今までに出会った有象無象の輩とは違う。

 

「この程度の小細工が徹るとでも思ったのか」 

 

 まだあるのだろうと、目で催促される。

 

 汚れるし、ダサいからやりたくなかったけどしょうがない……。

 

 もう一度距離を取った。

 

「フゥー」

 

 息を整え、右の下段で構える。

 

 ゆっくりと左上へ振り上げ、前に振り下ろす。

 

 そのまま――前へ倒れた。

 

「っ!」

 

 シグナムの驚く気配を感じる。

 

 倒れてすぐに横を向いて転がる。転がりながら勢いを付けシグナムの方へ。どんどんと回転の速度が上がる。

 

 シグナムに近づく頃には凄まじい勢いで回転していた。

 

「行くよ」

 

 

2-4

 

 ギンギンギンと音が鳴り、お互いの獲物がぶつかり合う。

 

 勢いと速さが増していく。

 

 僕は、下から、上から、右から、左から、後ろから、前から、攻撃を繰り出した。 

 

 何度も、何度も。

 

 打つ、弾く。打つ、弾く。打つ、弾く。打つ、弾く。

 

 無呼吸で繰り出し続け、更に深く潜っていく。

 

 少しづつシグナムに傷が増えていく。

 

 僕も長くは打ち続けられない。そろそろ決める。

 

 ほとんど同時に剣閃が五つ奔った。全て急所を狙った。

 

「おおおお!」

 

 シグナムが吼えた。斬撃を捌いていく。

 

 ガガガガガと音が鳴り、全てを凌いだ。

 

 もう限界だ。シグナムを大きく突き飛ばして、間合いの外に飛び出した。

 

「ハァハァ」

 

 お互いに肩で息をしている。

 

「コォー」

 

 空手の息吹のように鋭く息を吐き、無理やり呼吸を整える。

 

 次はどうする? 魔法を使うのか? 頭を回転させながらシグナムの様子を伺った。

 

「ここまでにするか」

 

 シグナムは剣を鞘にしまった。

 

「これ以上は私も我慢できそうにない」

 

 『この後、滅茶苦茶セックスした』とか出てきそうなエロ漫画みたいな発言だなぁ。

 

 シグナムは無意識エロの達人だから手が付けられない。

 

「僕はもう、いっぱいいっぱいだよ」

 

 僕は両手を上に挙げて降参のポーズをした。

 

「まだまだ本気を出していない癖によく言う」

 

 確かに魔法は使っていなかったけど、剣だけではあれで打ち止めだ。

 

 

2-5 

 

「それで、息抜きにはなった?」

 

 何となく最近のシグナムは少し思い詰めているように見えた。はやての意向に反して蒐集を行っている負い目だろうか、はたまたリーダーとしての重圧か、僕にはよく分からない。

 

「お前に気づかれているようでは、まだまだだな」

 

「気の利いたことは言えないけど、このくらいなら付き合うよ。蒐集も手伝えないしね」

 

 少しの間、沈黙が降りた。荒野に吹く風が、汗に濡れた肌に当たり気持ちがいい。

 

 ポツリとシグナムは言った。

 

「私は主に与えられてばかりだ。何も返せてはいない……」

 

「そんなことはないと思う。はやてに家族というものを与えたじゃないか。シグナムがいなかったら、僕もはやてに出会えてないよ」

 

 そうか、と相槌を打ったシグナムだが、どこか心ここに非ずといった様子だ。

 

「それに……何か大事なことを忘れている気がする」

 

「大丈夫、闇の書を完成させてはやてを治して、それでハッピーエンドだ」

 

 軽々しく言った僕に、シグナムは呆れたような顔をした。

 

「お前は……いつもお気楽だな。悩んでいる私が馬鹿らしくなる」

 

「失礼だな、僕はいつでも悩んでいるよ」

 

 主に今日の夕食の献立とか、と言うとシグナムは声を上げて笑った。

 

 笑われたけど、主婦の方々には尽きない悩みなのだ。

 

 今日の晩御飯何がいい?→簡単なやつでいいよ→殺すぞ

 

「とりあえず」

 

 言いながら僕は自分とシグナムの体を見た。エロい体をしてやがる、じゃない、戦いの激しさを物語るように汚れだらけになっていた。

 

「怒られないように、身体を綺麗にしてから帰ろう」

 

「それだけは間違いない」

 

 二人して顔を見合わせ、笑いあった。

 




全然ちょっとした小話集じゃなくなってしまいました。
もっと短い予定でしたが、書き始めたら長くなりました。
もう一話小話集を投稿したら本編に突入します。
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