1.
こんなことを言うと色んなところから非難されるかもしれないけれど、子供というのはペットに似ている。
可愛がれば可愛がるほど懐いてくれるし、大人のように感情の駆け引きなど存在しない。
だから安心して無償の愛を捧げられるのだ。
どういう事かと言うと、つまり僕ははやてを甘やかしまくった。
「兄ちゃん、めっちゃ高ーい」
肩車をして家の中を走り回ると、はやてはキャハキャハと言いながら楽しそうに笑っている。
ザフィーラに乗ったヴィータとレースで勝負していた。
「そこを右や!」
はやては僕の髪の毛の右側をひっぱり、方向転換を促してきた。
「合点承知の助!」
「ザフィーラ負けんな!」
隣を走る、渋々参加させられたザフィーラはヴィータの指示に仕方なさそうに速度を上げた。
見事に操縦された僕は、左側にいるザフィーラを肩で弾き飛ばし、コースアウトさせた。
「お先にー♪」
「ちくしょー」
はやては嬉しそうに、すっ転んだヴィータに嬉しそうに声をかけた。おこちゃまのヴィータはかなり悔しそうだ。
そのままリビングの右側にある開けられた扉を出て、廊下に出た。
「あ」
出た先には、シャマルが洗濯物を抱えていた。
ぶつかる瞬間に、はやてが怪我をしないように気を付けながら倒れこんだが、せっかく綺麗にたたまれれた洗濯物が散らばってしまった。
「もう、グラスくん! はやてちゃん!」
ちょっと怒った声を出すシャマルだったけれど、おっとりしたシャマルに怖さは感じられない。
ひらひらと宙を待ったタオルがシャマルの頭の上に着地した。
「「ブハハハハハハ」」
はやてと僕はその様子には大笑いして、タオルを外したシャマルもそんな僕たちの様子を見て口元を緩めた。
後ろから様子を見に来た皆からも笑顔がこぼれた。
そこには確かに幸せがあった。
2.
先日のアカデミー賞受賞事件により、ヴォルケンズになんとか受け入れられ(シグナムにはまだ少し疑われている)、ヴォルケンリッターの親戚という体ではやてに紹介された。
「てことは、わたしの家族やね」という言葉で、八神家 INがすんなり受け入れられた。
その後の「家族が増えて嬉しいわぁ」という言葉に、彼女の聖人具合が表れている。
はやて、めっちゃええ娘やん!
こんな子が暗い顔になることは許せないイケメンの僕は、彼女を全力で可愛がることを決めたのだった。
まぁ、はやてと仲良くしておけば、ヴォルケンズに嘘がばれた時に命は助かるだろうという打算もなくはなかった。
そんなことより、僕には八神家において一つ不満があった。
「皆のものきけい!」
食後の一時に皆が集まった時に、話を切り出した。偉そうに腕組みをしてヴォルケンズを睨めつけた。
「何ではやてに御飯を作らせてるんだよ。犬のザフィーラと子供のヴィータはいいとしても、大人が二人もいて子供に作らせるのはダメでしょ」
子供は、ご飯を作り終えたお母さんの「ご飯よー」に「すぐ行くー」と答えて、全然来なくてブチギレられるぐらいが丁度いいのだ。
犬じゃない、子供じゃないという二人の意見はスルーして、シグナムとシャマルに問いかける。
二人は気まずそうに目線を逸らした。
「シャマルは味付けが微妙で、シグナムはアレやね……アレがアレでアレやね。わたしの料理が一番おいしかってん」
洗い物を終えたはやてが二人の代わりに返事をしてくれた。
関西人特有のアレで誤魔化そうとしている。
「アレって何やねん」
僕はすかさず突っ込んだ。
「シャマルには、食材を切ったりしてお手伝いしてもらってるで。それにわたしは皆においしそうに食べてもらうのは好きやで。あと、シグナムには家を守るって仕事があるから……」
シグナムェ……。はやての汗をかきながらの必死のフォローが、逆にシグナムのダメっぷりを露呈させる。
シグナムは「あ、主っ!」とか言ってはやての言葉に少し感動している。いや、フォローになってへんがな。
そうか、あかんか。
「明日からは僕が作るよ。僕も結構料理には自信があるんだ。はやてより上手だと思うよ」
「は? 聞き捨てならへんな。わたしより美味しいご飯を作れるやって?」
はやてはプライドを刺激されたのか、結構な剣幕で詰め寄ってきた。
彼女にも八神家の台所を守ってきた矜持があるようだ。
「出来らぁっ!」
僕も猛然と答えた。
「せやったら、勝負や! わたしより美味しいご飯をつくってみい!」
「え! はやてより美味しいご飯を!?」
そうして僕たちは料理で勝利をすることになった。
僕の真の姿を見せる時が来たようだ。
「フフフ……ヴォルケンリッター、鍋の騎士 グラスに勝てるかな……?」
次回、本格料理バトル