【ジャパンカップを数日後に控えたある日】
ホクト「ぅううぅ~…、やっほ~~~~!♪」
エース「ははっ、山じゃねぇってば。」
ホクト「でも、響くねぇ~♪」
エース「マジで何にもないからな~。
でも、都会の喧騒とかとは無縁だからよ。
ま、夜はカエルの鳴き声とかうるさいけどよ。」
シュヴァル「で、でも…空気が澄んでて…僕、好きです。」
アルダン「はい、こういった雰囲気…とても落ち着きます。」
話に花を咲かせながら歩く4人、その後ろにトレーナーとテンポイントが居た。
テン「…正直、驚きの提案でした。」
「そうか?…まぁ、急ではあったよな。」
こうなった発端は、少し前に遡る────
【トレーナー室】
エース「トレーニングを一旦やめて、休む…!?
そりゃどういうことだよ…!」
「言わないつもりだったけど…エース、お前…''焦ってる''な?」
エース「そんな、訳…アタシはいつも通りだ!」
「脚、震えてるの…見逃さないからな。」
エース「…!」
「頑張りたくなる気持ちは分かる…が、怪我をしてしまっては元も子もない。
それに、今のエースは昔よりも何倍も強くなっている。
…騙されたと思って、気分転換してみないか?」
エース「…分かった、トレーナーがそう言うなら従うぜ。」
腕を組みながら、自虐的にエースが言葉を続ける。
エース「…よく分かったな、アタシの気持ちの変化に。
正直…どん詰まって…''これヤバいな''って思ってた…からよ。」
「エースの事、どんだけ見てきたと思ってるの?」
エース「ははっ、それもそうか!」
その会話が一区切りついた頃だった。
ホクト「……あ、のー…。」
「ん?」
ホクト「あ、いえ…何かこう…厳か過ぎて会話に入るタイミングが無いなって思ってまして…。」
おずおずとアルダンの後ろに隠れてたホクトが顔を覗かせてきた。
エース「何らしくも無いこと言ってんだよ。」
ホクト「だ、だって~っ!こういうムード苦手なんだも~んっ!!」
テン「貴方はもう少し社交性を覚えた方がいいかと。」
ホクト「えぇ…だって楽しければOK…じゃん?」
テン「…全く。」
エース「って言っても、気分転換って何するんだ?」
シュヴァル「…やっぱり、お出かけ…ですか?」
「あぁ、そうだ…''行先はもう決まっているぞ''」
チームメンバー「「「「…え???」」」」
────────────────────
エース「──にしても、母ちゃんがトレーナーにいつの間にか連絡してたのはビビったな~!
''なんでそっちなんだよ!?''って!」
エースの母親「だってアンタに''たまには帰省しな''って言っても、ぜーったい断るじゃない!それでダメ元よ!」
「ははっ、こちらとしてもありがたかったですよ。」
エースの近況を聞きたくて電話をしてきたらしいが、こちらとしても渡りに船といった結果になった。
エースの父親「しかし、''ジャパンカップ''かぁ~。
とんでもねぇところにまで行っちまったな!」
エースの母親「みんなであんたの活躍をテレビで見てるとさ
な~んか不思議に思っちゃうのよ。
''テレビの向こうって現実なんだ~''って!」
嬉しそうに思いの丈を話すエースの母親。
エースの母親「それに、こんなにも素敵なお仲間が居るなんて、母ちゃん一安心したよ。」
ホクト「はいっ、安心と信頼のチームメンバーですよ、肝っ玉お母様!!」
テン「───失礼な態度を…申し訳ありません。」
ホクトベガの頭を強引に掴み、謝らせるテンポイント。
ホクト「いだだだだだ…っ!!」
エースの母親「賑やかで羨ましいわね~。」
…その頃、アルダンとシュヴァルは…と言うと…。
近所の幼いウマ娘A「待って~!」
近所の幼いウマ娘B「お姉ちゃん、早い~っ!」
アルダン「ふふっ、元気いっぱいですね。」
シュヴァル「…何か…良いな…。」
家の前で、近所のウマ娘達と遊んでいた。
エースの父親「お前に憧れてる娘も多くなったんだぞ?
''自分もいつかレースを走るんだ''って。」
エース「─────。」
「はい、エースの走りは何時でも夢を与えてくれますから。」
エースの父親「か~っ!嬉しいこと言ってくれるね!酒でも飲むかい!」
「あ、いえ、まだ昼下がりなので…。」
エース「…そりゃ、何だか嬉しいな─────」
…………………………………………………。
エース「──ん~っ!
いつ来ても変わらないな、ここは!」
「ここは?」
エース「幼い頃、アタシがぶっ倒れるくらいまで走り続けたところだ。
いつ走っても気持ちがいいんだよ。
なんつーか、没頭できるっていうか…。
他の事が全部遠ざかるっつーか─────」
ホクト「おぉ~~~~~りゃ~~~~!!♪」
その言葉に感化されたのか、突然ホクトベガが走り出した。
エース「あっ、おい…!」
ホクト「エーちゃ~ん!こっちこっち~!!」
少し離れた所から手を振るホクトベガ。
テン「きっと、一緒に走ろうって意味だと思います。」
エース「…ホクトの奴、アタシがうずうずしてたの…気づいてたのか。」
アルダン「不器用ですが…それが彼女らしさですから。」
シュヴァル「ぼ、僕も…走りたいです…。」
エース「……しゃっ!走るか!
─────フッ!」
その声と共に、エースを先頭に4人が走り出した。
ホクト「うぉおぉ~っ!?みんな、追い込みに転向か~っ!?」
迫り来る4人に背を向け、再び走り出すホクトベガ。
エース「──あ~~~~~~っ!!
やっぱさいこーーーーーーっ!!!!」
楽しげに叫びながら走るカツラギエース。
とにかく前へ遠くへと駆ける彼女は
止まることなく加速し続けているようで───
(……いや、ようで…じゃなくて…)
本当に加速し続けてる…!?
エース「おぉおおおおおおおっ!!!
まだまだまだまだーーーーーーーーーーっ!!!!!」
ホクト「厳しいって~~~~~~~っ!!」
とうとう逃げてた(?)ホクトベガを捕まえ、先頭に立つカツラギエース。
頭を空にして、純粋に走る事を楽しんでいるのか…その走りは今まで見た走りよりも輝いていた。
「…これが、エースの…。」
しばらくして、エースを筆頭にメンバー全員が帰ってきた。
エース「───ごめん、トレーナー!
久々で、ちょっとテンション上がっちまった!」
シュヴァル「…良い走り…でした。」
アルダン「えぇ、練習とはまた違った良さがありましたね。」
ホクト「ぜぇ…はぁ…っ…うげ~…。」
テン「余裕の最下位、流石ですね。」
ホクト「そ、そもそも、シニア級に勝てるわけがあるかいなっ!!」
エース「ははっ、いやホントぶっ倒れるくらいまで走るところだったな!
うっかり戻ってくるの忘れるところだったぜ!」
「…エース、話がある。」
エース「げっ、説教か!?」
「違う違う!…''ジャパンカップ''についてだ。」
エース「…その顔は何か一計案じたって顔してるな?」
「あぁ…レースでは、前だけを見て走ろう。」
エース「…前、だけ?」
「ルドルフもシービーも気にせず走るんだ。」
エース「そ、そんなんで良いのかよ!?
後ろ気にして走らなきゃ…。」
「それじゃあ、エースらしくないんだ!!」
必死の訴えにチームメンバーも驚きを隠せないようだ。
エース「アタシ…らしく。」
両親の前でも言ったが、エースの走りは夢を与えてくれる。
どんな壁も逆境も乗り越えて…その走りに活力を貰える。
戦い続ける姿に…いつしか、自分も重ね合わせていた。
…そう、つまり…彼女の戦い方は…。
「前だけを見てるエースが1番エースらしいよ。」
エース「──前だけ…見てるアタシ…。」
ホクト「そ、そうそう…後ろ気にして…逃げるんじゃなくて…前だけ見て逃げるのがエーちゃんらしさって…事…ごほっ、ごほっ!!」
テン「無理に喋らないで下さい、はい、深呼吸。」
ホクト「はぁああぁあぁあ~~~~…。」
テン「息を吐いてどうするんですか。」
アルダン「ゴールだけを見て、ただ前へ突き進む…
それが、エースさんだけにしか出来ない走りです。」
エース「─────」
エース「………''アタシだけの走り''…か。」
青空が吹き抜ける中、顔を見上げるカツラギエース。
エース「…元より、何もねぇ所から走ってきたんだ。
賭けるなら、何よりも信頼できるチームメイトやトレーナーの言葉が良いに決まってる…!」
エース「…やってみるよ、トレーナー!
アタシは、もう振り返らない…前だけを見る!
そして…、誰よりも早くゴールして…勝つ!
─────''エース''の走りで!」
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