瑠璃色のキミ達と   作:A×K(アツシくん)

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第106レース~流星の貴公子~

【朝日杯FS 当日】

 

テン「…トレーナー様、ありがとうございます。」

「あぁ、綺麗だよ。」

ホクト「あはは、また言ってる~。」

テン「何度でも言いたくなるんです、これ(勝負服)に身を包むと…。」

 

「気に入ってくれて良かったよ。」

テン「トレーナー様…見ててください…私、必ず勝ちます。」

「あぁ、期待してるよ。」

 

アルダン「昨日から降り続いた雨の影響でバ場は不良と発表されてます。

どうかお怪我にだけはお気をつけを。」

テン「はい、ありがとうございます。」

エース「圧倒的1番人気だけど、気負いせずにいつも通り、な!」

シュヴァル「え、エースさん…っ…それがプレッシャーに…!」

テン「ふふっ、ありがとうございます…大丈夫ですよ、シュヴァルさん。」

 

係員「テンポイントさん、パドックの方に準備お願いします。」

テン「はい、分かりました。」

チームメンバーに見送られ、控え室を後にしようとしたテンがこちらを振り返った。

 

「どした?」

テン「…トレーナー様。」

突き出したのは、小指だった。

「…ん?」

ホクト「…落とし前ってやつ?」

エース「なわけねーだろ。」

 

「…あぁ、こういうこと?」

指切りげんまんをするトレーナーとテン。

 

テン「はい…ありがとうございます。

…ふふっ…負けたら針千本でも何でも飲みますね。」

「させるかよ、そんなこと。」

テン「冗談です、では…行ってまいります。」

 

ホクト「何か…良いねぇ。」

シュヴァル「時々、距離感すごいなって思う時あります…。」

エース「トレーナーの事となると、テンの奴変わるからな…良い意味で。」

アルダン「トレーナーさんの人徳のような気もしますが。」

 

 

 

────────────────────

 

 

【パドック】

 

実況「さぁ、遂に一番人気のウマ娘がそのベールを脱ぐ!

2戦連勝、その内容は実に圧巻!合わせて19バ身の圧勝劇!

6番、テンポイントの入場だ!」

 

観客【ワァアアアアアァー!!】

 

解説「その顔立ちから、女性ファンも多いようです。

勝負服にも注目したいですね。」

テン「………………………。」

真剣な眼差しと共に、頭を下げるテンポイント。

勝負服が披露されると…。

 

女性ファンA「嘘っ…良い…っ!!」

女性ファンB「似合ってる…尊い……っ。」

 

解説「アイドルのような可愛らしい衣装ですね。

これにはファンも大喜びです。」

テン「……………。」

実況「おっと、テンポイントどうしたのでしょうか?」

 

…何故かテンポイントがこっちを見てるような気がする。

と、ぼんやり思っていた時だった。

 

テン「………………♪(ニコッ)」

微笑んで、こちらに向かって小指を差し出した。

もちろん、観客は意図を理解していなかったが…。

 

観客【ワァアァアァアアアアー!!】

女性ファンA「……………はっ!!!!」

女性ファンB「こうなったら、もうとことん応援するわ!!」

 

…受けは良かったようだ。

ホクト「ふむ…閃いた!トレくん、こうしてこうして…。」

何故か俺の腕を掴み、好き勝手に動かすホクトベガ。

そのまま腕組の形にされた。

 

ホクト「じゃじゃーん!後方彼氏面────」

「エース。」

エース「おう、分かった。」

ホクト「いだだだだだ!!関節技は聞いてない!!」

 

 

 

 

 

 

勝気なウマ娘「…ふん、行くぞ。」

無口なウマ娘「……。」

 

 

 

───────────────────────

 

 

実況「どんよりとした曇り空の中、朝日杯FS、間もなく発走致します。

注目はやはり、テンポイント。

果たして他のウマ娘は一矢報いる事が出来るのか。」

 

テン「……すぅ。」

 

 

───ガッコン!

 

 

実況「今スタートしました!

11人のウマ娘達、順調なスタートを切りました。

やはり先頭に立つのは────」

 

テン「…………っ…!」

出走ウマ娘A「だぁぁあああぁりゃぁああぁあっ!!」

出走ウマ娘B「やぁああぁっ!!!」

 

実況「おおっと、外から2人ハナを奪い合う!これは予想外の展開だ!」

エース「逃げの手に出れなかった…だと…っ!?」

アルダン「これは…ちょっと気になりますね…。」

「…テン。」

 

テン(…大丈夫…逃げるのだけが全てじゃない…落ち着いて、周りを…っ…!?)

逃げ戦法じゃないレースをして初めて気付いた。

''内に包まれる窮屈さを''

練習の時とは違う、勝ちたいという気持ちが本気でぶつかり合う状況。

テン「ぐぅっ……!!」

 

 

実況「おぉっと、テンポイントどうした!残り800mの地点で6番手に下がってしまった!!」

何とか外コースに位置取りを移したテンポイントだったが

窮屈な走りと内に包まれる慣れない展開から、6番手へと順位を落としてしまった。

出走ウマ娘A(やっぱり…!)

出走ウマ娘(逃げれなかったら勝つチャンスは…ある!)

後ろを確認しながら、テンポイントが本来の走りができてないと分かるや否や…全体のペースが上がる。

 

エース「おいおい、大丈夫かよ!?」

ホクト「苦しそう…。」

アルダン(これがGIの重圧です、テンさん…ですが、貴方なら乗り越えられるはずです)

シュヴァル「と、トレーナーさん…っ。」

「そんな簡単にやられるやつじゃない…じゃない…が…(テン…)」

 

テン「……ぐっ……これ、くら─────」

その時、テンポイントの目に止まったのは…。

 

 

 

テン「…っ……ぁ…ぁ……っ…!!!」

荒れたバ場と先頭走る2人が走った際に蹴り上げた土による汚れ。

勝負服は、既に…汚れていた。

 

テン「………ぁ……あぁっ…。」

テン(私が、先頭で…いつもの通り逃げてたら…こんな事に…ならなかった…のに…

トレーナー様が…綺麗だって言ってくれた…勝負服が…っ…)

 

 

 

自責の念、油断してた自分への怒り…様々な物がテンポイントの心を襲う。

 

 

 

 

テン(…嫌だ…嫌だ……嫌だ…嫌だっ…!!!!!!

…トレーナー様に…残念な思いをさせたくない…!!)

その時、テンの顔つきが変わった。

目を見開き、呪詛のように何かを呟いていた。

 

 

 

 

 

テン「──もう…勝つ以外…許されない…っ!!!

その纏う異様なオーラに他のウマ娘達も気づいた。

 

テン「ぁああぁあぁあぁあああああぁっ!!!!

目を滾らせ…絶叫に近い声を張り上げながら…地面スレスレまで体を伏せて、芝を蹴り上げるテンポイント。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【固有】

────''輝く奔星のスペクトル''

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、一気に4コーナーを捲り上げるテンポイント。

実況「来たぞ来たぞ、テンポイントだ!!やはり追い上げてきた!!」

テン「負けない…トレーナー様の為にも…っ!!!私は…私はぁああああっ!!!

………負けないッ!!!!!!

 

 

 

実況「見てくれこの走り!見てくれこの走り!!

これがクラシック級期待の星、テンポイントだ!!!

グングン抜け出してもう後ろからは何も来ないっ!!!

テンポイント、圧勝のゴーーールインッ!!!

終わってみれば2着に7バ身差をつけての圧勝!!!」

 

 

テン「はぁっ…はぁっ…!!」

「…テ、テンっ!!」

エース「あぁっ、ちょっ…トレーナー!!」

 

スタンドを飛び越え、コースへと向かう。

エースが止めようとしたが、それも遅かった。

 

「…テン…っ!!」

テン「トレーナー様─────」

その言葉の前にトレーナーはテンポイントへと抱きついた。

 

「よくやった……っ!!」

テン「い、いけません…トレーナー様!…洋服が汚れてしまいます…っ。」

「良いんだよ、そんなこと…今はただ…こうしていたい。」

テン「…申し訳ありません…トレーナー様…せっかく用意して頂いた勝負服…こんなにも汚してしまい…。」

激走が物語るように、テンポイントの勝負服や顔には土による汚れが付いていた。

 

テン「…綺麗と言っていただいたのに…

この体たらく…心より───」

「…何言ってんだよ、テンはいつでも綺麗だよ。」

テン「…えっ…。」

「目も心も…そしてレースを走り終えたこの脚も…全部綺麗だよ。

俺はそれを知っている…でも、勝負服にそこまで思い入れを込めてくれてありがとうな。」

テン「…どこまでも、お優しいのですね。」

「そんな事ないさ。」

テン「…ありがとうございます…トレーナー様…大好き…です。」

「…テン。」

 

エース「…ったく、皆が見てるってのにウチのトレーナーは…。」

ホクト「テンテンに大きな拍手を~っ♪」

シュヴァル「ホ、ホクトさんが目立ってどうするんですか…。」

アルダン「テンさん、こちらを。」

手渡されたのは、タオルだった。

 

テン「…ありがとうございます、皆さん。」

エース「鬼気迫るレース、久々に身震いしたぜ。」

シュヴァル「す、凄かったです…とても…。」

ホクト「ま~ぁ?ホクベーちゃんは気づいてたけどね~?♪」

アルダン「ウイニングライブ…行けそうですか?」

テン「…はい、問題ありません…見ていてくださいね、トレーナー様…♪」

そう言って、テンポイントはトレーナーの頬に口付けをした。

───アルダン以外のメンバーは固まってしまった…。

 

 

 

 

 

勝気なウマ娘「…帰んぞ。」

無口なウマ娘「…。」

勝気なウマ娘「待ってろよ…張り合いのあるバトルをしてやっからよ…」

まるで、獲物を見つけたかのように笑みを浮かべ…拱手をするウマ娘。

勝気なウマ娘「…''闘将''の名にかけて……な…!!」




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