【朝日杯FS 当日】
テン「…トレーナー様、ありがとうございます。」
「あぁ、綺麗だよ。」
ホクト「あはは、また言ってる~。」
テン「何度でも言いたくなるんです、
「気に入ってくれて良かったよ。」
テン「トレーナー様…見ててください…私、必ず勝ちます。」
「あぁ、期待してるよ。」
アルダン「昨日から降り続いた雨の影響でバ場は不良と発表されてます。
どうかお怪我にだけはお気をつけを。」
テン「はい、ありがとうございます。」
エース「圧倒的1番人気だけど、気負いせずにいつも通り、な!」
シュヴァル「え、エースさん…っ…それがプレッシャーに…!」
テン「ふふっ、ありがとうございます…大丈夫ですよ、シュヴァルさん。」
係員「テンポイントさん、パドックの方に準備お願いします。」
テン「はい、分かりました。」
チームメンバーに見送られ、控え室を後にしようとしたテンがこちらを振り返った。
「どした?」
テン「…トレーナー様。」
突き出したのは、小指だった。
「…ん?」
ホクト「…落とし前ってやつ?」
エース「なわけねーだろ。」
「…あぁ、こういうこと?」
指切りげんまんをするトレーナーとテン。
テン「はい…ありがとうございます。
…ふふっ…負けたら針千本でも何でも飲みますね。」
「させるかよ、そんなこと。」
テン「冗談です、では…行ってまいります。」
ホクト「何か…良いねぇ。」
シュヴァル「時々、距離感すごいなって思う時あります…。」
エース「トレーナーの事となると、テンの奴変わるからな…良い意味で。」
アルダン「トレーナーさんの人徳のような気もしますが。」
────────────────────
【パドック】
実況「さぁ、遂に一番人気のウマ娘がそのベールを脱ぐ!
2戦連勝、その内容は実に圧巻!合わせて19バ身の圧勝劇!
6番、テンポイントの入場だ!」
観客【ワァアアアアアァー!!】
解説「その顔立ちから、女性ファンも多いようです。
勝負服にも注目したいですね。」
テン「………………………。」
真剣な眼差しと共に、頭を下げるテンポイント。
勝負服が披露されると…。
女性ファンA「嘘っ…良い…っ!!」
女性ファンB「似合ってる…尊い……っ。」
解説「アイドルのような可愛らしい衣装ですね。
これにはファンも大喜びです。」
テン「……………。」
実況「おっと、テンポイントどうしたのでしょうか?」
…何故かテンポイントがこっちを見てるような気がする。
と、ぼんやり思っていた時だった。
テン「………………♪(ニコッ)」
微笑んで、こちらに向かって小指を差し出した。
もちろん、観客は意図を理解していなかったが…。
観客【ワァアァアァアアアアー!!】
女性ファンA「……………はっ!!!!」
女性ファンB「こうなったら、もうとことん応援するわ!!」
…受けは良かったようだ。
ホクト「ふむ…閃いた!トレくん、こうしてこうして…。」
何故か俺の腕を掴み、好き勝手に動かすホクトベガ。
そのまま腕組の形にされた。
ホクト「じゃじゃーん!後方彼氏面────」
「エース。」
エース「おう、分かった。」
ホクト「いだだだだだ!!関節技は聞いてない!!」
勝気なウマ娘「…ふん、行くぞ。」
無口なウマ娘「……。」
───────────────────────
実況「どんよりとした曇り空の中、朝日杯FS、間もなく発走致します。
注目はやはり、テンポイント。
果たして他のウマ娘は一矢報いる事が出来るのか。」
テン「……すぅ。」
───ガッコン!
実況「今スタートしました!
11人のウマ娘達、順調なスタートを切りました。
やはり先頭に立つのは────」
テン「…………っ…!」
出走ウマ娘A「だぁぁあああぁりゃぁああぁあっ!!」
出走ウマ娘B「やぁああぁっ!!!」
実況「おおっと、外から2人ハナを奪い合う!これは予想外の展開だ!」
エース「逃げの手に出れなかった…だと…っ!?」
アルダン「これは…ちょっと気になりますね…。」
「…テン。」
テン(…大丈夫…逃げるのだけが全てじゃない…落ち着いて、周りを…っ…!?)
逃げ戦法じゃないレースをして初めて気付いた。
''内に包まれる窮屈さを''
練習の時とは違う、勝ちたいという気持ちが本気でぶつかり合う状況。
テン「ぐぅっ……!!」
実況「おぉっと、テンポイントどうした!残り800mの地点で6番手に下がってしまった!!」
何とか外コースに位置取りを移したテンポイントだったが
窮屈な走りと内に包まれる慣れない展開から、6番手へと順位を落としてしまった。
出走ウマ娘A(やっぱり…!)
出走ウマ娘(逃げれなかったら勝つチャンスは…ある!)
後ろを確認しながら、テンポイントが本来の走りができてないと分かるや否や…全体のペースが上がる。
エース「おいおい、大丈夫かよ!?」
ホクト「苦しそう…。」
アルダン(これがGIの重圧です、テンさん…ですが、貴方なら乗り越えられるはずです)
シュヴァル「と、トレーナーさん…っ。」
「そんな簡単にやられるやつじゃない…じゃない…が…(テン…)」
テン「……ぐっ……これ、くら─────」
その時、テンポイントの目に止まったのは…。
テン「…っ……ぁ…ぁ……っ…!!!」
荒れたバ場と先頭走る2人が走った際に蹴り上げた土による汚れ。
勝負服は、既に…汚れていた。
テン「………ぁ……あぁっ…。」
テン(私が、先頭で…いつもの通り逃げてたら…こんな事に…ならなかった…のに…
トレーナー様が…綺麗だって言ってくれた…勝負服が…っ…)
自責の念、油断してた自分への怒り…様々な物がテンポイントの心を襲う。
テン(…嫌だ…嫌だ……嫌だ…嫌だっ…!!!!!!
…トレーナー様に…残念な思いをさせたくない…!!)
その時、テンの顔つきが変わった。
目を見開き、呪詛のように何かを呟いていた。
テン「──もう…勝つ以外…許されない…っ!!!」
その纏う異様なオーラに他のウマ娘達も気づいた。
テン「ぁああぁあぁあぁあああああぁっ!!!!」
目を滾らせ…絶叫に近い声を張り上げながら…地面スレスレまで体を伏せて、芝を蹴り上げるテンポイント。
【固有】
────''輝く奔星のスペクトル''
次の瞬間、一気に4コーナーを捲り上げるテンポイント。
実況「来たぞ来たぞ、テンポイントだ!!やはり追い上げてきた!!」
テン「負けない…トレーナー様の為にも…っ!!!私は…私はぁああああっ!!!
………負けないッ!!!!!!」
実況「見てくれこの走り!見てくれこの走り!!
これがクラシック級期待の星、テンポイントだ!!!
グングン抜け出してもう後ろからは何も来ないっ!!!
テンポイント、圧勝のゴーーールインッ!!!
終わってみれば2着に7バ身差をつけての圧勝!!!」
テン「はぁっ…はぁっ…!!」
「…テ、テンっ!!」
エース「あぁっ、ちょっ…トレーナー!!」
スタンドを飛び越え、コースへと向かう。
エースが止めようとしたが、それも遅かった。
「…テン…っ!!」
テン「トレーナー様─────」
その言葉の前にトレーナーはテンポイントへと抱きついた。
「よくやった……っ!!」
テン「い、いけません…トレーナー様!…洋服が汚れてしまいます…っ。」
「良いんだよ、そんなこと…今はただ…こうしていたい。」
テン「…申し訳ありません…トレーナー様…せっかく用意して頂いた勝負服…こんなにも汚してしまい…。」
激走が物語るように、テンポイントの勝負服や顔には土による汚れが付いていた。
テン「…綺麗と言っていただいたのに…
この体たらく…心より───」
「…何言ってんだよ、テンはいつでも綺麗だよ。」
テン「…えっ…。」
「目も心も…そしてレースを走り終えたこの脚も…全部綺麗だよ。
俺はそれを知っている…でも、勝負服にそこまで思い入れを込めてくれてありがとうな。」
テン「…どこまでも、お優しいのですね。」
「そんな事ないさ。」
テン「…ありがとうございます…トレーナー様…大好き…です。」
「…テン。」
エース「…ったく、皆が見てるってのにウチのトレーナーは…。」
ホクト「テンテンに大きな拍手を~っ♪」
シュヴァル「ホ、ホクトさんが目立ってどうするんですか…。」
アルダン「テンさん、こちらを。」
手渡されたのは、タオルだった。
テン「…ありがとうございます、皆さん。」
エース「鬼気迫るレース、久々に身震いしたぜ。」
シュヴァル「す、凄かったです…とても…。」
ホクト「ま~ぁ?ホクベーちゃんは気づいてたけどね~?♪」
アルダン「ウイニングライブ…行けそうですか?」
テン「…はい、問題ありません…見ていてくださいね、トレーナー様…♪」
そう言って、テンポイントはトレーナーの頬に口付けをした。
───アルダン以外のメンバーは固まってしまった…。
勝気なウマ娘「…帰んぞ。」
無口なウマ娘「…。」
勝気なウマ娘「待ってろよ…張り合いのあるバトルをしてやっからよ…」
まるで、獲物を見つけたかのように笑みを浮かべ…拱手をするウマ娘。
勝気なウマ娘「…''闘将''の名にかけて……な…!!」
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