どどどど、どーーすの、どーーーーすんのっ?????
メジロアルダンのデビュー目前と迫ったある日の練習中……。
アルダン「はっ…はっ、はっ─────」
走り込みを行うアルダンを見て、以前よりも踏み込みが強く…トレーニングメニューもこなせるようになってきたと感じた。
アルダン「ふぅ……」
「お疲れ様、アルダン、ほら」
アルダン「ありがとうございます、トレーナーさん。」
水を受け取り、ゆっくりと口に運ぶアルダン。
発汗はしてるものの、呼吸の乱れは少なくデビューへ向けてしっかり成長しているように感じた。
アルダン「……あの…。」
タオルで額の汗を拭いながら、アルダンがボソッと提案をしてきた。
アルダン「もう少し……走ってもよろしいでしょうか。」
「……ここ最近、トレーニング量増えてきたのは喜ばしいけど…少し焦ってないか?」
アルダン「……トレーナーさんに隠し事は出来ませんね。
すいません、少し落ち着きがなかったかもしれません。」
(……無理もない、待ち焦がれたデビューの日が近くなっているんだもんな、ずっと夢見ていた…)
止める理由は、もちろんない……が。
「アルダン、じっとしてて」
アルダン「は、はい……と、トレーナーさん?」
手を握り、額を合わせて目を閉じる。
アルダン「……あ、の…///」
「うん、体に熱はこもってなさそうだね
じゃあ、あと1周だけな?」
アルダン「……ぁ…は、はいっ、ありがとうございます。」
彼女の想いを精一杯受け止めて、自分に出来ることを可能な限りしてあげる……それが今、自分に出来ることだから。
チヨノオー(あわわ……練習コースであんな…///)
アルダン「……別の意味で…熱が出そうです…///」
困った顔で、おでこを触るアルダンは走る準備を始めていた。
秋川「感心ッ!精が出ているな!」
「理事長?…それに、たづなさんも」
たづな「デビュー戦に向けた調整はいかがでしょう?」
「はい…順調です。
これも彼女の頑張りがあったからこそ、です。」
秋川「期待ッ!新人トレーナーの中で私が一番目をかけていただけある!」
「えっ……俺を、ですか?」
正直、期待されるようなところはない気がするだけど……。
秋川「煌々ッ!目を見ていれば分かる。
今の君の目は、とても輝いている!」
たづな「はいっ、担当ウマ娘を持つ前とは比べ物にならないくらい輝いてますよっ」
「……きっと、綺麗な輝きを見つけたから…ですよ」
走るアルダンを見ながら、俺はそう呟いた。
────────────────
【トレーナー室】
「……じゃあ、ミーティングはこれで」
アルダン「お疲れ様です、トレーナーさん。」
「なあ、アルダン」
アルダン「…?…はい。」
「アルダンにとって、デビュー戦ってどんな印象?」
アルダン「……難しい質問ですね。」
「あんまり実感湧かない?」
アルダン「…半分正解、と、いったところでしょうか。
もう半分は…本当に走れると思うと胸が高鳴っている…といったところでしょうか。」
「もちろん、ウマ娘みんなにとって、デビュー戦ってとても大事な物だもんな
……でも、俺は今日見てて思ったんだけど」
アルダン「……?」
「アルダンが今という時間を刻むために1歩、踏み出せた…その1歩は、すごくすごく大きくて…かけがえがなくて
そんな場面に立ち会えたこと、すごく幸せだなって」
アルダン「……トレーナーさん。」
「この先、困難や苦労がたくさん待ってるかもしれない
…けど、乗り越えたい……アルダン、キミと一緒に」
アルダン「……はい、同じ気持ち、です。」
「だから……勝とうな、デビュー戦」
アルダン「……はいっ。」
アルダン「では……私からも。」
「……アルダンから、も?」
アルダン「病室で、トゥインクル・シリーズを見てた頃から、胸の奥でずっと……ずっと思ってたことがありました。」
アルダン「''あの場所で走りたい''、''熱を…風を感じたい''
その中で、私は輝いて……一生懸命…刹那を生きていたい、と。」
「うん…そうだね」
アルダン「ですが……それは、私一人ではどうすることも出来ません。
色々な方のサポートが…助けが必要と、常日頃から考えていました。」
「アルダン…」
アルダン「そんな中、病院で出会い…その後も、熱心に私のことを気にかけて、声をかけてくれた人が居ました。
……ふふっ、誰でしょうね。」
くすくすと笑うアルダン。
からかわれてる気がして、少し恥ずかしい気持ちだった。
「……し、仕方ないだろ…気になって仕方なかったんだからさ」
アルダン「…でも、今はトレーナーさんの担当ウマ娘になれて
良かったと、心から思っています。
自分が走れるようになって…それを見てくれて一緒に喜んでくれる
そんな日々が……今がかけがえのない物になっています。」
「……そう言ってもらえて、良かったよ。
まだまだ、新人だけど…アルダンのためにならなんだって頑張るから」
アルダン「ふふっ、それは私も同じ…ですよ。」
立ち上がって、窓際に移るアルダン。
その姿を目で追う。
アルダン「……ですから…これは、私からの想いです。
聞いてくださいますか……?」
「う、うん……。」
小さく息を整えて、アルダンが真っ直ぐにこちらを見つめる。
アルダン「私の…永遠を…貴方に捧げてもいいでしょうか…?」
「……えっ…?」
アルダン「私の輝き……それは…貴方のために輝きたいという想い
メジロ家のウマ娘、偉大な姉の妹…そんなものは関係ありません。
私は、貴方のために…この脚を輝かせて…共に未来を歩んでいきたい、と……考えています。」
夕陽に照らされて、少し赤くなった頬と共に笑顔を見せるアルダン。
「……もちろんだよ、キミの想いや覚悟、しっかりと受け止めたよ
キミは1人じゃない…共に歩んでいこう」
アルダン「……はいっ。
…あ、あの…少し緊張してしまいまして…手を握ってもらっても、いいでしょうか……。」
「うん、いいよ。」
しっかりと握られた手からは、優しい温かさと…確かな想いの強さを感じ取れた。
アルダン「……本当に、ありがとうございます、トレーナーさん。」
──私の中で、1つ分かったことがある。
────この輝きは、トレーナーさんが見出してくれた輝き。
──────そして、大事にしてくれた輝き。
────────そんな大切な人の想いに答えたい。
────────────だって、私は……。
評価・感想・お気に入り登録
よろしくお願いします。