テン「───ぁあぁはぁぁあああぁっ!!」
アルダン「トレーナーさん、1000m通過タイム57秒8です。」
「良いタイムだな、朝日杯FSを勝ってから更に円熟みが増してきたな。」
アルダン「最優秀ジュニアウマ娘候補になっただけの事はありますね。」
「─────テン!良いタイムだが、少し休憩だ!」
テン「はい、かしこまりました。」
アルダン「どうぞ、テンさん。」
テン「アルダンさん、先程の走りを確認したいのですが───」
ホクト「いやぁ、感心ですなぁ。」
「…いつ触れようか迷ってたけど…何サボってんだ、ホクト。」
ホクト「失敬な、観察ですよぅ、観察。」
斜面に大の字で寝転ぶホクトベガ。
先程から全く走っていない。
「……ほら、走るよ。」
ホクト「うぇ~…もう少し待って~…」
テン「全く…トレーナー様を困らせるのではありません。」
ホクト「むっ、ホクベーちゃんだって色々考えるわーいっ!」
「……例えば?」
ホクト「えっとね、選抜レースも近いでしょ?
私の中で作戦があるんだけど~…。」
「作戦……まぁ、当日は自分の思うように走れって言うつもりだったし…。
先に聞いておくよ。」
ホクト「さっすが、トレくん!聞き分けの天才~♪
……こほん、こほほん…その名も~……''どっかんまくり''!」
声高らかに宣言するホクトベガ…しかし、3人の反応は薄く……。
アルダン「……。」
テン「はぁ……ダメです、トレーナー様、話になりません。」
仕舞いには、テンポイントからトドメを刺される始末。
ホクト「えぇ~っ!!??良い作戦じゃない~っ?!」
「あぁ、とっても良い作戦だな。」
テン「─────えっ。」
アルダン「まぁ……。」
ホクト「でしょでしょ!!♪
流石トレくんは分かって─────」
「なら、その作戦を完璧にする為に練習頑張ろうな。」
ホクト「─────あ''っ……。
いや~…まだ命名しただけで、具体的な内容は決まってないというか~…」
「なら、走って考える!!ほら、行った行った!」
ホクト「わ~んっ!!!嵌められた~!!!」
エース「うぉっ、何だ!?」
シュヴァル「な、泣きながら走ってる……。」
テン「…トレーナー様の方が一枚上手でしたね、知っていましたが。」
「まぁ、作戦を考える自体、アイツも偉いけどな。」
テン「……あまり、本人に言うのは得策では無い……かと。」
アルダン「ですが…走れば走るほどに目を見張る物がありますね。」
「心境の変化が走りにも表れてきたんだろう…マイペースだけど……パワーなら突出してるものがある。」
テン「……えぇ、選抜レースが楽しみです。」
「ありがとうな、テン…色々面倒みてもらって。」
テン「勿体なきお言葉です……ただ、そそっかしくて見てられないだけ…ですが。」
アルダン「ふふっ、何だか仲睦まじく見えますね。」
テン「……振り回されて一方的に困らされてますが。」
カーブを曲がって、ゴールに向かってくるホクトベガがこちらを向いていた。
ホクト「むっ………………今、ホクベーちゃんの悪口言ったな~っ!」
エース「こ、今度は叫びながら走ってるし……。」
シュヴァル(……何だか、ちょっと面白い……かも。)
テン「……さて、私も戻ります。
ホクトさんが手を抜かないように後ろから追走したいと思います。」
「あぁ、よろしく頼む。」
テン「はい。─────ふっ!!」
ホクト「………?……げっ!!テンテン~っ!?」
テン「ペース、落ちてますよ。」
ホクト「うわわ~っ!!!ストーカー~~っ!!」
テン「人聞き悪いですね、脇腹突っつきますよ。」
ホクト「隠微!!!」
ホクトベガとテンポイントを見送ったエースとシュヴァルがスピードを緩めて…こちらに歩いてきた。
エース「はぁ、はぁっ……ふぅ……アイツら、どうしたんだ?」
「お疲れ様、エース、シュヴァル……まぁ、いつも通りだ。」
シュヴァル「……な、何だか賑やかですね…見てて少し面白いって思っちゃいました。」
エース「────まっ、静かすぎるよりかは良いけどな!」
シュヴァル「す、凄いな……エースさんは…僕はそんな風に思うの…まだちょっと出来ないかな……。」
ホクト「…………って!!!なんで追い越すの~っ!?!?!」
テン「あれこれうるさいですね……。」
ホクト「むきーっ!!待て~~~っ!!」
エース「……テンも、
「……まぁ…うん、仲良き事は…って事で。」
シュヴァル「……でも、今の雰囲気…僕、好きです。」
アルダン「同感です、この雰囲気の良さが私たちのチームの良さ……そうですよね、トレーナーさん。」
「あぁ、そうだな。」
エース「でも、どうするよ?私もチームに入れてくださいってウマ娘が来たら。」
「ええっ?……それは~…。」
アルダン「そういえば、そのパターンは今までありませんね。」
シュヴァル「ど、どうなんでしょうか…。」
「まぁ……なってみないと分からないからなぁ、こればっかりは。」
何て話をしてたら……ヨロヨロのホクトベガとピンピンしてるテンポイントが戻ってきた。
ホクト「だぁ……っ……はぁ……かひゅ…。」
テン「よく頑張りましたね。」
ホクト「お、鬼め~…。」
テン「……ふむ、もう3周ほど追加で走りますか?」
ホクト「ひええぇっ!!嘘です、ごめんなさい~っ!!」
「……ホクト?」
こちらに助けを求めるように、ホクトベガが抱きついてきた。
ホクト「トレく~ん…テンテンがいじめる~っ……。」
テン「いじめてなどいません、愛のある躾です。」
ホクト「時代錯誤ぉ~………………。」
こちらに顔を埋め、グリグリとドリルをするホクトベガ。
「何か可愛いな。」
ホクト「!♪」
ポツリと呟いた一言をホクトベガは聞き逃さなかった。
ホクト「トレくんが褒めた~っ!!♪」
テン「全く…トレーナー様、あまり調子に乗らせてはいけませんよ。」
「ご、ごめんごめん…。」
エース「そんだけ元気があるなら、まだ走れるな!」
ホクト「……え''っ。」
シュヴァル「…エースさんには敵わないなぁ……。」
ホクト「ちょっ、そ、それとこれとは別で─────
あっ、エ、エース先輩、襟掴むのは厳しいって!!あ~れ~っ!!!」
アルダン「……彼女が来てから、雰囲気がより一層晴れやかになりましたね。」
テン「精一杯のフォロー流石です、アルダンさん。」
「晴れやか…って言うよりも…アホ丸出しっていうか……。」
ホクト「脚重~い~……っ!!…もうダメだ~ぁっ!!」
エース「ほらほら!走った走った!!」
ホクト「わ''~んっ!!鬼が2人いる~っ!!」
シュヴァル「ファ、ファイトです……ホクトさん……っ。」
「終わったらアイスでも買ってやるから頑張れよ~。」
ホクト「!!……ホクベーちゃんスパーーーーーートっ!!♪」
エース「現金な奴だな、おい!!!!」
シュヴァル「アイス…………やった…。」
…………………………………………………。
【トレーナー室】
「ふぅ……良し。」
腕時計に目をやると、19時を指していた。
ここのところ、仕事量が減り…帰る時間が早くなってきている。
もちろん、アルダンの影響が大きく、感謝を常に伝えているが、当の本人は…。
アルダン【トレーナーさんの負担が少なくなって、担当ウマ娘のトレーニングに対する英気が養われてるのなら光栄です。】
と、返されてしまった。
本当に彼女には頭が上がらない。
「……さっ、帰るか。」
とは言え、早めに寮に帰ってもレース映像を見返したりして何だかんだ時間は経ってしまう。
身支度をし、トレーナー室を後にしようとした時だった。
─────コンコン。
「……ん、誰だろ……はい?」
扉を開けると……そこには…。
テン「……………………。」
「テン?」
テンポイントが立っていた。
何故かジャージ姿であったが……。
「(こんな時間まで自主トレ…じゃ、無いしな…)どうしたの?」
テン「……実は、報告したい事が…。」
「(どこか痛めたとかじゃなきゃ良いが……)良いよ、とりあえず中に入って。」
テン「……失礼します。」
中にテンポイントを通し…向かい合って座った。
「……それで、報告って?…まさか、どこか痛めたか?」
テン「……そうですね、痛めたと言えば…痛めてます。」
───こりゃ重大な要件になるかもしれない。
「……どこだ、脚か?」
テン「……いえ。」
「じゃあ……腕や肩か?」
テン「……いえ。」
「……うんと、何処を痛めたんだ?」
思い当たる箇所を述べたが…テンポイントは全て首を横に振った。
そして、テンポイントは静かに自分の胸に手を置いた。
テン「…………その……''ここ''なんですけど…。」
「……ここ……って…。」
自然と下がる視線。
凝視するつもりは無かったのだが…サッと自分の胸を隠すテンポイント。
テン「……その…トレーナー様と言えど…見すぎ、です…///」
「うわああぁっ!!ごめん、そんなつもりじゃ…!!」
テン「別に…トレーナー様相手なら…ダメな訳では無いですが……///」
突然の内容に慌てて否定しながら、何とか平然を保つ。
テンポイントにも恥じらいの気持ちがあるだと言う新発見と共に、困る顔が少し可愛いと思ってしまったのは秘密にしてといて…。
「……その、なんだ…そういう事はアルダンとかに言うべきじゃないか…?」
テン「……報告は大事かと…。」
至極当然ではある、しかし、目線がどうしても下に下がってしまう。
自分の体の事だから、自分が一番分かってはいることだろう。
テン「…………あの、トレーナー様……///」
「……っ、ご、ごめん!!」
テン「……いえ…それで…どうすれば…。」
「どうって……。」
分からない。とは言えない……もちろん、そのままでとも言えない。
彼女自身はこちらからのアドバイスを求めている…拒む事は難しい。
「……う、うぅーん…。」
……しかし、そんな知識疎い…どころか、ゼロに等しい俺は困り果ててしまった。
テン「……///」
すると……テンが突然、提案をしてきた。
テン「……もっと近くで確かめてみますか?」
「えっ、あっ、テン─────」
こちらの答えを聞く前に…テンポイントが俺の膝の上に乗ったきた。
「(乗ったところで分からないんだけどな…)……えっと、そう、だな…成長期…なんだよ、きっと、うん……。」
テン「……成長期…です、か。」
なんだその回答は、と…自分自身に突っ込みを入れつつ……何とかテンポイントを受け止める。
一方、密着出来て嬉しいのか、テンポイントの耳はいつもより多く動き…腕は俺の背中の方に回された。
テン「……トレーナー様…///」
再び下がる目線。
……確かに大きい…けども。
「……ぁ、そ、そうだ!!ほらスポーツタイプ…?ってあるじゃん、それにしてみたら?」
苦し紛れで何とかアドバイスを送る。
テン「……なるほど、それは……トレーナー様の好み…です、か?///」
「ち、違うよ!?」
テン「ふふっ、そういうことにしておきましょう。」
「……あ、あのなぁ……まぁ、やってみて、テンがどう思うかは別として…試してみるのもありなんじゃないかな?」
テン「……分かりました、アルダンさんに相談してみます。」
最初からそうしてくれ……。と言う考えは置いといて…テンは納得してくれたようだ。
テン「……この黒の下着…気に入っていたのですが…残念です。」
「……………………。」
テン「……想像しました…か?///」
「してない!!してないから!!!」
テン「……トレーナー様なら、良い……ですよ?///」
「ちょっ─────」
更に距離が詰まり、もう鼻と鼻がくっつきそうなくらいになった時だった。
────ガチャっ!
ホクト「トレく~んっ!!!忘れ物し~た~ぁ……っ……?」
アホ丸出しで扉を勢いよく開けたホクトベガが中の様子を見て絶句していた。
それもそうだろう、俺の膝の上に乗って、抱きしめてる姿を見たら誰だってそんな風になる。
ホクト「……すぅぅぅぅぅぅ……お邪魔、しやした~ぁ……。」
「待って!!誤解!!!」
と、声を出したまでは良かったが…膝の上に乗ったテンポイントを退かす訳にもいかず……ホクトベガはそのまま部屋を後にしてしまった。
「……あちゃぁ~…。」
テン「……既成事実…出来ちゃいましたね…?///」
そんな風に言うテンポイントの頬は赤かった。
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