【トレーニングコース】
ホクト「……ふ、んごぉおぉおぉ~あああぁあああ~。」
テン「なんて声出しているんですか、貴方は。」
体操服に着替えて、しっかりとウォーミングアップを行うホクトベガ。
今日は待ちに待った選抜レース当日。
ホクト「いやぁ~……みんなレース前でヒリついてるなぁ~って。」
「そりゃ、スカウトされたい・結果出したいって気持ちがあるからな。」
ホクト「ふっふっふ~…ホクベーちゃんには必殺技があるからねぇ~…簡単には負けないよ~ぉ???♪」
エース「あぁ……''どっかんまくり''……だっけか?」
ホクト「おぉ~!エーちゃん覚えててくれたんだ~!♪」
エース「……そりゃ、簡単に忘れられないネーミングだからよ(悪い意味で、だけどな)」
ホクト「……どうやらダートの選抜レースが先みたいだね?」
アルダン「えぇ、今日は選抜レースが5レース組まれています。」
シュヴァル「ダートが2レース…芝が3レース…です、か。」
テン「………………………………。」
「どうした、テン?」
テン「………いえ、何も……失礼しました。」
テン(……何でしょう……この睨まれてるような感覚は…)
ホクト「もしや…ホクベーちゃんの立派な姿に見惚れてたな!?」
テン「……それは全くないのでご安心を。」
ホクト「けっ!ふんだっふんだっ!レースで見返してやるもんねっ!」
アルダン「頑張ってくださいね、ホクトさん。」
エース「張り切りすぎんなよ~。」
シュヴァル「き、期待してます…。」
ホクト「よーしっ、頑張っちゃうぜ~っ!!」
…………………………………………………………
実況「さぁ、16人のウマ娘がゲートインしました。」
ホクト(まずは……スタート出て様子見だね……)
───ガッコン!
ホクト「─────ほっ、と!!」
実況「今、スタートしました!2番ホクトベガ良いスタートを切りました!」
ホクト「あれっ、私が先頭!?」
エース「だあぁっ!アイツ逃げちまった!」
シュヴァル「い、今更位置を下げる訳にもいきません……よね…。」
アルダン「本人も困惑した顔で走ってますね…集中力が切れなければいいのですが…。」
テン「……大丈夫でしょう、作戦が頓挫しても…彼女には持ち前のパワーがあります。」
「……だな、練習の成果……見物だな、ホクト。」
ホクト「(うぅーん…せっかく''どっかんまくり''のお披露目が出来ると思ったんだけどな~……って、愚痴を言ってても仕方ないよね……よーしっ……)
……どっかん逃げに作戦変更だぁあぁああっ!!」
出走ウマ娘A(逃げのペースが……落ちない……っ!)
出走ウマ娘B「嘘……っ……差がどんどん開いてる…!?」
実況「ホクトベガ、強い強い!!差をどんどん広げている!!」
ホクト「だ~~りゃりゃりゃりゃりゃ!!!」
実況「衰え知らず!吹き荒れる砂塵と共に、ホクトベガ今1着でゴールイン!!
後続に9バ身の差をつけての圧勝です!!!」
ホクト「……あれっ、いつの間にかゴール……って、うわああぁっ!?
なんか凄い差がついてる~ぅっ!?!?!?」
エース「……落ち着きのなさは相変わらずだな」
アルダン「…あと、周りが見えてないのは今後の改善点ですね。」
もちろん、こんな結果を出したウマ娘をスカウト目的のトレーナー達が放っておく事もなく……。
中堅トレーナー「ホクトベガさん!貴方のそのパワーは無限の可能性を秘めているわ!
ぜひ私と一緒に頑張りましょう!」
ベテラントレーナー「いいや、私なら君を必ずGI制覇…。
……いや、それ以上の結果を齎して─────」
そんな輪をくぐり抜けるように、ホクトベガがこちらに走ってきた。
テン「……トレーナー様、受け止める準備を。」
「えっ、いや、ちょ─────」
ホクト「ト~~~~~~レ~~~~~~く~~~~~んっ!!!!♪」
止めようにも、そんな簡単に止まれないと諦めた頃には
ホクトベガが豪快にタックルの如く飛び込んできた。
受け止める事は出来たがそのまま2人揃って倒れ込んだ。
テン「大丈夫ですか、トレーナー様。」
「……何とか。」
目の前に広がる青空を眺め、苦笑いを浮かべる。
その間も、ホクトベガは顔を何度も擦り付けていた。
ホクト「見てた見てたっ!?♪」
「……す、凄かったよ…どっかんまくりは失敗に終わったけど…。」
ホクト「そ~~なんだよね~~っ!!」
「痛い痛い痛い!」
まるでじゃれ合うような風景に、他のトレーナー達もちょっと距離を置き始めていた。
中堅トレーナー「な、仲良しね…。」
ベテラントレーナー「……むう、仕方あるまい…諦めよう。」
エース「はいはい、興奮してるとこ悪ぃけど、離れような~。」
ホクト「ぐぇっ、首はタンマタンマっ!」
テン「…………………………。」
シュヴァル「テンさん、どうしました…さっきから、そわそわしてますよ…?」
テン「……いえ…何でも…。」
その後、選抜レースは滞りなく進み…最後のレースが行われようとしていた。
─────メンバーが出揃った時だった。
テン「…………っ……!」
テンポイントの表情が変わった。
それと同時に……耳を絞り…拳に力を込めていた。
「テン?」
テン「……申し訳ございません、トレーナー様……。」
「……知り合いか?」
目線を向けると、腕を組み…集中してるウマ娘とじっと芝コースを見つめているウマ娘が目に止まった。
テン「…………………………。」
「(答えにくい…か)…いや、無粋な事聞いた、悪かった。」
テン「……以前、私のレースを見たと…言ってました。
その上で…宣戦布告されました…。
────いずれ、追いついてみせる……と。」
「……そうか。」
テン(手が…震えてる……私は…慄いてる…?)
実況「さぁ、本日行われる選抜レースもいよいよ大詰めを迎えました。
芝コース1400mで行われるレース…18人のウマ娘が続々とゲート入りを進めています。」
勝気なウマ娘(……感じるぜ、視線をよ…見とけ……高らかに勝どきをあげてやるよ……)
無口なウマ娘「…………………。」
実況「態勢完了。」
───ガッコン!
実況「今スタートしました!各ウマ娘綺麗なスタートを切りました!」
勝気なウマ娘(……まっ、お手前拝見……させてもらおうか)
無口なウマ娘「…………。」
実況「先頭は1人ポツンと逃げる4番、それを追って各ウマ娘がどのタイミングで仕掛けるのか!」
勝気なウマ娘「さぁて…………死闘開始だぁあっ!!!」
無口なウマ娘「………………!」
実況「おっと、ここで18番が逃げる4番の後ろをピッタリ付けるようにマークをし始めた!」
出走ウマ娘A(……何、この睨まれてるような感じ……っ……!?)
「あのウマ娘……。」
テン「……どうかしましたか、トレーナー様。」
「───本気で走ってない。」
ホクト「…つまり、まだまだレース慣れしてない…って事?」
「いや……その逆だ」
シュヴァル「それって……。」
エース「…トレーナーの言ってる意味がよく分かるな。」
アルダン「エースさんも気付きましたか。」
エース「あぁ……勝負は……一気につく。」
勝気なウマ娘「制圧……前進……っ!!!!!」
出走ウマ娘A「ひっ……!」
実況「先頭を捉えた!そして一気に突き放す!
強い、強い!!デビュー戦これ程強いウマ娘が居たでしょうか!」
実況「─────トウショウボーイ、楽な手応えで先頭を突き進む!!」
トウショウボーイ「…っははは!!!!!勇往邁進!!!群雄割拠のクラッシクレースを討ち取るのは、オレだぁああああっ!!!!」
無口なウマ娘「………………っ。」
中堅トレーナー「…に、2番手以降のウマ娘が止まって見える……。」
ベテラントレーナー「それに、軽めに走ってるようにも見受けられる…モノが違うな……あれは……。」
実況「トウショウボーイ、今大楽勝でゴーールインッ!!!」
トウショウボーイ「足りねぇ……まだ……まだまだ足りねぇ…。
闘将の血は…戦いを求めて止まらねぇ……!!」
無口なウマ娘「…………。」
トウショウボーイ「……グラ、こっからは…戦いだ…逃げんなよ。
お前の首も……いずれ、狩る…ッ!!!」
グラ(?)「………………ん。」
中堅トレーナー「と、トウショウボーイ……貴方、すごい才能よ!ぜひスカウトを…。」
ベテラントレーナー「あの飛ぶようなスピードと底知れぬポテンシャル…君なら…」
トウショウボーイ「……トレーナーなぞ、誰でも良い。
オレからの要求はただ1つだ。
─────クラッシク三冠、根こそぎ狩ってやるよ。」
この一言に、スカウト志願のトレーナー達がザワついた。
中堅トレーナー「選抜レースを走ったあとなのにもうそんな目標が……面白いわ、ぜひ話を聞かせてちょうだい!」
ベテラントレーナー「キミの走りもなかなか良かったぞ、名前は……グリーングラス、だね?」
グリーングラス「……ん。」
テン「………………すいません、トレーナー様…少々、走ってきます。」
「……あんまり、無理するなよ。」
テン「……はい。」
何かを察したのか、止めることなく…俺はテンポイントを送り出した。
ホクト「ぶーぶー、ホクベーちゃんの勝ちっぷりが霞んで見えちゃうよ~。」
エース「まぁまぁ……これから見返していこうぜ?」
ホクト「へ~~~~~~~い。」
テン(……もっと、強くならなければ…。)
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