ホクト「……………………。」
エース「なぁ…ああし始めてもう何分経つ?」
アルダン「そうですね…30分は経過していますね。」
シュヴァル「…物凄く真剣に見てますね…。」
テン「……………。」
トレーナー室に入ってから、ホクトベガはいつものおちゃらけた様子ではなく…。
真剣な表情で、何度何度も先日の自分のレースを見返していた。
その目つきは、時に怖さを感じさせる程だった。
ホクト「……………………………………。」
エース「…どうすっか?」
アルダン「お声をお掛けしても…返事はありませんし…本人が納得するまでやらせてあげましょう。」
「…ふぅ…みんなお待たせ、トレーナー会議がちょっと長引いちゃって。」
シュヴァル「あっ…と、トレーナーさん…。」
テン「お疲れ様です、トレーナー様。」
ちらっとホクトベガの方を見たトレーナーだったが…特に声をかけることも無く
自分の席に座った。
「さて、アル…今日の予定を確認しようか。」
アルダン「はい、まずはテンさんはパワートレーニングを
エースさんとシュヴァルさんはスタミナトレーニングを行っていただきます。」
テン「かしこまりました。」
エース「…お、おう…そりゃ良いけどよ…。」
目で合図を送ってくるエース。
トレーナーもその合図に頷いたが、そのまま話を続けた。
「よし、じゃあトレーニングに向かおうか!」
アルダン「トレーナーさんは、会議の内容をまとめたりしておいてください。
''こちら''は私の方で見ておきますので。」
「分かった、よろしく頼むね。」
アルダン「はい、では参りましょう。」
エース「あ、あぁ…。」
シュヴァル「はい…。」
テン「失礼します、トレーナー様。」
アルダンを筆頭に、各メンバーがトレーナー室を後にする。
残ったのは、俺とホクトベガの2人だけだった。
ホクト「………………。」
顎に手を当てて…神妙な面持ちでパソコンを操作するホクトベガ。
何度かその様子を眺めた後、こちらもパソコンで資料をまとめ始めた。
カタカタとリズムのいいタイピング音だけがトレーナー室に響く中…。
ホクト「……あれ…トレくん?」
「ん、お疲れ様、ホクト。」
ホクト「……みんなは?」
辺りを見渡すホクトベガ、しかしそこにいるのは自分1人の状況に頭にハテナマークが浮かんでいた。
「みんなはトレーニングに行ったよ。」
ホクト「えっ……わっ!もうこんな時間!?
ご、ごめん!!直ぐにトレーニングに─────。」
バタバタとパソコンを片付けて、外に向かおうとするホクトベガ。
「待って、ホクト。」
ホクト「……うん?」
「ちょっとお話しよう?」
ホクト「……うん、分かった。」
こちらの提案に、ホクトは頷き…向かい合うように座った。
「……自分のレース見返して…何か感じた?」
ホクト「……………………。」
「30分以上見返すって事は…レース中に気づいた事や何か振り返りたい物があった…違う?」
ホクト「…うん…あった。」
「…そっか、次に活かせるといいな。
何か協力して欲しい事とかあったら、遠慮なく─────」
ホクト「─────……トレーナー。」
「………うん。」
真剣な表情と声の抑圧に、一瞬トレーナーの顔つきも変わったが…普段通りに接する。
ホクト「…もう、レースでは…普段の自分を…脱却したいって思っている。
あの日感じた…とっても小さくて…それでも、何か燃え盛るような想いが…私をそうさせた。
──────────私は、本気だよ。」
「…前回のレース…悔しかった?」
ホクト「体の調子は良かったし…何より、落ち着いて周りを見ながら
自分の思う最高のタイミングで仕掛けたと思ってた…けど、結果は2着…
それが何よりも悔しかった…負けんもんかって心の底から思えた」
「…今は、どうしたいって思ってる?」
ホクト「─────もっと…もっと強くなりたい。」
「(出会った頃とはまるで違う顔つきだな…)…うん、その言葉…確かに受け取ったよ。
その真っ直ぐで絶対に折れない気持ちがあれば…大丈夫だよ。」
ホクト「…ありがとう、トレーナー。」
スっと立ち上がり…小さく息を吐くホクトベガ。
ホクト「………ではではっ!トレーニングに向かいま~~すっ!」
「ああ、サボるなよ?」
ホクト「サボったりしたらアルダンさんからのお仕置が…うぅ、こわこわ…。
って、こんな事してたら余計言われちゃうね……行ってきまーす!」
いつもの表情に戻ったホクトベガがビシッと敬礼をしてトレーナー室を後にする。
…小さく握られた拳を、トレーナーは見逃さなかった。
(…自分がどうしたいかを見つけられたんだ…アイツも強くなるな)
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