【3月 トレーニングコース】
テン「エースさん、アルダンさん、併走のお付き合いお願い致します。」
アルダン「えぇ、もちろんです。」
エース「やるからには本気でいくからよ。」
テン「…はい、よろしくお願いします。」
ホクト「シュヴァヴァは…私と同じスタミナトレーニングだね。」
シュヴァル「は、はい……次は3000mのレースなので…。」
ホクト「よしっ、一緒に頑張ろ~!」
シュヴァル「……は、はいっ…!」
「…みんな、動きが良いな。」
ここ数週間のメニューとタイムを書き記した表を片手に走り込むチームメンバーを眺めていると、近くで見学していたウマ娘達の声が聞こえた。
見学ウマ娘A「…何だか、テンポイントさん…体大きくなった…?」
見学ウマ娘B「それに…走る時の眼差しも普段と全然違う…かっこいい~…。」
(…確かに、テンのパワー面は著しく成長している。
後はそれを自分の物に出来るかがレースの勝敗に大きく影響する…が。)
実際、まだ踏み込む場面では、少し苦悶の表情を浮かべるのが見受けられる。
走り慣れた体に重りを付けて走るような状態では、そうなってしまうのも無理はない。
本人にその事を聞いてみた際も─────
テン「……そうですね、力んでしまうのは事実です。
その分、トップスピードは格段に上がってるのはありますが…まだ100%その状態は引き出せていません。」
と、自分なりに解析はしていた。
(…スプリングステークスで、その成果が発揮される…吉と出るか凶と出るか…。)
見学ウマ娘A「ところで、トウショウボーイさんも来週辺りにレース出走するんだってね。」
見学ウマ娘B「やっぱり皐月賞を本気で狙ってるんだろうね。
テンポイントさんと、トウショウボーイさん…初めて一緒に走るのが皐月賞になるのかなぁ…?」
テン「─────すぅ…………っ!!」
エース「少し仕掛けるタイミングが遅いぞ、テン!!!」
テン「まだ……っ…引き伸ばせます……っ!」
アルダン(速い…それでいて、近くに寄っても動じない打たれ強さもある…成長しましたね、テンさん……。)
1歩ずつ…着実にテンポイントは力をつけて行った。
─────全ては、春のクラシックGIレースに向けて…そして、打倒ライバルの為に。
……………………………………………………
【レース当日 控え室】
テン「……お待たせしました。」
アルダン「顔色も良好…トモの張りも問題ありません、トレーナーさん。」
「……まだ完璧にビルドアップ出来てる訳では無い…。
前走のように、苦戦する可能性も大いにある…。
けど、天性のスピードがあるテンならそれを乗り越えると信じてる。
…無事に帰ってこいよ、テンポイント」
テン「……はい、ありがとうございます…トレーナー様。」
「…………。」
テン「…………?」
エース「おい、テン。もうレースが始まるぞ。」
ホクト「行ってこい、行ってこ~い。」
テン「では、行ってまいります、皆さん。」
「……………………。」
シュヴァル「……トレーナーさん?」
「ごめん!ちょっと地下バ道行ってくる!!」
アルダン「え、えぇ…お気をつけて。」
エース「…どうしたんだ、トレーナーの奴?」
ホクト「なんか珍しく慌ててたね?」
シュヴァル「な、何かあったんでしょうか……。」
【地下バ道】
テン「…………………………。」
「─────テン!!」
テン「……っ……トレーナー様…っ?」
「はぁ、はぁ…良かった、間に合った……。」
テン「そんなにお急ぎで…どうしたのでしょうか…?」
「……ちょっと、手を貸して。」
テン「と、トレーナー様………?」
何が何だか分からないまま、テンポイントは左手をトレーナーに掴まれた。
「……ちょっと、目を瞑って?」
テン「…目を…ですか?……こう、でしょうか……。」
「そのままね………よ、っと……。」
テン「…………トレーナー様…?」
何か物音がするが、テンポイントは目を瞑ったままで居た。
────そして、何か左手の指に感触がした。
「……よし、目を開けていいよ。」
テン「……これは……。」
左手を眺めるテンポイント…その人差し指には、指輪が嵌められていた。
テン「……トレーナー様……?」
「……無事に帰ってきてくれる、お守り…変だったかな?」
テン「……そ、そんな……変だなんて……ただ……。」
「……ただ…?」
テン「─────っ……!!」
テンポイントは、そのままこちらに抱き着いてきた。
慌てて受け止めると、その顔は幸せに満ちた表情で何度もこちらの鼻と自分の鼻を擦り付けてきた。
テン「……嬉しいです、とっても……っ…///」
「……そっか、良かった…。」
テン「でも、良いんですか…?
その…私…勘違いしちゃいますよ…?」
「……テンが思うように俺も思ってるから。」
テン「……ぁ……トレーナー……様……///」
「───さぁ!行ってこい!」
テン「……はい……っ!」
最後に、別れ際におでことおでこをくっつけて目を閉じ…レース場に向かうテンポイント。
その足取りは、軽かった。
……………………………………………………
実況「GIIスプリングステークス、間もなく発走となります。
このレースを足がかりに、クラシックGIへ弾みを付けるのはどのウマ娘か。
注目はやはり、4戦4勝のテンポイントか。」
「お、お待たせ~……。」
ホクト「あ~!やっと来た!」
アルダン「もう……どちらに行かれてたんですか?」
「あはは、迷った……。」
エース「んなわけ……。」
シュヴァル「……あれ……テンさん…何してるんだろ?」
ホクト「……んあ?」
実況「各ウマ娘が、次々とゲートの中に収まって行きます。
テンポイントは…………おや?何やら左手を口に付けてる様子。一体何があったのでしょうか?
しかし、表情は真剣そのもののようです。」
(……アイツ。)
ホクト「……新しいルーティン…的な?」
アルダン「リラックスしてる表情ですし…おそらく、何か香りのする物を塗布してる可能性も。」
エース「……何を頭を抱えてるんだ、トレーナー?」
「いや、そのだな……。」
シュヴァル「あっ…発走しますよ。」
実況「────スタートしました!」
テン「───行きます……やぁああぁっ!!」
実況「やはり速い、テンポイント!
あっという間にハナを切りました!」
出走ウマ娘A「ぐっ……これは想定内…でも……!」
テン(やはり、標的にされますね…ですが、今の私なら……っ!)
実況「各ウマ娘の位置取りが固まり、戦況が落ち着き始めたか。
テンポイントはスタート取りをしましたが、現在は2番手、内に包まれる形ですが
果たして直線抜け出して来れるでしょうか。」
テン「…………踏み込みの意識……踏み込みの、意識……。」
実況「さあ、第4コーナーを回って直線コースに戻ってきた!
テンポイントは2~3番手だ!前との差はそれほどでもないぞ!」
テン「………………。」
──────────グッ……。
テン「…………っ……!!」
テン(踏み込みが……!)
実況「おぉっと、テンポイント伸びないぞ!苦しいぞ、苦しいぞ!
上がって来れないのか、テンポイント!!前との差が縮まらない!」
テン「─────それでも……っ!」
テン「─────私はっ!!!!!!勝つ!!!!」
「!」
アルダン「……!」
エース「なっ……!」
シュヴァル「えっ…!?」
ホクト「あれは……。」
その時、俺を含め…チームメンバーは見た。
テンポイントが、光の粒子のようなオーラを纏っている姿を
それはまるで、天の川のような星のような煌びやかな物だった。
「……闘争心が…溢れ出てる……っ!?」
アルダン(似てる…私の、菊花賞の時みたいに……。)
エース「……どこまで強くなるんだ、アイツは…。」
シュヴァル「……凄い…。」
ホクト「……負けられないな、テンポイントには。」
テン「───届け…届けぇえっ……!!!!」
実況「─────ゴールインっ!!!!
ゴール前っ、僅かにテンポイント先頭を捕らえた!!!
苦しいレース展開も、テンポイント勝利を収めました!
これで5戦5勝!皐月賞の主役として堂々と名乗り出る内容でした!!」
テン「……はぁっ、はぁ…………良し…っ!!」
観客A「危うかったけど、やっぱりテンポイントだったな!」
観客B「トウショウボーイとの直接対決も、これはテンポイントの方が有利かもな!」
テン「………………!」
観客「─────わぁあああぁあああああ!!」
息を切らし…左腕を横に伸ばして、目を閉じながら天を見上げる。
その勇ましい姿に、観客は声を上げずに居られなかった。
テン「……見ていて下さい、トレーナー様…私は、取ります…。
……必ず…GIレースを…!!」
トウショウボーイ「それでこそ……好敵手……。
────だが、最後に勝つのは……この俺だ……テンポイント!!」
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