瑠璃色のキミ達と   作:A×K(アツシくん)

13 / 183
1番大事なシーンはほぼ作者が思ってたことを書いてます。
解釈一致だと嬉しみ。


第13レース~分水嶺~

デビュー戦から数日後。

メジロ家の保養所に

メジロアルダンの様子を見に来ると─────。

 

ばあや「おはようございます、トレーナー様」

「おはようございます…」

 

頭を下げ、要件を言おうとした……が。

ばあや「アルダンお嬢様にお会いになりに来られたのでしょう。

ご案内いたします、どうぞこちらに─────」

 

どうやら全てお見通しだったらしく、中へと案内された。

(アルダン……)

 

 

 

………………………………。

 

 

メジロアルダンのばあやさんに案内されたのは

保養所に隣接する林であり、メジロアルダンはそこで森林浴をしていた。

 

アルダン「────トレーナーさん、ごきげんよう。

来てくださったのですね。」

「……体の調子はどうだ?」

 

アルダン「問題ありません。

主治医からも、ひとまずはデビュー戦前の状態まで回復したことを確認していただいています。」

「……良かった」

 

ホッと胸を撫で下ろしていると、アルダンが提案してきた。

アルダン「……トレーナーさん。

よろしければ少々、歩きませんか?

少し、2人だけで話したいことがあります。」

 

 

…………………………。

 

メジロアルダンに連れられて着いた場所は

林を抜けたところにある高台だった。

 

アルダン「────トレーナーさん。

''今''、ここが貴方にとっての分水嶺です。」

 

分水嶺……さしずめ、運命の分かれ道ってところか。

「……それって」

アルダン「…トレーナーさんが先日、私の主治医から聞かされた内容は、おおかた察しております。」

 

アルダン「彼は当家の誇る名医。

私を幼少から知り、ばあやと同じく信頼に足る人物です。」

アルダン「故に、彼が私について述べたことは…………

全て真実に近いとお思いください。」

 

アルダン「ただ─────」

その時、アルダンの雰囲気が少し変わった気がした。

 

アルダン「それでも。たとえ私の体が、そうであったとしても。

進む道が、薄氷の如き脆さであっても────」

アルダン「私は決して、退くことはいたしません。」

「……アルダン」

 

アルダン「ですが、これはあくまで私の選択。

私の意志であって…トレーナーさんの意志ではありません。」

アルダン「……私がデビュー戦の時点で倒れるような、頼りない、朧気なウマ娘であることをトレーナーさんはよく理解をしたかと思います。」

 

アルダン「そのような私と共に行くことで

トレーナーさんは……──────」

アルダン「欺様に脆弱で、危うい、空疎な

ガラス細工の如きウマ娘を─────」

 

アルダン「壊すかもしれない覚悟は、お有りですか?」

 

声はいつものように穏やかだが、目は悲しみに溢れていた。

まるで、こちらを突き放すかのように……。

「……あの後、すごく考えた。

俺が手にしてるガラス細工のようなウマ娘は…ちょっとでも力を込めたら壊れちゃうような…綺麗だけど、繊細で儚い存在なんだって。

……それでも。

それでも、俺は…壊す覚悟は……ある。」

 

 

 

アルダン「─────」

「でも……絶対に壊したりなんかしない。

壊してたまるか、いつまでもずっとずっと、大事にするんだって………!」

 

メジロアルダンの瞳が、何かを問うように自分に向けられている。

彼女に示すべき答えは……ずっと前から決まっていた。

 

「……アルダン、キミに見て欲しいものがある。」

アルダン「見て欲しい……もの…?」

 

カバンから持参したタブレット端末を差し出した。

アルダン「これは…出走ローテーションと、トレーニングメニュー…?

しかも、いくつかパターンが…。」

 

画面をスクロールする度に、アルダンの目が驚きの目と変わる。

アルダン「……っ、まさかこれは────」

「それが、俺の覚悟…キミと一緒にどこまでも進むって覚悟」

アルダン「……!」

 

アルダンに手渡したタブレット端末には

ジュニア級以降の彼女の出走ローテーション、トレーニングメニューが表示されている。

 

そしてそれは、メジロアルダンの今後様々な状態を想定し

自分が考えうる限りのパターンを全てまとめたものだ。

この日、このメニューが出来なかった時の別の提案……。

体調面を考慮したいくつかの選択肢をまとめたメニュー。

 

休日の体調チェック、練習終わりのミーティングでのチェック項目。

自分が出来ることは、これくらいかもしれない。

時間の許す限り…寝る間も、食べる間も惜しんで作成した。

けど、アルダンのためなら、これくらい何とでもない。

……まぁ、寝不足でここまでよく来れたなって思ってはいるけど。

 

アルダン「トレーナーさんは、私の先の話を……

言葉の意味を…理解していますか……?」

理解している。

彼女があえて突き放すように、試すように問うているのも。

それが、彼女の優しさだということも────

 

だが、そんな優しさは求めていない。

自分が……俺が求めているのは。

「俺は…アルダンのトレーナーでいたい」

アルダン「っ……!!」

 

 

彼女のトレーナーでいたいからこそ、考えた。

自分がトレーナーとしてすべきことはなにか。

求められていることはなにか、を。

 

ずっとずっと考えて考えて…考え抜いた。

そして、胸に決まった答えを…今、ここでメジロアルダンに伝えたい、と。

自分は…メジロアルダンのトレーナーとして──────

 

「君の光を、潰えさせたりしない

だって、俺は……キミの輝きが好きだから」

メジロアルダンの体をトレーナーとして守り

これから先もずっと彼女がレースで輝けるようにする。

 

そして、''今''に生き、''今''のみを見つける彼女のために───

「俺が……キミの…アルダンの未来を、描くよ」

アルダン「──────」

 

アルダン「……………………。」

何も言わず、アルダンが近寄ってきた。

そして、そのまま……こちらの胸に収まってきた。

 

(……泣い、てる…)

すすり泣く声が、胸の中で静かに聞こえてきた。

 

アルダン「……デビュー戦の後。

保養所に運ばれた日の夜。

……夢を、見たんです。」

 

アルダン「─────ガラスの割れる音が響く夢を。」

アルダン「ひび割れた私の体から

なにもかもが零れていく感触が、生々しく、寒々しく────」

 

アルダン「その夢が忘れられなくて……

自分の気持ちに嘘をついて、トレーナーさんを試すような無礼を働いてしまいました。

……大変、申し訳ありません。」

「ううん、試してくれて、むしろお礼を言いたいよ。」

 

アルダン「えっ───────」

顔を上げたアルダン…その目は真っ赤で、まだ涙が流れていた。

 

「俺も改めて覚悟を決められたから

アルダンのことを…自分の人生賭けてでも守ってあげたいって」

アルダン「……トレーナーさん。」

 

「キミと共に歩ませて欲しい」

アルダン「こちらこそ、よろしくお願いします……っ。」

アルダン「どうか……これからの道行きも、私と共に─────」

「行くよ、どこまでも」

 

 

アルダン「……ごめんなさい、もう少し…このままでも、よろしいでしょうか……。」

「……いいよ、アルダンの気が済むまで…ずっとこうしてあげるから」

縋りつくアルダンの背中を優しくさするのであった。

 

 

アルダン(怖い夢だった……けど、起きたら…トレーナーさんに会いたくなってしまって…声が聞きたくて…安心したかった

この陽だまりに…私はずっと立っていたい…この人と共に……ずっと……)

 

 

 

─────────────────────

 

 

その後、メジロアルダンと共に

彼女の主治医と話をすることになり───────

 

主治医「──お嬢様とトレーナー様の意志は承知いたしました。

主治医として、お嬢様が学園に戻ることを許可させていただきます。」

 

「…っ……ありがとうございます!」

アルダン「ありがとうございます。」

 

主治医「ですが、今後もしお嬢様の身にまた

何かあった際には、この許可を取り下げる可能性があることをご留意ください。」

「はい、重々承知しております。」

 

主治医「……いち個人である私としては

お2人の選んだ道を応援しております。」

主治医「何か相談がありましたら

遠慮なくお申し付けください。

では、私はこれで失礼いたします───────」

 

アルダン「……彼も、トレーナーさんのことを信頼しているようですね。」

主治医が去った後、アルダンが小さく呟いた。

「その信頼を裏切らないように、今まで以上に頑張らないとな」

アルダン「ふふっ、それは私も、ですね。」

 

 

──────────────────────

 

メジロアルダンのばあやさんに

保養所から学園までメジロアルダンと共に送ってもらうと─────

 

メジロアルダン「ばあや。

送っていただきありがとうございました。」

 

ばあや「本日の件、旦那様と奥様には

私の方から既にお伝えしております故──────」

アルダン「ええ。

私からも先ほど、お父様とお母様に文章でお伝えいたしました。」

 

アルダン(永遠を刻みたいほど、大事な…心から慕っている方が…出来た、と……)

アルダン「寮に戻り次第……改めて、連絡させていただきます。」

 

ばあや「お嬢様。この先の道行き…

どうか、お気をつけてくださいませ。」

アルダン「はい。

''最も苦しく険しいもの''…それを、ゆめゆめ忘れないようにいたします。」

 

ばあや「私の心は、常に貴方と在ります。ご武運を。」

手を取り、想いを乗せるばあやさん。

そして、こちらを向いた。

 

ばあや「─────トレーナー様」

「はい」

ばあや「……お嬢様をどうか、よろしくお願いいたします。」

「必ず、彼女を守ると…ここで誓います…必ず」

自分のその言葉を聞くと、メジロアルダンのばあやさんは

深々と頭を下げ、それ以上の言葉を残さず去っていった。

 

 

 

………………………………。

 

【トレーナー室】

 

アルダン「……今日は、迎えに来てくださって

ありがとうございました。」

「……俺も、アルダンのことが気になって仕方なかったから」

 

アルダン「……ですが、トレーナーさんっ」

ムスッとした顔で、両頬を掴むアルダン。

 

「あ、アルダン……っ?」

アルダン「酷いクマですよ……あまり、寝てないですね?」

「あ、うん…さっき見せたのを作るのに必死で…」

アルダン「守ると言ってくださった方が、これでは元も子もありませんよ。」

「……だ、よな…説得力ないよな…」

 

アルダン「……ですが、頑張りすぎちゃう貴方もとても素敵です。

どうでしょう、少し仮眠を取られては。」

「でも、今後のことを話さないと……。」

 

アルダン「私はもう少し、トレーナーさんが作ってくださったメニューに目を通したいので…大丈夫です、起こしますから」

ソファーに腰掛け、タブレットを開くアルダン。

確かに、一気に疲れが押し寄せてきているのは事実。

 

「……ごめん、じゃあ1時間だけ……。」

アルダン「はい、おやすみなさいませ。」

 

 

その言葉が魔法のように眠りの世界へと誘った。

 

 

 

アルダン(本当によく作り込まれてる……

ここまで作るのに、どれだけの尽力を……。)

熟睡した隣の人の顔を見る。

 

アルダン「……私のために…何から何まで…ありがとうございます。」

眠ってて聞こえないと分かってて、お礼の言葉と微笑むを向けるメジロアルダン。

 

アルダン「……少し、片付けをしておいた方がよろしいでしょうか?」

よく見れば、机の上には缶や資料が乱雑に置かれていた。

立ち上がり、片付けをしよう……と、思った時だった。

 

「ん……んんっ……」

アルダン「ひゃっ……!///」

体勢が崩れたトレーナーが、寄りかかるようにアルダンの方に倒れてきた。

 

アルダン「もう……トレーナーさんったら…///」

髪を撫でるアルダン。

 

アルダン「……ありがとうございます、トレーナーさん。

私の輝きが…好き、と言ってくださり…本当に……///」

 

 

 

 

 

 

……………………。

 

 

【約1時間後】

 

 

「んっ……むぅ…」

アルダン「起きてください、トレーナーさん」

 

「アルダン…………ぁ……んぅ!?」

起きた瞬間、アルダンの顔が近くにあった。

急いで離れると、アルダンはクスクスと笑った。

 

アルダン「相当お疲れのようですね。」

「ご、ごめん、俺……っ!」

アルダン「気にしてないので構いませんよ。

それに……対価として可愛らしい寝顔も見れましたし♪」

「……あ、アルダン……」

 

アルダン「それで、目を通して分かったことがあります。」

「……ど、どうした?」

アルダン「私がジュニア級で走るレースの采配を

全てトレーナーさんにお願いしてもよろしいでしょうか」

 

「……もちろん、だけど全部決めていいのか?」

アルダン「はい。私も…新たに決めたことか出来ました。」

 

離れた距離がまた、近くなる。

指で唇に触れるアルダンの仕草に、ドキッとしてしまった。

 

アルダン「────トレーナーさんが示してくださった

描いてくれた''未来''に、添ってみよう、と。」

「アル……ダン…。」

アルダン「私の積み重ねるべき''今''を

どうかお示しください。トレーナーさん。」

 

その言葉と、表情を見て

メジロアルダンが以前よりも…自分を頼ってくれてることが感じられた。

決死の覚悟を秘めた彼女をこれからも

こうやって支えていきたい。

そんな想いが胸の内から湧き上がってくる。

 

 

「少しずつ、強くなろうな」

アルダン「はい、トレーナーさんとなら…どこまででも。」




評価・感想・お気に入り登録
よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。