【トレーナー室】
テン「…………………………。」
ホクト「……………………。」
エース(流石の2人もあの敗戦は応えたようだな……いつも馬鹿みたいに騒がしいホクトもずっと俯いたままだしよ……。)
シュヴァル(何か言いたい……けど、今度は僕のレースも控えている…し……。)
アルダン(トレーナーさんは……特に何か言う事も無さそうですね…。)
テン「……すいません、少し走ってきます。」
ホクト「………………。」
「……あぁ、分かった。」
シュヴァル「えっ、で、でも……っ。」
テン「ご心配なさらずに……無理はしません…少し、頭を冷やして来るだけです…。」
そう言い残すと、テンポイントは静かにトレーナー室を後にした。
ホクト「……ごめん、私も……少し外の空気吸ってくる…。」
アルダン「……あっ……ホクトさん……。」
とぼとぼと、テンポイントの後を追うようにホクトベガもトレーナー室を出ていってしまった。
残されたトレーナーとジュピターチームの3人が話を始める。
エース「なぁ……大丈夫なのかよ?」
シュヴァル「ここ数日……ずっとあの調子です…。」
アルダン「敗戦によるショック…痛いほど分かります……しかし…。」
「……みんなの言いたい気持ちは、よく分かるよ。」
じっと3人を見つめ、訥々と話し始めるトレーナー。
「……でも、それ以上に…あの2人が自分のため、
……それでも、何かトレーナーとして言うべき事はある……と、喉まで出かかったが言葉を飲み込んだ。
「……でも、あの2人は自分達でその事実と次どうするのかを考えていると思う……どう向き合うかは……自分達次第……だ。」
アルダン「……信じてるのですね、あの2人の事を。」
「テンやホクトだけじゃない…みんなの事を信じてるから。
そんなやわなハートの持ち主じゃないってことくらい……な。」
エース「でもよぉ……このままだと2人ともクラシック第2戦の
あんまり時間無い様にも思えるんだけどよ……。」
「……そうだね、時間は……無い。」
シュヴァル「じゃ、じゃあ……。」
「でも、きっと答えは直ぐに出ると思うよ……俺はそう信じてる。」
アルダン「……トレーナーさん……。」
「悔しい思いをした分だけ、泥臭く立ち上がって、何度でも前に進んでくれるはずだ
アルもエースも、シュヴァルも……そうやって今日まで走り抜いてきたじゃんか。」
アルダン「……えぇ、そうですね。」
エース「……まっ、何時でも相談に乗ってやるぜ、チームメイト、だしな。」
シュヴァル「……僕も、2人の気持ちに感化出来る走りを……します……っ。」
…………………………………………………………
【トレーニングコース】
ホクト(はぁ……何やってんだろ、私……。)
ホクト(走る気力も、食欲もあんまり無いな……最後にぐっすり寝れたの…何時だっけな……。)
ホクト「……はぁ………………。」
ホクト(結局…テンにも、言葉をかけたりかけられたりしてないな……まぁ、無理もないよね……テンだって悔しい負け方……しちゃったもんね。)
テン「……………………。」
ホクト「………………あっ……(やばっ、テン居たんだ……。)」
テン「…………。」
ホクト「…………ごめん、場所変えるね……。」
テン「……待ってください。」
ホクト「………………っ。」
テン「……少し、お話をしませんか?」
ホクト「……………………うん。」
2人が横に並び、静かにトレーニングコースを見つめる。
先に口を開いたのは─────。
テン「……まず……謝らなければいけない事があります。」
ホクト「………………。」
テン「桜花賞の後……貴方が寮で泣いてる所を…寝たフリをして聞いてしまいました。」
ホクト「………………そ、っか……。」
テン「……その、様子を見て……私が背中を押したい…貴方の気持ちも走りに乗せて勝ちたい…その一心で皐月賞に臨みました。」
言い終わると、テンポイントは俯いた。
テン「……ですが…すいません、貴方との約束……果たせませんでした。」
ホクト「……テン……。」
テン「……言い訳は出来ません、私は……弱かった……それが2着という結果に繋がった……。」
ホクト「それを言ったら……私だって……。」
テン「……似ていますね……私たち…どこまでも。」
ホクト「…………………………。」
テン「……ですが…負けっぱなしは……嫌です、私は勝った姿を…届けたいんです。
トレーナー様にも……''ホクトベガ…貴方にも''」
ホクト「……テンポイント……。」
テン「……それに、今だから言えるんです…貴方が言ってくれたあの言葉…凄く嬉しかったんです。」
ホクト「……あの言葉……?」
テン「─────私が一等星になって、テンポイント…貴方がその近くを走る流れ星みたいな存在になる」
ホクト「………………ぁ……。」
テン「今まで1人で……そんな大事なパートナーが出来るなんて……思いもしませんでしたから。」
そう言って、胸に手を置き……ホクトベガに向かい合うテンポイント。
テン「……だから……下を向くのは…この瞬間までです。
私は……前を向きます…何度だって。
トレーナー様と……貴方が居るから。」
ホクト「……テン……ポイント……。」
テン「貴方は……どうしますか?」
ホクト「……………………………………。」
目を閉じ、グッと拳を握るホクトベガ。
ホクト「……ズルいよ……いつもそうやって……良いことばっかり言って…。」
テン「……ホクトベガ……。」
ホクト「…………ぁああああああっ!!!
もうっ!!!クヨクヨすんな、私!!……走るよ、テンポイント!!!」
テン「……ふふっ、制服姿ですが……奇遇ですね、私も同じ事を考えてました。」
ホクト「何処までも一緒なんだね、私たち……っ!!!」
そう言って、走り出すテンポイントとホクトベガ。
自主トレーニングを行ってたウマ娘達が驚きの表情を浮かべていたが
2人は何処吹く風で─────
ホクト「……ははっ!何か気持ちいいね、テンポイント!」
テン「えぇ、全くです……!」
笑いながら走っていた。
……………………………………………………
【トレーナー室】
ホクト「………………ごめんなさい!!」
テン「……………………。」
トレーナー室に戻った途端、頭を下げるホクトベガ。
そして連鎖するようにテンポイントも静かに頭を下げた。
エース「お前ら……。」
シュヴァル「え、と……?」
アルダン「……。」
ホクト「正直、弱気になって……走りたくないって思ったりした。
でも……下を向くのは……もうやめた!
私は……頑張る!足掻いて足掻いて………前を走る!
トレくんとチームと……テンポイントのために!」
「………………ホクト。」
テン「……私も同じです。
言い訳はしません、正直完敗でした……約束を果たせず、期待を裏切ってしまう結果に自責の念が募るばかりでした。
……ですが、私は1人ではありません……必ず…期待に応えます。
この身命に代えても……必ず……ホクトベガと共に!」
「……テン。」
2人の内なる気持ちを聞いて……安堵の息を漏らすトレーナー。
エース「……お、お前ら~っ!」
ホクト「わ、わわっ……!」
テン「……エース……さん……っ?」
嬉しくなったのか、エースが2人に飛びつく。
エース「熱くなる言葉言ってくれるじゃねぇか!
そうだよな、負けっぱなしなんか悔しいもんな!やるぞ、2人とも!」
アルダン「ふふっ、ではトレーニングをしましょう。」
ホクト「あ、いや……既に済ませたと言うか……。」
シュヴァル「す、済ませた……???」
テン「……すいません、居ても立ってもいられず……制服のまま2人でトレーニングコースを走ってました。」
エース「ははっ!良いぞその意気だぜ!!」
アルダン「なるほど……通りで少し汚れていらっしゃるのですね。」
「2人共なぁ……。」
ホクト「えへへ……。」
テン「す、すいません……。」
そう言って謝る2人だが、その顔は晴れやかなものだった。
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