【とある日】
(うーん、京都レース場に持っていく物はこんなもんかな)
春の天皇賞に向けて買い出しを行って帰る途中……。
???「失礼、そこの御仁。」
突然、後ろから声をかけられて。
振り向いてみると……。
(テン?…………に、よく似たウマ娘か……。)
キリッとした目付きで金髪を結ったウマ娘が居た。
???「突然失礼します、こちら……御仁のでしょうか?」
差し出されたのは、男物の財布だった。
「えっ?…………うわっ!!」
自分のズボンを物色すると、財布が無いことに気付いた。
「あ、ありがとう……!!」
手渡された財布を受け取ると、そのウマ娘は真剣な表情を浮かべたままだった。
「……えっと…どうかした?」
???「いえ、私が盗った……などと疑ったりしないのですね。」
なるほど、訳も聞かずに受け取った事に対しての印象…という事だろうか。
「君がそんな事するウマ娘には見えないから、目を見れば分かるよ。」
その問いに、金髪のウマ娘はフッと口角を上げた。
???「申し遅れました、私…''デュランダル''と申します。
貴方は…トレセン学園のトレーナーさんとお見受けしました。
以後、お見知り置きを。」
ちらっと襟元のバッジを目にしたデュランダルは頭を下げた。
「そっか、よろしくね、デュランダル。」
デュラ「……事の経緯ですが……。」
律儀にデュランダルは財布の落とした状況を説明してくれた。
同じ帰り道なので、話しながら歩く事にした。
「……じゃあ、俺が買い物してる時に後ろから誰かが盗った……って事か。」
デュラ「はい、その様子を私が目撃しました。」
「でも、俺に直接伝えてくれれば良かったのに……。」
デュラ「───それは、私の騎士道に反します。」
───騎士道。
その言葉と共に、グッと拳を握るデュランダル。
デュラ「困ってる民を…悪事を見逃せませんから。」
「それで……その後、どうしたの?」
デュラ「……お聞きになりますか?」
「……う、うん。」
デュラ「簡単なことです、ちょうど清掃活動をしていた方から箒をお借りして撃退しました。」
「……げ、撃退……。」
デュラ「最初は威圧して取り返そうと思ったのですが……。
反抗してきたので、四の剣 ディオニュシウスの雷撃で一網打尽です。
その後、ちゃんと警察に突き出しました。」
「……え、えっと……。」
色々突っ込みたくなったが……詳しい事は聞かないでおこう。
デュラ「……そうですか、貴方が…チームジュピターのトレーナーさんでしたか。」
「知ってるのか?」
デュラ「えぇ、色々と耳に挟みますから。」
「そうか……(チームの存在も…大きくなってきたんだな)」
デュラ「まだ私は模擬レースにも参加したことないですが……。
年内にデビューしたいと思ってます。
それまで…自慢の聖剣の如く末脚を磨きたいと思っています。」
「……そうか。」
話を聞くと、短距離路線をメインに戦うつもりらしい。
同期のメンバーも短距離路線が多いようだ。
(……そう言えば、ウチのメンバーに短距離向きのウマ娘は居ないな……。
テンはデビュー戦が短距離だったりはしたが……。)
もしかしたら……と、一瞬考えたが…まだ知り合ったばかりのウマ娘にそんな提案は出来ないと思い、自分の頭の中に留めておいた。
「今日のお礼もしたい、だから…どこかでまた会ったらトレーニング見てあげるよ。」
デュラ「ありがとうございます。」
そうこうしてる内に……トレセン学園に着いた。
「おっと、もう着いたか……。」
デュラ「あっという間でしたね。」
「今日は本当にありがとうね、それじゃ。」
デュラ「……………………。」
デュランダルが何か言いたげだった様子だが……そのまま会釈してその場を去った。
デュラ(…何も言わずに、自分が車道側を歩いたりする紳士的な素振り……。
なよなよしてるかと思ったら…レースに対する話をしたりしてる時の目は勇敢その物……面白いトレーナーですね。)
…………………………………………………………
【次の日】
「って事があってな。」
エース「……ったく、しっかりしろよ?」
「あはは……面目ない…。」
アルダン「そして、まだ模擬レースをしたことが無いウマ娘……。
デュランダルさんと出会ったと……。」
ホクト「あ~、あの子デュランダルって言うんだ~。」
テン「知ってるのですか?」
驚きの表情でテンポイントはホクトベガを見た。
ホクト「いや~、後ろ姿でちょいテンテンと似てたから間違えて声掛けちゃった♪」
テン「……全く、何してるのですか……。」
やれやれ……と呆れるテンポイント。
テン(ですが…私と似てる…と言うのは少し気になりますね。)
シュヴァル「短距離路線の……ウマ娘……。」
アルダン「確かに、今の
エース「って事は……そういう事か、トレーナー?」
「ま、まだ早いから!!」
ホクト「まだ……って事は?」
「……まぁ……頃合が来れば…スカウトしてみるのはあり……かなって。」
テン「ふむ……私はトレーナー様のご意向に従います。」
シュヴァル「もしそうなったら……6人目、ですか……。」
アルダン「ふふっ、賑やかになりすぎて少しこのお部屋では狭くなってしまいますね。」
「ま、まだ決まった事じゃ……!」
エース「とか言いつつ…ちょっと期待してるんだろ?」
「うぐ……。」
テン「その熱い想い…きっと伝わりますよ。」
「……だと良いけどなぁ。」
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