【
ホクト「……………………。」
夜のトレーニングコースに走ること無く1人立ちすくむホクトベガ。
ただ静かに、夜空を見上げていた。
ホクト(今日は……いつもより鮮明に見える……。)
目に止まったのは、眩いほど光る一等星。
ホクト(……いや、今までも見えてたのかもしれないな……私に見る余裕が無かっただけで…。)
ふと、ダートコースが目に入ったホクトベガは、静かに歩き始める。
ホクト「………………。」
ジリッとダートコースに足を踏み入れるホクトベガ。
当然、自主練を行っているウマ娘達が自分の前を通り過ぎる姿を見送りながら本人は……静かにダートコースの砂を一掴み手に取る。
ホクト「…………よっ!!」
そして、そのまま……砂を夜空に向かって撒いた。
ホクト「………………。」
何故このような行為をしたのか分からない……けど、砂が全て落ちる頃……ホクトベガは静かに笑った。
…………………………………………
【寮部屋】
ホクト「ただいま。」
テン「おかえりなさい、ホクト。」
いつも通り部屋に戻ると、部屋着に身を纏ったテンポイントが静かに微笑みかける。
テン「明日は本番ですので、早めに…………おや?」
何かに気づいたテンポイントが、ホクトベガに近寄る。
ホクト「……ど、どうしたの?」
テン「髪の毛の所々に砂が……何かあったのですか?」
その言葉に、ホクトベガはサッと手で頭を抑える。
ホクト「あ、あぁ~……これは……。」
テン「転んだりしなければこのような事は起きませんが……怪我等大丈夫でしょうか?」
ホクト「……あ~…いや、実はね…?」
テン「………………砂を、撒いた……?」
ホクト「あ、あはは~…なんと言うか思いつきというか…ほ、ほら神聖な戦いの場に塩を撒くとかあるじゃん?それの派生というか……。」
色々と言い訳近い言葉を並べるホクトベガの姿を見て、テンポイントは思わず吹き出した。
テン「……ふふっ、おかしなホクトですね。」
ホクト「わ、笑うなし~……っ!」
テン「申し訳ありません、ですが……''貴方のそういう生真面目な所、私は好きですよ''」
ホクト「……ん、ありがと……テンポイント。」
テン「さっ、砂を落として寝ましょう。」
ホクト「分かった。」
テンポイントに身を預けて……髪の毛に付いた砂を拭き取るホクトベガ。
ホクト(明日こそは……必ず……っ。)
1人、闘志を燃やしながら……。
………………………………………………
【
ホクト「……すぅ……はぁ……。」
エース「桜花賞のリベンジマッチ、だな。」
シュヴァル「が、頑張ってください……。」
アルダン「5番人気…ですが、上位との差は僅差です、いつも通り、自分の力を出せば好戦は期待出来ます。」
ホクト「……そう、だね……大丈夫、私は……やれるよ。」
テン「……ホクトベガ。」
ホクト「……行ってくるね、トレくん。」
「ああ、お前らしく……全力を尽くして頑張れ。」
そう言って、数秒目を閉じて息を整えてからホクトベガは控え室を後にした。
実況「さぁ、クラシック戦線トリプル・ティアラは第2戦はここ東京レース場で行われます
解説「今までのレースとは違い、トリプル・ティアラ戦線を戦うウマ娘にとっては未知の距離ですからね番狂わせも大いに期待できるレースとなりそうですね。」
実況「注目はやはり、桜花賞ウマ娘の13番でしょうか。」
解説「そうですね、1番人気の力を存分に見せて欲しいですね。」
実況「しかし、拮抗した人気が物語るように混戦模様が漂う中…
ホクト「…………よしっ……。」
テン(……ホクト、ベガ。)
デュラ「すみません、遅れました。」
エース「んいや、いいタイミングだ。」
アルダン「今から発走ですよ。」
デュラ「……ホクトさんのご様子は?」
「集中モード……と言ったところか」
シュヴァル「れ、レースになるといつもの雰囲気じゃなくなって…驚かされます。」
デュラ「……そう、ですか。」
実況「さぁ、各ウマ娘ゲート入りが完了しまして─────」
─────ガッコン!
実況「今、スタートしました!
少しバラついたスタートの中、正面スタンド前を18人のウマ娘達が駆け抜けていきます。
お聞きください、この歓声を!」
観客達「わぁああああぁーーーーーーーっ!」
実況「ゲート入りの時点では無かった歓声がスタンド前を通過する時にウマ娘に向かって大きく響きます!」
ホクト(5……いや、6番手……うん、先行策……良いポジション。)
実況「さぁ、1コーナーを通過して、これから各ウマ娘が第2コーナーに向かいます。」
ホクト(あのウマ娘……ずっと先頭で行く気だ……それに比べて……)
実況「上位人気のウマ娘達が先団に取り付く中、レースが淡々と進められていきます。
1000mの通過タイムは60秒6と平均ペースか。」
ホクト(……まだ……まだ……っ)
実況「先頭から最後方までグッと詰まる中、各ウマ娘が3コーナーを通過して大欅を通ります!」
ホクト「……スパート……っ!!!」
実況「さぁ、東京レース場の長い長い直線に差し掛かった!!」
ホクト「……伸びろ、伸びろ……っ!!」
実況「抜け出しにかかる13番!しかし後続も迫ってくる!」
ホクト「まだ、まだまだ……っ!!!」
実況「しかし抜け出した13番!!リードがなかなか縮まらない!」
ホクト「ぐぅっ……!!!!」
実況「しかし、どうやらこのままだ!!!
後続を寄せつけないまま、今、ゴーーーールインッ!!!!
桜花賞ウマ娘、堂々と2冠達成だーーーーーーっ!!!!」
観客達「わぁあああああぁーーーーーっ!!!!」
ホクト「ぐっ……はぁ……はぁ……っ……!」
エース「……6着か。」
アルダン「……精彩を欠いてしまいましたね。」
シュヴァル「……ホクトさん。」
デュラ(これが、GIレース……。)
テン「……。」
ホクト「……っ……ははっ……強いなぁ……やっぱり……っ。」
しかし、めげることなく……ホクトベガは汗を拭い……笑ってみせた。
ホクト「………………次は……絶対、勝つ!」
そこにはあったのは、燃えたぎる目を宿していたホクトベガの姿があった。
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