年末から年越しにかけてインフルとかいう最悪の流れでしたが
本年もよろしくお願いします。
【翌日】
エース「…………な~、どこに行くんだよ~?」
アルダン「随分と山の中を進んだようですが…。」
俺はチームメンバーを全員連れて昨日訪れた山に訪れた。
もちろん、今から会うウマ娘の事は何も伝えてない。
テン「ふむ…私たちの最後の追い込みトレーニングの可能性はありそうですね。」
ホクト「今のところ険しいって感じはしないけど…。」
シュヴァル「…あ、あの…何か変じゃないですか?」
デュラ「…変、とは…どういうことでしょうか、シュヴァルさん。」
シュヴァル「…い、いえ…僕の勘違いなら良いんですが…
その…山に入る時は鳴いてたセミの声とか…鳥の鳴き声とか…あったんですけど
いつの間にか聞こえなくなって…その代わりに、風が吹いてきてるような…。」
エース「…言われてみりゃ、そうだな。」
シュヴァルの感じた違和感に、チームメンバー一同も足を止めて辺りを見渡す。
確かに、生き物がいる雰囲気もない。
しかも、風が鳴いてるような感覚だった。
アルダン「…トレーナーさん、ここは?」
ホクト「まさかトレくん…迷ったとか言わないよねぇ…?!」
テン「…これは。」
「─────居る。」
チームメンバー「「「「「………え?」」」」」
トレーナーが目にしたのは…1本の大木だった。
その表面には、謎の切り傷があった。
デュラ「これは……鉈のような物で切られた痕ですね。」
エース「分かるのか?」
デュラ「えぇ、刀剣の類はある程度は。
………しかし、ここまでの切れ味…一体…。」
???「─────来たか。」
デュラ「っ、何奴!?」
腰に据えた剣に手をかけるデュランダル。
他のメンバーは、声のする方を探して辺りを見渡した。
デュラ「─────上かっ!」
???「──惜しい。''上だった''じゃな。」
デュラ「何っ…!?」
既に、声のする方向は─────
アルダン「……。」
エース「な、なにモンだ!」
アルダン達の後ろに居た。
デュラ「くっ……!!!(気配に全く気付けなかった…!)」
あの日と同じように、三度笠に懐手…口には枝を咥えたウマ娘…いや
シンザンは立っていた。
テン(何ですか…この絶対なるオーラは…っ…。)
ホクト「…………ウマ…娘…?」
シュヴァル「………と、トレーナー…さん。」
「……やっぱり慣れないな…この気迫は…。」
???「わても好かれない物よのぉ…のう、人の者?」
「…特別にトレーニングを見て貰う事になった…名前は─────」
???「────良い。」
「えっ?」
???「───わての名は、シンザン。」
三度笠を、クイッと上げて目を見せるシンザン。
エース「……シンザン…って……。」
アルダン「名前はお聞きした事がありますが…。」
シンザン「…ふむ、そこの人の者、どうやら信憑性が無いと思われてるやもしれん。」
「そりゃそうだろ…俺も未だに信じきれないくらいだし…。」
ホクト「こ、このウマ娘…授業で聞いた事あるウマ娘だ…!」
テン「…そのような方が、私たちのトレーニングを?」
シンザン「酔狂な人の者に懇願されての。」
シュヴァル「…それって…。」
デュラ(先程からまるで隙がない…それどころか、こちらの動きから何から全て見抜かれてる気がする…。)
シンザン「さて、人の者よ。少々聞いておきたい。
目下レースを間近に控えてる者はおるか?」
「…その端にいる子が京都大賞典。真ん中の子がローズS。
帽子を被ってる子がジャパンC。剣を持ってる子がまだデビュー前。」
シンザン「…ふむ。」
言われた4人に目配せをするシンザン。
シンザン「─────2日だ。」
「え?」
シンザン「1日2名、正味2日目で4名それだけあれば十分よの。」
エース「……アンタの実力は言われなくてもヒシヒシと伝わってくるけどよ…どこでトレーニングすんだ?」
シンザン「ふっ、ついてくるが良い。」
サッと踵を返し、山の奥へと進むシンザン。
アルダン「行きましょう、皆さん。」
ホクト「…う、うん。」
…………………………………………
【しばらくして】
シンザン「この程度の広さがあれば十分勤しめるじゃろう」
森を抜けると、そこには広い平地が広がっていた。
シンザン「ここは学園みたいな整った場所では無い分、脚を鍛えるには持ってこいでの。
わても、時々走りに来ているんじゃよ。」
「…ここで。」
シンザン「──む、走ってみせろという顔をしておるぞ、人の者よ。
…いや、そこの者達も同じような考えのようじゃの。」
エース「──っし、アタシが相手になる!」
シンザン「その心意気や気に入った……が。」
次の瞬間、シンザンが自分の三度笠に手をかけ…遠くへと投げた。
シンザン「───既に機先は制しておるぞ?」
エース「─────なっ…。」
俺とエースの隙間をシンザンは正しく風のように通り過ぎた。
エース(な、なんつーデタラメな速さだよ…っ!?)
当然、追いつけるはずもなく…。
シンザン「─────ふっ。」
自分の手放した三度笠をキャッチし、そのまま被り直した。
エース「…くっ…はぁっ…はぁっ…(ハンデもらっても勝てる気が全くしねぇ…。)」
シンザン「…さて、では…そこの2人、ちこうよれ。」
そう言われて呼び出されたのは、デュランダルとホクトベガだった。
シンザン「まずは走りを見せ給ふ。」
デュラ「…分かりました。」
ホクト「…ん。」
まだ警戒してるのか、ホクトベガも普段の表情ではなく険しい表情だった。
アルダン「トレーナーさん、大丈夫なのでしょうか…?」
「…あれでも、俺がトレセン学園を目指すきっかけをくれたウマ娘なんだよ。
だから…俺は信じてる。」
アルダン「…そうだったのですか、であれば…私はトレーナーさんの意向に賛成します。」
「ありがとうな、アル」
デュラ「─────ハッ!!!」
ホクト「────────っラァッ!!!」
シンザン「………………。」
数本走った後、シンザンが静かに歩み寄る。
シンザン「─────固いな。」
デュラ「…はぁっ、はぁっ…。」
ホクト「…固い…って…。」
シンザン「特にまだデビューしてない方の者。
走りを見るに短距離系…追込脚質と言ったところか。」
デュラ「…!(そこまで見抜かれるなんて…!)」
シンザン「萎縮する必要は無い、特にスピードは上昇の余地があると見受ける。」
デュラ「…はい。」
シンザン「…そして、こちらに敵意を剥き出しにしてる者。」
ホクト「………………。」
シンザン「ふっ、その感情をもっと戦いの場に向けるべき…じゃの。」
ホクト「本気を出してない…とでも?」
シンザン「そうではない、今は筋力を鍛えることを念頭にしているようじゃが
満遍なく鍛えるのが、そちの為になると言うておる。
芝・ダート共に走れそうな走りをしておるからの。」
ホクト「…パワー…だけじゃなく…(二刀流はトレくんと同じこと言ってる…。)」
シンザン「どれ、もう少し細かく助言をしようでは無いか。
他の者にも良い刺激にもなるようだしのぅ。」
シュヴァル(…凄い…ちょっと見ただけなのに劇的に変わってる気がする…)
テン(このウマ娘が…グランプリレースを勝った…ウマ娘…。)
シンザン「走りに迷いを入れるでない。」
デュラ「は、はいっ…!」
ホクト「───…っこなくそぉぉぉっ!!!!!(くそっ…この
エース「……ホクトのやつ、かなりピリついてるな。」
テン「次走の事、謎のウマ娘のプレッシャー…色々感じ取る所があるのでしょう…。」
アルダン「テンさんとシュヴァルさんも気負いせずにいてくださいね。」
シュヴァル「…っ…は、はい!」
テン「……分かりました。」
【しばらくして】
シンザン「ふむ、こんな所じゃろう。」
デュラ「くっ……はぁっ…はぁっ…ご指導…ありがとうございました…!」
ホクト「ま、だまだっ…走れる…っ…!」
シンザン「気概や良し…が、膝が笑うておるぞ。」
ホクト「……くぅっ…!」
シンザン「そろそろ日も落ちる。人の者、連れて帰るが良い。
続きはまた明日にしようかの。」
「あぁ、分かった…帰るよ、デュラ、ホクト。」
デュラ「……はっ。」
ホクト「…分かった…。」
…………………………………………………
【トレセン学園 寮】
ホクト「………………………。」
テン「アイシングはもう大丈夫なのですか。」
ホクト「…テン……。うん、大丈夫。」
テン「…帰ってきてからずっとそんな調子ですが…。
やはり、あのウマ娘の事、ですか?」
ホクト「…お腹の中まで見られてるような…そんな威圧感だった。
喉元に喰らいついてやるって思ってた…けど、まるで歯が立たなかった。
それでも、自分の脚は確かに鍛えられてる感覚がした。
……まだまだ、世界って広いんだね、テンポイント。」
テン「…ええ。ですが、それを知れただけでも成長したと言えるでしょう。」
ホクト「…テンも明日頑張ってね?見た目以上にハードだから…。」
テン「…ふふっ、お気遣いありがとうございます。」
ホクト(……とは言ってみたものの…確実に何かヒントを得れた気がする。
只者じゃないんだね、あのウマ娘は……。)
テン(トレーナー様のために、強くなれるのであれば……私は、なんだって……。)
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