楽しみましょう!
【ジャパンカップ 前日】
シュヴァル(……あっ、キタサンだ……。)
夕日に照らされたコースで自主トレに精を出す
キタサンブラックの姿をシュヴァルグランはその目に捉えた。
シュヴァル「……っ…………。」
勝ちたい気持ちは当然ある。
しかし、何度やっても…何度挑戦しても、勝てっこない。
そんな思いがシュヴァルグランの心を支配する。
シュヴァル(……僕なんかが、偉大なウマ娘になんて…。)
悔しそうにキュッと唇を噛んで帽子に手をかける。
その時だった。
─────ポン。
シュヴァル「……へ……?」
「お疲れ、シュヴァル。」
シュヴァル「と、トレーナーさん……お疲れ…様、です。」
「いよいよ明日はジャパンカップだな。」
埒に腕を置きながらトレーナーは訥々と話し始めた。
「─────やっぱり、怖い?」
シュヴァル「……っ……え、と…その……。」
「……キタサンブラック…シュヴァルが越えたい壁…追い越したい背中…か。」
シュヴァル「僕、なんかが…出来っこ…。」
「いいや、君ならきっと出来るよ、シュヴァル。」
真っ直ぐ、目を見て、そう言い放つトレーナー。
シュヴァル(─────あぁ…いつもこうだ…。)
僕なんかに期待しても…僕なんかが頑張っても……そんな考えを真っ向から否定して
背中を押してくれて……何処までも支えてくれて…。
シュヴァル「(……でも……僕だって…そんな人の思いに報いたくて…。)
……ありがとう、ございます……トレーナーさん。」
「ん、シュヴァルにはシュヴァルの武器がある。
それに良さだって、何個もあるんだから、例えば───」
嬉しそうに話すトレーナーを見て、シュヴァルの決意はより一層固くなるのであった。
………………………………………………………………
【ジャパンカップ 当日】
ホクト「ひゃー、すっごい人の数~…。」
エース「そりゃぁ、東京レース場のGIレースだからな。」
アルダン「去年は、エースさんが優勝したレースでもありますね。」
デュラ「我が騎士団から2年連続の優勝ウマ娘が出るか…胸が高鳴りますね。」
テン「騎士団かは別として…そうですね、期待せずにはいられませんね。」
【控え室】
「……大丈夫そうか?」
シュヴァル「は、はい…今日は何時もと違って…落ち着いて居れてます…。」
「そっか、良かった。」
シュヴァル「……あ、あの…トレーナーさん。」
「ん?」
シュヴァル「ちょっと…手を握ってもいいですか…?」
「手?……良いけど。」
シュヴァル「……ありがとう、ございます。」
大事そうに手を握り、目を細めるシュヴァル。
シュヴァル(……やっぱり…今日も、眩しいな……。)
トレーナーを目を見て、ポツリと心に想うシュヴァルであった。
………………………………
実況「東京レース場、本日のメインレースはジャパンオータムインターナショナルロンジン賞
ジャパンカップ、GI。
芝コース良バ場のコンディション、上空は青空、明るい日差しです。
17人のウマ娘がその中で頂点を競います。」
シュヴァル「………………。」
ホクト「…な、何だか緊張してきた~…!!」
デュラ「あ、貴方が緊張して、ど、どうするんですか…!」
エース「お前らなぁ…。」
「お待たせ、間に合って良かった。」
アルダン「お見送り、お疲れ様です。トレーナーさん。」
テン「ベストポジションを確保しておきました。」
ホクト「って言っても、残り200メートルの最前列だけどもね。」
エース「レースの醍醐味はここに詰まってるって言ったのはどこのどいつだよ…。」
ホクト「いやー、うっかりうっかり。」
実況「各ウマ娘の枠入りが続々と進んで…残り半分くらいでしょうか、ゲートインが行われていきます。
────さぁ、最後の1人がゲートに入りまして…役者が揃いました、GI・ジャパンカップ。」
─────ガッコン!
実況「スタートしました!
揃いました、さぁ先行争いはどのウマ娘か。
4番キタサンブラック僅かに先頭に立ちます。全体的にゆったりとした先行争いです。
まず先頭に立ったのはキタサンブラック、リードは1バ身。」
「やはり逃げ戦法…シュヴァル…は、先行集団4、5番手か。」
アルダン「宝塚記念の時とは違い…よく周りが見えていると思います。」
エース「落ち着いて…スタミナ勝負に賭けるしかねぇよな。」
実況「さぁ、1000メートルは60秒2のペースでいきました。
3コーナーのカーブにこれから向かいます。
キタサンブラック、リードは1バ身半。内からシュヴァルグランが上がって4番手に居ます。」
シュヴァル「…………………………。」
実況「さぁ、キタサンブラックが後続を引き連れて残り600の標識を通過!」
シュヴァル(─────僕は…いつだって後ろ向きで、自信なんかこれっぽっちも無くて
偉大なウマ娘になる……なんて…出来るわけない…ずっとそんな風に思ってた。)
シュヴァル(───でも、
実況「キタサンブラック先頭!キタサンブラック堂々と先頭!」
シュヴァル(─────貴方が居てくれたから。)
シュヴァル(こんな弱い僕を、情けなくて、何時も後ろ向きで……。
でも、トレーナーは…絶対に見捨てることなく、一緒に歩いてくれた。
だから、今ここに、僕がいる、僕は走っている。)
実況「残り400!キタサンブラック先頭!間からシュヴァルグランも追い込んできた!!」
ホクト「き、来た!!」
エース「行けぇ!!シュヴァル!!」
【何回謝ってもいいよ】
シュヴァル【……えっ……。】
【でも、その度に何回でも俺はシュヴァルの事を支えるから】
シュヴァル(────あぁ……そうか。)
僕は、何処までも背中を押してくれるトレーナーさんのために勝ちたいんだ。
偉大なウマ娘になるには、トレーナーさんが居なきゃダメなんだ。
シュヴァル(トレーナーさん……僕は……僕は……トレーナーさんの事が…っ……。)
シュヴァル「──大好きだぁああぁぁッ!!!!」
実況「捉えた捉えた!!!シュヴァルグランが先頭だ!!!」
ホクト「いっけーーー!!」
アルダン「……トレーナーさん。」
「……あぁ、とっても……偉大な姿だ…この姿を忘れはしない。」
実況「シュヴァルグラン、今1着でゴーーーーーールイン!!!
欲しかったGIタイトルを遂にその手に収めました!!!」
シュヴァル「はぁっ、はぁっ……!!!!」
シュヴァル(これが……GIの…1着の景色……。)
シュヴァル「……ははっ…………とっても……。」
シュヴァル「─────とっても……青いや……。」
評価・感想・お気に入り登録
よろしくお願いします。