瑠璃色のキミ達と   作:A×K(アツシくん)

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無料10連という名の闇()


第169レース~闘争心の獣~

【トレーニングコース】

 

スティル「…。」

エース「ま、ウチのチームといえばこれだよな。」

 

ホクト「とにもかくにも、走るのがいっちばーん!」

テン「また序盤に飛ばしすぎたりしないでくださいよ。」

ホクト「げ、限界を超えたその先に見える景色が…!」

デュラ「ホクトさんの場合、見えるのは涅槃なのでは?」

ホクト「@÷*%#+^^~っ!!??」

アル「ふふっ、それだけの元気があれば大丈夫そうですね。」

 

エース「スティルの方は大丈夫か?」

スティル「…はい、ですので……早く…早く……っ。」

シュヴァル「…………っ!」

「シュヴァル、どうした?」

 

シュヴァル「い、いえ…っ、その…初めて会った時から…スティルさんが何だか…怖くて…。」

(…内向的で物静かではあるが…ここまで怯えてる様子は初めてだな。)

 

エース「…アルダン。」

アル「えぇ…()()()()()()()()…。」

 

スティル?「く…ふフっ…あ、はははハはっ…!」

ゆらゆらと揺れながら、笑みを浮かべるスティル。

 

 

 

 

 

────早く…っ…。

 

 

 

「(何だ…何かが起こる…!?)位置について──」

 

 

 

────早く…っ…!!!

 

 

「────スタートっ!」

 

スティル?「喰   ら   わ   セ  て  ?」

 

 

 

 

 

メンバー一同「「「…っ!!!!」」」

突然、猟奇的な目と共にスティルが後方からジュピターメンバーを追いかけた。

 

 

シュヴァル(や、やっぱり…怖い感覚は…気のせいじゃなかった…!)

エース(この総毛立つ感覚…。)

テン(これは、もはや────)

 

(────()()()…というべきか…。)

自分の感じてた冷や汗や息苦しさはこれが原因だったのだとこの時、初めて気が付いた。

 

 

スティル?「ぁあっハはハハハは!!!もっと、もっとぉ!!!

滾らせて、奪わせて、全て吸い尽くさせてぇ!!!!」

ホクト「────っひゅぅっ……。」

デュラ(ホクト、さん……?)

 

皆が困惑している中…ホクトはただ一人、目を閉じて呼吸を整えていた。

スティル?「美味しそうな、獲物ぉっ…見ぃつけたぁっ……!!」

ホクト「────させないよ。」

テン(ホクトも、感化されている…っ!)

エース(アイツもレースになると様子が変わっちまうからな…スティルとは全然違うが…。)

 

 

スティル?「そう…っ、もっともっと…骨の髄まで楽しま──スティル「出て、来ないで…っ!!」

苦しそうな顔でペースが落ちていくスティル。

テン(元に…。)

デュラ(戻った…?)

 

何周か走り終えた後、皆がスティルの方を向いた。

スティル「………っ。」

いたたまれなくなった彼女は、走ってその場を後にしようとした。

 

エース「待てよ。」

しかし、その手をエースが掴んだ。

 

アル「えぇ、まずはお話を聞きましょう。

本人も悩んでいる事とお見受け致します。」

 

テン「…ホクトも、それでいいですか。」

ホクト「…うん。」

 

こうして、俺たちチーム一同は一旦トレーナ室に戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

……………………………………………………

 

 

 

 

【トレーナー室】

 

スティル「……。」

俺の真正面に、スティルは座っている。

扉の前は、エースとデュラが立ち塞いでいる。

 

テン「…。」

アル「…。」

俺の横に座るアルとテンもじっと様子を伺っている。

 

俺から皆に伝えたことは一つ。

────スティルの口から訳を聞くまでこちらからは干渉しない。

…そして、しばらくすると…。

 

 

スティル「…私には…。」

スティルが、弱々しく口を開いた。

 

 

スティル「──私の中に…在るのです。

()()()()()()()()()()()()()。」

やっぱりな…と思いつつ、スティルの言葉を聞き続けた。

 

スティル「それが芽生えたのは…いえ、目覚めたというべきでしょうか。

初めて足を運んだ、トゥインクル・レース…。」

 

スティル「本気のレース…各々の想いや激しい競り合い…そして勝利の凱歌を上げる美しさ…。

その全てに、心を奪われました。」

 

スティル「私も、あの舞台へ飛び込んでみたい…そう思っていました。

ここまでは、皆さんと同じで…普通だったんです。

ですが…最終直線…勝利を目指し、魂の叫びを上げる声を肌で感じました。

その瞬間、背筋が粟立ち…ナニかが囁いたのです。」

 

 

スティル「()()()()()()()()()()宿()()()()()()──と。」

テン「宿縁の…罪科…。」

スティル「私に残ったのは…自他が曖昧になるほどの興奮。

そして…衝動。全てを喰らいたいという、強烈な喉の渇き…。」

 

スティル「……それからです。

何もかもが、狂いだしたのは…。

レースになると…強い相手と巡り合った時になると…()()()が現れるようになったのです。」

 

「あの子…そうだな、仮称を裏スティルとしておこう。

…スティル、キミが葛藤しているのはよく分かった。

……とっても、苦しんでいたんだな。」

スティル「────!」

 

 

 

スティル「……気持ち悪がらないんですか…悍ましいと奇特な目で見ないんですか…。」

「────なら、確かめよう。」

スティル「…確かめる…?」

 

「その裏スティルを呼んでみよう。」

エース「はぁっ!?トレーナー、正気かよ!?」

 

「それが一番手っ取り早しな。」

スティル「…よろしいのですか…あの子は制御不能です。

貴方を…どうにか、してしまうかも…。」

 

テン「そんな事はさせません…トレーナー様は私がお守りします。」

「テン、ありがとうな。」

 

裏スティル「──私を…暴ける…とでも…?」

「……!」

獰猛な目付き、金縛りに遭ったかのように体に緊張感が走る。

 

ホクト「…。」

スティルの後ろに立っていたホクトに目をやると、胸に手を当てて目を閉じていた。

「(そうか、そうだよな…。)…キミが、スティルの中に眠る…本能、なんだね。」

 

裏スティル「えぇ…全て晒して…狂おしいほどに走って…やがて、一つとなる…。

素敵でしょう…?…甘ーい毒に…身を委ねて…理性をも…惑わす…。」

 

身を乗り出して、こちらの頬に手を添えるスティル。

その目は、獲物を捕食しようとする獣そのもの…。

 

 

「────それは違う。」

裏スティル「…。」

言い返されたのが意外だったのか、スティルは怪訝そうな顔をした。

 

裏スティル「────命は遍く獣…よ。」

「…なに?」

裏スティル「相手を打ち負かしたい。誰よりも優れていたい…。

みな、()()()という名の獣を飼っている。貴方達も例外ではないはずよ。」

 

そう言って、周りを見渡すスティル。

裏スティル「スティルインラブは、それが他者よりも…色濃く残っている。

私は、貞淑なんかじゃない。誰よりも気高い、獣なの。」

……それ…でも…。

 

 

裏スティル「ねぇ…ワタシ…満たされたいの…。

ここにいる全員…そして、まだ見ぬ強者を逃がさず…じっくり頂くには…?」

テン「…っ…トレーナー様!」

ギラリと光る瞳と共に、頬に痛みが走った。

爪を掻き立てられていると、分かった時…俺は────

 

 

 

────それでも!!!!!

裏スティル「…っ…!」

「スティルが…苦しみから解放されようとするスティルの()()()を…俺は信じたい。」

裏スティル「可能性…ですって?」

 

「お前…言ったよな。みな闘争心という獣を飼ってるって。

でも…ヒトは違う。誰かを信じ、こうなる・こう出来るという可能性を信じてる。」

裏スティル「くっ……あっハハハははっ…!!

面白ーい…でも…その可能性が崩れ去るのを…じーっくり観察──」

 

その言葉を最後に、スティルの体から力が抜けた。

「…気を失ったのか?」

アル「…そのようですね。」

テン「トレーナー様、今すぐ手当を…っ!」

「あぁ、ありがとうな、テン。」

 

エース「闘争心、か…確かにアタシらウマ娘にはなくてはならない物…だけどよ。」

ホクト「抑えきれないと…こうなっちゃうんだね…トレくん、この後どうするの?」

「…一先ず、やれることをやろう。少しでも苦しみが無くなるのなら…。」

 

シュヴァル「……。」

デュラ「シュヴァルさん、どうかしましたか?」

シュヴァル「あっ…い、いえっ…!!(あの目…確かに怖い、けど…何でだろう…物凄く悲しそうな目をしてた…。)」




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