皐月賞まで、残り1週間。
調整は順調に進んでいった。
アルダン「トレーナーさん。」
「ん?」
アルダン「来週…頑張りましょうね。」
「あぁ、もちろん」
アルダンの目には覚悟と自信…そしてこちらの想いを汲んでくれたような優しい目をしていた。
「……………………。」
アルダン「トレーナーさん、如何なさいましたか?」
「えっ?……あぁ、うん、なんでも。」
ふと、目にピコピコと動く耳が目に入った。
ヒトの耳とは違い、見るからにフサフサそうな耳が。
(でもこれって、触ると今の時代コンプライアンス的にまずいよなぁ……)
信頼されてるトレーナーなら触ってもいいとか聞いたような聞いてないような。
……しかし、こちらの解釈違いで信頼されてないのにそんなお願いしたら……。
アルダン【トレーナーさん…その…そういうのは些か失望というか…。】
「(なんてことに……!!)……うぐぐ…。」
アルダン(トレーナーさん、何を唸っているのでしょうか…。)
確かに、尻尾は手入れした。
でもあれは、アルダンからのお願いでこちらから頼み込んだ訳では無いし……。
アルダン「ふふっ、なにか悩みの種がありそうなお顔ですね♪」
紅茶を机に置いて、無邪気に笑うアルダン。
「ま、まぁ…色々とな」
……もしかして、見透かされてる?
アルダン「手伝えることがごさいましたら、微力ながらお手伝い致します。」
「……う、うん…手伝うというか…まぁ、その時はよろしくな」
アルダン「はい♪」
……やっぱり見透かされてる気しかしないなぁ。
……………………………………。
「ってことで、情報収集してるんだけど」
マックイーン「その矛先が何故私たちなのでしょうか…」
ブライト「アルダンさんの怒った姿ですか~」
カフェテリアに2人を呼んで、話を聞くことに。
「その…アルダンはどこまでちょっかい出しても怒らないのかなって」
マックイーン「……トレーナーさん、案外怖がりですか?」
「マックイーン、限定プリンで手を打とう」
マックイーン「……こほん、怒るような姿を見たことはございませんわ」
ブライト「手のひら返しですわ~」
「……いきなり耳を触ったりしたら…流石に怒るかなぁ」
ブライト「いいえ~、むしろ…くすぐったくて笑ってしまうかもしれませんわ~」
「……そ、そうなの?」
ブライト「私の想像ではありますけど~」
「(……くすぐられるアル…うっ、見てみたいとか思った自分が…)……そ、そっか…ありがとうな」
マックイーン「お話くらいは良いですけど…
トレーナーさん、そろそろアルダンさんと向き合った方がよろしいですわよ」
「ちゃ、ちゃんと向き合ってるよ?!」
マックイーン「そうではなく…はぁ、これは前途多難になりそうですわ……」
「……?」
ブライト「気苦労が絶えませんわ~」
「……???」
マックイーン「ラモーヌさんに蹴られますわよ」
「な、なんでラモーヌが出てくるの……!?」
マックイーン(アルダンさんが言う頓痴気という意味がよーく分かりましたわ……)
…………………………………………。
アルダン(トレーナーさん、何を悩んでおられたのでしょうか…。)
1人、廊下を歩きながら考え込むアルダン。
アルダン「……いっその事、聞いてみるのも……
いえ、トレーナーさんにもプライベートな部分もありますし…。」
どうしたものかと考えあぐねている時……。
???「…………………………えっ……と……。」
キョロキョロしながら、困った顔で辺りを見渡すウマ娘が居た。
アルダン「(……何かあったのでしょうか?)あの、そちらの方」
???「ひっ……!
……あっ、は、はい……なん、ですか…?」
アルダンの顔を見たと同時に、帽子を深く被り、俯くウマ娘。
その様子を見て、アルダンは穏やかな声で喋りかけた。
アルダン「どうか警戒しないでくださいまし、何かお困りのようだったのでお声をかけた次第で…。」
???「……ぁ…その……」
聞こうか聞くまいか悩んでる様子のウマ娘。
その様子をアルダンは静かに待っていた。
???「……そ、その……図書室…は……どこ、です…か。」
アルダン「図書室ですね。下の階にありますよ。
…もしよろしければ、案内しましょうか?」
???「……っ……!!
い、いえっ……その……ありがとう…ございまし、た……!!」
アルダンと目が合ったウマ娘は、体を大きく震わせて
一目散に走り去っていった。
アルダン「あら……まぁ…。」
走り去った方向を見ながら、唖然とするメジロアルダン。
そして、重要なことに気がついた。
アルダン「……お名前、聞きそびれてしまいました。」
???(うぅ……なんでよりによってメジロ家のウマ娘に話しかけられるの……!
僕なんて、恐れ多くて話せないよ……っ。)
────────────────────────
【トレーナー室】
アルダン「……と、言うことがありまして…。」
「へぇ……まぁトレセン学園も広いからなぁ
またどこかで会えるんじゃないかな?」
アルダン「ふふっ、今度お会いしたら
ゆっくりと紅茶を飲みながらお話したいものですね♪」
「アルダンは相変わらずだなぁ…」
アルダン「時にトレーナーさん。」
穏やかだったはずのアルダンの声に緊張が走る。
……いや、顔とかはいつも通りなんだけど…圧を感じる。
アルダン「隠し事…してません?」
「し、してないよ……!?」
アルダン「ブライトから、トレーナーさんとお話したと聞いたのですが……。」
「……あっ…」
壁に耳あり、なんとやら……。
アルダンはにこやかながらも、こちらの答えを待っていた。
下手に嘘をついたりしたら、とんでもないことになりかねない。
「……ご、ごめん!」
アルダン「やっぱり……もう隠し事は無しと仰ったのは
トレーナーさんの方ですよ?」
「返すお言葉も……。」
アルダン「それで、何を隠していたのですか?」
「……言わなきゃダメ?」
アルダン「ダメです」
「……ぐぬ…」
アルダン「………………。」
「……アルの耳を触りたい!!」
アルダン「……………………………………。」
アルダン「………………え???」
打ち明けられたアルダンは、目を丸くしていた。
アルダン「……耳…です、か?」
「その……フサフサで触ってみたいな~…って…
で、でも!…耳や尻尾は触ったりしたら怒るって聞いたことあるし…」
アルダン「…………//////」
意識してしまったのか、アルダンが自分の耳を何度か撫でた。
アルダン「……良い、ですよ…///」
「……えっ?」
アルダン「で、ですが…強く触ったりするのは無しですからね…?///」
「……あ、あぁ…ありがとう…。」
まさかのOKに、キョトンとしてると…アルダンが座ってた自分の足の上に腰掛けた。
「……えっ?」
アルダン「こ、この体勢の方が触りやすいですから…///」
「……あ、う、うん……。」
呆気に取られながらも、了承を得た耳を恐る恐る触る事に。
アルダン「……っ……///」
やはり、触られ慣れてないのか、鋭敏になっているのか…。
アルダンは声を出さないように我慢をしていた。
「おぉ……フサフサ…」
アルダン「トレー…ナー……さん……っ///」
止めて欲しいのか、手を掴むアルダン。
しかし、その声はこちらに聞こえてはいなかった。
「……凄いな…」
アルダン「……っ……!!//////」
遂には、顔を赤くして俯いてしまったメジロアルダン。
一通り堪能させてもらい…パッと手を離した。
「ありがとうな、アル」
アルダン「…………は、い……///」
泣きそうな顔でこちらを見るアルダン。
「……もしかして、耳弱い?」
アルダン「………………//////」
アルダン「言いたく……ありません……///」
(それはもう肯定してるって言ってるようなもんだけど……)
メジロアルダンの意外な一面を知れつつ……。
次触るのはないだろうと思う俺だった……。
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