瑠璃色のキミ達と   作:A×K(アツシくん)

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欲望に抗え(殴)


※オリジナル設定が含まれてます。


第28レース~その名は~

ある日、アルダンと共に廊下を歩いている所だった。

 

 

アルダン「……あら…。」

「どうしたんだ、アル?」

 

アルダンの目線の先に、1人のウマ娘が居た。

???「……ぁ……。」

 

帽子を被ったウマ娘は、アルダンと目が合うと帽子を深く被り…向こう側を向いた。

 

アルダン「ふふっ、こんにちは。」

???「……ぁ……こん…にちは……。」

消え入りそうな声で挨拶を返すウマ娘。

 

「…知り合いか?」

アルダン「以前お話した、図書室の場所を聞いてきたウマ娘ですよ。」

 

こそこそと2人だけで話を進める。

その様子を見ていたウマ娘は、どこか落ち着かない感じでソワソワしていた。

 

アルダン「図書室には、無事に着きましたか?♪」

???「……ぁ……はい…。」

 

アルダン「あの時は、お名前をお聞き出来なかったのですが…

宜しければ教えてくださいませ。」

???「……ぁ……シュヴァル…グラン…です。」

 

何とか聞き取れた名前はシュヴァルグランという名前らしい。

見ない顔だが……中等部だろうか?

 

「(ずいぶん内向的な子だな…)……中等部かな?」

シュヴァル「……はい……春から、この…学園に……。」

 

話にくいのか…目線は合わせない。

……もしかして、怖がらせてしまってるのかもしれない。

 

シュヴァル「(この人…メジロ家のトレーナーなの、かな…)……あの、僕は…これで……。」

 

「呼び止めてごめんな」

アルダン「また何かありましたら、何でもお聞きしてくださいね。」

シュヴァル「……ありがとう…ございます……。」

 

 

シュヴァル(僕なんかに話しかけたって……何にもならないのに……。)

とぼとぼと歩いてその場を去るシュヴァルグラン。

 

 

「……新入生かぁ。」

アルダン「ふふっ、その様子だと…そんな事ですら頭の中に無かった…というような感じですね。」

 

「まぁ、それもあるけど…なんかトレセン学園に来た時の事思い出すなぁって」

アルダン「まぁ、風邪を引かれた頃のですか?♪」

「……思い出させるな……。」

 

アルダン「ふふっ、私も…あの頃の日常に色は無かった事をよく覚えています。」

「……アルは凄く変わったよ、近くで見てたからより一層そう思う」

アルダン「変わったのは私だけではありませんよ、トレーナーさんもとても頼もしくなりましたから♪」

「それって、出会った頃は頼もしくなかった…って聞こえるんだけど…」

 

アルダン「ふふっ、内緒…です♪」

「えぇ……。」

 

アルダン「ですが……新入生が入ったとなると…また選抜レースやジュニア級が賑やかになりますね。」

「だな」

 

アルダン「……やはり、新しい子をスカウトするつもりは…。」

「んー……無いかな…。」

アルダン「……そうですか。(なるほど……)」

「……アル?」

 

アルダン「ウマ娘には各々の考え方やレースに対する想いがあります。

それに触れることで、トレーナーさんの知識やトレーニングメニューを考えたりする能力が上がると思ったのですが…。」

「……そういうものなのかなぁ?」

 

アルダン「ふふっ、その時になれば分かるかもしれませんよ。」

「だといいんだけど…。」

 

 

 

 

 

──────────────────────

 

 

【週末】

 

今日は週末……とはいえ、特にやることもない。

(久しぶりに釣りでも行こうかな)

 

 

トレセン学園に入る前までは、よく釣りを興じていたが……。

なかなか時間も無いし、トレーニングの事や勉強で頭がいっぱいだったからな。

 

「えーっと、確か……あった。」

組み立て式の釣竿が入った箱をクローゼットから取り出す。

 

「……一応、アルダンも誘ってみようかな?」

病院暮らしが続いた彼女にとっては新鮮な体験かもしれないとLANEでメッセージを入れてみる。

 

すると、直ぐに既読が付く。

アルダン【お誘いありがとうございます。

とても魅力的なのですが……その……。】

 

何か渋っているような文言だった。

【何か予定あったかな?】

アルダン【と言うよりも…姉様が、新作の舞台

ダービー卿とアーリントン・ステイヤーズを観るわよと言われて今有無を言わさずに連れ出されまして……。】

 

(な、なんてB級っぽい舞台だよ……)

【わ、分かった…楽しんできてね…?】

アルダン【申し訳ありません。またの機会にお誘いください……。】

 

 

 

 

こうなっては仕方ない、一人で行くか……と、身支度を済まして

俺は部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………。

 

 

 

「ん……っ……気持ちいい青空だな~…」

トレセン学園から歩いて15分位のところにある小さな岬に着いて

大きく伸びをする。

 

「今日はあんまり釣りをしてる人居ないのかな?」

まばらで人が居たが、多いというわけではなかった。

 

「(……まっ、最近はこういう所で釣りを……って人も居ないか)

……って、あれ?」

 

 

1人、静かに竿を垂らす見覚えのある子がいた。

(……声、かけていいのかな?)

怖がられていた気もするし…あんまり気は進まないけど…。

 

 

「……隣、いい?」

シュヴァル「……ぇ……あっ……。」

こちらの顔を見ると、一瞬驚いた顔をしたシュヴァルグランだったが

すぐ水面に視線を移した。

 

「……じゃあ、もう少し離れることにするよ」

シュヴァル「……良い……別に。」

 

……ま、まぁ本人が良いと言うなら……と、俺は横に座らせてもらった。

 

シュヴァル(何故僕はOKを出してしまったのだろうか……。)

シュヴァル(この人…凄いトレーナーとかだったらどうしよう……話しかけられても物怖じせずに答えることなんて……)

 

 

「釣り、好きなの?」

シュヴァル「………………………。」

 

シュヴァル(む、無理だ……ちゃんとした返しなんかできっこない……。)

「たまーに、のんびりしたくて釣りする事あるんだよね

こういう時間の過ごし方もなかなか面白いからね」

 

シュヴァル(な、なんか凄い話しかけてくる……。)

「……あ、ごめん、俺ばっかり話してるよね」

シュヴァル「いえ……大丈夫、です…。」

 

 

2人の間に沈黙が流れる。

シュヴァルグランの方も、どこか気まずそうな顔をしてる気がする。

 

 

(早いとこ釣って帰るか……?)

なんて考えてる時だった。

 

シュヴァル「……わ……っ……。」

隣で大きくしなる竿が見えた。

何か大物がヒットしたようだ。

 

「手伝う!」

シュヴァル「ぇ、あっ…………!」

咄嗟の判断で、一緒に竿を持った。

 

「ふっ……ぬぬっ……!!」

シュヴァル(この人…なんだが、一生懸命だな…ウマ娘のパワーなら落ち着いて巻けば釣れるのに……。)

 

 

「釣れ、そう……っ!?」

シュヴァル「……ん……。」

自分とは真逆で冷静なシュヴァルグランがゆっくりと竿を持ち上げると…魚影が見えてきた。

 

「おいしょーーー!!!」

シュヴァル(変な人……。)

 

 

なかなか大きいサイズの魚が沖へと打ち上げられた。

「おー…ナイスヒット」

シュヴァル「……これ、あげます……。」

 

「え?」

シュヴァル「……ぁ…その…トレーナーが頑張った、から」

「あ、ありがとう……?」

シュヴァル「……ん……」

 

(こんな顔……するんだな。)

お互いに不思議な人だなと感じ合う2人だった……。

 

 

 

 

……………………………………。

 

 

【トレーナー室】

 

「ってことがあってな」

アルダン「まぁ、それは……ふふっ、偶然にしてはシナリオが出来すぎてますね♪」

 

夜、アルダンに今日起きたことを電話していた。

「そっちはどうだった?」

アルダン「姉様が2回目も観るわよ。と…舞い上がって大変でした……。」

「そ、そうなんだ……」

 

アルダン「今度はトレーナーさんもご一緒にどうでしょう?

私も釣りにお供致しますから。」

「いいね、約束だよ。」

 

アルダン「……あ、シュヴァルグランさんも誘いますか?♪」

「いや、なんで、そうなんのっ!」

アルダン「ふふっ、冗談ですよ♪」

 

こうして、しばらくの間…俺とアルダンの話題の種のひとつにシュヴァルグランが入ることとなるのであった……。




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