────自室にて、メジロアルダンの資料をめくる。
(……やっぱり、ダート短距離はちょっと…。)
過去の模擬レース等の結果を一覧しても、それが適性外のレースである事は、火を見るより明らかだ。
本格化を迎えたにも関わらず、選抜レースに出走できない日々が続いてしまったことは事実。
焦る気持ちも理解は出来るのだが……。
「……ん、待てよ…?」
そこで、ようやく気づく。
選抜レースは本来、トレーナー陣からのスカウトを狙うウマ娘たちが、自身の実力を示す場だ。
─────で、あるならば…。
────────────────────
アルダン「……まぁ、私をスカウトしてくださるのですか?」
「……ぜひ!」
そもそも担当トレーナーが決まってしまえば、選抜レースに出走する必要はなくなる。
もともと、偶然とはいえ顔を見かけて…タブレットの件もあり、かなり気になっていた子だ。
これで、適性外という不利な条件の中
出走することはない──────。
アルダン「ふふっ、ありがとうございます。
大変光栄なお話です。」
アルダン「ですが─────申し訳ございません。
お断りさせていただきます。」
「……えっ……」
こちらの動揺を察したのか、すぐにアルダンが声をかける。
アルダン「ああ、どうぞ勘違いなさらないでくださいませ。
原因はトレーナーさんにはございません。」
アルダン「どなたからお話をいただいたとしても、私は同様に断るつもりでしたのでおりましたので。」
アルダン「どうぞ、近く開催されます選抜レースにて、改めてお見定めいただけますでしょうか。」
アルダン「実力を示さずして、スカウトをお受けするわけには参りませんので。」
「……でも、君が出るレースは…」
アルダン「あら…もしや、適性外であるということを仰りたいのでしょうか?」
アルダン「────では、僭越ながらお訊ねいたします、トレーナーさん。」
アルダン「かのトゥインクル・シリーズにおいては、いつ何時も、思い描いた通りのレースを走れるものでしょうか?」
アルダン「ローテーション通りにいかぬこともあるでしょう。
突如として天候が崩れることもあるでしょう。」
アルダン「あるいは不調を抱えたままかもしれません。
不得手なコース取りを強いられるやもしれません。」
アルダン「そうなのだとして、それら全て─────」
アルダン「''勝利を目指さぬ理由に、なりますでしょうか?''」
……メジロアルダンは、微笑む…そして、微笑んだまま、言う。
アルダン「とは言え度を超している、という考え方も理解できます。
しかしながら私は、こうも思うのです。」
アルダン「退くこと一度でも覚えてしまった脚は、勝負を決めるその一瞬においても、前進を躊躇うと。」
「………………」
先日同様、言葉を失う。
その場に立ち尽くすばかりになってしまう。
─────彼女の、あまりに重い覚悟を前にして。
アルダン「少しお話が長くなってしまいましたね。
私は、これにて失礼いたします。」
アルダン「次は是非とも────選抜レースの後にて、お待ちしております。」
────────────────────
【それから……】
「……………………」
来る日も来る日も、トレーニングを重ねるメジロアルダンをただじっと眺めてる自分が居た。
アルダン「ダートの、しかも1200mともなれば序盤にどこまで加速てきるかが重要……。」
アルダン「スタート練習をもう少し重点的にやろうかしら。
反応速度を高めるメニューも取り入れて……。」
やはり懸命に、試行錯誤を重ねながら───。
チヨノオー「アルダンさん!
あのっ…選抜、もうすぐですね。
私で良ければ、トレーニングお付き合いさせてください!」
チヨノオー「併走でも、坂路でも、外周でも、なんでも大丈夫ですよ!」
アルダン「まあ、ありがとうございます、チヨノオーさん。
とても嬉しいお誘いです。」
アルダン「でも、すいません。今日はもう上がらないと。
そろそろ体が熱を持ち始めているようなので。」
チヨノオー「あっ……そ、そうでしたか!
こちらこそ、急にごめんなさい……!!」
アルダン「いえいえ、ぜひまた日を改めて。
ふふっ、その時は貴方と走れる楽しさのあまり、はしゃいでケガをしないように気をつけねばですね。」
チヨノオー「え、ええっ!?あ、アルダンさん…喜べばいいのか心配すればいいのか、わからないですよ~!」
(……他よりも圧倒的に脆い体を抱えても、キミはなお……穏やかに微笑むの、か…)
─────────────────────
【選抜レース本番】
出走直前まで、豪雨が降り続いていた。
泥沼の戦いと化したダート1200m。
そこで、メジロアルダンは────────。
観客【うおぉおおおおっ!!!???】
実況「メジロアルダンが行った!メジロアルダンが行った!
ゴールは目前!1番手をメジロアルダンが猛追っ!!」
アルダン「はっ、はっ、はっ───────」
アルダン「ぁあああああっ!!」
実況「アルダン届くか!アルダン届くか!
今───ゴールインッ!!」
実況「わずかな差で、メジロアルダン!!
最後の1歩、踏み切った!
今回の選抜レース、1着を手にしたのはメジロアルダンですっ!!」
観客【わぁあああああっ!!!!】
ウマ娘C「う、そでしょ……っ?
適性、全然合ってないんじゃなかったの……!?」
新人トレーナーA「め、メジロアルダン!
すまない、少しいいか!?」
ベテラントレーナーA「私も…!
今の走り、素晴らしかったわ。良かったらウチに────」
案の定、メジロアルダンに目をつけたトレーナー達に囲まれようとしていた……が……!!
「……っ……す、すいません!!!
通して……通してください……!!」
人だかりを掻き分けて、必死の想いで彼女の前へと躍り出る。
……そして……。
アルダン「……貴方は……。」
「……約束、通り……来たよ、選抜レースの……後に」
アルダン「…ふふっ、そうですね。」
思いを伝える……その前に、深く息を吸い、呼吸を整えた。
「……君を、スカウトしたい!!」
アルダン「………………。」
メジロアルダンは、しばし黙ったまま、こちらを見つめてきた。
そして────────。
アルダン「ありがとうございます。大変光栄なお話です。」
アルダン「ぜひとも─────お受けいたします。
これよりの道行き、どうか共に歩んでくださいませ。」
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