アルダン(ついに……この日が来ました。
''日本ダービー''……最も運が良いウマ娘が勝つレースと言われてます。)
アルダン(私も…この場に立てる幸運を胸に……。
トレーナーさんを、ダービートレーナーへと……勝利を、届けるために……)
「アル?」
アルダン「はい、如何なさいましたか?」
「……相変わらず、集中力がすごいな。」
アルダン「……すぅ…。」
一点を…ただ、ターフを見つめるアルダン。
その目は、今まで以上に覚悟を決めたような目だった。
実況【───トゥインクル・シリーズを愛する全ての皆々様!
遂にこの時がやって参りました!!】
実況【本日のメインレース!
ウマ娘の祭典!''日本ダービー''です!】
観客「ワァアアァアアアアアーーーーーッ!!!」
マルゼンスキー「ふふっ……今年も最高なレースになりそう。
この空気だけでドキドキしちゃう!」
シュヴァル「…姉さん、何でレース場になんかに来たのさ……」
???「ふふっ、練習のしすぎで根を詰めても仕方ないわ」
???「たまにはリフレッシュも大事大事~♪」
シュヴァル「……別に、僕は……。」
………………………………………。
【地下馬道】
アルダン「──────とうとう、ここまで来ましたね。」
「……あぁ、胸の高鳴りが収まんねぇや」
アルダン「ふふっ、私もです♪
''今''の私を早くターフの上で示したくて、体が疼いているようです。」
「……頼もしいな。」
感心していると、アルダンが小指を握った。
アルダン「……頼もしいのは、トレーナーさんの方ですよ。
───今日まで、ありがとうございました。」
「……アルダン。」
アルダン「私を信じ、支え、導き…
共に限界を超えようとしてくれた貴方に───」
アルダン「ダービートレーナーの称号を、お渡し出来ればと思います。」
「……っ……!」
アルダン「……行って参ります。」
「……あぁ、全力を出し切ってこい!」
アルダン「……はいっ!」
……………………………………………………。
観客「ワァアアァアアアアアーーーーーッ!!!」
観客A「メジロラモーヌの妹……調子良さそうだな。
大舞台なのに落ち着いているぞ。」
観客B「いやいや、本命はやっぱあの2人だろ!」
ヤエノ「それでこそ、打倒するに相応しいというもの……!」
チヨノオー「今日だけは…絶対に……誰にも、負けません!!」
真剣な表情でこちらを見てくる2人を見て
アルダンも気持ちを落ち着かせた。
アルダン「……この身、この時を似て
一縷なれど消えぬ眩耀たらん─────」
アルダン「……メジロアルダン……参ります。」
…………………………………………。
アルダン(……それは、とても不思議で…
時が…自分の時が遅くなったような感覚だった)
アルダン「はぁああぁっ!!!」
ヤエノ「ぐっ…………うおぉおおおっ!!!!」
アルダン(全身全霊の勝負の中……私の心は勝利への渇望しかなかった)
アルダン(しかし、それは……2人も同じ。
だからこそ、だろう……''何か''……''何か''を掴みかけた気がした)
(──────────パリイィイイィイイン!)
アルダン「っ!?(これは……ガラスの割れる……違う、これは……''今''、私が……一歩先に進める……力……!)」
実況【熾烈なトップ争い!!
サクラチヨノオーかメジロアルダンか!!!】
実況【僅かにメジロアルダンが抜け出したか!!】
アルダン「届く……届かせるん……です…っ!!!!!」
チヨノオー「負ける……もん、かぁあああぁっ!!!」
実況【しかし、サクラチヨノオー!盛り返す!!
再び並びかけた!!内か外か!!内か!外か!!!】
アルダン「……くっ……!!(これが、限界を超えた……力…!)」
手が届きかけた、自分の力の先……しかし、その感覚は……
するりと手から零れ落ちてしまった。
実況【勝ったのはサクラチヨノオー!!!!!
日本ダービー、勝ったのはサクラチヨノオーです!!!!】
アルダン「はぁ……はぁ……くっ…!!」
アルダン(これが…勝ちたいという気持ち…負けたくないという強い思い……!)
観客A「サクラチヨノオー!!おめでとうー!!!」
観客B「メジロアルダンも凄かったぞー!!」
アルダン「…チヨノオーさん。」
アルダン(貴方のおかげで私は…さらに強くなる可能性を見出すことが出来ました…)
シュヴァル「……すごい、これが…GIレース」
???「いつか私達も…あの場所に立ちたいわね」
…………………………………。
レースを終えたメジロアルダンを出迎えると……。
アルダン「…ダービートレーナーの称号を
貴方に届けることは出来ませんでした……。」
「ううん、アルダンが俺のために頑張ってくれたって事だけで嬉しさでいっぱいだよ」
アルダン「──────」
こちらの言葉を聞いて…アルダンがより一層、目の色を強くさせる。
アルダン「奇妙な体験をしたんです……聞いてくれますか?」
「うん、もちろん」
アルダン「ゴールが迫るにつれて…熾烈に競り合うにつれて…
隣からの熱や迫力を目の当たりにするにつれて…未知の感覚が私の中で湧き出て──────」
アルダン「何か……言葉に出来ませんが、何か掴めそうな気がしたんです。」
「……自分の中にあった、潜在能力が解き放たれようとしてたのかもね」
アルダン「ですが、その手応えが確かなものになる前に……手から零れ落ち…レースが終わってしまいました……。」
「…なら、次のレースまでに物にし───」
アルダン「────────ですので。」
こちらの言葉よりも先に、アルダンが声を上げた。
アルダン「……次走、''菊花賞''に出させてください。」
「……えっ……?」
思いもよらぬ提案に、言葉を失ってしまった。
アルダンが走れる距離と言ったら、中距離…せめてマイルくらい。
長距離はさすがに……。
「……アル、早る気持ちは分かる、でもそれは……。」
アルダン「……このままでは、ダメなんです……っ!!」
必死な声に思わず後ずさりしてしまった。
アルダンがこんなに声を荒らげたのを初めて見たからだ。
アルダン「……私は、まだ…トレーナーさんに何も返せて…。」
縋るように服を掴み、俯くアルダン。
「落ち着け、何も菊花賞だけじゃなくても……。」
アルダン「お願いします、クラシック級は…''今''だけなんですよ……。
だから、私は………………っ…………!!!」
突然、苦悶の表情を浮かべたアルダン。
そのまま、脚を押えてうずくまってしまった。
「アル……?……おい、アルダン……っ!!」
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