(※表紙変えました)
「アル!もう3セット!」
アルダン「……はい…っ!!」
遂に始まった夏合宿。
とはいえ、普段のトレーニング内容とさほど変わりは無い。
……強いて変わったところと言えば。
アルダン「まだ……この程度…っ!」
(……目が本気だ…何か不退転の覚悟を感じる。)
思えば、アルダンの発言が事の発端だった。
……………………。
【合宿所前】
アルダン「トレーナーさん。」
「どうした、アル?」
アルダン「この夏合宿をするにあたって…1つ、お願いがあります。」
「俺に出来ることなら、なんでも」
アルダン「トレーニングの際、私の事を、遠慮なく…全力で追い込んでください。」
「……良いんだな?」
アルダン「……はい。」
「分かった、アルダンが本気なら…俺も全力で付き合うよ」
アルダン「ありがとうございます…!」
それだけ、秋のクラシックGI……そして、その先を見据えているのだろう。
アルダン「……トレーナーさんっ、トレーナーさん。」
「ん……あぁ、アル?」
アルダン「上の空でしたが……なにか考え事をしていたのでしょうか?」
「……まぁ、ちょっとね?」
アルダン「ふふっ、夏の日差しに気をつけて下さいね♪」
「もし危なくなったらアルダンの膝枕で安静にしてようかな」
アルダン「……もう、1回だけですよ?///」
否定することも無く、顔を赤くするメジロアルダン。
その様子を見て、他のウマ娘達がヒソヒソと話し出す。
合宿中のウマ娘A(ヒソヒソ……)
合宿中のウマ娘B(またメジロよ……)
合宿中のウマ娘C(アルダンさん、印象変わりすぎ…)
アルダン「では、トレーナーさん午後のトレーニング内容を。」
「あぁ、午後はこのメニューを中心に─────」
………………………………………………。
実りのある夏合宿も1週間が過ぎようとしていた。
広間で寛ぎながら、明日の計画を立てていると……。
ラモーヌ「少しいいかしら。」
「うぉ……ラモーヌか」
ラモーヌ「私だったら不都合なことでも?」
「ただ驚いただけだって…」
ラモーヌ「ふふっ、冗談よ。
今日は貴方に話があって来たの。」
「……話、か……うん、聞くよ。」
大体察しがつくが、メジロラモーヌの話を聞く事にした。
ラモーヌ「夏合宿の前…''あの子''に招集されたわ。
メジロ家のウマ娘……そして、メジロ家を支える重鎮の方々が。」
「……え?」
そんな話、アルダンから一言も聞いてない。
ましてやそんな素振りを本人は一切見せなかった。
「……は、話の内容は…?」
ラモーヌ「……」
対面に座るメジロラモーヌは、じっと目を閉じた後、事のあらましを語った。
──────────────
【メジロ家】
アルダン【本日は、お集まりいただきありがとうございます。
私の無茶で時間を割いていただいたことに感謝致します。】
マックイーン【アルダンさんから呼び出されるなんて珍しいですね……。】
パーマー【大事な話ってのは想像出来るけど…。】
ラモーヌ【……………………。】
アルダン【……皐月賞、4着…日本ダービー2着
GIレースに手が届かない未熟さは自分が1番理解しております。
…そして、ご存知の方も居るかと思いますが…私の次走…
最後の一冠、菊花賞を予定しています。】
ライアン【ええっ!……で、でもっ…アルダンさんの適性は…!】
メジロ家の重鎮A【先走りたくなる気持ちは分かるけどね
適性やコンディションを見てからでも遅くは無いのかね?】
メジロ家の重鎮B【あまりこうは言いたくないが、それで醜態を晒すようなことになったら自分にもその声が降り掛かってくる事をもう一度念頭に置いて欲しいがね……。】
アルダン【……ご意見は、至極真っ当だと思っています。
トレーナーさんからも、天皇賞・秋でもいいんじゃないか…と言われました。】
ブライト【アルダンさん……。】
アルダン【でも、私にも譲れない覚悟があります。
もし……もしこれで不甲斐ない結果を残すようなら…メジロ家の名を捨てるほどの覚悟が。】
ドーベル【……えっ……。】
アルダン【ですのでどうか…当日、レースを見に来て欲しい…
それが、本日皆様をお呼びした事の真意です。】
メジロ家の重鎮A【と、言われてもねぇ……。】
メジロ家の重鎮B【どうしたものか…。】
マックイーン【私たちは構いませんが…】
パーマー【向こうはあんまりって感じだね……。】
ラモーヌ【────────アルダン。】
アルダン【は、はいっ……!】
ブライト【ラモーヌ様…?】
ラモーヌ【本気、そうよね?】
アルダン【……はい。】
ラモーヌ【そう、ならその一言で十分じゃない。
私は気持ちを汲み取るわ。
─────貴方方もそうお思いでしょう?】
メジロ家の重鎮A【えっ……。】
メジロ家の重鎮B【そ、それは……。】
ラモーヌ【なら決まりよ。話はお終い。】
ドーベル(あのラモーヌさんが……)
ライアン(笑った……。)
───────────────────
「……アルダンが、そんなことを…。」
ラモーヌ「レースにかける想い…貴方が思ってる以上に大きなものになってるわ。
─────今一度、貴方に問うわ。」
ラモーヌ「あの子の事を、支えられるかしら。」
「……もちろんだ。」
ここまで走ってきた気持ちは何も変わらない。
そして、本人が思う憧れや輝こうとする想いも。
「俺は………''メジロアルダンのトレーナーだ''」
ラモーヌ「……ふふっ、頼もしくなったわね、とっても。」
「…そうさせてくれたのは、アルダンのおかげだけどな。」
ラモーヌ「私が話したいことはそれだけよ。
……ああ、そう……今あの子、1人で砂浜に居たわ。
顔を出してあげたら?」
「……あぁ、ありがとうな、ラモーヌ。」
ラモーヌ「一蓮托生の想い……素敵ね、とっても。」
…………………………………………。
【砂浜】
アルダン「…………………………。」
「風邪、引かないようにな。」
アルダン「……ぁ…トレーナーさん…。」
1人で月を見上げるアルダンの隣に腰掛ける。
アルダン「……すいません、少し寝付けそうになくて…。
夜更かししない程度には戻りますので……。」
「……少し、怖い?」
アルダン「……っ……。」
横を振り向くと、アルダンの耳が少し反応した。
アルダン「……トレーナーさんに、嘘はつけませんね…。」
「……俺も、少し怖い。」
アルダン「……えっ?」
「レースに絶対は無いし、何が起こるか分からないからね。
……でも、それ以上に隣にアルダンが居てくれる事が心強いって思ってるよ。」
アルダン「……トレーナー……さん……。」
「だから、勝とう……絶対に、''2人で''」
アルダン「……!!」
アルダンは何も言わずに、手を重ねてきた。
何も言わずに、そのまま重ね続ける……。
アルダン「……あ、の……トレーナーさん……。」
消え入りそうな声で、横からアルダンの声が聞こえた。
────────振り向くと。
アルダン「……………………っ!!///」
───メジロアルダンが、こちらの頬に口付けをしていた。
「……っ……!?」
咄嗟の出来事に、アルダンの両肩を受け止めることしか出来なかった。
「……アル……。」
アルダン「…トレーナーさんには…いつも、助けられてばかり……でしたので……///
ちょっとだけでいいんです…私も、お返しがしたくて……///」
「だからって……こんな……。」
アルダン「……夏合宿が始まった時から考えてました…いつか、トレーナーさんに恩返しがしたい……と……///
……迷惑、だったでしょうか……?///」
「迷惑だなんてとんでもない……でも…あんまりこういう事されると勘違いしちゃうから、な?」
アルダン「………………はい……///」
「本当に風邪ひいちゃったら大変だから、もう戻ろうか。」
アルダン「……はい。」
アルダン(勘違いしてもいい……そんな風に思った私は……きっと、トレーナーさんの事が……///
ずっと、思ってた……分からなかった感情…今、分かった気がします……///)
合宿所に戻るまでの道のり……。
アルダンの握る手の強さに……確かな想いが込められている気がした……。
評価・感想・お気に入り登録
よろしくお願いします。