【シュヴァルグランの部屋】
シュヴァル「……うん、そうなんだ……一応、トレーナーに練習を見てもらうことになって……。」
……僕の名前は、シュヴァルグラン。
今年の春からトレセン学園に入った…何にも取り柄もない…ウマ娘。
今日はトレーナー室に向かう前に…
オーストラリアに居る幼馴染に連絡をとっているところです。
シュヴァル「……えっ、内心嬉しそう…?
……そ、そんなわけない……ない、から……。」
シュヴァル「どんな人……って……そんな急に言われても…」
シュヴァル「ただ……何だか、一生懸命で…僕とは正反対なくらい明るい人で……。」
シュヴァル「…………な、なんで笑ってるのさ……えっ?」
それだけ嬉しいって思ったから連絡してくるってことは
やっぱりトレーナーが出来たことを伝えたかったんでしょって……うぅ、そんな……。
シュヴァル「……と、とにかく……そういう事だから…。
そろそろ時間だから、僕はトレーナー室に行ってくるね……。」
シュヴァル「えっ……今度写真を見せて欲しい……?
………………………………か、考えておく……。」
…………はぁ、僕のことなんて、直ぐに見限るに決まっているのに…。
────────────────
【トレーナー室】
シュヴァル「……し、失礼します……。」
ここが……トレーナー室…。
……って、トレーナー居ない……どこに行ったんだろ……。
シュヴァル(……うぅ、慣れないし…落ち着かない……。)
これから入る事が多くなるはずなのに……。
僕ってば、もうこんな所で戸惑っているなんて……。
シュヴァル(……座って待ってよう…………あっ……。)
その時、トレーナーのデスクが目に入った。
近寄って、デスク回りを見渡す。
シュヴァル「…………ちょ、ちょっとだけ……。」
ゴソゴソと何かし出すシュヴァルグラン。
しかし、その直後だった。
アルダン「すいません、お手を煩わせてしまって……。」
「自動販売機の使い方が分からないって、アルらしいね……。」
アルダン「返すお言葉も……ですが、そんな時に探しに来てくれるトレーナーさんもトレーナーさんらしいですよ♪」
「……い、1を10で返すな……。」
アルダン「ふふっ、すいません……つい♪
……あら、シュヴァルグランさんはまだのようですね。」
シュヴァル(……ど、どうしよう……帰ってきちゃった……!?)
「まぁ、緊張もするだろうし…来て欲しい時間までまだあるから…待ってようよ。」
アルダン「そうですね。」
シュヴァル(ど、どうしよう……出るしかないよね……?)
「さて……っと、今日の資料を用意しないとな。」
シュヴァル(す、座っちゃった……!)
アルダン「2人分の資料作成…やはり、大変ですか?」
「って思ってたけどね…意外とそんなことも無かったよ。
アルが言う通り、自分の経験として────」
チラッと目線を下に下げるトレーナー。
その時、''それ''と目が合った。
「うわあああぁっ!?」
アルダン「と、トレーナーさん……っ!!」
シュヴァル「ひっ……!」
バランスを崩したトレーナーは、椅子から転げ落ちた。
慌てて近寄るメジロアルダン……そして、彼女もまた''それ''を見てしまった。
アルダン「シュヴァルグラン……さん?」
シュヴァル「……あ、あわわ……すいません……っ!」
デスクと椅子をしまう僅かなスペースから出てくるシュヴァルグラン。
見つかった時は慌てた様子だったが、トレーナーの姿を見て少し冷静になった。
シュヴァル「……あ、あの……お怪我は……。」
「な、無いけど……どうして、そんな所に……?」
シュヴァル「……すいません、緊張しちゃって…。
こういう場所が落ち着くので…つい…。」
アルダン「まぁ……ふふっ、可愛らしいですね。」
シュヴァル「……か、可愛くなんて……。」
「なるほど……てっきり、驚かせようとか画策してたかと思ったよ。」
シュヴァル「そ、そんなことしません……。
……ですが、慣れるように頑張り……ます。」
おずおずと椅子に座り直すシュヴァルグラン。
改めて、資料を手に取り……ミーティングを始める。
「まず……2人が次に走るコースのおさらいだ」
ホワイトボードに2つのコースを書くトレーナー。
……しかし。
シュヴァル「……トレーナー、絵心が……。」
「こ、これでも頑張ってる方だから…!」
アルダン「ふふっ、では私が書き直しますね♪」
「……すまん。」
シュヴァル(この人…本当に一生懸命な人なんだな……。)
アルダン「トレーナーさん、出来ました。」
「ありがとう、最初からアルに頼めばよかったな…。」
「……じゃあ、仕切り直して…。
まだ仮契約の状態である''シュヴァル''は次回の選抜レースに出る。」
シュヴァル「……は、はい……。(今、シュヴァル……って……)」
「距離は同じ2000mだが……前回のレースで気になった所があって
それは、''仕掛け所''だ。」
シュヴァル「……前の選抜レースじゃ…仕掛けるタイミングが悪かった……って事です、か……?」
「うーん……完全に悪い…って訳じゃなくて…ちょっと周りよりかワンテンポ遅い気がして」
シュヴァル「……確かに…先頭にほんの少し、届きませんでした…」
「だよな、だから次のレースは……。」
コースの1箇所に赤く丸を描くトレーナー。
「この位置、正視でスタンドが見えた瞬間仕掛けてみよう。」
シュヴァル「……この位置……(僕が考えてた所よりもずっと早い…)」
「……トップスピードに乗ればシュヴァルのキレなら先頭で抜け出せる…。
後は、併走トレーニングを積んでペースを乱されないように鍛えないとな。」
シュヴァル「………………。」
「…………何かあったか?」
シュヴァル「い、いえ……その……具体的に考えて…くれてるんだな……と……。」
「そりゃあ……仮契約とはいえ、担当だし……な?」
シュヴァル「…………そう、ですか……。(やっぱり変な人…。)」
アルダン(ふふっ、トレーナーさんの立派な姿を見れて……私は感慨深いです。)
「……そして、アルは……。」
アル「……ええ、分かっております。
私の…成すべき事は。」
シュヴァル「……アルダンさんの、次って……。」
アルダン「''菊花賞''……クラシック競走の最終戦です。」
シュヴァル「……が、頑張って……ください。(すごい……これが…デビューしたウマ娘の気迫……。)」
アルダン「トレーナーさん、シュヴァルさんと併走トレーニングをしてもいいですか?」
「俺は構わないが……シュヴァルはどうしたい?」
シュヴァル「……1度、させてください……。
僕も…強くなりたい……。」
「分かった、まずは併走トレーニングをアップにしようか。」
…………………………………………。
【トレーニングコース】
アルダン「はっ、はっ……!!」
シュヴァル「……っ……!(すごい……これがGIに出るウマ娘のスピード……。
今は合わせてもらってるけど…1度でも踏み込まれたら置いていかれそう……!)」
アルダン「……シュヴァルさん、ここですよ……。」
シュヴァル「……えっ……あっ……!(トレーナーが言ってた……スタンド前……)」
アルダン「行きますよ…………はぁっ…!!」
シュヴァル「……負ける……かぁ……っ!!」
(アルダン相手に3バ身差か……持ってるモノはやはり高い。)
シュヴァル「……はぁ、はぁっ……。」
アルダン「いいスピードでしたよ。」
シュヴァル「……あ、ありがとうございます……あの……。」
「どうした、足が痛むか?」
シュヴァル「……い、いえ……その…最後の仕掛ける場所に行ってきても良いですか…?」
「あぁ、構わないよ。」
シュヴァル「……ど、どうも……。」
そう言うと、4コーナー付近まで歩き始めるシュヴァルグラン。
その様子を見たメジロアルダンがトレーナーに近寄る。
アルダン「……彼女、伸びますね。」
「やっぱり分かるか。」
アルダン「はい、一緒に走ってみて……分かりました。
そして、胸の内に秘めてる思いも……。」
「……後はどうするのかを決めるかは本人次第だ。」
アルダン「……ふふっ♪」
「……何か変なこと言ったかな?」
アルダン「いえ、何も。(答えは決まってる……と、思うのは早計…ですかね。)」
シュヴァル(今のうちに…この景色を目に焼き付けておかないと……)
ヴィブロス「あれ~、シュヴァちじゃん!こんな所に立って…練習中?」
シュヴァル「……ヴィブロス…うん、そうだよ。」
ヴィブロス「……ほほ~ん…へー♪」
シュヴァル「……な、なに……。」
ヴィブロス「なんでも~っ♪じゃね~!♪」
シュヴァル「……変なヴィブロス……。」
ヴィブロス(あの目…ふふ~ん、これから先……楽しみだな~っ♪)
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