菊花賞を1週間前に控えたある日……。
メジロアルダンの元に、ある報せが届く。
それは、同室で、ライバルで、仲のいいサクラチヨノオーが
重い怪我で入院し
レースから一時離脱するというものだった───
アルダン「───これで入院に必要なものは過不足なさそうですね。」
チヨノオー「すいません、アルダンさん……。
もうすぐ菊花賞という大事な時期なのに……。」
アルダン「ふふっ、水臭いですよ。
私だって、以前チヨノオーさんに
入退院の世話をよくしていただきました。」
アルダン「ですのでこれは、当然のこと。
''支え合いはお釜のご飯と同じ''……ですよね?」
チヨノオー「アルダンさん─────
……あの、少し外に出ませんか?」
アルダン「構いませんが、お体に障るのでは……?」
チヨノオー「大丈夫です!走るのはダメですけど
ゆっくり歩くくらいなら許されているので。」
チヨノオー「……それに。
しばらく学園には居られないから…。
ちょっと、景色を見ておきたいなって」
アルダン「…分かりました。
では、少々歩きましょうか。」
………………………………。
チヨノオー「……このコースで次走るのは、いつになるのかな…。」
アルダン「…………。」
チヨノオー「あはは。ついこの間''日本ダービー''を走ったのが
……なんだか、夢みたい…。」
アルダン「……夢では、ありませんよ。」
アルダン「私と、チヨノオーさんと、ヤエノさんが
その全てをぶつけあった……。
大事な、とても大事なレースです。」
チヨノオー「……そう、ですね。」
チヨノオー「……一生に一度の…思い出のレース。」
チヨノオー「それを、アルダンさんとヤエノさんと
一緒に走ることが出来て…私───」
チヨノオー「本当に……良かったです。」
アルダン「────────」
チヨノオー「……ああっ!
そろそろ迎えが来る時間……!」
アルダン「あら…!
では、寮で荷物を取って向かいましょうか。」
────────────────
チヨノオー「じゃあ……私、行きますね。」
アルダン「……ええ。お気をつけて。」
アルダン「それと────」
アルダン「また、共に走りましょう。
今度は、''日本ダービー''以上のレースを。」
アルダン「チヨノオーさんのライバルとして私は…。
ターフで、待ってますから。」
チヨノオー「……!」
チヨノオー「ありがとう……ございます!
私……頑張ります!
これで終わりになんて、させません……!」
チヨノオー「もっと、アルダンさんとチヨノオーさんと
一緒に走りたいから……だから……!
いつか……絶対、復帰します!
だからそれまで…待っててください!」
アルダン「……ええ、信じてます。」
チヨノオー「……じゃあ、行ってきます。」
アルダン(……大丈夫です、チヨノオーさん。
貴方は必ず、ターフに戻ってこられます。)
アルダン(かつて貴方がそうしてもらったように…
今度は私が貴方を支え、待ちますから───)
………………………………
アルダン「トレーナーさん。」
「お見送りは終わった?」
アルダン「ええ、つい先ほど」
「……信じて待とう…俺たちのライバルが再び戻ってきてくれるのを。」
アルダン「……トレーナー……さん。」
「アルの好敵手は、チヨノオーとヤエノ…だから、な。」
アルダン「……はいっ。」
アルダン「……その為には、菊花賞……ここで私の走りを…
更なる高みへ駆け上がってみせます。」
「……あぁ、走らなければ…勝たなきゃいけない理由が出来たな。」
アルダン(……そうだ、もう私1人のレースじゃない…。
勝って…光を、示さないと……その為には────)
アルダン(もう、なりふり構ってなんか……)
………………………………。
夜のトレーニングコースを1人で走るメジロアルダン。
その姿は、走りに飢えたウマ娘本来の姿のようだった。
アルダン「……この感覚…走れる、どこまでも……!」
体の中から煮え滾るような、烈火のような本能が激しく燃える。
アルダン「────────私は…。」
その時、自分の体の中で…何かが弾ける音がした。
アルダン「────絶対に、負けない。」
そして、メジロアルダンは…極限の状態まで辿り着いた。
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