彼女にはシニア級に行ってもらいましょう(?)
クリーク「あ~れ~ぇ~」
いよいよ迎えた…菊花賞当日。
俺とシュヴァルはアルダンの様子を見に控え室へ訪れた。
シュヴァル「し、失礼しま…す……。」
「アル、コンディションは───」
控え室に入って、メジロアルダンの様子を見た瞬間……。
2人は言葉を失った。
アルダン「…………。」
今まで見たアルダンの姿とは違った……。
こちらの声が聞こえないほど、極限まで集中を高めていた。
その様子は、こちらが恐ろしささえ覚えてしまうほどだった。
アルダン「………………。」
こちらの気配に気付いたのか、振り向くメジロアルダン。
しかし、いつものような優しい笑顔はなく…氷が張り付いたような表情を浮かべていた。
「……ぁ……アル……。」
やっとの思いで名前を呼んだが、アルダンは静かに目を閉じた。
アルダン「……失礼します。」
「……っ……!」
横を通り過ぎる瞬間、背筋に冷たいものを感じた。
(これが……アルダンの本気…勝ちたいという心からの叫び…。)
シュヴァル「……あ、あの……トレーナー…。
凄い汗です……。」
「えっ……あ、あぁ……ごめん。」
シュヴァル「……凄い、気迫でした……。」
「俺も、初めて見た……あんな姿……。」
シュヴァル(あれが、レースに望む…トレーナーを支えるウマ娘の姿……すごい…。)
───────────────────
【スタート前】
ヤエノ「アルダンさん、今日はよろしく────」
その言葉を言いかけた瞬間、ヤエノムテキの目が見開き言葉を失った。
アルダン「……………。」
ヤエノ(なんですか…この底知れぬ空気は…。
戦いを前に…私は、恐れをなしている…っ!?)
アルダン「…今日は…」
アルダン「──────負けません。
たとえ、この身がここで朽ち果てて壊れてなくなろうとも…。」
ヤエノ「…っ!(これが、アルダンさんの…本気の覚悟…!)」
観客A「メジロラモーヌの妹、今日は一段と凄い集中力だな。」
観客B「でも、初の長丁場だろ?流石に厳しいと思うんだけど…。」
メジロ家の重鎮「…いいんですか、本当に走らせて。」
メジロ家の重鎮「致し方あるまい…それに、一度走れば否が応でも諦めがつくだろう。」
ドーベル「…やっぱり、アルダンさんが走ることに消極的ですね。」
パーマー「無理もないっしょ…600m長くなるだけで、話は全然変わってくるんだし…。」
ライアン「無事に走り切ってくれればいいんだけど…。」
ラモーヌ「…………。(…あの子…。)」
マックイーン(ラモーヌ…さん?)
ブライト「なんだか、様子もおかしい気もしますが~…。」
アルダン「……メジロアルダン……行きます…。」
………………………………
実況【いよいよクラシックロードの最終戦、''菊花賞''の発送時刻となりました。
1番人気は、皐月賞ウマ娘のヤエノムテキ。
そして、クラシック2戦を4着2着と好走してるメジロアルダンは
今回が初の長距離レース、一体どんな走りを見せるのか期待しましょう。】
ヤエノ「…………すぅ…。」
アルダン「………………。」
実況【今スタートしました!】
(…アル…。)
……………………。
【レース中盤】
ヤエノ(残り600m…アルダンさんはここから先は未知の世界…
ここで一気にペースを上げて惑わせる…っ!!)
ヤエノ「はぁっ…!!」
実況【ヤエノムテキ、上がってきた!先頭集団に並びかける!】
ヤエノ「…っ!!」
アルダン「させません…。」
実況【しかし、それをマークするようにメジロアルダンも上がってきた!
そしてここで一気に先頭に踊り立つ!このまま最後の直線まで脚の貯金はあるのか!!】
ヤエノ「…そう易々と…っ!!!」
ヤエノ「抜かせるかぁっ!!!」
実況【ヤエノムテキも、上がって─────】
その時、アルダンの踏み込む力が強くなった。
アルダン「…この位置は…譲りません…!」
アルダン「…やぁあああああああっ!!!!」
グッ…。
──────パリイイィイイン!!
ヤエノ「………っ……!?(距離が…詰まらない…!)」
実況【しかし引き離す!メジロアルダン、脚色は衰えない!
初の長距離とは思えぬ快走!リードを1バ身、2バ身と広げていく!】
ヤエノ「…アルダンさん、まさか…これ程とは…っ…!!」
シュヴァル「トレーナー…!」
「─────行け…っ!!」
アルダン「……………ぁ……。」
ゴールに飛び込んだ瞬間、メジロアルダンの目に再び光が戻った。
スローモーションでゴールへと駆ける姿に、トレーナーの目は釘付けだった。
実況【メジロアルダン先頭ッ!!
先頭はメジロアルダン、ゴールインッ!!】
観客【ワァァアアアアァアーーーーーッ!!】
メジロ家の重鎮「な、なんと…。」
メジロ家の重鎮「信じられない…!」
ライアン「アルダンさん…!」
ブライト「とても、感動しましたわ~…!」
マックイーン「ええ、素晴らしい走り…あら、ラモーヌさんは…?」
ドーベル「そういえば見てない…。」
パーマー「きっと、アルダンさんのところに向かったはずだよ。」
アルダン「…私……勝て…た…?」
電光掲示板の一番上…届かなかった1着の景色を眺めながら…。
アルダンは力なくターフに座り込んだ。
「アル!!」
シュヴァル「あっ、ト、トレーナー…!」
周りの事なんか関係なく、俺はターフに駆け込んだ。
「アル…!!」
アルダン「…あっ…トレーナーさん…。」
まだ状況が飲み込めないアルダンが、俺の顔を見るなり…
その表情をどんどん崩していった。
アルダン「…私…私…っ。」
そして、そのまま俺のところに飛び込んできた。
アルダン「勝てました…っ…貴方のために…私…っ…。」
「…ありがとう、本当に…すごいよ、アルは…本当に、ありがとう。」
アルダン「…うっ…あぁっ…!」
ヤエノ(想いの力…勝ちたいと信じ、心の底から願う気持ち…
恐れ入りました…やはり、貴方は…私のライバルに相応しい。)
ヤエノ「アルダンさん」
アルダン「あっ…や、ヤエノさん…。」
ヤエノ「おめでとうございます。
…ですが、次は私が勝ちます…絶対に。」
アルダン「…負けません、私も…!」
ヤエノ(…良かった、いつものアルダンさんに戻ったようですね。
…ですが、あの鬼気迫る表情…忘れません)
アルダン「…ごめんなさい、トレーナーさん。
お洋服、濡らしてしまいましたね…。」
「構わないよ、それだけ嬉しかったことは…俺にも伝わったから」
アルダン「…はい…私の中で…自分の限界を越える感覚が2度…味わえました。
もっと高みへ…貴方と歩んでいきたいです…。」
「あぁ、もちろ────」
ラモーヌ「アルダン。」
アルダン「…っ…ね、姉様…!」
目頭を擦りながら、立ち上がるアルダン。
その様子を見ていたラモーヌが…そっと、頬に手を添えた。
ラモーヌ「…………。」
アルダン「…姉…様…。」
ラモーヌ「約束してちょうだい、2度とあんな真似はしない、と。」
アルダン「…っ…。」
ラモーヌ「あんな事を繰り返したら…いつか身を滅ぼすわ
愛しの妹だから、忠告するわ…今後、絶対にしないでちょうだい。」
アルダン「…………は、い。」
やはり、様子がおかしかったのは…自分自身でも感じていたようで
アルダンは深く反省していた。
ラモーヌ「…でも、おめでとう、良いレースだったわ。」
アルダン「…!
はい…ありがとう…ございます…!」
────────────────
【とある病室】
実況【メジロアルダン先頭ッ!!
先頭はメジロアルダン、ゴールインッ!!】
チヨノオー「すごい────」
チヨノオー(走ったことの無い長距離を走って…勝っちゃうなんて…
アルダンさん…すごく強くなってる…。)
チヨノオー「………なのに…私は…───」
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