※作者、インフルになりました。
更新遅れるかもしれません。
【トレーナー室】
「さて、と……昼食も食べたし…アルとシュヴァルが来るまで仕事…………を?」
自分のデスクに何か置かれていることに気付いた。
手に取った物は……ノートだった。
「新しいな……ん、最初のページに何か挟まってる……。」
小さなメモ用紙に目を通すと……。
シュヴァル【トレーナーさんへ。
練習ノート、そろそろ無くなりそうだったので
新しいのを2つ買いました。使ってください。
シュヴァルグラン】
「……シュヴァル。」
それは、アルダンとシュヴァルの練習内容・その日あったことを事細かく記した練習ノートの件だった。
いつでも見れるように、2人にはトレーナー室の鍵を渡しておいたのだが……昼食行ってる間にシュヴァルが来て置いていったのだろう。
「よく見てるな……確かにそろそろ新しいのをって思っていたが…。」
これは後でお礼を言わないとな、と思いつつ仕事に取り掛かるのであった。
─────────────
【トレーニング中】
「シュヴァル、さっきはありがとうな」
シュヴァル「えっ…………ぁ……の、ノートです……か……。
い、いえ…僕には、これくらいしか出来ませんから……。」
「ううん、助かったよ…それにしてもよく見てるね。」
シュヴァル「……ぼ、僕みたいなウマ娘は…人よりも何倍も……分析したり把握しないと…渡り合えません…から。」
それは、立派な武器だよ。
そう言いかけたが、その言葉より先に…シュヴァルの苦笑い混じりの声がした。
シュヴァル「だ、ダメですよね……こんな事言うウマ娘……いつか、トレーナーさんを困らせちゃいますよね……ごめんなさい。」
自己肯定感が低いのは、いつもの事とは思っていたが…いつか、自分に自信を持ってほしいと思いつつ……俺はシュヴァルの頭に手を置いた。
シュヴァル「ひゃうっ…!
ト、トレーナー……さん……?」
「何回謝ってもいいよ」
シュヴァル「……えっ……。」
「でも、その度に何回でも俺はシュヴァルの事を支えるから」
シュヴァル「……そ、そんな……僕の事を支えたってなんのメリットも……。」
「俺がそうしたいからだよ。」
シュヴァル「……あり、がとうございます…。」
担当のためなら地道な努力だって、なんてことない。
まだ今は、距離感があっても……いつか、シュヴァルにも伝わるはず。
アルダン「ふふっ、妬いてしまいますね♪」
「あ、アル!……いや、これは…。」
アルダン「冗談ですよ、トレーナーさんなりの励まし方と分かっていますから。」
「………ほっ。」
アルダン「では、シュヴァルさん。
ストレッチから始めましょう。」
シュヴァル「……ぁ……は、はい……。」
ストレッチの最中
シュヴァルグランはトレーナーに聞こえない声量でメジロアルダンに質問を投げかけた。
シュヴァル「……あ、あの…アルダンさん。」
アルダン「どうかされましたか?」
シュヴァル「……トレーナーさんって……そ、その…怒ったりしたこと…無いんですか…?」
アルダン「……そうですね。」
今までのトレーナーを思い返すアルダン。
しかし、答えはすぐに出た。
アルダン「ないですね。」
シュヴァル「………そ、そうなんですか……やっぱり…。」
アルダン「何か気になる事でも?」
シュヴァル「……ぁ……いえ、その……。」
シュヴァル(…言わないだけで…トレーナーさんも、面倒なウマ娘とか……思ってるのかな…。
アルダンさんみたいにちゃんと会話のやり取りができる訳でもないし…走るのだって……まだまだだし……)
アルダン「シュヴァルさん。」
シュヴァル「わ、わぁああぁっ!……は、はいっ…!」
アルダン「ふふっ、また顔が曇ってましたよ。」
シュヴァル「……す、すいません……。」
アルダン「以前にもお伝えしましたが…
そんな簡単に担当の事を嫌いになったり見過ごすようなトレーナーではありませんよ。
まだ実感が湧かないかもしれませんが…私が証人です。」
シュヴァル「……ぼ、僕……。」
アルダン「1度、トレーナーさんとしっかりお話する機会が必要だと私は思います。
…今後のためにも、お互いのためにも。」
シュヴァル「で、でも…僕………。」
上手く伝えられない。
きっと、言ったところで……。
そんな言葉が頭をよぎる。
しかし、シュヴァルはその言葉を飲み込む。
シュヴァル「……が、頑張ってみます。」
アルダン「はいっ、それではトレーニングを開始しましょう♪」
シュヴァル(……アルダンさん、どうしてここまで親身に……同じトレーナーの指導を受ける担当ウマ娘……だから……?)
アルダンがシュヴァルの考えや気持ちを分かれる理由が知れるのは……まだ先の話だった。
──────────────
【トレーニング終わり】
「……じゃあ、ミーティングはこれでおしまいね!
シュヴァルはそろそろレースにも出ないとな。」
シュヴァル「……れ、レース……ですか…。」
アルダン「トレーナーさん、私はこれで。」
「今日は急ぎだね、何かあった?」
アルダン「はい、少々……ふふっ♪」
何故か笑いながら、シュヴァルの肩に触れるアルダン。
アルダン「では、お先に失礼しますね、シュヴァルさん♪」
シュヴァル「……は、はい………お疲れ、様です……。」
「……さて、と…シュヴァルはどうする?」
シュヴァル「ぼ、僕は……えぇっと…。」
シュヴァル(い、言わなきゃ…僕の昔話を聞いてくれませんかって…悩みを、聞いてくれませんか……って……。)
「?」
シュヴァル(……や、やっぱり言えない……!
呆れられたりしたら…僕は……。)
「あ、そうだ!」
シュヴァル「……ひっ!?」
「って、ごめんごめん!
驚かすつもりじゃなくて……!」
自分のデスクの引き出しから何か取り出すトレーナー。
そして、何かを机に置いた。
シュヴァル「……お、菓子……?」
「食べる?」
シュヴァル「……だ、大丈────」
……グゥ。
シュヴァル「…………っ…!///
い、いただきます……。」
顔を赤くしながら、1口 口へと運ぶシュヴァル。
シュヴァル「…………ぁ……美味、しい…。」
「良かった、お返ししたかったから。」
シュヴァル「……お返し…?」
「これのね」
そう言って、ノートを手に取りシュヴァルに見せるトレーナー。
シュヴァル「そ、そんな…お、お返しなんて…僕がただお節介でやった事ですから……。」
「俺がしたかったから、すごく感謝してるのを伝えたくて。」
シュヴァル「────────。」
それは、混じり気のない本心のように聞こえた。
自分は感謝させるようなウマ娘じゃない。
そうずっと思ってた……けど、それを否定する人が目の前に居た。
たとえ小さな声だけど…小さな事だけど…それがシュヴァルグランには嬉しく感じた。
シュヴァル「…………あ、の…。」
「ん?」
シュヴァル「少し……昔話をしても…いい、ですか……。」
「ん、聞くよ……隣に移ろっか。」
立ち上がり、シュヴァルの横に座り直すトレーナー。
少し俯きながら…シュヴァルはぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。
シュヴァル「……僕は、姉さんやヴィブロスなんかより……よっぽど劣ってます。
姉さんのような…気高さや才能なんか無い。
ヴィブロスのような、明るさや伸び代も……無い。
そう自分でも思ってました。」
「………………………………。」
何も言わずに、静かに話を聞き続けるトレーナー。
シュヴァル「……でも、僕にも…''憧れ''がありました。」
「憧れ?」
シュヴァル「……は、はい。
無敵のウマ娘……かつて、衝撃まで言われたウマ娘を破った……ウマ娘のようになりたい、と。」
「……そうだったのか。」
シュヴァル「……で、でも…今までその憧れを…誰かに伝えた事はありませんでした。
無理だとか…出来っこない…そう嘲られるのが、怖くて……。」
「……じゃあ、俺に伝えたのは……。」
シュヴァル「………………。」
シュヴァル(トレーナーさんの……優しさが嬉しかったから…頑張ろうって少しでも思えたから……そう言いたいのに……。)
シュヴァル(─────言えない。)
「…………そっか、でもありがとうな。
話してくれて。」
シュヴァル「…………い、いえ…その……すいません、変な話をして……。」
「ううん、聞けて嬉しいよ。
シュヴァルの憧れに少しでも近づけるように俺もシュヴァルを支えないとな!」
シュヴァル「そ、そんな……僕なんかのためにそこまで……。」
「したいからだよ。」
そして再び……頭に手を置くトレーナー。
その目は、しっかりシュヴァルの顔を捉えていた。
「担当ウマ娘の事を信じて、支えて、思う……トレーナーとして当然だろ?」
シュヴァル「…………っ!!」
「たとえ世界中のウマ娘が敵になったとしても
俺は味方で居続けないとよ、シュヴァルがひとりぼっちになっちゃうだろ?
そんな事はさせないよ。」
シュヴァル「……トレーナー……さん。」
──────嬉しかった。
心の奥底が温かくなる感じがした。
シュヴァル(……アルダンさんが、言ってた事…少し、分かった気が……する……。)
「……なんか、話してたらそのウマ娘のレース見たくなってきたなー!
調べれば出てくるかな?」
シュヴァル「ぁ……は、はいっ…このGIレースで……!」
胸が暖かくなるようなドキドキするような感覚を噛み締めながら……トレーナーと一緒に憧れのウマ娘のレースを見るシュヴァルグランだった……。
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