今日は各ウマ娘が勝負服に身を包み、非開催のレース場を貸し切って実戦形式でトレーニングを行うという催しの日だった。
理事長の提案と言うことらしいが…突拍子もない出来事すぎて、各トレーナー達は一様にぽかんとしていた。
「……まぁ、実戦形式って言うのはありがたいけどさ…」
アルダン「ええ、こうもたくさんのウマ娘が集まると…壮観ですね。」
隣で話すアルは、既に勝負服に身を包んでいた。
「久しぶりに見たね、その勝負服。」
アル「えぇ、''菊花賞''以来…という事になりますもの。」
「……やっぱり似合ってるなぁ…。」
アル「………………///」
ウマ娘がヒトよりも耳がいい事を忘れ、ボソッと呟いた一言にアルダンは顔を赤くした。
エース「ま~たやってるよ…。」
シュヴァル「お、お待たせしました……。」
「2人とも、待っ…………うぉ…。」
シュヴァルの勝負服は、一度見たが…隣で腕を組んでるエースの勝負服を見て、思わず驚きの声を上げてしまった。
真っ黒な特服の様な出で立ちで、背中には''葛城栄主''と刺繍されていた。
よく見ると、中にも何か刺繍が施されているようだった。
「……す、凄いな…。」
シュヴァル「ぼ、僕も見た時……同じような反応しまし、た…。」
エース「そうかぁ?…まっ、反逆のエースになるための布石って思えばどうって事はねぇさ。」
シュヴァル(…凄いな、エースさん……こんなに自信に溢れていて…それでいて確固たる意志を持ってて…ぼ、僕も少しは見習わないと……)
エース「って事で、ストレッチしてくるからよ、トレーナーさん。
シュヴァルもするだろ?」
シュヴァル「は、はいっ!お供します……っ!」
そう言うと、シュヴァルとエースはストレッチを始めた。
その様子を見てると、アルダンが話しかけてきた。
アルダン「どこまでも快活な方……ですね。」
「あぁ、まさに太陽って感じだな。」
アルダン「惹かれてしまいますね。」
「……あのねぇ、アル?」
アルダン「ふふっ、冗談ですよ♪」
「俺の一目惚れはアルなんだから、そこは勘違いするなよ?」
アルダン「……ぇ…………ぁ……は、はい……っ///////」
「???」
アルダン「……な、なんでもありませんっ。
私もストレッチをして参りますね……!///」
尻尾を振り回しながら、アルダンがその場を去ってしまった。
何かまずいことを言ってしまっ……あ、エースに首を傾げられてる。
「……しかし、3人のウマ娘の担当トレーナー……かぁ。」
トレセン学園に来る前まで、誰が想像できただろうか。
「それもこれも、今って瞬間があったから……なのかなぁ。」
────彼女たちを、支えたい。
その想いは、日に日に強くなっていくのだった。
…………………………………………。
「よし、じゃあ…実戦形式のコースでのトレーニングを始めるよ
距離は2000mの中距離……まずは1本走っていこうか。」
エース「おう、準備万端だ!」
アルダン「はい、復帰戦に備えて、ここでコンデションを整えていきたいと思います。」
シュヴァル「……が、頑張ります。(シニア級の先輩2人とのトレーニング…それに、クラシックレースで走る中距離……よ、よし…僕も、強くなるんだ……!)」
各々が、スタートに向けて準備をしていると……アルダンがシュヴァルに話しかけた。
アルダン「シュヴァルさん。」
シュヴァル「……ぁ……は、はい…?」
アルダン「私も、一度しか見てないので詳しくお話することは出来ませんが……エースさんの走り、''とても興味深い''走りをするので…是非、注目してください。」
シュヴァル「……わ、分かりました…。(どういうこと…だろう)」
「よし、じゃあ……よーーい………」
スタート……の掛け声と同時だった。
エース「しゃぁっ!!」
「……えっ?」
シュヴァル「……なっ……。」
アルダン「…………。」
物凄い加速と同時に、エースがハナを奪った。
シュヴァル「……に、逃げ戦法……っ……!」
(だが、このペースは……。)
カツラギエースの事については、少し資料に目を通していたが…。
逃げ…と言うよりも、単騎逃げ・大逃げといった戦法だったとは…。
エース「エースの背中についてきな!!」
シュヴァル「くっ……!!(アルダンさんは…僕の後ろにつく作戦…!)」
離されないように…それでいてペースを上げすぎないように走るシュヴァル。
シュヴァル(この走り方…''あのウマ娘''に似ている……だったら…!)
エース「……来たな……っ!」
並びかける様に上がってくるシュヴァル。
後ろからの気配を察知したのか、エースも突き放しにかかる。
エース「さすがだな!」
シュヴァル「負けて……たまるもんか…っ!!」
しかし、そこはクラシック級とシニア級の違い……。
並びかけたまでは良かったが…シュヴァルのスピードは末を欠いてしまった。
シュヴァル「……くぅっ……!!」
アルダン「シュヴァルさん、申し訳ありません…!」
シュヴァル「あ、アルダンさん……っ……!(ま、まだ競り合える力が残ってるの……っ?)」
インを掬って、2番手に上がるアルダン。
だが、先頭の背中は遠く……。
アルダン「……届か、ない…っ!」
エース「しゃぁ!逃げ切ったぁ!」
してやったり、という顔でゴールに飛び込むカツラギエース。
続け様に、アルダン……シュヴァルと入着していった。
アルダン「なるほど…興味深いですね……(パーマーと似ていますね……)」
シュヴァル「……はぁ……はぁっ……くっ…!(凄い…あんな走り方があるなんて…とても追いつける感じがしなかった……)」
膝に手をついて、悔しそうに2人を見つめるシュヴァルグラン。
シュヴァル(……ううん、そんな気持ちじゃ……ダメだ。
いつか……追い越すんだ…今日の2人も……''あのウマ娘''も…!)
…………………………………………。
1本目を走り終えた3人の元に駆け寄る。
「お疲れ様、ちょっと気になった所があるから伝えさせて」
エース「なんだよ、トレーナーさん、改まって」
アルダン「私たちの走りについて……でしょうか?」
「そう、俺なりに考えたんだけど…」
シュヴァル「聞きたい、です…。」
「まずは、エース…逃げっぷりは凄かった…けど、もっとトップスピードを磨けばもう誰も追いつけない程の逃げウマ娘になれると俺は思った。」
その考えに、エースは目を閉じ深く頷いた。
エース「あぁ、アタシが目指す先に辿り着くには…こんな走りじゃ物足りねぇ。
まだまだ強くなってみせるぜ、真のエースになるためにな!」
「そして、アル…復帰に向けて順調…だけど、競り合いってなると少し不利な面が見受けられる。
今後は併走をメインとして、根性面を鍛えよう。」
アルダン「はい、トレーナーさんの仰せのままに。」
胸に手を置き、キチンと応えるアルダン。
「最後に、シュヴァル。」
シュヴァル「……うぅ……はい…。」
怒られると思ったのか、帽子を下げて目線を合わせようとしないシュヴァル。
「まずは、よく頑張ったな、シニア級の2人に食らいつく姿は良かったよ。」
シュヴァル「えっ…………ぁ……は、はい……でも…。」
「でも、全く歯が立たなかった……って思った?」
シュヴァル「………………はい。」
「でも、自分の武器を再発見できる良い機会になっただろ?」
シュヴァル「……僕の…武器…。」
「周りを見れる集中力…そして、豊富なスタミナ…ここをもう一度鍛えよう。」
シュヴァル「……スタミナ…。」
「あぁ、粘り強くマークしていけば、いつか…2人に付け入る隙が出来る。」
その言葉に、シュヴァルは2人の方を向いた。
シュヴァル「……分かり、ました……。」
「なんか、決意したって顔してるな。」
シュヴァル「……はい……ぼ、僕は……っ……!」
グッと拳に力を込めるシュヴァル。
シュヴァル「……いつか、2人の背中を…追い越してみせます…!
偉大なウマ娘になるには……越えなければいけない背中を…!」
エース「……へへっ、宣戦布告されちまったな。」
アルダン「えぇ、私達もうかうかしていられませんね♪」
シュヴァル「す、すいません…生意気なこと言って…!」
エース「良いんだよ、シュヴァル…その方が張合いがあるってもんだ」
アルダン「はい、シュヴァルさんの決意…確かに受け取りました。」
シュヴァル「……エースさん…アルダンさん…あ、ありがとうございま
す……。」
「よし!じゃあ2本目行こうか!」
エース「おっしゃ!次も逃げてみせるぜ!」
アルダン「そう何度も負けませんよ♪」
シュヴァル「……ぼ、僕だって…!」
(なんだかんだ…互いに刺激しあってるな、このまま良い方向に向かってくれればいいけど)
エース「……次の1着が、トレーナーさんと出かけられるってどうだ?」
アルダン「まぁ、それは負けられませんね♪」
シュヴァル「え、えぇっ……!!??」
エース「悪ぃ悪ぃ、冗談だっ!そうでも言わないとシュヴァルの緊張も解れないと思ってよ。」
シュヴァル「だ、大丈夫です……!」
アルダン「との事ですよ。」
エース「良い返事だな、じゃあ……2本目行くぞ!」
…………………………………………。
エース「って!ホントに勝つのかよ!!」
シュヴァル「はぁ……はぁ……ま、負ける訳に…い、いかないので……。」
アルダン「見違えるくらいの走りでしたね……。」
エース「下手に提案すんじゃなかったな……。」
「……シュヴァル、なんかあったのか?」
シュヴァル「な、何も……っ!!//////」
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