でも新衣装アルダンも……むむむ……。
アルダン「……そろそろでしょうか?
ふふっ、こうして開演を待つ時間も、楽しいものですね。」
「……だ、だな」
時間は少し遡る─────
???「では、行って参ります。
帰宅の際には連絡をいれますので。」
アルダン「あら、トレーナーさん?
ごきげんよう、偶然ですね。」
「アルダン?どこかにお出かけ?」
アルダン「はい、劇場で観劇を。
実は主催者様にペアチケットでご招待をいただきまして。」
アルダン「当初は姉と来る予定だったのですが、あいにくレースの出走と重なってしまい────……あっ。」
何かを閃いたアルダンは、チケットで口を隠してこちらをチラッと見る。
アルダン「あの、突然のお誘いになりますけれど、よろしければ、ご一緒にいかがですか?」
………………………………。
アルダン「トレーナーさんとご一緒できて、嬉しく思います。
とても人気のある作品で、ずっと観たいと考えておりましたから。」
「あはは、アルダンからお誘いを貰うなんて俺も嬉しいよ
……それで、どんなお話なの?」
アルダン「仲良しの騎士2人が、有名になるために古城へ幽霊退治に行くという、いわゆる喜劇です。」
アルダン「古典をベースにしておりますが、現代劇としても見ごたえがあるそうで………………あぁ、始まりますね。」
……………………。
騎士A「見よ、友よ。
あれこそ、薄暮にしか現れぬという呪いの城だ!
なんという威容であろう……。」
騎士B「だが、忌まわしき悪霊など恐れはしない!
ああ神よ、この討伐を見届け給え!
今こそ我らが英雄と世に知らしめる時─────」
ギギギ……。
2人の騎士「「お、おおおお化けっ!?
って、今のお前か!?……おいっ、真似をするな!!
このぉ~~~~っ!」」
アルダン「まぁ……ふふっ。」
(……アルダン、笑ってる……)
話題の演目だけあって劇は面白く、なによりメジロアルダンがコロコロと表情を変えるのが印象的だった──────
───────────────────
アルダン「評判通りの演目でしたね。
物音に驚いて飛び跳ねたお2人が、本当に可愛いらしくて。」
「うん、なんか新鮮だったなって
アルダンが笑ったり見入ったりする姿とか」
アルダン「まぁ……ふふっ。
それなら、トレーナーさんも、ですよ。」
「……俺?」
アルダン「今申し上げた、物音に驚いて…というところです。
トレーナーさんも、驚いて、私の手を握っていましたよ。」
「……あ、そ、そうだったっけ…?」
正直、横にいるアルダンを見てたところに不意打ちで驚かされたから覚えていない……。
アルダン「ただ…最後まで幽霊に会えなかったのは残念でした。
私なら、諦めきれずにまたお城に伺ってしまうかもしれません。」
「……幽霊、会ってみたいの?」
アルダン「紅茶を手に語り合いたいほどに。
きっと長い時間、お城の歴史を見つめていらした方ですし───」
アルダン「お話できれば……忘れ去られてしまった誰かの輝きをほんの刹那でも、甦らせることができますでしょう?」
「……なるほど、そういう考えもできるね…うん、アルダンらしいね」
アルダン「でも…その場に、トレーナーさんはいらっしゃらないのでしょうけど……。」
「えっ、なんで?」
アルダン「ふふっ、びっくりして腰を抜かしていそうと、私自身が考えてしまってたので。」
「……さ、さっきの事は忘れてくれ…」
アルダン「まぁ、可愛らしくていいではありませんか。」
「アルダンには…敵わないな」
クスクスと笑うアルダンから視線を外し、紅茶を啜る。
アルダン「……まぁ、心地いい風ですね。」
アルダン「あの、トレーナーさん?
よろしければ、少し歩きませんか。
夕日がとても綺麗で、なんだか────」
「さっきの劇に似てるよね…もしかしたら、お城も見つかるかも?」
アルダン「…ふふっ、そうなったら、とても素敵ですよね。
ですが……トレーナーさんは、大丈夫でしょうか?」
「さっきは驚いたけど、流石に担当ウマ娘を…アルダンを置いて逃げたりなんかしないよ
守れるところはしっかり守るって」
アルダン「……まぁ、ふふっ……頼りにしてますね。」
────────────────
アルダン「子どもの頃はよく、その日に観た劇の登場人物に自分がなったら、という想像をしておりました。」
「なんだか、分かる気がする
自分強くなったー!ってはしゃいで木から落っこちてケガとかしてたっけな」
アルダン「まぁ、ふふっ。
トレーナーさんも、ヤンチャな時があったのですね。」
「あはは、男の子ってそういうもんだから」
アルダン「ですが、私も男の子になったり、おばあさんになったり。
元気に冒険したり、時には悪いことをして怒られてしまったり。」
アルダン「誰しも1度きりのはずの人生を、想像の中でだけ入れ替わってみる。
内緒の遊びのようで、とても楽しく思えて…。」
「…じゃあ、今は騎士になった想像をしている?」
アルダン「どうでしょう?
もしかしたら自分を退治しにきた騎士様を、興味津々で観察している幽霊かもしれませんよ?」
「なるほど、そっち側もあるね」
アルダン「さあさあ、トレーナーさん…いえ、騎士様?どういたしますか?」
お化けのように、手をぶらんと下げてこちらを向くアルダン。
そのフリに剣を握るように立ち向かう自分。
「お化けを退治~~~…………………あぁ、いや」
アルダン「?」
「アルダンの言う事が分かったよ
確かにお化けとお話するのもありかもなって」
アルダン「まぁ、それは如何に?」
「だって、こんな綺麗なお化け居たら話しかけたくなるだろ?」
アルダン「……………………///」
「あれ、違った?」
アルダン「ふふっ、トレーナーさんったら、冗談がお上手なのですね。」
「えっ?……あ、いやー…うーん」
本気で言ったのに…と思うトレーナーを横で見ながら微笑むアルダンだった。
アルダン「でしたら、そのお化けが騎士様のご幼少のみぎりをどのように過ごしていられたとお聞きになられたらいかがいたしますか。」
「あはは、それは俺の事?」
アルダン「はい、もちろん。」
……………………………。
アルダン「────まぁ、そんなことが!
ふふっ、子どもの頃のトレーナーさんは、ヤンチャなだけではなく、可愛らしくいたのでしょうね。」
アルダン「なんだか、いくらお話しても足りない気がいたします。
トレーナーさんは他に、なにをして遊ばれてたのですか?」
「そうだなぁ、今の季節なら確か────」
グゥゥウウゥゥゥ·····。
アルダン「…え?あ……っ。」
アルダン「し、失礼いたしました。こんな……私としたことが……。」
「あはは、随分歩いたからね、俺もお腹ペコペコだよ」
言われて気がついたのか、アルダンが辺りを見渡す。
アルダン「まあ……いつの間にこんなところまで?
お話に夢中で、気づいておりませんでした。」
アルダン「……こんなに歩き回ってしまうなんて。
みんなに心配かけないよう、控えなければならないのに。」
「それは違うよ、''今のアルダン''なら、これくらい大丈夫……でしょ?」
アルダン「……あっ。」
アルダン【ですから…いかがでしょうか。
明日からこのメニューを基準に組む、というのは。】
【……ふふっ】
アルダン【……?】
【ごめんごめん、今まさに全く同じこと言おうとしてたから、つい】
アルダン【まぁ。……ふふっ。
''今''に感謝しなければ。
このところは特に調子がよくて、体の熱で動けなくなることもありませんし。】
アルダン(そうだ……あの時も今も。
トレーナーさんは、いつだって……。)
アルダン(不思議……トレーナーさんを知れば知るほど…胸が温かくなって……。
トレーナーさんは、本当に私を────)
目を閉じ、胸に手を当て……少し微笑むアルダンを見て、トレーナーは首を傾げた。
「どうかしたの?」
アルダン「あ……いいえ、なんでもありません。
ただ、今日は楽しかったなと考えておりました。」
「楽しんだ分、今日の夕飯も美味しいかもね」
アルダン「もう、あまりからかわないでください……。」
「さっきのお返しだもーん」
アルダン「ですが─────」
数歩先を歩いたアルダンが、こちらを振り返った。
アルダン「今日は、本当に充実した1日でした。
思いがけず、知らない自分を知ることができましたし。」
「おっ、それって、どんな?」
アルダン「……ふふっ、秘密です。」
ウインクをし、指を口に当てるアルダン。
アルダン「もう日も落ちますね。
本物の幽霊に会ってしまう前に、私たちは帰路につくことにいたしましょうか。」
アルダン「トレーナーさん、本日は急なお誘いにお付き合いくださってありがとうございました。」
【その帰り道】
(……あれ、これって…俗に言うデー……いやいやいや!!何考えてるの!!相手は担当ウマ娘だよ……!?)
アルダン(……よくよく思い返してみれば、トレーナーとはいえ…2人でお出かけ、なんて…何だか背筋が落ち着かない感じがいたしますね……。
それに、触れてくれた手の温かさが……なかなか冷めません…///)
何故か会話の少ない2人だった。
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