軽く登場させます。
カツラギエースとメジロアルダンの産経大阪杯から数日…。
次に出走するシュヴァルグランの調整が行われていた。
「シュヴァル、もう一本走ろう!」
シュヴァル「分かりました……はぁっ…!!」
レースに対する気持ち、そして同期に負けたくないという気持ちを胸に
シュヴァルの脚は前へと進む。
エース「なかなかのスピードだ……でもなっ!」
アルダン「参ります……!」
それに呼応するように、練習に熱が入るエースとアルダン。
そんな3人を遠目で見ながら、メモを取る。
(次のレース……やっぱり中距離をメインに走らせたいな。
となると…あの2人は…………うん?)
カツカツと横から音がするので顔を上げて見てみると、そこには…。
???「……………………。」
松葉杖をしながら、ただコースを見つめる1人のウマ娘が居た。
「……………………。」
風に揺られなびくブロンドカラーの髪。
前髪には真っ直ぐ伸びる白い模様。
そしてその目は、透き通るように輝くピンク色の目をしていた。
(───まるで……。)
まるでアルダンと初めて会った時のような感覚がした俺はしばらくそのウマ娘の事を見ていた。
(見ない顔だな…新入生…にしても、選抜レースに出てるのを見た事がないし……)
???「…………………………。」
目線に気付いのか、こちらを見るウマ娘。
???「…………………………。」
何も言わずに、会釈をし…そのままコツコツとその場を去ってしまった。
「…………あの子は、一体。」
シュヴァル「トレーナーさん、どうしたんですか……?」
「えっ?……あ、いや、ごめん!」
エース「おっしゃ、少し休憩だな!」
アルダン「えぇ、実りのある時間でした。」
「…………………………。」
不思議と、さっきまで居たウマ娘の事が頭から離れない俺だった。
────────────────────
【トレーナー室】
トレーニングを終え、1人で仕事を進めていた時だった。
コンコン。
「はい、どうぞ。」
たづな「失礼します、トレーナーさんお話とは一体…?」
「たづなさん、すいませんこんな時間に。」
こちらから連絡を受けたたづなさんがトレーナー室へとやってきた。
たづな「お聞きしたい事があるとの事でしたが…一体…?」
「すいません、あるウマ娘について聞きたくて…」
名前も分からないままで、何個か特徴を上げていくと
たづなさんは、顎に手を置き呟いた。
たづな「……と、なると…''あの''ウマ娘…ですね。」
「あの……?」
たづな「見た事ないのも無理はありません。
彼女の体は、他のウマ娘と比較するとひ弱く…医師から運動量を制限させるほど……です。」
「運動量を……なら、何で松葉杖を…。」
たづな「……まともに練習が出来てない上に、ついこの間参加した練習で脚を痛めてしまったようです。」
「……そうだったんですか。」
たづな「も、もちろん能力は高い物がありますよ。
……ですが、ちゃんと走ることも確約されてない状態では…とても選抜レースやスカウトの目に止まるのは……。」
「でも、そのままってまずいんですよね…アルダンの時みたいに。」
たづな「…はい……正直に言いますと、持って夏まで限度…かと。」
(半年も無いって事……か……)
「今日、隣に来たんです。」
たづな「……珍しいですね、外にあまり出る子では無いので知ってる方も少ないのですが…。」
「……上手く説明できないんですけど…。
真っ直ぐコースを見る姿に…何故か他人の様な気がしなくて…。」
たづな「お声をかけなかったのですか?」
「あまりに真剣に見てたので…つい……」
たづな「彼女自身、まだレースに対する気持ちが消えてないんだと思います……どうか、お話をされてみては…?」
「……分かりました、次会ったら声をかけてみます。
それで、そのウマ娘の名前は……。」
たづな「いけない、そうでした…!
あのウマ娘と言ったきり、名前をまだ言ってませんでした。」
たづな「彼女の名は─────」
……………………………………………………
【それから数日後】
シュヴァル「トレーナーさん…タイムは……。」
「うん、良い感じ!早くなってるよ!」
エース「そうだな、力を付けてるのが目に見えて分かるぜ。」
アルダン「ええ、私達もいい刺激をもらえますね。」
シュヴァル「……ま、まだまだ……!もう一本お願いします…!」
エース「ははっ、照れてるな!…よしっ、なら行くぞ!」
アルダン「ふふっ、はい。」
再び3人がスタートした後だった。
またあの音が聞こえてきたのは。
???「………………………………。」
「………………ぁ……っ。」
少し先に立つ……あのウマ娘。
またコースを眺めに来たようだ。
たづなさんの言う通り、まだ走りたい気持ち…レースに出たい気持ちはあるということなのだろうか。
???「…………………………。」
「……………………あ、あの……っ。」
声をかけようとした時だった。
エース「トレーナー!シュヴァルがもう一本走りたいって言ってるけどどうする?」
「えっ!?……あ、あぁ!軽めに一本流そうか!」
シュヴァル「わ、分かりました……!
アルダンさん、エースさん…お願いします……っ」
エース「任せろ!」
アルダン「ええ、参りましょう。」
3人を送り出した時だった、予想外の事が起きたのは。
???「……あちらのウマ娘のトレーナー…ですか。」
「えっ……!?」
こちらを見ながら話しかけられたのは。
「……う、うん…そうだよ。」
???「……楽しそうに、走られるのですね。」
「……キミのこと、聞いたよ。」
驚きの表情を浮かべることもしないまま…再び3人を見るウマ娘。
???「……まだ、心の中で叫んでいるんです。
走れ、風になれ、彗星のように駆けろ……と……。
ですが、ご覧とおり…体はひ弱く…華奢で見るに堪えないとまで言われました。」
「…………それでも……それでも、その叫びに対して…目を背けようとしないんだね。」
その質問に、ゆっくりと目を閉じて天を見上げるウマ娘。
???「願わくば…''天''を目指したいのです。」
「……天?」
???「流星のように…一瞬でも光放つウマ娘になりたい……そう思っています。」
指で天をなぞるウマ娘。
その様子を見ていた俺は、同情や哀れみでなく…''可能性''を感じた。
「じゃあ……約束してくれ、その怪我が治って…その気持ちが本当で、コースを駆け巡りたい…そう思うなら俺のところに来てくれ。」
???「……………………。」
「怪しんで拒んでもいい、信用ならないから断ってもいい。
ただ……俺はキミに…''光''を感じた。」
???「………………そう、ですか。」
こちらの考えを受け取ったウマ娘は、ただただ目を閉じるだけだった。
シュヴァル「トレーナーさん……?」
エース「どうしたんだよ、物思いにふけって」
「えっ?」
アルダン「何かありましたでしょうか?」
隣を見ると既にそのウマ娘は踵を返していた。
「……あ……いや、なんでもないよ!」
???(光……ですか……。)
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