テン「トレーナー様。」
今日も姿勢を正して、こちらに向かって深々とお辞儀するテンポイント。
テン「……少々、お時間よろしいでしょうか。」
「どうしたんだい?」
テン「……実は、折り入ったご相談がございます。」
「……うん、いいよ?」
テン「……心より感謝致します。」
「それで相談って言うのは?」
テン「……私の今後について、です。」
「……それは、大事な相談……だね。」
テン「…正直な気持ちを伝えます、私自身の適正距離は……自分でも分かりません。」
「そうだね、まだ練習でしか走ってないから……そこは明確じゃないね。」
テン「……ですが、選抜レースで行われる距離は……主にマイル~中距離がほとんどです。」
「そうだな、根幹距離とも言われるし…マイル路線を走りたいって事か?」
テン「……いえ。」
「違うのか?」
テン「……無理を承知で申告します。
……私の選抜レース……''芝の1000m''を走りたいと思っています。」
「……せ、1000m……!?」
テンポイントの能力を考えれば……走れない事もない……が。
「どうしても、その距離じゃなきゃダメなのか?」
テン「……ここで結果を出せれば…私の可能性も、トレーナー様の知識も深まると考えております。
もし、認める事が出来ないのであれば……そのように従います。
そして、どのような処罰でも甘んじてお受け致しま───」
「待って待って!……テンがそんなに考えてくれてるのなら、走ってみよう。
俺もテンの能力を信じてるしね。」
テン「……ありがとうございます、トレーナー様。
そして、もう1つ……ご相談が。」
「もう1つ?」
テン「……トレーナー様に、私の勝負服をデザインして欲しいのです。」
「……勝負服?」
でも、まだ選抜レースにすら出てない……それに、また体の不調が出るか分からない状態でそこまで話を進めるのは……。
テン「……この言葉は、決意の裏返しでもあります。」
「……と、言うと…。」
テン「……必ずや、トレーナー様のために…GI戦線を駆け抜けたい…
これは、願いや望みではなく……私の宿命と考えております。」
「……分かった、テンがそこまで本気なら…デザインを考えておくよ。
でも、あまり美的センス無いから……期待しないでくれよ?」
テン「……クスッ……トレーナー様の事を信頼しております……きっと素敵なデザインを考えてくれるはず、と。」
「……つくづく信用されてるんだな、俺……って、今……。」
テン「……では、その方向でトレーニングを進めていきたいと思っています。」
テンポイントが、笑ったような気がしたが……一瞬の事でその表情を伺う事は出来なかった。
「……それで、テン?」
テン「はい、なんなりと。」
「ん、いや……そうじゃなくて……。」
こちらに体を預けるテンポイント。
密着がすごいので、離れるように言おうとしたのだが……。
テン「……すいません、トレーナー様の横顔心地よく……つい。
ご気分を害されたのでしたら、深くお詫び致します。」
「いや、俺よりも……テンがいいのかって思って俺の肩なんか良い物でもないだろ。」
テン「いいえ、とても安心できます……それにこの匂い……何故でしょう、懐かしさすら覚えてしまいます。」
そう言って、首の辺りに鼻をつけるテンポイント。
少しむず痒くて目を閉じた。
テン「……トレーナー様も、ご所望とあらば…肩なり膝なり何時でもお貸し致します。」
「あぁ、ありがとうな……テン。」
その後も、しばらく離れないテンポイントの姿を見て
もしかして、この子は甘えん坊だったりするのだろうかと考える俺だった。
……………………………………………………。
【廊下】
エースは、シュヴァルとアルダンを呼び出していた。
エース「悪ぃな、来てもらってよ。」
シュヴァル「え、えっと……何か、ありましたか…?」
アルダン「大事な話があるとの事でしたが…。」
窓際にもたれかかり、腕を組むエース。
エース「アタシら3人で共有したい話があったから、呼び出したんだ。」
シュヴァル「……共有…です、か?」
アルダン「それは、一体……。」
エース「単刀直入に聞く、2人の目指す姿は……何だ?」
シュヴァル「……それは、えっと……。」
エース「アタシの目指す姿……それは、ウマ娘界のエースだ。
どんな高い壁をも乗り越えて、でっけぇ背中を見せ続けるウマ娘になる。」
シュヴァル「ぼ、僕も……偉大な…ウマ娘になる……それしか、目指してません……。」
アルダン「……私は……''今''を精一杯輝きたいと……。」
その言葉を、エースが遮った。
エース「違うだろ?」
アルダン「…………………………。」
その一言に、アルダンがじっとエースの目を見る。
エース「ここ最近、何か悩んでると思ってたんだ…それを聞きたくて呼んだ。」
アルダン「……………………。」
真剣な表情でお互いに見合う様子をシュヴァルが慌てた様子で止めに入った。
シュヴァル「け、喧嘩はダメですよ……っ…。」
エース「安心しな、シュヴァル。
そんなつもりはこれっぽっちもないからよ……ただ、アルダン本人の口から聞きてぇと思ったんだ。」
アルダン「……私は…。」
エース「内容によっては、協力出来るかも知れねぇだろ?
アタシらチーム内で隠し事はしたくねぇからよ。」
アルダン「……エースさん……。」
シュヴァル「……アルダン、さん…。」
アルダン「……えぇ、ここ最近…考えていました。
私の……行く末を。」
エース「やっぱりな……聞かせてくれねぇか?」
アルダン「……エースさんは、このトゥインクル・シリーズ…シニア級を走り終えたら…どうするおつもりでしょうか。」
エース「決まってるだろ?ドリームトロフィーリーグに出走する。
シービーやルドルフも走るって言ってるしな。」
シュヴァル「……アルダンさんは、出ないんですか…?」
アルダン「………………。」
エース「……アルダン、まさか……。」
アルダン「はい、私はシニア級いっぱいで…レース出走の役目を終わらそうと考えております。」
エース「なっ……ま、まだ走れるだろ!」
シュヴァル「どうして、急に……。」
アルダン「新しく……成すべきことを見つけたからです。」
シュヴァル「……成すべき……こと……?」
エース「……良ければ教えてくれねぇか?」
アルダン「……はい、私は──────────」
………………………………………………。
【トレーナー室】
エース「悪い、遅くなった!」
「3人とも、待ってたよ。」
シュヴァル「ご、ごめんなさい……!」
テン「いえ、焦って行動するのは得策では無いですのでご安心を」
アルダン「……。」
「アル?」
アルダン「……っ…は、はい、何でしょうか?」
「少し疲れ気味か?」
アルダン「いえ、問題ありません…ふふっ、お心遣い感謝致します。」
「そうか、それならいいんだ……けど、何かあったら言ってくれよ?」
アルダン「はい、お約束いたします。」
エース「……………………。」
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