【宝塚記念 前日】
別メニューをこなす2人を、見守るシュヴァルとテン。
シュヴァル「気合い、入ってますね…。」
「あぁ、宝塚記念だからな。」
テン「闘志に満ち溢れてるとお見受けします。」
「テンも選抜レースに向けて更に仕上げていかないとな。」
テン「はい、よろしくお願いします…トレーナー様。」
エース「…っし、走るかアルダン?」
アルダン「ええ、準備できております。」
エース「ああ、負けねぇからよ……っと…?」
走る準備をしていたところに、あるウマ娘が近づいてきた。
???「……アルダン、さん。」
アルダン「──また、一緒に走れますね…''チヨノオーさん''」
チヨノオー「お待たせして、すいません」
そこには、怪我から復帰したサクラチヨノオーの姿があった。
エース(確か、同室のサクラチヨノオー…だったか?
そういえば、明日の宝塚記念には…)
アルダン「調子、良さそうで安心しました。」
チヨノオー「はい、むしろ…ケガをする前よりずっと良いくらいです。」
アルダン「その言葉が聞けて…本当に良かったです、ですが…。」
チヨノオー「はい、走る以上は…負けません、アルダンさん。
それがたとえ…ぶっつけ本番のGIレースでも─────」
アルダン「…もちろん、私もです…最高のレースにしましょう。」
がっちりと握手をし、その場を後にするチヨノオー。
その様子を見ていたエースが話し掛ける。
エース「良いライバルだな。」
アルダン「えぇ、共に高め合う…大切なライバルであり…親友です。」
エース「…なら、より一層良いレースにしねぇとな!」
アルダン「…はい、トレーニング始めましょう。」
エース(…ライバル…か…アタシのライバルは─────)
………………………………………………。
【宝塚記念 当日】
実況「先頭はカツラギエースだ!
カツラギエース逃げる逃げる!後ろからは何も来ない!恐れ入ったカツラギエース強い!今1着で、ゴールイン!!」
観客【ワァァァアァァァーーっ!!!】
実況「メジロアルダンは、7着。
復帰初戦でしたサクラチヨノオーは16着に終わりました。」
まさに横綱相撲で押し切ったカツラギエースが天高く拳を突き上げた。
アルダン「…はぁっ…はぁっ…!…またしても、届きませんでした…っ…」
アルダン(ですが…高まり合うのも…確かに感じました…私はまだ…先へ行ける…!)
チヨノオー「アルダンさん!」
アルダン「チヨノオーさん…良いレースでした、共に。」
チヨノオー「はいっ、まだまだ自分の限界はこんな物じゃないと感じる最高のレーでした!」
アルダン「えぇ、本当に…素晴らしいレースでした。
…貴方が、ライバルで…本当に良かったと心から思いました。」
チヨノオー「アルダンさん……はいっ、私もです!」
チヨノオーと検討を讃え合った後…エースの方を向き合うアルダン。
アルダン「エースさんも、とても良いレースでした。」
エース「あぁ、アルダンもな!」
アルダン「ですが…次は負けません、必ずその背中を越してみせます。」
エース「…あぁ、本気のぶつかり合いをしようぜ!」
シュヴァル「…良いレースでした…見てても…参考になる物ばかりでした。」
テン「……やはり、良い物ですね…レースは。」
「あぁ、テン…次は君の番だよ。」
テン「はい、トレーナー様にご満足いただけるレースにすることをお約束します。」
シュヴァル(そっ、か…テンさんもデビューが近いんだ…僕も、負けてられない…チームのみんなにも…同期のみんな…にも…)
宝塚記念のインタビューが始まり、エースが勝利の喜びと共に…ある決意をカメラに向けて言い放った。
エース「アタシは天皇賞に出る、逃げるなよ…シービー!」
それは、ライバルへの宣戦布告だった。
その一言を聞いた記者は騒然とした。
エース(今のアタシなら…勝てる…!)
そう信じたエース、しかし…後日…その想いと周りの評価が違う事に打ちのめされる事になる…。
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記者【では、本格始動は秋シーズンからなのですね!】
シービー「うん。まぁあれだけ言われちゃったしね。」
記者たち(おぉ…っ!!)
大方の予想通り…ミスターシービーの復帰レースが決まった。
それにより、世間は大きく沸くことになった。
その中継を見ていた俺はパソコンとテレビを交互に見ていた。
(シービー復帰待ち望んだ…早くあの走りがみたい…か)
待望の声が多く上がる中…気になる声も散見された。
(スター性十分なシービーは復帰会見だけでも雰囲気がある…天皇賞は絶対盛り上がる…か)
考えすぎか…と、テレビを消そうとした時だった。
更なる報道が飛び込んだ。
MC「続いては、そのミスターシービーに続き、秋シリーズを盛り上げる中心となる皇帝・シンボリルドルフについてです。
やはり、このウマ娘が中心的存在になるのではないでしょうか?」
コメンテーター「そうですね、この2人の動向が気になりますね。」
MC「三冠を獲ってからの雰囲気はもう敵無しと言っても過言ではありませんものね。」
コメンテーター「これは私の願望なのですが、ミスターシービーとの直接対決で盛り上げて欲しいですし、私も今からワクワクしますね~」
(…誰も、エースの事を言ってないな。)
宝塚記念を勝ち、グランプリウマ娘となったエースの話題がまるで出てこなかった。
それどころか、宣戦布告の事すら誰も気付いていないようだった。
「…世間は、ミスターシービー対シンボリルドルフ…か。」
天井を見上げ、自分の事のように…唇を噛む。
その時だった。
コンコン。
「…ん、どうぞ?」
アルダン「失礼します、トレーナーさん。」
シュヴァル「あれ……僕たちが…最初?」
テン「エースさん…見てないですね。」
アルダン達がトレーナー室にやって来た。
急いでテレビを消して、立ち上がる。
「ちょっと俺、探してくるよ。」
アルダン「外は雨が降っていますし…恐らく学園の屋内に居るかと…。」
シュヴァル「ぼ、僕達も…お手伝いしま──」
「大丈夫、すぐ戻るから。」
そう言って、俺はトレーナー室を出ていった。
テン「トレーナー様…何か、焦ってる様子でした。」
シュヴァル「何か…あったんですか…ね…。」
アルダン「……これは…。」
その時、パソコンの画面を見たアルダンが、顔を顰めた。
シュヴァル「…アルダンさん?」
アルダン「いえ、何も…トレーナーさんにお任せしましょう。」
パタッとパソコンを閉じて…微笑むアルダン。
テンはただ、外の様子を見るだけだった…。
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【トレーニングコース前】
「…ここに居たか。」
エース「…トレーナーさん。」
「…風邪、引くぞ。」
雨にさらされたエースが、全身を濡らしたまま…立っていた。
エース「…悪い。
もうちょっとだけ…ここにいてもいいか?
頭も冷えるし…──静かだからさ。」
「…わかった、俺も隣に居るよ。」
エース「…アタシさ、結構メンタル強い自信あったんだけどな───」
エース「なんか…自分でも驚くくらい、ショックだったっつーか…。
悔しいっつーか─────」
自虐的に笑うエース。
エース「…''ミスターシービー、天皇賞での復活迫る…常識破りの走りをまた見せてくれ───''
''新時代の皇帝・シンボリルドルフ、三冠の次に狙うはジャパンカップの栄光Vか''」
俯くエース、言葉が段々と弱々しくなっていく。
エース「…右を見ても、左を見ても…シービーとルドルフの事ばかり…。」
エース「………どこだよ────」
震える手で、服を掴むエース。
エース「アタシの名前は…どこだよ…ッ!!」
「…エース…。」
エース「アタシの宣戦布告は…天皇賞は…シービー復活の為のレースじゃねぇ…!
シービーのライバルは…ルドルフじゃ、ねぇ…!
アタシは…対等じゃねぇ…のか…!!」
「…決めつけるな、エース…大丈夫だ。」
ずぶ濡れのエースを抱き寄せる。
その身体は、酷く冷たかった。
エース「…ごめん。もう、大丈夫だ。
…すっきりしたよ。」
「……あぁ。」
エース「……後は''天皇賞''で何もかも証明すればいい。
そうだろ、トレーナーさん…。」
「あぁ、その通りだ。」
エース「……────。」
力なく歩き去るエースの背中を見て、自分に出来ることを考える俺だった…。
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