瑠璃色のキミ達と   作:A×K(アツシくん)

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第77レース~みんなと過ごす熱い夏~

夏合宿目前に控えた6月のある日。

アルダンから質問を受けた。

 

アルダン「…トレーナーさん、テンさんの選抜レースは8月に行われると仰ってましたね?」

「うん、その様に手続きしたよ。」

テン「大変申し訳ありません…私も盲点でした、8月は…。」

アルダン「ええ、夏合宿期間でございます。」

「…えっと、つまり…。」

エース「トレーナーが夏合宿に行ってたらテンの選抜レースを見れないって事だよ。」

「…あ。」

 

アルダン「無いとは思いますが…トレーナーさんの居ないところでスカウトを受けてしまう可能性も…。」

テン「ありません。」

きっぱりと答えるテンポイント…しかし、耳は垂れていた。

 

テン「ですが…タイムや走り終わった後の体調を見てほしいという本音は…正直に申しますと、あります。」

「…どうしよう。」

エース「ならよ、簡単な話じゃねえか?…ほらよ、シュヴァルアイス食うか?」

シュヴァル「…あ、ありがとうございます……はぅ…。」

 

ちなみにシュヴァルは暑さのせいか、机にへたり込んでいた。

「…って言うと?」

エース「夏合宿に行かないで、アタシらのチームはチーム内で夏合宿すれば良いって事だよ。」

「えぇっ!?」

アルダン「確かに、参加は任意なので…その様な選択肢もありますが…。」

テン「…よろしいのでしょうか、私のワガママな申し出にお付き合いさせて…

それに、皆様は夏合宿の方が鍛えられるのでは…。」

 

エース「そのメニューを考えるのは、トレーナーの仕事だからよ、なっ?」

「ま、まぁ…それはもちろん…。」

エース「うしっ、決まりだな!…それに、アタシらにも利点はあるしな!」

シュヴァル「…り、利点…?」

エース「それはまだ内緒だなっ!」

テン「…ありがとうございます、皆さん。」

アルダン「ふふっ、エースさんらしいですね。」

「…とりあえず、夏合宿に変わるメニューを考えるか…。」

エース「しっかり追い込んでくれよ、トレーナー!」

シュヴァル「ぼ、僕も…お願いします。」

 

 

アルダン「────でしたら。」

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………

 

 

【7月初め】

 

 

エース「おぉ、でっけぇな!」

シュヴァル「ひ、久しぶりに来たけど…やっぱり慣れないです…。」

テン「…よろしいのでしょうか、アルダンさん」

アルダン「えぇ、皆さん夏合宿に出払ってるので。」

 

「……え、と…なぜメジロ家に?」

俺とチームメンバーの4人は、メジロ家の前に居た。

と言うか学園の前に車が来た瞬間、何か察した。

 

エース「いや、最初はよ?トレーナーの部屋にみんなで行こうぜって話にしようとしてたんだけどよ。」

「いや、サラッと何言ってるの。」

アルダン「でしたら、メジロ家にはトレーニングコースや療養所があるのでそちらで…というお話に。」

「…だからあんなにやる気満々で外泊届けを持ってきたのね。」

もうここまで来たら、俺も同伴で泊まりがけで夏合宿するのかとは突っ込まないぞ…。

 

シュヴァル「えっと、とりあえず…中に入ります…か?」

アルダン「そうですね、暑いので中に入りましょう。」

テン「お邪魔致します。」

エース「ワクワクしてきたなー!」

「……やれやれ。」

 

4人の背中を見ながら、ため息混じりでキャリーを引っ張る俺だった。

(騒がしくならないといいんだが…)

 

 

 

 

 

 

───────────────

 

 

 

 

【メジロ家専用トレーニングコース】

エース「おおっ、長ぇな!」

前方に広がるのは、直線に長い芝コースだった。

 

アルダン「昔からこちらのコースで走ったりなどしていましたので…。」

シュヴァル「…凄い…。」

テン「トレーナー様、早速トレーニングメニューの方を。」

「あぁ、まずは…みんなにこれを付けてもらう。」

 

ドサッと置いたカバンから何かを取り出す。

「さ、みんなこれを」

真っ先に受け取ったエースが顔を驚かせる。

エース「…重っ!!」

アルダン「トレーナーさん、こちらは…。」

「アンクルウェイト。1個20キロだ。渡したのが1人2個だから正味40キロ分だな。」

エース「おいおい、これを付けて走れって事か…?」

テン「なるほど、これにより足腰を鍛え、瞬発力を高めようという事でございますね。」

「あぁ、理解が早くて助かるよ。」

シュヴァル「で、でも…付けてるだけ…ですか?」

「アルダンから聞いたが、この芝コースは600mあるらしい。」

 

アルダン「えぇ、ダッシュトレーニングには充分な距離ですが…。」

「アンクルウェイトを装着して走ってもらった後

外して走って走破タイム32秒を目指してもらう。」

エース「はぁっ!?32秒だぁ!?」

シュヴァル「えっと…平均が35秒程なはずなんですが…。」

テン「これは…なかなかハードな課題ですね。」

「…を、5本だ。」

エース「5ぉ!?」

アルダン「なるほど、1本だけでは身にならないと…。」

シュヴァル「トレーナーさん…本気ですね…。」

 

「物は試し!早速付けて走ってみよう!」

その掛け声と共に、足首の辺りにアンクルウェイトを付ける4人。

反応…。

 

エース「…違和感がすげぇな。」

アルダン「えぇ、40キロ…与える影響は大したものでは無いと勘ぐっていましたが…。」

テン「…正直な所、歩きにくいのが本音ですね。」

シュヴァル(…これを持ってきたトレーナーさんが、一番凄いんじゃ…)

 

 

「とりあえず1本行くよ!」

エース「…ぅ…おおぉっ!!」

アルダン「はぁっ…!!」

シュヴァル「くぅっ…!」

テン「……っ!」

 

ぎこちない走りで何とか600m走り切る4人。

エース「こ、これ…思ったよりキツイな…!」

アルダン「フォームを正さないと、さらに走りにくくなりますね…。」

シュヴァル「は、外したい…。」

テン「も、もう一本…。」

流石のテンも困惑の表情を浮かべていた。

 

「じゃあ、外していいよ。」

エース「ホントかっ!よっしゃ!」

アルダン「外すと違いが一目瞭然ですね…。」

シュヴァル「足が軽い…。」

テン「これならば…。」

 

「じゃあ外して…よーい!」

スタートを切ると、先程と見違えるほどスピードが乗る4人。

エース「ははっ、足取りが軽いぜ!」

アルダン「はい、確かな手応えを感じます…!」

シュヴァル「これなら、僕だって…!」

テン「いける…っ。」

ゴールと同時にストップウォッチを止める。

 

エース「どうだっ、トレーナー!」

アルダン「タイムは、いかがでしたか…?」

シュヴァル「は、発表してください…。」

テン「…。」

「34秒6」

 

エース「だあぁっ!まだまだ先は長いじゃねぇかよ!」

アルダン「地道に…ですね。」

シュヴァル「つ、付けていればその内慣れるかもしれませんし…。」

テン「……。」

いそいそと再びアンクルウェイトを付けようとするテンポイント。

 

エース「…っしゃ、高い壁ほど燃えるもんな…やるか!」

アルダン「ええ、頑張りましょう。」

シュヴァル「は、はいっ!」

 

 

 

その日の結果は、目標よりも程遠いものだったが…。

自分の歩様の確認や、走り方の見直しなど有意義なトレーニングになったのは事実だった。

その日の夜…………………。

 

 

シュヴァル「あれ…テンさん…?」

テン「シュヴァルさん、こんばんは。」

部屋着に着替えたシュヴァルとテンが、廊下で出会した。

 

シュヴァル「…あれ、それ…。」

目線を下げたシュヴァル、そこにあったのは…。

シュヴァル「…トレーニングで使った、アンクル…?」

テン「ええ、トレーニングを終えても付けていようかと思いまして。」

シュヴァル「…歩きにくくない…?」

テン「正直に言うと、まだ慣れません。」

 

シュヴァル「……真面目なんだね、テンさんって。」

テン「トレーナー様からの期待…ですので。」

シュヴァル「…そっか…うん、そうだよね…僕も期待に応えたい。」

テン「シュヴァルさんは、今からどちらに?」

シュヴァル「えと、どちらと言うよりも…。」

 

アルダン「ふふっ、その顔は迷ってしまったという顔をしていますね。」

エース「なんだなんだ、2人揃ってよ~。」

シュヴァル「あ、アルダンさん…っ!」

テン「お2人とも、こんばんは。」

 

アルダン「今からトレーナーさんとお話しに行くのですが…お2人もどうでしょう?」

エース「せっかくこうやって集まれる時間が出来た訳だしな。」

シュヴァル「…い、行きたいです…。」

テン「お供します。」

 

 

アルダン「えぇ、では参りましょう。」

エース「ところで、シュヴァルって案外方向音痴なのか?」

シュヴァル「こ、今回はたまたまです…っ!」

テン「ふふっ、そういう事にしておきましょう。」

シュヴァル「て、テンさんまで…。」

 

 

 

 

 

……………………………………。

 

 

 

 

 

コンコン。

「誰だろ…はい?」

 

ドアを開けると、そこには…。

アルダン「夜分遅くにすいません、トレーナーさん。」

エース「遊びに来たぜっ。」

シュヴァル「す、すいません…突然。」

テン「中に入ってもよろしいでしょうか。」

 

「い、いいけど…どうしたの、みんな揃って…。」

アルダン「せっかくこうしてトレーナーさんもいることですし…お話でもしようかと。」

「お話って…大した話題持ってないよ?」

エース「まぁまぁ、良いじゃねぇか。何か修学旅行みたいでさ!」

シュヴァル「そ、その…少ししたら帰りますから…。」

テン「トレーナー様のお話、聞きたいです。」

「まぁ…つまらなくて良ければ。」

 

 

ベットに腰掛け…隣にテンとアルダンが座り

目の前にエースとシュヴァルが座っていた。

 

エース「へぇ、じゃあアルダンとはそんな事があって契約まで至ったんだな。」

「こうやって話すと懐かしく感じるな。」

アルダン「えぇ…これまで…色々な経験をしてきました。」

シュヴァル「みんな色々な契約の仕方があるんですね…。」

テン「…………。」

アルダン「…テンさん?」

 

先程から静かテンポイントの方を見ると…。

テン「……ぁ…すいま…せん。」

コクコクっと意識が途切れ途切れのテンポイント。

 

「そろそろ寝ないとな…3人とも、テンを運んであげて?」

テン「……いや…です…。」

「え?」

もたれ掛かり、一向に離れようとしないテンポイント。

それを見たアルダンが微笑んで提案した。

 

アルダン「でしたら、皆さんで寝ましょうか?」

「アル、何を言って───」

アルダン「幸い、ベッドを2つ付ければ5人で寝る事も可能ですし。」

「いや、でも…担当ウマ娘と寝るわけには…。」

アルダン「…私とは寝れたのにです、か?」

エース「は?」

シュヴァル「ど、どどどど…どういう事ですか…トレーナーさん…。」

 

「いや、えっとな、話せば長くなるんだけど────」

事情を説明してる間に、アルダンは使用人に言伝をしていた。

エース「…あぁ、まぁ…そういう事もあるよな。」

シュヴァル「トレーナーさん相手ですし…ね…。」

2人とも、何とか理解はしたようだった。

 

アルダン「はい、連結させてください。」

「あーぁ、何か話してる間に移動式のベッドが持ち込まれてるし…。」

アルダン「本当に修学旅行みたいですね。」

エース「トレーナー、すぐ寝るなよ~?」

「…あのねぇ。」

シュヴァル「…そ、その…門限もないですし…今日くらいは…。」

「今日くらいは…って…まだ夏合宿は続くんだけど…。」

エース「お、それなら…曜日決めてトレーナーとの時間を作るってどうだ?」

アルダン「まぁ、それは良いですね。」

 

「俺の拒否権は無さそうだな…。」

シュヴァル「そ、その…僕も…賛成です…。」

「全く…気の済むまでやってくれ。」

とりあえず寝ているテンの頭を撫でながらため息をつく。

 

テン「…トレ……ナー……様…。」

寝ているテンポイントの顔は何とも子供っぽく…安心しているようだった。

(…よくよく見たら、部屋着…可愛いな)

担当ウマ娘に対して思う感想では無いことなのは分かっていたが…こうも至近距離で見ると…自然とそう思ってしまう。

 

テン「……ん……っ。」

「あのー、思い切り抱き着かれてるんだけど…。」

エース「おう、そうだな?」

「何か既に日常的な風景だと思ってない?」

アルダン「それだけ心地良いんですよ、トレーナーさん。」

シュヴァル「あ、安心できます…から…。」

「…はいはい、もう寝るよ。」

エース「あ、照れてるな、少し。」

「…い、良いから!」




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