エース「……ったく、トレーナーと来たら何を言い出すかと思えば…。」
腰に手を当てて、ため息を漏らすカツラギエース。
エース「海に来るって突然すぎるだろっ!!」
思わず海に向かって叫ぶエース。
それを見て苦笑いを浮かべるシュヴァルグラン。
「気分転換も兼ねて、な。
でもアル…ごめんな急にこんな提案して。」
アルダン「ふふっ、トレーナーさんの事ですからおおよその見当はついてましたよ。」
メジロ家が所有する宿泊地があるとの事で俺たちチーム一同は海へとやってきた。
テン「……海、初めて来ました…。」
「そうだったのか?」
テン「…はい、それに────」
「それに?」
エース「それで、トレーナー?
何をするんだ?」
「あ、トレーニングはね……ごめんね、テン。」
テン「……いえ。」
「まずは、遠泳!…波もある分、心肺機能も大きく鍛えられる。
今まではスピード中心のトレーニングだったがスタミナも大事だからな。」
アルダン「分かりました。」
シュヴァル「が、頑張ります…。」
テン「…………。」
エース「よっしゃ、海でも先頭は譲らねぇぜ!」
アルダン「元気ですね、エースさん…………あら?」
テン「…………。」
砂浜に座り込み、打ち寄せる波に顔を顰めるテンポイント。
「……テン?」
テン「……ぁ…申し訳ございません、すぐにトレーニングに…。」
と、口では言うものの…中々踏み出せないテンポイントを見たアルダンが声をかけた。
アルダン「……もしかしてですが…泳ぐのが苦手、ですか?」
テン「……!」
図星なのか、テンポイントが大きく目を見開いた。
アルダン「お気になさらずに…誰しも苦手な事はございます。
トレーナーさんも、怖い物が苦手だったりしますし。」
「……えっ、俺の事!?」
アルダン「ふふっ、すいません……つい♪」
テン「その……どうしても、苦手で…申し訳ございません。」
アルダン「では、サポート致します…トレーナーさん、テンポイントさんに付いてもよろしいでしょうか?」
「あぁ、無理のないようにな。」
アルダン「では、テンポイントさん…こちらに。」
テン「……はい、ありがとうございます。」
手を引かれ、アルダンと共に海へと向かうテンポイント。
慣れない動きだったが、何とか泳いではいるようだった。
シュヴァル「みんな……すごいな……。」
「シュヴァル、泳がないのか?」
シュヴァル「……ぁ…す、すいません……ちょっと考え事してて…」
「考え事?」
シュヴァル「……その…姉さん達やキタさん達も頑張っているんだろう、な……って。」
「……ああ、そうだな…みんな強くなりたいって頑張ってるはずさ。
でも、それはシュヴァル…キミも同じだよ。」
シュヴァル「……ぼ、僕…変わってきてます……かね。」
「あぁ、俺は変わってきていると思っているよ……それに。」
シュヴァル「……?」
「とある子からも聞いたし。」
シュヴァル「とある……子…?
ま、まさか……姉さんやヴィブロス……ですか?」
「違うよ、クラウンから。」
シュヴァル「クラウンさん……から?」
………………………………………………
【夏合宿前】
???「そこの貴方、ちょっといいかしら?」
「……?」
???「貴方の事よ、トレーナー。」
「……あっ、俺?」
振り返ると、そこには1人のウマ娘が居た。
(黒髪のサイドテール……えっと…確か…)
???「貴方…シュヴァルのトレーナー…だったわよね?」
「う、うん……そうだけど…。」
???「やっぱりね!私はサトノクラウンよ、よろしくね。」
「あっ、サトノ家の……!(確か、シュヴァルの同期だったな)」
クラウン「……ふ~ん?」
「…?」
上から下まで見定めるように眺めるクラウン。
クラウン「っと、ごめんなさい!シュヴァルがいつも貴方の話をするから、つい♪」
「……俺の?」
クラウン「トレーナーとこんなトレーニングした、とか。
いつもこんな僕なんかと話してくれたり面倒見てくれたり感謝してもしきれないとか……色々よ?」
「……へ、へぇ…初耳だな。」
クラウン「あの子…口下手な所あるから…これからも支えてあげてちょうだい?
大事な友達だし…ライバルだから。」
「あぁ、分かった。」
クラウン「あっ、今の事シュヴァルには内緒よ?それじゃね」
「……友達であり、ライバル……か。」
…………………………………………………………
「って」
シュヴァル「……ク、クラウンさん…どうしてそんなこと言うのかな…///」
「あはは、なんか評価してくれて…ありがとな?」
シュヴァル「い、いえ……その……トレーナーさんに感謝してるのは事実です、し……///」
「ん、そっか。」
シュヴァル「…………あ、あの……っ。」
「ん?」
シュヴァル「練習終わったら……時間ありますか?」
「……?」
────────────────────
練習終わりの夜、部屋のドアにノックが響いた。
「シュヴァルか?」
シュヴァル「……は、はいっ……失礼します……。」
部屋に入ってきたシュヴァル。
髪の毛はまだ少し濡れていて…お風呂上がりなのが見受けられる。
「何か話があるって顔してるね。」
シュヴァル「す、すいません…突然。」
「全然いいよ、とりあえず座って?」
シュヴァル「……は、はい…。」
そう言うと、シュヴァルは俺に背中を向けるように座った。
「……?」
特に何も言わないまま、動かない俺とシュヴァル。
「って、まだ髪の毛濡れてるじゃん…じっとしてて?拭くから。」
シュヴァル「……。」
特に必要ないと言う答えも返ってこなかったので、タオルを取りシュヴァルの頭を拭き始める。
シュヴァル「……ひゃ……ぅ……///」
「くすぐったいか?ごめんよ。」
シュヴァル「……い、いえ……///」
「……ちゃんと手入れしないと、ダメだよ?(綺麗な髪だな……って、違うか)」
シュヴァル「……い、いつもしてるので……大丈夫、です。」
「ならなんで今日…。」
シュヴァル「……その……ト、トレーナーさんに……髪触れるの……好き、で……///」
「……え?」
言ってしまったと顔を赤くし、手で塞ぐシュヴァル。
つまり……手入れをして欲しかったって事だったのか。
「……そ、そうか…でもそういう事なら、ヴィルシーナとかの方が慣れてるし勝手が分かってるんじゃないか?」
シュヴァル「……そう、ですけど……トレーナーさんに触れられると…安心しちゃうんです……えへへ、おかしい……ですよね。」
困った顔で笑うシュヴァルを見て……。
────愛おしい。と思ってしまった。
「……ん、ありがとなシュヴァル。」
シュヴァル「ト、トレーナー……さん……っ?!///」
後ろから抱きしめると、驚きつつこちらに収まるシュヴァル。
「……嫌だったら離れていいから。」
シュヴァル「……逆、です。」
「ん?」
シュヴァル「離れないように……ずっと、捕まえていてくだ……さい///」
言葉の終わりと同時に…そっと、手に触れるシュヴァルだった。
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