「よし、一旦休憩だ!」
メンバー一同「「「……はぁ…はぁ……。」」」
夏合宿も1ヶ月が経とうとしていた頃。
トレーナーの掛け声と共にチームメンバーの皆が砂浜に倒れ込んだ。
エース「き、キツいメニュー…上等……だぜ。」
シュヴァル「た、短距離ダッシュ…山登り…遠泳…い、色々やりました……ね…。」
アルダン「皆様、お水ですよ。」
テン「……ありがとう、ございます。」
「……うん…よし、今日は早めに切り上げるよ!」
エース「こりゃまた急だな…どうしてだよ?」
「いいからいいから。」
シュヴァル「……?」
アルダン(トレーナーさん、また何か思い付いたようですね。)
「とりあえず部屋に戻って…今後の話をしよう。」
テン「かしこまりました、トレーナー様。」
………………………………………………………………
室内に戻り、資料を片手に話を進め始めた。
「よし、まずは……テン、いよいよ数日後にゃ選抜レースだ。
担当契約をしているから、結果にこだわってくれ。」
テン「仰せのままに、トレーナー様…必ずや勝利を。」
シュヴァル「……そ、そう言えば…選抜レース前にトレーナーと契約って…
珍しい……です、よね。」
エース「ああ、初めて聞いたな。」
アルダン「元々、名のあるウマ娘や代々受け継がれていくトレーナーさん等には就くことはあります。
今回のような形は、中々ありませんが……。」
「……ま、それはテンが選んでくれた道だ。俺はそれに応えるだけだよ。」
テン「はい、私も同意見です。」
「選抜レース後に次のレースについても決める。走り終わった後のテンの感想や感覚を聞かせてくれ。」
テン「分かりました。」
「……次に、シュヴァル!」
シュヴァル「は、はい……っ。」
「''菊花賞''、出るぞ。」
シュヴァル「…………えっ……?」
「GII1勝、GIII1勝…実績としては充分だ。
元々スタミナがあるタイプだし…ここは一度大舞台も経験しておくべきだ。」
シュヴァル「……で、でも……僕なんか…。」
「怖いか?」
シュヴァル「……………………。」
「怖さがあるのはもちろん分かる。
大敗したら…ライバルとの差が浮き彫りになった……とか、色々考えてしまう気持ちもな。
でも…その経験が必ずシュヴァルに生きると俺は思っている。」
シュヴァル「……分かりました、''菊花賞''走らせてください、トレーナーさん。」
アルダン「シュヴァルさん…。」
エース「いい目してるな。」
シュヴァル「……ぼ、僕だって…逃げてばかりじゃ、ダメ…だから。
トレーナーさんの…期待に応えたい……から。」
「ありがとう、シュヴァル。」
シュヴァル(クラシックGI…同期の皆も出るはず……。
僕だって……僕だって居るって証明してみせなくちゃ……。)
「……エースは…。」
エース「ふっ、言わずもがな……だろ、トレーナー?」
「あぁ、秋シニア三冠…ライバルは強敵揃いだぞ。」
エース「強敵?…燃える言葉だな、それは。」
「エースらしいな…確かに、今のエースは昔とは違ってパワーアップしている。
出会った頃より、遥かにな。」
エース「……そうだな、あの時…トレーナーの言葉を信じて良かったとアタシも思ってる。」
「……勝とうな、エース。」
エース「おう!」
アルダン「……トレーナーさん。」
「ん、アル…どうした?」
アルダン「私のレースプランについて…提案があります。」
「提案…OK、聞かせて?」
アルダン「ありがとうございます。
私の次走は……''エリザベス女王杯''に出走させていただきたく…。」
「……''エリザベス女王杯''…か。」
アルダン「はい、私の道を示すには…この選択肢が妥当と判断致しました。」
「じゃあ、その次は''ジャパンカップ''って流れか?」
アルダン「……いいえ。」
小さく首を横に振るアルダン。
その様子を真剣に見つめるエース。
「……違うのか?」
アルダン「''マイルチャンピオンシップ''に…出させていただきたいと思っております。」
「……''ジャパンカップ''じゃなくて、いいのか?」
アルダン「……。」
エースの方を見るアルダン。
アルダン「……エースさんへ、バトンを渡したいんです。
勝利というバトンを。」
エース「……アルダン。」
アルダン「そして……2つのGIを走り終えた後は─────」
「……?」
アルダン「…………いえ、すいません。何でもありません。
是非とも、トレーナーさんのご意見をお聞かせください。」
「…2つとも適正距離だし…アルに走りたい意味や思いがあるのなら俺は否定しないよ。
じゃあ、エースとアルは別路線になるけどGI連戦だ、気を引き締めような。」
アルダン「ありがとうございます、トレーナーさん。」
エース(…言わないのか、アルダン。)
シュヴァル(……まだ、言いたくないの…かな。)
「そしたら、今後の日程についてのミーティングはこれでおしまい。
皆、ゆっくりしててな。」
そう言うと、トレーナーは部屋を後にしようとした。
エース「どこ行くんだよ、トレーナー?」
「ちょっと野暮用にな、すぐ帰ってくるから。」
エース「……行っちまった…なぁ、アルダン言わなくて良かったのか?」
アルダン「……まだ、水を差す訳には…来るべき時が来たらちゃんとトレーナーさんに伝えます。」
シュヴァル「トレーナーさん…何て言うかな…。」
テン「……あの…。」
エース「そうか、テンは話に加わって無かったから何の事か分からないよな。
……実はな。」
……
テン「─────そうだったんですか…。」
エース「アタシはアルダンの意見を尊重した…が、トレーナーが何て言うかまでは…。」
シュヴァル「……き、きっと大丈夫ですよ…トレーナーさんならちゃんと聞いてくれますし…。」
テン「……各々、考えや目指す物…芯に持っている気持ち…色々あるのですね。」
アルダン「……私も、そういった気持ちを持つ大事さをトレーナーさんから学びました。
今度は…それをお返しする番、ですから。」
テン「………………………………。」
シュヴァル「……あ、あの…っ…僕…絶対なります…偉大なウマ娘に……!」
エース「……あぁ、クヨクヨするのは性に合わねぇもんな、前向いてくぞ!」
アルダン「皆さん……ありがとうございます。」
テン「ところで…トレーナー様は、どこに……。」
エース「そういや帰ってこねぇな…脱走か!?」
シュヴァル「……迷っているんじゃ…。」
アルダン「ふふっ、愛されてますね、トレーナーさんも。」
テン「……愛されてる…です、か。」
エース「ま、何だかんだアタシらもトレーナー居ないと何も出来ないからな」
シュヴァル「……そう言った意味だと…感謝してもし足りないです、ね…。」
アルダン「皆さん、出会ってから色々ありましたね。」
テン「……はい、でも…凄く…嬉しかったです。
真っ直ぐに…私を信じて…背中を押してくれて…勇気を貰いました。」
エース「……勝ちてぇな、トレーナーの為にもよ。」
シュヴァル「……はい。」
アルダン「夏合宿の成果、存分に発揮して必ず勝利を。」
テン「………必ず。」
「お待たせ、みんな……って、顔……怖いよ?」
エース「ったく~……やっと帰ってきたか」
「ごめんごめん、つい買い込んじゃって。」
シュヴァル「買い込ん……だ?」
アルダン「何か必要なもの…ありましたでしょうか?」
「んー…必要って程じゃないけど…ま、これも気分転換って事で。」
テン「……?」
「使うのは夜、な。」
エース「もったいぶってるな」
「まあまあ、楽しいはずだから……な?」
シュヴァル「トレーナーさんがそう言うなら…。」
「それで、何の話をしていたの?」
エース「き、聞くんじゃねー!ばーかっ!///」
「えぇっ、何で怒られたの!?」
アルダン「ふふっ、秘密ですよ♪」
「んー…気になるけど…まぁ、いいか…。」
…………………………………………………
【夜】
トレーナーに招かれた4人は、外へと駆り出された。
エース「一体何を始めようってんだよ~…。」
シュヴァル「……も、もしかして…夜トレーニング…とか、ですか…?」
「……流石に、夜にトレーニングはしないよ。
よし、ここなら大丈夫かな。」
ガサガサと袋から何を取り出すトレーナー。
それを見たアルダンが、書いてある文字を復唱する。
アルダン「……花火?」
「そそ!せっかくだし夏っぽい事をしたいなって。」
メンバー一同「「「……………………」」」
「…………あれ?」
思った反応ではなく、焦るトレーナー。
すると、エースが声を上げた。
エース「おー、懐かしいな~!
昔、田舎のみんなとやってたっけな!」
シュヴァル「ぼ、僕は…姉さんやヴィブロスがやってる姿を見てるだけ…でした。」
アルダン「……私は…初めて、ですね。」
テン「……私もです。」
「………………ほっ、てっきり子供っぽいとか思われた…。」
エース「早くやろうぜ、トレーナー!」
「分かった分かった、火には気をつけてくれよ。」
エース「おうっ、行くぜ~!!」
先陣を切って両手に花火を持つエース。
火がつくと同時に、シュヴァルが声を上げた。
シュヴァル「わ、わぁっ…!!」
エース「ははっ、シュヴァル驚きすぎだって!ほら、持ってみ!」
シュヴァル「は、はいっ…………ぁ…すごい…綺麗…。」
「アル達もやってみようか。」
アルダン「こう、でしょうか…?」
テン「……え、っと……。」
慎重に火をつけるアルダンを見て、見よう見まねで同じ行動をするテン。
アルダン「…花火…一瞬の鮮やかと儚さはどこか私と似ていますね。」
赤青緑…色が変わる花火を見て、アルダンがポツリと呟いた。
「それが花火の良さだからな…でも、アルの輝きは消させないよ。
俺がついてるし…俺が守るから。」
アルダン「……ふふっ、勘違いしてしまいますよ?」
「……かもな、どう受け取るかは、アルに任せるよ。」
アルダン「まぁ、逞しくなりましたね、トレーナーさんも♪」
「茶化すなって。」
テン「……わ………ふぁ…っ。」
初めてのテンも驚きと困惑の声を上げていた。
「どう、テン?」
テン「星みたいで…とても、綺麗です…。」
「だね、花火が映るテンの瞳も綺麗だよ。」
テン「トレーナー様は冗談がお上手ですね、アルダンさん。」
アルダン「えぇ、全くです。」
「2人とも~…」
エース「うおおぉ!ツインバ○ターライフル!」
シュヴァル「え、エースさん~……!」
「あはは、あっちの2人ははしゃいじゃってるし。」
アルダン「…トレーナーさん。」
「ん?」
アルダン「ありがとうございます…夏の思い出を作ってくださり。」
「……ま、俺にはこれくらいしか出来ないからな。」
テン「ですが…そんな、トレーナー様のお心遣いにとても感謝しています。」
「それは良かった。」
エース「トレーナー!こっちきてでっけぇ奴やろうぜ!」
「分かった分かった、今行くよ。」
アルダン「ふふっ、賑やかですね、とても。」
テン「……はい、楽しいです…とても。」
楽しい時間をしみじみと感じるチームメンバーとトレーナーだった。
評価・感想・お気に入り登録
よろしくお願いします。