アルダン「────ですので、こちらは…。」
テン「なるほど…。」
8月の夏合宿もしばらくが経ったある日…テンが何やらアルダンから熱心に話を聞き…メモを取っていた。
「何してるんだ?」
テン「トレーナー様。」
こちらの呼び掛けに、テンポイントは頭を下げた。
体調も良くなり、練習もこなせるようになった中で何のやり取りをしていたのかと気になっていたが…。
アルダン「えぇ、少々テンさんの方から質問がありまして。」
「…質問?」
テン「…あの、アルダンさん…。」
アルダンの制服を少し引っ張り…首を横に振るテン。
アルダン「…あら、隠すことでもないかと…?」
テン「…で、ですが…。」
「ああ、いや…話しにくいなら俺は席を外すよ。」
そう言って踵を返そうとした時だった。
テン「…あ、の…トレーナー様の…好みをお聞きしていまして…。」
「好み?」
アルダン「よくお飲みになられるコーヒーや紅茶の好みについて…ですよ。」
「あぁ、なるほど……でもなんで急に?」
テン「…その…これくらいは何時でも出来るようになりたい…と。」
アルダン「ふふっ、慕われてますね。」
「それくらいは自分でやるのに…。」
テン「いけません…トレーナー様を支えるのは私の役目と思っておりますので…。」
(それは…どうなんだろう。)
何でもかんでもやってもらうのは…人としてダメになりそうな気もするが。
アルダン「こう仰って下さってるんです…厚意として受け取りましょう。」
「…まぁ、アルがそう言うなら…。」
テン「ありがとうございます、アルダンさん。」
アルダン「お次はエースさんのところ…でしたか?」
「…エースにも何か聞きに行くのか?」
テン「はい、軽く作れるお料理の方を…。」
「そこまでしなくていいのに…。」
テン「私がしたいから…という理由では、いけませんでしょうか…?」
「…いや、まあ…いい心掛け…だと…思う?」
テン「必要最低限の事は学んでおきたいので…では、失礼します。トレーナー様。」
そう言ってトレーナー室を後にしようとするテンポイント。
「あ、待てよ。」
気になったので後を追う事にした。
アルダン(その感情を''恋心''と言うのですよ…テンさん)
シュヴァル「こんにちは…あれ、アルダンさんだけ…ですか?」
アルダン「シュヴァルさん、こんにちは。
…ふふっ、よろしければ一緒にお茶でも如何でしょうか?」
シュヴァル「…えっ、あっ…は、はいっ…お願いします…。」
────────────────────
既にエースが家庭科室のキッチンを借りて準備を進めているらしい。
「それにしても、テンが料理とか苦手なのはちょっと意外だったな。」
テン「…申し訳ございません、ご期待に添えず…。」
「そういう風に言いたかったんじゃないって。
ほら、何でも完璧に出来そうな雰囲気あるじゃん?」
テン「…そう、でしょうか…?」
「自分ではどう思う?」
テン「…ふふっ、案外ズボラな性格だったら…如何致します?」
「えぇっ!?」
テン「冗談です…強いて言えば…走る事ばかりで他の事は疎かにしてたのは…否めません。」
「そっか…まぁ、でもそのテンの走りが好きだけどな…。」
テン「…トレーナー様は相変わらずご冗談が上手いのですね。」
「事実だけどな。」
普通のやり取りをしていたつもりだったが…何故かお互いに黙り込んでしまった。
「…そう言えば、テンってさ。」
テン「…はい?」
「怒ったりしないのか?」
テン「………どういう意味、でしょうか?
怒って欲しい…と言う事でしたら─────」
「いや、違うよ…!?」
あらぬ誤解を生む前に説明に入る。
「いつも寡黙でさ、どっちかと言うと…クールじゃん?
感情を表に出したりしないのかなって思って。」
テン「…出してますよ、これでも…。」
「そうなの?…まぁ、出会った頃に比べたら出てはいると思うけど…。」
テン「…特に、トレーナー様の前だと…私は、いつもより…甘えてしまう…かも、しれません。」
「…なら、もっと見せて欲しいな。」
テン「トレーナー様のご意向ならば…。」
いつも通り、静かに頭を下げるテン…。
しかし、少し…隣で歩くテンの距離が縮まった気がした。
【家庭科室】
エース「テンのやつ…遅せぇなぁ。」
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